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※2021年2月18日 日刊ゲンダイ1面 紙面クリック拡大
※2021年2月18日 日刊ゲンダイ2面
【国民にオーストラリアのような覚悟があるのか】
— 笑い茸 (@gnXrZU3AtDTzsZo) February 18, 2021
五輪強行ならば自民は衆院選惨敗
日刊ゲンダイ pic.twitter.com/6UHeOPEcDo
※文字起こし
つくづく、よくもまあ「五輪ホスト国」などと言えたものだ。女性蔑視発言の責任を取って辞意を表明した東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長(83)の後任選び。組織委は17日、候補者検討委の第2回会合を東京都内で開催。スッタモンダの末、事前の予想通り、橋本聖子五輪担当相(56)に一本化する方向で調整に入ることが決まったのだが、これまでの後任人事をめぐる迷走と混乱を見ていると、とてもじゃないが、「五輪ホスト国」の組織委トップを選んでいたとは思えない。
「透明性」とは程遠い非公開の検討委会合は論外として、国民が強い違和感を覚えていたのは、後任会長について「女性ありき」の空気が政府や組織委に広がっていたことだ。候補者検討委は「五輪・パラリンピックやスポーツへの造詣」や「男女平等や多様性」など、5つの観点を踏まえて会長を選出する――としていたにもかかわらず、関係者やメディアから挙がる名前は、橋本やソウル五輪銅メダリストの小谷実可子氏(54)、シドニー五輪金メダリストの高橋尚子氏(48)など、スポーツや実業界で実績がある女性ばかりだった。
菅首相も「若い人か女性がいい」と発言していたとされるが、政府、組織委が「女性起用」に前のめりになっていたのは、女性蔑視発言でダウンした東京五輪のイメージを早く回復したいという安易な思惑に他ならない。
コロナ禍のお祭り五輪を誰が歓迎するのか
だが、組織委の会長人事は本来、組織運営力など必要な資質を備えているかを客観的かつ冷静に見極めて決めるべきなのは言うまでもない。町内会の会長を選んでいるワケではないのだ。
今回のように「結論ありき」で突き進めば、タダでさえ国民の6〜8割が「延期」や「中止」を求めている東京五輪に対するイメージが、ますます低下するのは間違いない。まさに1億総ドッチラケ状態に陥るわけだが、それでも東京五輪の開催を強行しようとしているのが菅政権だ。
17日の衆院予算委でも、五輪開催について答弁を求められた茂木外相は「紀元前8世紀、古代ギリシャで大きな疫病がはやり、災害が起こる中で、聖地オリンピアの領有をめぐるポリス同士の争いをやめるところから古代オリンピックが始まった」などと持論を展開。続けて、「第1回の古代オリンピックを開催した都市国家エリスはオリンピック後に疫病を乗り越えることができたと伝えられている」などと得意げに語っていた。
茂木は「新型コロナに人類が打ち勝った証し」などと寝言を言って五輪開催に固執している菅を後押ししようと思ったのだろうが、このコロナ禍の中で何をのんきなことを言っているのか。「切り札」のワクチン接種だって、ようやく、17日から始まったばかりなのだ。
経済ジャーナリストの荻原博子氏がこう言う。
「高齢者のワクチン接種さえ4月からで、一般国民はいつ接種が始まるのかも分からない。それなのに五輪だけは何が何でも開催するという。新型コロナによって世界中で多くの人が亡くなっている中、お祭りと言ってもいい五輪開催を誰が歓迎するのでしょうか。もともと世論とズレているのが菅政権ですが、五輪強行もズレまくっているとしか思えません」
五輪にすがる菅政権はすでに終わりが始まっている |
「新型コロナウイルスの発生から1年以上経った。わが国でも世界でも、なおウイルスとの闘いは続いている。私も日々悩み、考えながら走っている」
緊急事態宣言の延長を公表した会見で、菅は悲壮感を漂わせ、こう訴えていたが、そうであれば、これまでのコロナ対策を検証し、感染封じ込めに成功しているオーストラリアなどを参考に収束のために必要な具体策を打ち出すべきだろう。
開催中のテニスの全豪オープンでは、メルボルン入りしたチャーター機に同乗していた乗客からコロナの陽性者が見つかったとして、選手ら70人以上が2週間にわたってホテルに隔離されたが、オーストラリアの感染対策は、日本とは比較にならないほど徹底していた。
例えばクイーンズランド州の「コロナ関連規制」を見ても、密集を避けるための基準として「屋内では4平方メートル当たり1人」「屋外では2平方メートル当たり1人」などと細かく決められ、「飲食は着席のみ可能」「公共の場所でのマスク着用の義務化」など強力な措置が取られた。つまり、これでもかというぐらい厳格な対策を徹底しなければコロナに「打ち勝つ」ことは不可能で、果たして今の日本国民一人一人がオーストラリアのような厳しい制限を課せられる覚悟があるのかといえば、難しいと言わざるを得ないだろう。
都や政府には五輪を開催する資格がない
5月に地元で予定されている聖火リレーの中止を検討していることを会見で明らかにした島根県の丸山達也知事は、東京都や政府のコロナ対応を批判。「(コロナの)現状が改善されない限りは開催すべきでない」「開いてもらっては困る。資格がない」とまで言っていたが、これが多くの国民が抱いている本音ではないのか。
それなのに菅政権は一切聞く耳を持たず、何が何でも「やる」というかたくなな姿勢を貫いている。五輪を強行し、国民が高揚感に包まれているうちに総選挙を行いたいと考えているからだろう。
自分勝手な政治的野望のために開催したいという邪な五輪だから、コロナ禍であろうが、ワクチン接種が進まない状況であろうが突き進む。度重なる不祥事や醜聞が出るたびに取り繕い、無理の連鎖でつじつま合わせしてきたのも、選挙に勝ちたいという私利私欲のためなのだ。
しかし、国民だってバカじゃない。このまま東京五輪を強行すれば、コロナの感染拡大を助長しかねないことは子供でも分かる。菅が好き勝手に思い描くような「自民圧勝」のシナリオを許すはずがないではないか。
開催すれば封じ込めに大失敗しているコロナと同様、選挙結果でも強烈なしっぺ返しを食らうのは避けられないだろう。
政治評論家の小林吉弥氏がこう言う。
「支持率が急落した菅政権には、もはや東京五輪しか政権浮揚策がない。だから組織委の新会長を早く決めたい。ワクチン接種の開始も急がせた。しかし、国内情勢はともかく、世界は五輪どころではありません。菅首相は五輪さえ開けば何とかなると思っているようだが、すでに国民の多くが開催反対なのです。このまま突き進むほど世論は反発し、仮に開催、選挙となっても菅政権の思惑通りにはいかないでしょう」
すでに菅自民党は終わりが始まっているのだ。
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