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※2021年4月21日 日刊ゲンダイ1面 紙面クリック拡大
※紙面抜粋
※2021年4月21日 日刊ゲンダイ2面
【検査なし 病床なし ワクチンなし】
— 笑い茸 (@gnXrZU3AtDTzsZo) April 21, 2021
緊急事態とはこんな政権が続くこと
日刊ゲンダイ pic.twitter.com/mvMFdn28G9
※文字起こし
大阪府が20日、ついに3度目の緊急事態宣言発令を国に要請することを決めた。20日の新規感染者は1153人。連日のように1000人超の異常事態なのだから当然で、要請は遅いくらいだ。
大阪では重症病床が不足し、軽症・中等症用で仕方なく治療を受ける重症者が50人を超える。全患者の病床使用率も入院率も新規感染者数もすべて「ステージ4」の最悪指標。府内のあちこちの病院から悲鳴が上がり、完全に医療は崩壊している。お隣の兵庫県も医療体制は危機的で、大阪と歩調を合わせて宣言を要請する見通しだ。
東京も深刻さを増している。20日の感染者は711人で、前週比で一気に201人も増加した。早晩、大阪のような1000人超えは必至で、22日にも宣言を要請する方向。これらを受け、政府も東京、大阪、兵庫の3都府県に宣言を発令する方針を固めた。
わずか1カ月で緊急事態宣言下に逆戻りだ。なぜこんな悲惨なことになってしまったのか。
2月末、大阪は予定より1週間前倒しして宣言を解除した。経済優先の菅首相と足並みを揃える吉村府知事の強い意向があった。東京は3月21日に宣言を解除。これには東京五輪・パラリンピックの開催強行が影響しているのは間違いない。同25日の聖火リレースタート前の解除には、犬猿の仲の菅と小池都知事も思惑が一致。だが、東京の解除が検討された頃には、大阪も東京も感染はリバウンド傾向にあった。変異株の脅威も確実に迫っていた。解除できる状況ではなかったのだ。
感染の急拡大におののいた小池は先週、「東京へは来ないでほしい」と呼び掛けたが、その一方で、東京五輪は開幕まで100日を切り、開催は既定路線。来月にはIOCのバッハ会長の来日が調整されてもいる。知事が都民以外の流入を制限する東京に、世界中から選手や関係者が集まるのはどう考えても矛盾している。米紙ニューヨーク・タイムズが警告したように、感染爆発中の東京で「一大感染イベント」を強行しようとするのは狂気でしかない。
全てのツケは国民に
五輪開催のため、聖火リレーのため、「日本は安全」という虚構を世界にアピールするために、無理に緊急事態宣言を解除して招いた悲劇的な結末は漫画だ。
この期に及んで政府も専門家もバタバタと大慌て。分科会の尾身会長は、子どもが変異株で感染しやすくなっているとして「学校閉鎖」もあり得ると踏み込み、自民党内からは「休校になって子どもが自宅にいれば、親も自宅にいなければいけない。人流を半減できる」なんてフザけた発言まで聞こえてくる。
会社を休まざるを得ない親の収入や生活はどう手当てするのか。政府のコロナ対策失敗のツケは全て国民に押し付けられる。国民はなぜ怒りのシュプレヒコールをあげないのか。
法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)はこう言う。
「五輪開催に伴う経済重視と政治的で邪な思惑のためにコロナ対策が中途半端となった結果、経済にはよりダメージを与え、海外からの五輪開催懸念も高まってしまった。菅政権はもはやどうしていいのか分からないお手上げ状態です。そんな政権に国民も諦めの境地。政治不信と無力感で怒りのエネルギーすら失われてしまっているのではないか。しかし、抗議の声を上げないと、政権は国民を甘く見て何もしない。NOを突き付けなければいけません」
後進国並みのワクチン接種では経済は自由にならない |
世界的に権威のある英医学誌「ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル」が最近、掲載した「今夏の東京五輪開催は再考されるべき」という論考にこうあった。
<他のアジア太平洋地域の国々と違って、日本はいまだコロナを封じ込めていない>
<日本の限定的な検査能力とワクチン接種の遅れは、政治指導力の欠如が原因となってきた。医療従事者や高リスクの集団でさえ、開催前までにワクチンが接種されないだろう>
つまり、五輪をやろうという国なのに、コロナ感染を抑え込むことができていないのは、検査なし、ワクチンなしで無為無策をさらけ出す「政治」に問題がある、ということだ。
指摘されるまでもなく、日本の多くの国民がそのことを分かっている。世界中で菅政権以上に無能な政権を探す方が難しい。
ワクチン接種率の低さは絶望的だ。19日の政府発表によれば、いまだ医療従事者すら1回目接種終了が25%にとどまる。全人口の接種率は1%で、OECD加盟37カ国で最下位。もはや日本は先進国とはいえない。
そのうえ驚愕の事実は、菅が訪米時に米ファイザーのブーラCEOとの間で「9月までに全対象者分のワクチンを確保」に合意したという話が真っ赤なウソだったことだ。20日、田村厚労相は「合意書を交わしていない」と国会で答弁。ファイザー日本法人も日刊ゲンダイの取材に「協議は継続中」と答えた。
一国のトップが子どもの使いにもなりゃしないのである。自民党の下村政調会長は、19日の党役員会で「全ての国民が接種できるのは来年春ぐらいまでかかるかもしれない」と漏らしているのだから気が遠くなる。
お粗末政治による人災
PCR検査にしても世界の基準から何周も遅れた。「検査と隔離」が感染症対策の基本のキだ。米ニューヨーク市は昨夏には誰でも無料で検査を受けられるようになっていた。ところが日本は厚労省が「偽陰性が多い」などと難癖つけて、検査を抑制。安倍前首相が退陣時の昨年9月に「高齢者施設の検査充実」を表明したものの進まず、高齢者施設のクラスター拡大を招いた。
医療ガバナンス研究所理事長の上昌広氏が言う。
「今の最大の問題はワクチン接種が進まないこと。今冬までに全対象者が接種を済ませなければ意味がないのに、間に合いそうにない。検査数の少なさも致命的でした。感染の実数が分からないので国民が不安になって経済にダメージを与えただけでなく、検査を増やさないから変異株を追う態勢ももう間に合わない。その一方で専門家が『マスク会食』を推奨する愚。食事中にマスクを触れば危険なのに、指摘する専門家もいないのか。モノ言えば唇寒しでマトモな議論ができないのでしょう。徹頭徹尾、無能としか言いようがありません」
その結果、打撃を受けるのは国民生活と日本経済だ。20日は日経平均株価が一時670円も暴落した。3度目の緊急事態宣言が避けられない状況となり、先行き懸念が高まったとみられる。飲食店はいつまで営業自粛を続けなければならないのか。宣言が出されれば休業要請の可能性もある。不安だらけだ。
休職や失業も拡大の一途で、コロナ解雇や雇い止めはすでに10万人を超えた。自殺者は昨年、11年ぶりに増加に転じたが、今年はどうなるのか。コロナ関連倒産も20日時点で1367件で、2月、3月と1カ月の関連倒産が過去最多を更新。1年以上続く暗澹に国民は真綿で首を絞められ続けている。
経済評論家の斎藤満氏はこう話す。
「世界のコロナ対策の成功事例は2つのタイプに分類できる。中国や台湾、ニュージーランド、豪州のように感染防止と水際防御を徹底し、短期集中の対策で国民生活を正常化した国。もうひとつはイスラエルや英国などのように早期のワクチン接種で集団抗体をつくった国です。米国も後者に近い。しかし、日本は後者を目指したがワクチン接種は後進国並みで、感染拡大を繰り返している。これではいつまで経っても経済活動は自由になれません。飲食店を筆頭に、預貯金でがんばってきた企業もいよいよ息切れです。これだけ感染を長引かせて、必要のない犠牲を出し続けるのは、政治がお粗末極まりないから。通常、疫病は自然災害ですが、日本の場合は人災です。今の政権の下では好転は期待できません」
その通りだ。この国にとっては、未曽有のコロナ禍において、安倍・菅という無能政権が続いていることこそが緊急事態なのである。
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