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「川淵会長」案は「森院政」発言と「あの疑惑」で吹っ飛んだ
https://www.news-postseven.com/archives/20210212_1635597.html?DETAIL
2021.02.12 20:15 NEWSポストセブン
密室談合で後継を決めようということ自体、反省の色は見えない(森氏と川淵氏=共同)
「東京五輪のドン」である森喜朗氏の女性蔑視発言から始まった五輪組織委員会の後任会長選びは、森氏が後継指名した川淵三郎・元日本サッカー協会会長の就任が突然、白紙撤回された。何があったのか。
「森さんは後任選びで目立ちすぎたし、川淵さんはしゃべりすぎた。これじゃ森院政のイメージが強くなりすぎて世論の批判をかわせないから、官邸から“待った”がかかった」(組織委関係者)
菅義偉・首相は森氏の失言を国会で追及されると、「私が判断する問題ではない」「(組織委は)独立した組織だ」と逃げ回ったが、自らが矢面に立ちたくないだけなのは誰が見ても明らかだった。ある自民党幹部は、後任会長人事をめぐっては、森氏と菅義偉・首相の間には最初から亀裂があったと語る。
「総理としては、国際的批判に答えるためには後任は女性会長が望ましいという意向を森さんに伝えた。しかし、森さんは耳を貸さなかった」
このままでは“わきまえない”女性会長が選ばれかねないと焦ったのか、辞任を覚悟してからの森氏の動きは早かった。正式な辞任表明の前日(2月11日)に、川淵氏と会談して会長就任を要請すると、川淵氏は記者団に「残る人生のベストを尽くしたい」と就任受諾の意向を表明、2人だけでさっさと後継のレールを敷いた。川淵氏は組織委員会評議員で選手村村長を務めている。森氏と近い“五輪ムラ”の住人に会長ポストを禅譲しようとしたのだ。
森氏は、2000年に小渕恵三・首相の急死で首相に就任する際、自民党内の正式な手続きを踏まずに、党実力者たちの「密室の談合」で選ばれたと批判され続けたが、組織委員会の後任選びも「密室」で決めようとした。しかし、その川淵氏がしゃべりすぎた。
まだ組織委から正式なオファーもないのに、「自分が(会長を)受けるならば、森さんには相談役でサポートしてほしいとお願いした」と、会談で森氏の延命まで相談していたことを記者団にペラペラと明かしてしまった。
そもそも川淵氏はツイッターで「無観客は開催の意味がない」(1月13日)と発言するなど、「無観客開催」を視野に入れているバッハIOC会長とは意見の違いがあり、IOCとの交渉力が問題視されていたが、「森院政」発言が致命傷になった。
翌12日朝、橋本聖子・五輪相が閣議後会見で、川淵氏の就任について「全く決まっていない」「何ら決定していない」と強調。「多くの皆さんの意見を聞きながら決定されていくという、どの公益財団法人にもあるような正式な手続きを踏まれていくことが望ましい」と、川淵後継に難色を示した。
「総理は森さんが後継指名したのでは世論が納得しないと判断した。川淵後継案を白紙に戻し、森さんに一度は蹴られた女性会長を軸にした選考のやり直しを指示した」(官邸スタッフ)
もうひとつ、官邸の「身体検査」で問題視されたという見方もある。
裏で手を回して会長人事を操ろうとする菅首相もまた「密室談合」が大好きな同じ穴のムジナ(時事)
「川淵氏が東京五輪の顔になることで、“あの疑惑”が噴出するのではないかという懸念が官邸にはあったのではないか」
そう指摘するのが自民党の元国会議員だ。
「日本では大手新聞が五輪スポンサーになっているため、あまり報道も出なかったが、海外では東京誘致に裏金が使われたとさんざん報じられている。この問題は、国内では日本オリンピック委員会の竹田恒和・会長が2019年に辞任して幕引きしているが、このスキャンダルに怒ったのが宮内庁だった」
宮内庁とは意外なキャストだ。どういうことか。
「東京開催は、滝川クリステルの『お・も・て・な・し』で注目された2013年の国際オリンピック委員会総会で決まったが、実は決め手になったのは高円宮妃 久子さまのスピーチだった。当時、オリンピック招致は政治色を伴うので皇族は関わらせたくないというのが宮内庁の考えだったが、安倍内閣と東京都が押し切ってサプライズで登場してもらった経緯がある。久子さまは流暢なフランス語と英語で委員たちの心をつかみ、貢献は大きかったが、その裏で不正なカネを出していたということなら、皇室に泥をかぶせたことにもなりかねない」(同前)
川淵氏といえば、久子妃とことのほか親しいことで知られる。2006年には、川淵氏の誕生日を祝したゴルフコンペに久子妃が参加し、コンペ後のパーティーではマリリン・モンローに扮して妖艶なダンスを披露し、川淵氏に「ハッピー・バースデー・トゥ・ユー」の歌をプレゼントしたこともある。これは、マリリン・モンローがケネディ大統領の誕生日にセクシーに歌った逸話を模した演出と思われるが、モンローはケネディ大統領の愛人だったと言われる関係だけに、この誕生会ダンスに「サービス過剰だ」との声も上がった。
川淵氏が組織委会長に就けば、久子妃との関係が想起される。すると、東京誘致の経緯と裏金疑惑が蒸し返される、というのが一部の与党関係者の心配なのだという。
森氏は政治家としても失言・暴言の常習犯だったが、川淵氏もまた言動が物議をかもし、毀誉褒貶が激しいことで知られる。これ以上、五輪問題でリスクを取りたくない官邸にとって、「相談役」発言や「院政批判」は川淵氏を切る格好の口実になったのかもしれない。
だからといって、それは官邸が森院政を排除することにはならない。森氏の後任には橋本聖子・五輪相の名前も挙がっているが、橋本氏は森氏が現職議員時代からのお気に入りで、やはり五輪ムラの住人だ。もし官邸が「女性でありさえすればいい」と考えているなら、それこそが女性蔑視ではないか。
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