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組織委職員は残業が月200時間 五輪開催ゴリ押しで悲鳴続出
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/sports/289468
2021/05/22 日刊ゲンダイ
上意下達(橋本聖子組織委会長とIOCのバッハ会長)/(C)ロイター
「日本人は逆境に耐え抜く能力を持っている」――。“ぼったくり男爵”は19日のIOC(国際オリンピック委員会)調整委員会でそう言い放った。バッハ会長は7月12日に、コーツ調整委員長も6月15日に来日予定。コロナ禍で世界中から開催を不安視される中、何が何でも強行する気だ。そのシワ寄せを食らうのは、大会組織委員会の現場職員。開催ゴリ押しに悲鳴続出だ。
「逆境」「忍耐」を押し付けるサムライ感覚
「死にそう」「地獄だ」といった声が複数の組織委の職員から上がっている。ある大会関係者は日刊ゲンダイにこう打ち明けた。
「組織委は今、競技会場に観客を何人ほど入れるのか、複数パターンを想定したシミュレーション作業でてんやわんや。本番まであと2カ月しかありませんから、多くの職員が作業に追われている。ここ半年くらいは、月の残業時間が150〜200時間に上る職員もいるほどです」
開催が近づくほどにオーバーワークに拍車がかかり、土日出勤は当たり前。深夜まで業務にかかりきりで、帰りが朝方になることもしばしばだという。
国は、過労死の労災認定基準(過労死ライン)について、1カ月平均の残業時間を「80時間」としている。2015年に広告代理店「電通」に入社後、激務でうつ病を発症し、同年末に過労自殺した当時24歳の女性は、発症前1カ月の残業時間が約105時間だった。月150〜200時間は過労死ラインを優に超え、相当深刻な状態だ。
「中止なら中止と早く決めて欲しい」
前出の関係者は「精神的にやられてしまい、うつ病を発症。出向元の自治体や企業に戻らざるを得なくなった職員もいる」と証言。そんな状況の中、バッハ会長らの来日準備も追加でのしかかってくるとは、あまりに気の毒だ。
「バッハ会長は本来、5月17日から来日するはずが、緊急事態宣言が発出された関係でキャンセル。これ以上、来る来ないで振り回されるのは、かなりキツイ。『来ないでほしい』が正直なところです。中止するなら中止を、開催するならどんな形かを、一刻も早く決めてもらいたい」(別の関係者)
組織委に職員の勤務状況を問い合わせると、メールで次の回答を寄せた。
〈大会の最終準備のため、職場によっては超過勤務を実施している職員もいます〉〈労働安全衛生法に基づき、職員の勤怠管理や所属長・産業医の面談を実施するなど、職員の健康については組織として安全配慮を行うとともに、衛生委員会等を通じて情報の共有や超過勤務の縮減にむけた取組を行っています〉
月150時間超の残業や、職員のうつ病発症も質問したが、明言はなかった。東京五輪関連の著書がある作家の本間龍氏はこう言う。
「4月に決めるとしていた観客上限は6月中に判断を先送り。海外からの選手や大会関係者の人数も不透明です。決まっていないことが多いので、組織委職員はあらゆる事態を想定して準備を進めないといけない。激務になるのは当然です。なぜ決まっていないことが多いのかといえば、政府や組織委幹部が『開催ありき』でありながら、どうすれば安全に開催できるのか、明確な考えもなく、決断力もないからでしょう。『上』が無理に無理を重ねてきた結果、現場への負担が過重になっているのです」
バッハ会長は1月下旬にも「選手、日本国民ら全ての人々に忍耐と理解を求めなければならない」と精神論を押し付けたが、いつまでも“サムライの国”のイメージを持たれても困る。「逆境」「忍耐」なんて言葉でコキ使う“ぼったくり男爵”は、まるでブラック企業のワンマン社長だ。
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