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五輪ボランティア不足否定の裏で「バイト大量募集」の怪 人生100年時代の歩き方
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/sports/288193
2021/04/21 日刊ゲンダイ
観光ボランティアのユニホームを着た小池都知事(C)日刊ゲンダイ
大会開始まで100日を切った東京オリンピック・パラリンピック。国民の7割以上がいまだに反対しているが、聖火リレーなど開催に向けての既成事実だけは積み上げられている。そんな中、五輪名を伏せた奇怪なアルバイト募集が大量に行われている。
◇ ◇ ◇
共同通信の電話調査(4月10〜12日)で東京オリ・パラの開催を望む人はわずか25%。「中止」「再延期」が計72%と大幅に上回っている。
自民党の二階幹事長が大会中止も選択肢と発言したが、国民がどんなに反対しても突き進むのが今の五輪。開幕まで日も少なく、ますます中止の判断はできにくい状況にある。
そんな中、大会運営を自発的にサポートしてくれるのが、ボランティアの皆さんたちだ。大会組織委員会が募集した「大会ボランティア」が約8万人、それとは別に地方自治体が募集した「都市ボランティア」が約3万人(東京)いる。森喜朗組織委員会前会長のジェンダー発言後、ボランティアを辞退する人も出たが、組織委員会の広報担当者は「十分に人員は足りている」と強調する。
「4月2日から順次、ボランティアの方々にシフトをお知らせし、『承諾』の手続きに入ってもらっているところ。海外からの観客は入れないことになりましたが、通訳ボランティアの『アテンド』の方をまったく違う別のボランティアに振り分けることは行いません。『ヘルスケア』の医療ボランティアも人員については心配ございません」(大会組織委員会・広報担当者)
ちなみに、8万人の大会ボランティアの内訳は、「案内」(チケットチェック等)が1万6000〜2万5000人、「競技」(競技運営等)が1万5000〜1万7000人、「移動サポート」(運転等)が1万〜1万4000人、「アテンド」(通訳)が8000〜1万2000人、「運営サポート」(選手村の手伝い等)が8000〜1万人、「ヘルスケア」(医療)が4000〜6000人、「テクノロジー」(IT技術)が2000〜4000人となっている。
宮城県はコロナなど理由に3分の1が辞退 |
広報担当者の言葉を信じたいが、シフトを知らせた後のボランティアがどれくらい「承諾」するかは未知数。例えば、サッカー計10試合を行う宮城県は、都市ボランティアの約1700人に意向を確認したところ、「参加できる」という人は66%しかいなかった。コロナ感染への不安のみならず、大学を卒業した、県外に引っ越した人など最終的には3分の1のボランティアの辞退が濃厚。宮城県の担当者は辞退者はさらに増えると予想し、「2人で当たる業務を1人に変更する」などするという。
これでは大会運営そのものが危うく、人員配置などを根本的に見直さなくてはならない。その折、なぜか急に人材派遣・イベント会社が「アルバイト」を大量募集し始めている。
しかも、実に奇妙なことに募集案内にはオリンピックの「オ」の字も出てこない。「夏季国際スポーツイベント」「4年に一度の“あの”スポーツイベント」「7月下旬〜イベント」など微妙な言葉が並ぶのだ。商標権から東京ディズニーランドを「大型テーマパーク」と表示する例はあるが、勤務地を見ると、「有明テニスの森公園」「国立競技場」といった具合にバレバレ。今回はなんと「東京2020オフィシャルサポーター」を務める「パソナ」ですら、「世界的スポーツ大会の競技会場で働けるチャンス」「時給1600円」「仕事内容はお客様の誘導」と五輪名を出さずに募集している(派遣スタッフは別)。
アルバイト求人の一部(C)日刊ゲンダイ
求人会社は「機密情報なので」と怯えた様子 |
神経質過ぎる動きだが、日刊ゲンダイが複数の業者を問い合わせても口を揃えてノーコメント。ある業者に「募集しているかだけでも教えてほしい」とお願いしても、散々たらい回しされた揚げ句、「機密情報であるから教えられない」と驚きの回答が……。再度、「ネットの求人欄に時給1300円で、メディアへの食事提供と業務内容も詳しく出ていますが?」と食い下がってはみたが、女性スタッフが「上長が『機密だと言っている』ので」とニベもない。何かやましいところがあるのか、怯えている様子さえある。
こうなると、ますます怪しい。念のため、他の派遣会社の求人内容も紹介しておくと、「テニス会場での受付や誘導」「オリンピックスタジアムエリアでの入場者の案内」「選手村内食堂での選手への飲食サービス」「記録計測等のIT機器のセットアップ」などボランティアの業務とほぼ重なっている。
やはりボランティアは足りていないのではないか? 組織委員会の広報担当者に聞いてみた。
「そういったアルバイトの求人は組織委員会として把握していません」(前出の担当者)
晴海の選手村でのアルバイトは、時給1300円(夜勤は1625円)。ボランティアはどの会場に派遣されるか分からないが、こちらは勤務地先が確定している。水泳の池江璃花子選手らに会える可能性も確実に高いだろう。ただ、「選手への接触・撮影・SNS発信等は一切できません」と秘密厳守を求められる。
テニス会場スタッフは「時給1400円」 |
また、テニスの大坂なおみ選手が見たければ、有明テニスの森の仕事は時給1400円。こちらは服装規定があり、白系のインナー、黒チノパン、スニーカー(ノーブランドかアシックス)だ。アディダスやナイキの靴が駄目なのは、恐らくアシックス社が「東京2020ゴールドパートナー」でお金を出しており、間違ってテレビに映ったらマズイからだろう。
善意の気持ちから“無給”のボランティアとして働く人のためにも、あまり積極的に勧めたくはないが、同じ仕事をして“お給料”までいただける。もちろん、大会や選手を盛り上げたいとする気持ちは同じはずだ。
東京五輪のホームページには《オリンピック・パラリンピックの成功は、まさに「大会の顔」となるボランティアの皆さんの活躍にかかっています!》と書かれている。何かがおかしい、と言わざるを得ない。
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