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総裁選前に値下げ情報入手か?NTT総務省接待で浮上した菅首相への疑念
https://www.mag2.com/p/news/489188
2021.03.09 石川 温『石川温の「スマホ業界新聞」』 まぐまぐニュース
週刊文春が報じた、NTTによる総務省幹部への接待問題。谷脇総務審議官が事実上の更迭処分となりましたが、野党及びマスコミは追求の手を緩めるつもりはないようです。今回のメルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』では著者でケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川温さんが、通信業界関係者の間で囁かれていた、NTTと官邸との間を疑う「とある噂」を紹介。さらに当案件が大スキャンダルに発展する可能性も示唆しています。
NTTと総務省幹部による会食報道の波紋――携帯料金値下げ政策に影響を及ぼしていないのか
週刊文春が山田真貴子前内閣広報官と谷脇康彦総務審議官がNTTと会食をしていたと報じた。すでにNTT、谷脇氏ともに事実を認めている。
会食はNTTがNTTドコモを完全子会社化しようしていた時期と重なる。
もうひとつ、疑念の目を向けざるを得ないのが、値下げ競争政策から誕生したNTTドコモの新料金プラン「ahamo」だ。
ahamoは、NTTドコモ社内では昨年1月頃より、今年3月の開始に向けて企画がスタートしたと言われている。
一方、昨年9月に菅政権が発足するのだが、菅氏は総裁選に立候補する段階で「携帯電話料金の値下げ」を政策にすると掲げていた。
ひょっとすると、総裁選の前から、NTTドコモが安価な料金設定をすることを7月の接待に参加した谷脇審議官経由で、菅総理は知っていたのではないか。
NTTドコモが値下げすることをわかった上で、携帯電話料金の値下げを菅総理が重要政策として掲げていたならば、NTTと総務省による壮大な出来レースだった可能性も出てきた。
通信業界関係者の間では、昨年から「NTTドコモの完全子会社化とahamoの投入は、NTTと官邸との交換条件だったのではないか」とささやかれていた。
グループ再編を実行し、国際競争力をつけて、世界に進出したいNTTが、菅総理の携帯料金値下げの政策を実現する代わりに、総務省にNTTグループの独占回帰を認めさせたのではないかというわけだ。
まさに昨年7月から9月にかけての密談は、官邸とNTTにとって渡りに船だったことになる。
そもそも、菅総理が携帯料金について「4割値下げできる余地がある」と発言したのは官房長官であった2018年8月のことである。
谷脇氏が総合通信基盤局長に就任したのは2018年7月であり、週刊文春によれば、2018年9月にもNTT最高幹部と谷脇氏が会食しているとしている。
すでにNTTと総務省で、料金値下げ向けた密約が、この段階で交わされていた可能性もある。
NTTと総務省は会食の場でどんな話をしていたのか。武田良太総務大臣が、やたらとKDDIに対して高圧的な発言をしていたのは、背後でNTTが入れ知恵をしていたのではないか。NTTと総務省の関係が明るみになったことで、いろんな疑念が浮かぶようになってしまった。
総務省とNTTの会食によってNTTドコモが値下げをリードし、ソフトバンクとKDDIを値下げ競争に巻き込みつつ、MVNO市場を潰すようなことにつながれば、それこそ大スキャンダルに発展する。
谷脇氏にとって長年の悲願であった携帯電話料金の値下げが実現される直前で、谷脇氏は自ら泥を塗ってしまったようだ。
総務省・携帯電話ポータルサイトは職員の手作り――アクションプラン「接続料値下げ」は前倒しで達成
3月5日、一般社団法人テレコムサービス協会MVNO委員会による「モバイルフォーラム2021」がオンラインで開催された。
基調講演に総務省総合通信基盤局電気通信事業部長の今川拓郎氏、パネルディスカッションには総務省総合通信基盤局電気通信事業部料金サービス課企画官の大内康次氏が登壇。昨今の競争政策についての取り組みが語られた。
そもそも、総務省として日本の携帯電話料金はどうみているのか。今川氏は「国際的に見て、日本の携帯電話料金が高いという状況ではない。ただ、大容量プランでは欧州の安い料金に対抗できるプランがない状況」とした。小容量プランにおいてはMVNOという選択肢があるが、20GBプラン以上においてはキャリアしか選べないのが問題視されたようだ。
12月以降、3キャリアが相次いで3,000円以下のオンライン専用プランを出した。MVNOからは「採算割れしていないのか、スタックテストを実施すべき」という意見が出された。そこで、総務省が調べたところ「ahamo、povo、LINEについては内部で採算性を確認したが、赤字ではないが、各社、ギリギリのところを攻めている」(大内氏)とのことだった。
2月の段階で赤字スレスレということを考えると、果たして、3月1日に2,980円の1割弱に当たる280円の値下げをしたahamoは大丈夫なのか気になるところだ。また、500円の1回5分までのかけ放題オプションを1年間、無料にするというキャンペーンを仕掛けてきたLINEMOは、やはり採算ギリギリということで、値下げではなくキャンペーンで乗り切ろうとしたのか、など想像は膨らむばかりだ。
3キャリアがオンライン専用プランを出したことで、接続料の算定にも影響を及ぼし、「3年間で接続料を半減させるというアクションプランの目標は1年前倒しで実現する見通し」(今川氏)という。
MVNO各社は、3キャリアのオンライン専用プランを受けて、さらなる値下げプランを投入。経営的にさらに厳しい状況に追い込まれる可能性があったが、接続料が半減される目処が立ったこともあり、なんとか首の皮一枚、つながった感がある。
昨年、アクションプランにも掲げられていた総務省による乗り換えを促すポータルサイトについて、今川氏は「携帯電話ポータルサイトは総務省職員の手作り。センスがいまいちと思われるかも知れないが、これから洗練されたデザインにしていく」としていた。
現場レベルでは、地道に競争政策を進め、成果が出始めようとしている中、幹部の不祥事によって、総務省全体が疑念の目で見られてしまうのは、なんとも不憫でならない。
image by: 首相官邸
石川 温 この著者の記事一覧
日経トレンディ編集記者として、ケータイやホテル、クルマ、ヒット商品を取材。2003年に独立後、ケータイ業界を中心に執筆活動を行う。日経新聞電子版にて「モバイルの達人」を連載中。日進月歩のケータイの世界だが、このメルマガ一誌に情報はすべて入っている。
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