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池江璃花子復活劇を五輪強行派が利用、「反対派は池江選手に言えるのか?」の大合唱! 門田隆将や安倍前首相も便乗ツイート
https://lite-ra.com/2021/04/post-5845.html
2021.04.05 池江璃花子復活劇を五輪強行派が利用! 門田隆将や安倍前首相も便乗ツイート リテラ
東京2020組織委員会公式ウェブサイトより
あまりにもドラマティックな復活劇だった。昨日4日におこなわれた競泳の日本選手権で、白血病で長期療養していた池江璃花子選手が女子100メートルバタフライ決勝で3年ぶりの優勝を果たし、400メートルメドレーリレーの五輪派遣標準記録を突破して東京五輪代表入りを内定させたからだ。
池江選手が白血病であることを公表したのは2019年2月、つらい治療を乗り越えてプールに戻ってきたのは昨年の3月のこと。本人は2024年のパリ五輪に照準を合わせているとしてきたが、それが約1年で日本選手権優勝を果たすとは……。レース後、池江選手は涙を流しながら「自分が勝てるのはずっと先のことだと思っていた。つらくても、しんどくても努力は必ず報われるんだな、と思った」とコメントした。
今回の池江選手の復活には多くの人が感動し、実際、世界中から大きな拍手が送られている。なかでも、いま病気と闘っている人にとって、池江選手の姿は大きな希望を与えるものになったことだろう。
しかし、この池江選手の素晴らしい健闘の一方で、ネット上ではこんな声が噴出している。それは、「東京五輪開催に反対している人は、池江選手にそれを言えるのか?」というものだ。
〈「東京オリンピックなんか中止にしろ」とか言ってる人たちは池江璃花子にもそう言えるのかい?〉
〈ほんとこれからオリンピック反対や中止を言ってた著名人の方々はどうするんですかねあんな素晴らしい奇跡を起こした池江さんに対して同じ事が言えるのかと〉
〈「オリンピックは中止したらいい」と言うコメンテーター。池江さんの前で言ってみろ。〉
病気を乗り越えて池江選手は東京五輪への切符を手に入れようとしているのに、その大会の開催に反対できるのか──。さらに露骨だったのは、ジャーナリスト・門田隆将氏のツイートだ。
〈池江璃花子選手の奇跡と涙は五輪が“勝負の世界に生きるアスリート”の為にある事をマスコミや反対勢力に教えた。アスリートの努力に敬意を払い、最高の舞台を用意したい〉
東京五輪はアスリートのためのものであり、開催に反対する者はアスリートの努力を踏みにじっている。そう言いたいらしい。
だが、このコロナ禍で優先させるべきは「アスリート」なのか。たとえば、NHKの番組で五輪開催の意義について討論がおこなわれた際、元アスリートの増田明美氏が「スポーツに触れれば元気になる」「理屈じゃない」と主張した際、やはり元アスリートで五輪メダリストの有森裕子氏はこう語っていた。
「選手のこととか、スポーツのことを思うのは一回やめてほしい。それを応援している人たち、それに日常的に関係しない人たち、その人たちあってのスポーツじゃないですか」
「アスリートファーストじゃない。社会ファーストじゃないですか。社会がちゃんとないとスポーツできないんですもん。社会があって、その下に人間がより健康に健全に生きていくための手段としてスポーツがあり、文化があり、そこのひとつなんです。そのひとつに大きなイベントとしてオリンピックがある。ちゃんとした社会と健全な人たちのもとで守られてできていっている」
「(社会に対する)愛と言葉が足りなさすぎるんじゃないですかって思う」
アスリートではなく、まず社会に生きる人びとの健康と安全を守ることが優先されるべき。これこそ当たり前の話だし、開催に反対する人が多いのもこの原則に立っているからだ。
しかも、「アスリートファーストであるべき」という主張を五輪開催に反対する人びとに対してぶつけるのは、はっきり言ってお門違いだろう。「アスリートの頑張りを踏みにじるつもりか」と批判をぶつけるべき相手は、間違いなく東京五輪組織委員会および日本政府のほうだ。なぜなら、組織委こそがアスリートの努力を、自分たちの努力不足によって踏みにじろうとしている張本人にほかならないからだ。
そのことを象徴するのが、組織委が主催するテスト大会について、国際水泳連盟(FINA)が中止する意向を伝えてきた件だろう。
■テスト大会中止意向の国際水泳連盟が日本政府を批判「開催に向けて必要な措置を講じなかった」
テスト大会は国際オリンピック委員会との開催都市契約によって実施することが求められているもので、五輪開催の前に競技運営の確認などのためにおこなわれる。とりわけ今回は新型コロナ感染防止に万全の対策が求められており、テスト大会の重要度は高まっていた。
しかし、この肝心の東京五輪のテスト大会で海外選手が参加するとされていたのは、飛び込みとアーティスティックスイミング、バレーボール、マラソン、陸上のわずか5競技のみ。これには「コロナ禍での五輪開催なのに海外勢の参加がこれだけで感染対策のテストができるのか」と疑義を呈する声があがってきたが、ここにきて、FINAが飛び込みとアーティスティックスイミングのテスト大会について日本側に中止の可能性を通告したと読売新聞などが報道。その理由は、〈入国後の隔離措置を不安視して審判などの関係者が渡航を拒否していること、日本側がFINAにコロナ対策費の負担を求めていること〉。英・BBCによると、FINAは日本政府に対して「開催に向けて必要な措置を講じなかった」と文書で批判したという。
つまり、コロナ禍に五輪を開催しようというのに、組織委と日本政府はアスリートや関係者が安全だと納得し参加できるような対策を打ち出さず、そのことによってFINAはテスト大会を事実上“ボイコット”したのである。
そして、もしFINAのあとにつづいて数少ない海外選手参加のテスト大会を中止する動きが出てくれば、安全に大会が運営できるかどうかの検証もなされないまま本番を迎えることになり、選手や関係者に大きな不安を抱かせることになる。そんなことはわかりきった話なのに、組織委も日本政府も、もっとも重要なコロナ対策をなおざりにしてきたのである。一体、これのどこが「アスリートファースト」だと言えるだろう。
しかも、「アスリートファースト」を謳うならば全力で取り組むべきだった感染防止対策をおろそかにしてきたというのに、組織委や日本政府は「人類がコロナに打ち勝った証としての東京五輪」という、まるで現実を直視しない掛け声で開催を強行しようとしてきた。
そして、そこで利用されたのが、池江選手の「物語」だった。
延期された東京五輪まで1年となった昨年7月23日、組織委は開催の機運を高めるイベントに池江選手を起用し、国立競技場からメッセージ動画を配信。池江選手は白い衣装で聖火の入ったランタンを掲げ、「世の中がこんな大変な時期に、スポーツの話をすること自体、否定的な声があることもよくわかります。ただ、一方で思うのは、逆境からはい上がっていくときには、どうしても希望の力が必要だということです」とメッセージを発信した。
このメッセージは池江選手が考えたものだというし、池江選手の思いがたしかに伝わるものだ。しかし、池江選手を起用したことからもわかるように、これは池江選手の「闘病」という「逆境」を組織委が利用し、「東京五輪に襲いかかったコロナ」を「逆境」として重ね合わせようとする意図があったのはあきらかだ。
■安倍前首相もさっそく池江選手の復活に便乗ツイート 東京五輪強行に利用する気満々
実際、この動画の演出を担当したのは渡辺直美をブタに見立てたルッキズム全開の演出案が問題になった佐々木宏氏だが(ちなみにスタッフクレジットにはMIKIKO氏排除の黒幕とされている電通ナンバー2の田佳夫・代表取締役も名を連ねている)、佐々木氏は池江選手を起用した理由について「強いメッセージを発する適役をやって頂ける方」と語り、「1年後、オリンピック・パラリンピックが開かれる未来のために、努力している世界中のアスリートたちが、どのような想いでいるのかを、アスリートの視点にたって、発信する必要があると感じました」とコメント。関係者も「池江選手が立ち向かう困難、逆境は東京五輪とも重なる」と口にしていたという(毎日新聞ウェブ版2020年3月14日付)。
コロナ以前から効果的な暑さ対策を打ち出すこともなく「どこがアスリートファーストなのか」と批判を浴びてきた組織委だが、コロナによって開催を危ぶまれると、世論を高めるために池江選手の闘病という「アスリートの思い」を利用した。しかも、その動画を制作していたのは、開閉会式を意のままに動かし電通の利益にすべくMIKIKO氏を排除するという内部闘争を繰り広げていた人物……。その一方、東京五輪を開催しようというのなら、何よりも機運を高めるために全力を傾けるべきだったコロナ対策は、置き去りにされてきたのだ。「アスリートの頑張りを踏みにじるつもりか」と批判する者は、その頑張りをふいにしようとしている組織委と日本政府にこそ、真っ先にその批判をぶつけるべきではないか。
いや、これはアスリートに対してだけではないだろう。組織委と日本政府は「安全な大会運営を実施する」と言うばかりで、具体的かつ納得感のあるコロナ対策をいまだに市民に対して説明をおこなっていない。そんななかで五輪を強行しようというのは、あきらかに人命軽視だ。そして、人命は東京五輪の開催と天秤にかけるようなものではなく、人命を優先するならば開催に反対せざるを得ないのは当然だ。そうした現状を無視して「五輪反対派と池江選手にもそう言えるのか」という者たちもまた、組織委と同じように池江選手を利用しているのと同じではないか。
しかし、池江選手の活躍を持ち出して五輪開催の強行を正当化しようとする動きは、間違いなく今後、どんどん大きくなっていくだろう。実際、東京五輪の開催を「人類が打ち勝った証」と最初に言い出した安倍晋三・前首相は、〈池江選手、本当におめでとうございます〉〈白血病から復帰し、オリンピックの代表へ。ここまで重ねてこられた努力は本当に並大抵のものではなかったと思います〉とねぎらい、〈そして、いよいよ夢の舞台。感動と勇気をありがとう。オリンピックでのご活躍を祈念しています〉とツイート。さっそく池江選手の感動的な活躍をもって五輪開催に弾みをつけようとし、さらに恐ろしいことに安倍応援団は〈安倍元総理も体調復活され、また総理に復帰してください〉などと言い出している。
はっきりと言っておこう。池江選手が与えてくれた感動と、五輪の開催はまったく別の問題だ。やるべきこともやらず、アスリートや市民の安全を軽んじてきた組織委と日本政府に、五輪を開催する資格などない。五輪は中止すべきだ。
(編集部)
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