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与党と官僚の正しい関係 官僚は与党の「下僕」ではない ここがおかしい 小林節が斬る!
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/286274
2021/03/11 日刊ゲンダイ
菅首相は、「大臣に従わない官僚は左遷する」旨を公言してはばからない。その根拠は、国民主権国家において選挙で選ばれた議員の多数派の民主的正統性である。
つまり、民意に支持された政権与党こそが政策を決定すべきで、官僚はそれを忠実に補佐すべきだ……という考えで、単純明快である。
しかし、これはいささか雑に過ぎる。
選挙で選ばれた議員たちに民主的正統性があることは否定し難い。しかし、それはいわば人気投票の結果で、そこに人材の「質」の保証はない。政治は主権者国民大衆の幸福を増進する業であるが、そこにおいて政策の質が最も重要であることは言をまたない。
そして、その政治の「質」を担保する仕組みが官僚制度である。官僚は、専門分野別に編成されて高度に訓練された人材集団で、彼らは、憲法以下の法令に精通しており、それぞれの担当分野に関する全ての先例と最新の学識を体系的に管理している。つまり、官僚機構はわが国における最高のthink tankである。
政治家が、建前は「全国民の福利の向上」であっても、実際には自派の支持者のみ有利(つまりその他の人々には不利)な政策を提案することはめずらしくもない。
だから、政策を形成する過程で、官僚は、憲法以下の現行法令との整合性、社会的環境の変化等の基本情報を提供して、政策の質の確保に寄与する役割を担っている。つまり、官僚は時に政治家の耳に痛い話もしなければならない役回りなのである。
加えて、政策案が法律と予算に結実した後は、官僚はそれを法令に従って公平に執行する責任を負っている。それが、憲法が保障している法治国家であり法の下の平等である。
にもかかわらず、安倍政権以来、与党の側が、与党の意向に苦言を呈す官僚を排して、与党に阿る官僚を露骨に重用したために、政権と官僚の有意義な関係が壊れてしまった。その結果がモリ・カケ・サクラ・東北新社疑獄である。
小林節 慶応大名誉教授
1949年生まれ。都立新宿高を経て慶大法学部卒。法学博士、弁護士。米ハーバード大法科大学院のロ客員研究員などを経て慶大教授。現在は名誉教授。「朝まで生テレビ!」などに出演。憲法、英米法の論客として知られる。14年の安保関連法制の国会審議の際、衆院憲法調査査会で「集団的自衛権の行使は違憲」と発言し、その後の国民的な反対運動の象徴的存在となる。「白熱講義! 日本国憲法改正」など著書多数。新著は竹田恒泰氏との共著「憲法の真髄」(ベスト新著)
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