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※2021年2月19日 日刊ゲンダイ38面 紙面クリック拡大
「橋本聖子会長」誕生で露呈…組織委理事会は単なるお飾り
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/sports/285431
2021/02/19 日刊ゲンダイ
会長は「父」から「娘」へ(森喜朗前会長と橋本聖子新会長)/(C)共同通信社
波乱なく、あっという間に承認された。
18日、橋本聖子五輪相(56)の会長就任を正式決定した東京五輪・パラリンピック組織委員会は、同日の正午すぎに理事会を開催。候補者検討委員会によって推薦された「橋本案」を1時間足らずの会議で認めると、それを受けての動きも早かった。午後2時すぎに開いた臨時評議員会で、橋本氏を会長就任の前提となる理事に選任。わずか20分の早業で、午後4時すぎに始まった2回目の理事会はたった数分で「橋本理事」の会長就任を正式決定した。
女性蔑視発言で辞任した森喜朗前組織委会長の後任を巡っては、「政府の介入」「密室人事」と批判が噴出した。橋本氏は世界からNOを突き付けられた森前会長の「娘」を自任。院政の懸念も指摘されているにもかかわらず、理事会も評議員会も紛糾することなく終了。「全会一致」で混迷の幕を引いた。
【東京大会組織委員会理事】の一覧(C)日刊ゲンダイ
3兆円の開催費用を切り盛り
組織委は五輪開催の準備・運営を監督する公益財団法人。3500人超の職員を抱え、会場の整備や大会スケジュール、スポンサー集め、チケット販売、感染症対策などを担う。五輪という一大国家プロジェクトの成否に関わる組織だ。
「3兆円とも4兆円ともいわれる巨額の五輪開催費用を切り盛りする役目を担っているにもかかわらず、その理事会がまったく機能していない。今回の一連の騒動で、いよいよそれを露呈してしまいました」
と、国士舘大非常勤講師でスポーツライターの津田俊樹氏が続ける。
「会長人事がこれだけ社会的関心事になっていながら、候補者検討委員会が推薦した橋本会長就任人事を追認しただけ。その候補者検討委員会の発足すら理事会には事前の了解がなかった。会長候補の推薦にしても、普通は少なくともAとBの複数候補が挙げられ、それを理事会で検討し、候補者を絞り込むという経緯があってしかるべきでしょう。橋本さんに一本化されたことに理事会から不満や批判が出て当然なのに、会議が紛糾したという話は聞こえてこない。『組織委員会の理事はお飾り』と言われても反論できません。森会長時代は完全なトップダウンで理事会での発言が許される雰囲気になかったと言われますが、その森会長が辞任した今回、組織委や理事会が正常な機能を取り戻すいい機会とすべきだったのに、これではそれを放棄したも同然です。トップが代わっても問題山積です」
そもそも、35人の理事の顔触れを見ても、どういう基準で選出されたのかさっぱり分からない、という名前もある。その責任の重さを考えれば、単なる名誉職、で片づけるわけにはいかない。
東京五輪「数々の嘘」にまた一つ…新会長選びも“完全密室”
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/sports/285435
2021/02/19 日刊ゲンダイ
18日、東京五輪・パラリンピック組織委の新会長に就任し、記者会見する橋本聖子氏(C)共同通信社
森前会長の「川淵指名」が白紙となった新会長選び。「透明性の高いプロセス」が求められたが、16日からの候補者検討委員会は「完全密室」で行われ、18日の理事会は検討委員会が決めた「橋本聖子」にお墨付きを与えただけ。「透明性」が聞いて呆れる、出来レースのにおいがプンプンである。
「東京は理想的な天候」
そもそも今回の東京五輪は、招致段階からインチキの積み重ねだった。立候補ファイルには、「(東京は)晴れる日が多く、かつ温暖であるため、アスリートが最高の状態でパフォーマンスを発揮できる理想的な気候である」と明記されているが、昨今の東京は「災害的」「殺人的」な酷暑である。
「福島の状況はコントロール下にある」
招致の最終プレゼンでは当時の安倍首相が、「福島の状況はコントロール下にある」とも述べた。実際には、汚染水は港湾外にダダ漏れで「汚染水の影響は港湾内0.3平方キロメートルの範囲内で完全にブロックされている」というのも大嘘だった。そして安倍、菅の両首相に組織委員会も、「復興五輪」を世界にアピールし続けてきた。
東日本大震災の津波で大被害を受けた岩手県陸前高田市出身の菅野徳雄氏(評論家)が「冗談じゃありませんよ」とこう語る。
「安倍総理の言葉もそうだが、大震災や原発事故からの復興を五輪に利用することにも、多くの被災者は怒っています。私の故郷は生まれ育った頃の面影はまったくない。たまに田舎に帰っても、どこがどうだったか見当もつきません。あれから10年です。復興が遅れ、地元民の多くは花巻や盛岡に引っ越した。福島には原発事故で故郷を失った人も多い。そんな人たちにとって復興五輪なんてとんでもない話です」
「コンパクト五輪」
嘘っぱちといえば、選手村から半径8キロ圏内に競技場の85%を配置する「コンパクト五輪」は早々に消えてしまい、当初は約7340億円だった大会経費も、2019年12月に会計検査院が公表した調査報告書と試算によれば、3兆円超になることがわかった。コロナ禍がなくてもコレである。
コロナで全世界から不信感
昨年3月24日、コロナで五輪の1年延期が決定すると、東京都の感染者が急増。ネット上では国や東京都への「不信感」が飛び交った。日本オリンピック委員会(JOC)の竹田恒和前会長は、招致に絡む贈賄容疑でフランス当局の捜査の対象になった。
◇ ◇ ◇
そして、密室で誕生した橋本新会長は、森前会長の秘蔵っ子で、彼女を強く推したのは菅首相と森前会長と昵懇の御手洗冨士夫組織委名誉会長(85)といわれている。
今回の人事は「嘘まみれ五輪」の極め付きではないか。
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