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尖閣周辺でアメリカと中国が激突すればアメリカが敗れる 日本外交と政治の正体
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/286994
2021/03/26 日刊ゲンダイ ※後段、文字起こし
北京の人民大会堂で周恩来・中国首相(左)と杯を酌み交わす田中角栄首相=1972年9月28日(C)UPI=共同
米国のブリンケン国務長官が中国の海洋進出などに対し、「無責任な行動は容認できない」と明言した。中国海警局の船舶による領海侵入が日常化している尖閣諸島についても、「日本と共にある」と語った。
日本の多くの国民は、「やはり米国は頼りになる」とほっとしているだろう。しかし、日本国民が気付いていない点がある。それは仮に尖閣周辺で米中両国が戦えば、米国が負ける状況にあることだ。
第1期クリントン政権の政策担当国防次官補で、ハーバード大学ケネディ行政大学院の初代院長、グレアム・アリソン氏は昨年3月の「フォーリン・アフェアーズ」誌で、<「台湾海峡の軍事シナリオで中国が軍事的に先んじている可能性もある」とし、米国国防総省がウォーゲーム後、「中国と戦争すればコテンパンにやられる」〉という国防総省高官の言葉を引用。<ニューヨーク・タイムズが伝えたように、台湾海峡有事を想定した18のウォーゲームの全てでアメリカは敗れている>と書いていた。
台湾海峡周辺(尖閣もこの範囲に入る)で米中が戦った時、米国が中国に敗れるという想定は、米国で最も権威ある軍事研究所「ランド研究所」が2015年にも指摘している。
その論拠の主たるものは、@中国は日本の米軍基地を攻撃しうる1200発のSRBM(短距離弾道ミサイル)と中距離弾道ミサイル、巡航ミサイルを有しているA米軍基地の滑走路が壊されれば戦闘機は飛び立てない――というものだった。
日本の防衛省は当時、この報告書を読んで驚愕したというが、それはそうだろう。「日本は米国に守られている」という基本認識が根底から崩されてしまうからだ。そのため、国内不安を招きかねないとして防衛省は沈黙を貫いた。
第2次世界大戦時、飛行機が発達し、軍艦は標的にされるだけの存在となった。しかし、日本軍は戦艦大和を出航させ、結局、鹿児島県の坊ノ岬沖で蜂の巣のように爆撃されて撃沈された。
ミサイルが発達した今日、ロシアや中国の攻撃を防ぐ手段はない。我々は真剣に外交的手段でいかに国を守るかを考える時にきている。それは言い換えれば、米国追随で国は守れないということだ。そして、田中角栄・周恩来会談での尖閣問題棚上げ合意(日本の管轄権を認める)が日本にとって最も現実的で有利なものであることを再認識するべきだ。
孫崎享 外交評論家
1943年、旧満州生まれ。東大法学部在学中に外務公務員上級職甲種試験(外交官採用試験)に合格。66年外務省入省。英国や米国、ソ連、イラク勤務などを経て、国際情報局長、駐イラン大使、防衛大教授を歴任。93年、「日本外交 現場からの証言――握手と微笑とイエスでいいか」で山本七平賞を受賞。「日米同盟の正体」「戦後史の正体」「小説外務省―尖閣問題の正体」など著書多数。
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