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※2021年4月14日 日刊ゲンダイ1面 紙面クリック拡大
※2021年4月14日 日刊ゲンダイ2面
【汚染水放出ですべてがわかった】
— 笑い茸 (@gnXrZU3AtDTzsZo) April 14, 2021
菅首相 目玉政策の胡散臭さ いかがわしさ
日刊ゲンダイ pic.twitter.com/tufupEzvbD
※文字起こし
「誰ひとり納得していないのによお。総理大臣のひと言で決定しましたって。それはおかしいよ」――。怒れる福島の漁業者の声が、菅政権のすべてを言い表している。
増え続ける福島第1原発の汚染水について、政府は13日、海洋放出を正式決定。菅首相は「福島の復興には避けて通れない課題」と繰り返すが、どう考えても「復興」を遠ざける誤った決断だ。
政府は2年後をめどに放出。含まれるトリチウムを国の基準の40分の1の濃度まで薄め、国際基準も満たすと説明するが、ひとたび流布された風評を消し去ることは困難だ。その苦汁をなめ続けてきたのが「常磐沖」の漁業者である。
未曽有の事故から10年。放射性物質について厳しい出荷基準を設け、安全確認の信用を積み上げ、今年3月末に試験操業期が終了。ようやく今月から本格操業に踏み出した途端、菅政権に水を差されたわけである。重ねた努力も水の泡で、漁業者の怒りは当然。復興そっちのけで東京五輪開催にシャカリキの菅が、汚染水処理は「復興に避けて通れない課題」などと、よくも言えたものだ。
汚染水は、事故で溶け落ちた核燃料を原子炉内から取り除かない限り、延々と発生する。その作業を終えるのに、専門家の多くは「100年以上はかかる」と試算している。その間、ずっと海に垂れ流すのか。
将来世代に間違いなく禍根を残す大問題なのに、国民の合意形成を度外視した「海洋放出ありき」の政権の姿勢は極めて危うい。あまりにも民意を軽視している。
毅然と決断を下したリーダー然の怪しさ
海洋放出に至る経緯も民意無視だ。まず技術者らが2013年から2年半にわたって処分方法を検討し、5案を政府に提示。続いて社会学系の専門家も交えた小委員会が3年余り議論し、昨年2月に「海洋放出」と「陸上蒸発」の2案に絞った上で、「海の方が確実に実施できる」との報告書をまとめた。
報告を受け、経産省が漁業者など利害関係者に意見を直接、聞いたのは昨年4月から。6年余りに及んだ検討期間の最後の最後だ。既に異論を挟む余地はなく、反発しても方針に反映されっこない。民主的プロセスなぞ「クソくらえ」と言わんばかりで、不安解消や理解を得ようとする姿勢はみじんも感じさせない。
他の選択肢を模索しないのも疑問だ。汚染水の貯蔵タンク増設は本当にムリなのか。第1原発を取り囲み、大量の除染土を管理する「中間貯蔵施設」は広さ1600ヘクタール。東京ドーム約340個分に及ぶ土地に増設する選択肢も考えられる。長期保管すれば、汚染水の放射線量を低減できるメリットもついてくる。
なのに、菅は「一刻の猶予もない」と危機感をあおり、漁業者の猛反対を押し切って「海洋放出」を決定。民意をないがしろにしながら、さも「復興」のために毅然と重大な決断を下したリーダー然の振る舞いだ。困難に立ち向かう印象を強調する演出の胡散臭さがぷんぷんし、「福島切り捨て」の無情なホンネも見え隠れするのだ。
自由と人権を奪ってスガ流独裁体制を構築 |
必ず今秋までには行われる総選挙を控え、菅が打ち出した「看板政策」の数々を並べてみても、すべてに裏がある。
「2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」
昨秋、突然の「脱炭素」宣言を受け、息を吹き返したのは政官業の「原子力ムラ」だ。脱炭素をテコに、発電時に二酸化炭素を出さない原発の再稼働はもちろん、新増設をもくろむ声さえ、どんどん高まっている。
菅が唐突にブチ上げた「こども庁」創設にも、オトナの事情が漂う。1日に自民党の若手議員による勉強会の提言を受け入れ、党総裁直属の本部を設置。早くも13日、本部長に就いた二階幹事長以下、議論を始めたが、勉強会の主要メンバーだった山田太郎参院議員も「仏つくって魂を入れていく」と認める性急さ。とりあえず発足を優先させた“付け焼き刃”の目玉政策に過ぎない。
教育や福祉など、こどもに関する行政の所管は多岐にわたる。幼稚園が文科省、保育所が厚労省、ベビーシッターが内閣府、少年関連の部署は法務省や警察庁にもある。これらを統合する姿勢を見せ、菅は持論の「中央府省庁の縦割り打破」をアピール。もっと言えば、各府省庁から権限を引き剥がし、菅肝いりの新組織に集中すれば自身の権力強化にも結びつく。
いわばスガ流の独裁体制の構築だ。首相をトップとするデジタル庁の創設にも、そのいかがわしい魂胆が透けて見える。9月創設という菅のムチャな注文に合わせ、関連法案は60以上もの法律を1つに束ね、スピード審議の乱暴ぶりだ。
法案の中身も問題だらけ。約2000もの自治体が独自に条例化してきた個人情報保護の規制をリセットし、比較的緩やかな国の規制に一元化。「本人同意の原則」が吹き飛び、同意なしに目的外利用する要件もゆるゆるで、知らないうちに個人情報が悪用されても、おかしくない。
さらに人種、思想・信条、犯罪歴、病歴などセンシティブな「要配慮個人情報」も風前のともしび。差別や偏見の要因になり得るとの考えに基づいた自治体による現行の「収集禁止の原則」も揺らぐ。一元化される国の規制にはその原則が明記されていないからだ。
国連の批判に背を向けるマヒした感覚
菅の権力集中と引き換えに、人権や自由を奪われるなんて冗談じゃない。立正大名誉教授の金子勝氏(憲法)はこう言った。
「デジタル庁創設は、単なる選挙向けの実績作りでは終わりません。法案には各府省庁や自治体、独立行政法人に強力な勧告権を持ち、君臨する組織として描かれています。トップの首相に絶大な権限を与え、あらゆる個人情報を集めることも許される。強権発動をためらわず、民意にも人権にも配慮しない菅首相への権力集中は危険です」
人権軽視政権の本性が如実に現れているのは、今国会で審議予定の入管法「改正」案だ。日本の難民認定率は他の先進国と比べて極端に低く、19年は申請1万375件のうち44件。ドイツの25・9%、米国29・6%に対し、たった0・4%にとどまった。
その上、門前払いの難民申請者を医療体制が不十分な入管施設に長期収容してしまう。事故や病死が相次ぎ、職員による暴力やセクハラも横行。人権団体や国際社会から問題視されてきた。
そんな状況打開の「改正」法案とは名ばかりで、相変わらず本来「最後の手段」であるべき一律収容が大原則。収容期間の上限や司法審査も欠如したままだ。
恐ろしいのは難民申請を3回以上行った場合、自国への強制送還も可能にすること。難民申請者は自国に戻れば迫害を受ける恐れがあるのに、弱者に冷たい非人道的な仕打ちである。
「法案内容は国連人権理事会からも『国際的な人権水準に達しておらず、再検討を強く求める』とダメ出しを受けました。それでも菅政権は背を向け、反発するのみです。そんな姿勢の政権トップが15日から訪米し、バイデン大統領と会談。よりによって中国による香港・ウイグルの人権侵害や、脱炭素など環境問題を話し合うのは、悪い冗談としか思えません」(高千穂大教授・五野井郁夫氏=国際政治学)
汚染水垂れ流し、弱者に冷血首相がバイデンと意気投合の“ふり”をするおぞましさ。それでも大統領就任後「初めて対面で会談する外国首脳」の一点だけで外交成果と言い張るのだろう。見苦しいし、恥ずかしい。悲しくてやりきれない。
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