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※2021年5月22日 日刊ゲンダイ2面 紙面クリック拡大
※紙面抜粋
【恐ろしいことになってきた東京五輪】
— 笑い茸 (@gnXrZU3AtDTzsZo) May 22, 2021
もはや中止もできない 菅政権の「中はメチャクチャ」
日刊ゲンダイ pic.twitter.com/D0UG0GrGEx
※文字起こし
効果がないのか、すでに9都道府県に「緊急事態宣言」が発令されているのに、新型コロナウイルスの感染拡大は止まりそうにない。深刻なのは、40代、50代の働き盛りにも重症者と死者が増え、子どもにまで感染が広がっていることだ。
21日は、沖縄県にも「緊急宣言」が追加発令されることが決まった。期間は5月23日から6月20日までだ。
東京や大阪など9都道府県の期限は5月31日までとなっているが、現状は今月末の解除は難しく、沖縄に合わせて6月20日まで延長される可能性が高い。大阪の吉村府知事も「解除の議論をできるような状況にない」と明言している。
こうなると、もう「東京オリンピック」の開催はムリなのではないか。6月20日に「緊急宣言」が解除されても、7月23日の開会まで1カ月しかない。
国民も開催を望んでない。世論調査では「中止」「再延期」が83%に達している。とうとう「分科会」の尾身茂会長までが、21日の国会で「やる、やらないも含めて、これは当然のオーガナイザー(開催者)の責任だ」と、事実上、政府に「五輪中止」を求めた。しかも、「直前に判断するわけにはいかない」と、早期の決断を促している。これまで“御用学者”と揶揄されてきた尾身会長が、ここまで踏み込むのはよほどのことだ。
実際、これ以上、決断を先延ばししても、いいことはひとつもない。どうせ「中止」ならば、アスリートも早い決定を望んでいる。ロンドン五輪フェンシング団体銀メダリストの三宅諒選手は、メディアに、こう語っている
「大会の有無がいまだ曖昧なことで、“なくなる大会に全力を注いでしまった”という喪失感を経験するのではないか、との恐怖感があります」
多くのアスリートが、「早く決めてくれ!」という気持ちに違いない。
なのに、菅首相は、いまだに「安心安全の大会」「世界の団結の象徴に」などと繰り返し、開催可否の議論すらしようとしないのだから、どうかしている。
あと2カ月なのに体制整わず
実際問題、とてもこの夏に五輪を開催できる状況ではない。本番まであと2カ月というのに体制が全く整っていないからだ。
大会組織委員会が期間中に確保する選手専用の病院さえ、競技会場がある知事から「選手優先は認められない」と、協力を拒否する声が上がっている。全体で11万人必要なボランティアも、まだ確保できるかどうか分からない状況だ。東京都が計3万人募る都市ボランティアのうち、千葉県が募集した2826人の約30%が辞退してしまった。
さらに、時期的にそろそろ日本人選手にワクチンを接種しなければならないが、こちらも不透明。高齢者への接種が進まない中「なぜアスリート優先なのか」と反発を招きかねないからだ。そもそも、聖火リレーすらロクに開催できていないありさまである。
準備ができていないのに、このまま強行したら失敗するのは目に見えている。
「開催するにしても、観客を入れるのか無観客なのかで、体制は大きく変わります。なのに、無観客かどうかさえ決まらないから準備を進められない。ますます作業に遅れが生じています」(大会関係者)
こうなったら、サッサと中止を決め、五輪に振り向けているヒトとカネをコロナ対策に回すべきではないか。直前に中止になったら、混乱が大きくなるだけだ。高千穂大教授の五野井郁夫氏(国際政治学)はこう言う。
「早期に五輪中止を決断し、コロナ対策に集中しない限り、感染状況は改善に向かわないでしょう。決断をだらだらと先送りしていると、状況は悪くなるばかりです。組織委と契約する業者や準備を進めている自治体も、直前の中止決定では対応しきれません。当然、アスリートへの影響も甚大です。菅首相はこれまでも判断が後手後手になり、事態を悪化させてきた。決断力のなさが、今の状況を招いている。同じ過ちを繰り返している状況です」
つくづく、決断できない男だ。
誰も怖くて中止を言い出せない |
どうして菅政権は、とっとと「五輪中止」を決めないのか。なぜ、五輪開催の可否すら議論しようとしないのか。
当初は「政権浮揚のために、五輪開催を強行するつもりなのだろう」とみられていたが、さすがに最近は、菅周辺も「五輪反対の世論を無視して突っ込んだら、政権浮揚どころか批判を招きかねない」と危惧し始めているという。
それでも「五輪開催」に突き進んでいるのは、誰も怖くて「五輪中止」を口にできなくなっているからだ。「週刊文春」が、現職閣僚の驚くような発言を載せている。
<今は閣僚の間でも五輪の話は一種のタブー。このままやったら何が起こるか分からないのに、止めるっていう選択肢はもうないだろうな>
ヤバイと分かりながら、五輪中止はタブーとなり、誰も口に出せなくなっているというのだ。
しかし、これほど無責任で怖い話はないのではないか。これでは、負けると分かっていながら、誰も戦争を止められなかった戦前の日本と同じだ。
戦前の陸軍参謀本部や海軍司令部の幹部たちは、東京裁判で「内心は忸怩たる思いがあったが、空気にあらがえなかった」と釈明している。
その結果、東京は空襲され、広島と長崎に原爆を落とされ、日本は焦土と化してしまった。
「さすがに、菅内閣のなかにも“五輪は中止した方がいい”と考えている幹部はいるはずです。でも、ポジションを失いたくなくて口を閉ざしているのでしょう。腐敗堕落した組織の典型です。ちょっと冷静に判断すれば、なにが正しいのか分かるはずなのに、皆が責任を回避し、思考停止に陥っている。末期的です」(立正大名誉教授・金子勝氏=憲法)
「変異株の祭典」で世界中から非難囂々
このまま五輪開催に突っ込んだら、どうなるのか。一気に感染が広がり、日本は“2度目の敗戦”を迎えかねない。
たとえ無観客開催にしたとしても、選手や監督・コーチ、海外メディアら約9万人が来日することになる。外部との接触をシャットアウトする「バブル方式」を採用するというが、過去、五輪より小規模なスポーツイベントでも「バブル方式」は崩壊し、感染者を出している。9万人を管理できるはずがない。
米ニューヨーク・タイムズ紙が「東京五輪は一大感染イベントになる」と指摘したように、五輪強行が感染大爆発の引き金になる可能性は高い。
しかも、五輪を7月23日に開会したら、パラリンピックが終わる9月5日まで、大会を中断することはできない。1カ月以上、海外から数万人を受け入れ、感染が急拡大したら、取り返しがつかない。
仏ル・モンド紙は東京五輪について「変異株の祭典になりかねない」と報じたが、笑えない状況に陥る恐れがある。
そうなれば、日本は世界中から猛批判にさらされることになるだろう。
「このまま開催を強行すると、危険な状況になるのは明らかです。国の『宝』であるアスリートを感染させたとなれば、各国から非難されるでしょう。また、日本が目指す観光立国も頓挫しかねません。福島原発事故で負った傷が少しずつ回復してきたところなのに、コロナの『一大感染源』になってしまったら、大ダメージです。少なくとも数年は日本への旅行者も見込めなくなってしまうのではないか。国益を守るためにも、菅首相は決断すべきです」(五野井郁夫氏=前出)
「開催はIOCに権限がある」と繰り返す菅。責任回避で中止を決断できないのなら、即退陣してもらうしかない。
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