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日本財政・危機の構造核心
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2021年5月21日 植草一秀の『知られざる真実』
2020年度は3次にわたって補正予算が編成された。 追加された財政支出は第1次が26兆円、第2次が32兆円、第3次が15兆円。 合計で73兆円の財政支出が追加された。 とてつもない金額だ。 この巨大な財政資金の使い方を問題にしなければならない。 2020年度の国の財政支出は合計で250兆円。 一般会計、特別会計歳出純計は296兆円だがこのなかに財政投融資が46兆円含まれている。 これを除いた歳出純計が250兆円。 巨大な金額だが、これらのすべてが政策支出ではない。 国債費が100兆円 地方交付税交付金が20兆円 あり、これを除くと130兆円になる。 130兆円のうち、 97兆円が社会保障関係費 34兆円がその他の政策経費。 巨大な予算だが、一般の政策支出は34兆円に過ぎない。 97兆円の社会保障支出の財源として国費を投入している部分が35兆円。 これ以外の財源は62兆円の社会保険料収入等である。 社会保障支出を除くと国の政策支出は1年間で34兆円。 この金額を踏まえると、2020年度補正予算での財政支出追加73兆円は途方もない水準であることが分かる。 当初国家予算の2年分以上の支出が追加されたことになる。 73兆円のすべてが国民に支給されていれば、一人当たり56万円の手取り増になる。 その73兆円が個人消費で支出されればGDPは73兆円増える。 日本のGDPはコロナで大幅に減少したが、このGDP減少を完全に穴埋めできる金額が国から支出された。 2019年7−9月期の実質GDP558兆円(季節調整済、年率)が2020年4−6月期に500兆円に減少した。 しかし、73兆円の財政支出が個人消費などで支出されれば、GDPの落ち込みは完全に穴埋めできているはずだ。 しかし、73兆円の巨大な国費が闇に消えた。 唯一、例外的にわかりやすい政府支出になったのが一律給付金。 一人10万円の給付が条件なしで実施された。 約13兆円の支出。 しかし、政府は3次にわたる補正予算編成で73兆円の財政支出を追加した。 13兆円の一律給付金なら5回実施して65兆円。 なお、8兆円が残る。 1人10万円給付を5回実施すれば、4人世帯の家計収入は200万円増える。 200万円の給付が実施されれば、生活を支える基盤になる。 巨大な財政支出を追加するなら、このような「透明」、「公正」な方法を用いるべきだ。 消費税収は年間20兆円だから消費税率ゼロを3年も実施できる。 消費税率5%なら6年実施できる。 このような透明、公正な財政運営を行うことが重要なのだ。 補正予算の中身を見ると、得体のしれない支出が列挙されている。 第1次補正予算の支出内容 第1次補正の26兆円に一律給付金13兆円が含まれるが、これ以外に資金繰り対策費として4兆円が計上されている。 第2次補正の32兆円には予備費が10兆円、資金繰り対策費として12兆円が計上されている。 第3次補正予算ではポストコロナに向けた経済構造の転換、好循環の実現に12兆円が計上されている。 予備費10兆円は言語道断。 資金繰り対策費は上記の二つを合わせて16兆円にもなるが、この金額が政府金融機関への資金贈与になっている。 国民に対する資金贈与ではなく、天下り先の政府系金融機関への資金贈与なのだ。 ポストコロナの名の下に各省庁の利権予算が無制限、無尽蔵に計上された。 結局、貴重な国民の税金が利権政治勢力と利権官庁の利権支出に充当されている。 73兆円の補正予算を編成しながら、一般庶民の手にはほとんど回らない。 この構造を打破する必要がある。 |
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