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有馬キャスター降板だけじゃない! NHKが世論調査でも政権忖度 東京五輪「延期」の選択肢を削除、開催をめぐる討論番組も急遽中止に
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2021.02.10 有馬キャスター降板だけじゃない! NHKが世論調査でも政権忖度 リテラ
NHK公式ホームページより
菅義偉首相に日本学術会議問題について食い下がって質問をおこない、官邸から睨まれたNHKの看板報道番組『ニュースウオッチ9』の有馬嘉男キャスターが、今年3月末に降板することが本日、NHKから正式に発表された。後任には元ワシントン支局長の田中正良記者が就任するという。
有馬キャスターは昨年10月26日放送の『ニュースウオッチ9』に菅首相が生出演した際、日本学術会議の任命拒否問題について「総理自身、説明される必要があるんじゃないですか?」などと質問。これに対して、菅首相は「説明できることとできないことってあるんじゃないでしょうか」と逆ギレしたのだが、その後、NHKの原聖樹政治部長に山田真貴子内閣広報官が電話をし「総理、怒っていますよ」「あんなに突っ込むなんて、事前の打ち合わせと違う。どうかと思います」と恫喝をかけたと報じられた。さらに、菅内閣の坂井学官房副長官が「NHKはガバナンスが利いてない」「NHK 執行部が裏切った」などとNHKを攻撃していたことも明らかになっている。
こうしたことから、有馬キャスターが降板させられてしまうのではないかと昨年から囁かれてきたわけだが、まさか、キャスター人事に注目が集まるなかでNHKはほんとうに降板させてしまったのだ。これではNHKが「圧力に屈した」「官邸に忖度した」と認めたも同然だ。
だが、NHKの菅官邸への屈服・平伏ぶりがわかるのは、有馬キャスターの降板問題だけではない。
NHKは2月8日に2月の世論調査の結果を公表したが、そこで菅政権に気を遣ったとしか思えない、恣意的な情報操作がおこなわれたからだ。
NHKの世論調査では、これまで東京五輪の開催の是非について「開催すべき」「中止すべき」「さらに延期すべき」の3つから1つを選んでもらうかたちで調査をおこなってきた。この質問は昨年10月分と12月分、今年1月とつづけてきたものだ(昨年11月の世論調査では東京五輪についての質問はなし)。その結果、1月には「開催すべき」が16%、「中止すべき」が38%、「さらに延期すべき」が39%で、NHKは“「中止すべき」と「さらに延期すべき」をあわせると77%になった”と伝えていた。
ところが、2月5〜7日に実施された世論調査では、これまでの「東京オリンピック・パラリンピックの開催についてどう思いますか」という質問から、「IOC=国際オリンピック委員会などは、開催を前提に準備を進めています。あなたは、どのような形で開催すべきだと思いますか」という質問に変更。つまり、「開催ありき」の質問になったのだ。
しかも、用意された選択肢は「これまでと同様に行う」「観客の数を制限して行う」「無観客で行う」「中止する」という4択。「さらに延期すべき」という選択肢が消えたのだ。
その結果、「これまでと同様に行う」が3%、「観客の数を制限して行う」が29%、「無観客で行う」が23%、「中止する」が38%となり、一見すると、まるで半数以上の55%が開催すべきと考えているかのような印象を与えるものとなったのだ。
この質問の変更は、不自然かつ明らかにおかしなものだ。実際、このNHKと同期間に世論調査をおこなった読売新聞の質問は、「今年夏の東京オリンピック・パラリンピックは、どうするのがよいと思いますか」というもので、その選択肢と回答の割合は「観客を入れて開催する」(8%)「観客を入れずに開催する」(28%)「再び延期する」(33%)「中止する」(28%)だった。読売はこの結果について〈計36%が開催に前向き〉と伝え、中止と再延期を合わせれば61%と半数を超えることはネグっていたが、それでも「再延期」を選択肢に含めていた。
さらに、同時期の2月6・7日に調査をおこなった共同通信の場合は、「開催形式」と「開催の是非」を分けて質問。開催形式についての質問の選択肢と回答の割合は「観客数制限」(49.6%)「無観客」(43.1%)「通常通り」(3.4%)で、開催の是非のほうは「中止するべきだ」(35.2%)「再延期するべきだ」(47.1%)「開催するべきだ」(14.5%)となっている。
開催形式について訊くとしても、共同通信のように開催の是非とは分けて調査をおこなうべきなのは言うまでもないが、しかし、NHKはなぜか開催の是非について尋ねず、新たに開催形式についての質問をおこなったのである。「中止すべき」「再延期すべき」という声は日に日に大きくなりつつあるというのに、質問と選択肢から消えるというのは、どう考えても恣意的な変更だとしか思えないだろう。
■森喜朗が五輪世論調査に逆ギレ、NHKは五輪開催をめぐる討論番組も急遽中止に!
しかも、同時期に世論調査をおこなった読売と共同通信は、東京五輪開催組織委員会の森喜朗会長による性差別発言の受け止めについても質問をおこなっており、読売では「大いに問題がある」が63%、「多少は問題がある」が28%となり、「森喜朗氏の発言「問題」91%」と見出しに立てて報道。共同通信も、会長として「適任とは思わない」という回答が59.9%に上ったとした。だが、NHKの世論調査では、森発言についての質問はなかった。
このタイミングで五輪開催の是非を問う質問をなくし、国際的な問題となっている森発言についても質問しない──。これはようするに、東京五輪を強行開催したい菅政権の顔色を伺ったNHKが、「不都合な質問」をなくしたということだろう。
実際、「中止」「再延期」が合わせて77%に達したNHKによる1月の世論調査をめぐっては、内閣支持率などの結果は同月12日の夜のニュースで伝えながら、五輪開催の是非や安倍晋三・前首相の「桜を見る会」問題についての質問とその結果については翌13日の早朝ニュースで伝えたことから、「NHKは政権に忖度して視聴者の多い夜の報道を避けたのではないか」という指摘が起こっていた。
しかも、このNHKの1月調査は同月9日〜11日におこなわれ、12日に第一報が報じられる前から政界関係者にはその結果が伝わっていたと言われているが、その12日におこなわれた五輪組織委の年頭挨拶で、森喜朗会長は「なぜあえてこういう『五輪をやるべきか』『延期すべきか』『中止すべきか』という世論調査をするのか」「私には疑問がある」などと世論調査に「クレーム」をつけていた。世論調査のなかでもとりわけNHKの世論調査は国内外に影響力があり、菅首相も最重要視していると伝えられているが、森会長はそのNHKの世論調査の結果を知っており、わざわざ言及してクレームを付けたのではないかと見られているのだ。
そして、この世論調査がさらに波紋を広げ、重大な問題が起こる。「デイリー新潮」によると、1月のNHK世論調査の結果を受け、ニューヨーク・タイムズ電子版が1月15日に“80%近くが五輪の再延期か中止だと考えている”と伝えたことにより、「森会長や官邸幹部が激怒」。そして、NHKは1月24日にNHKスペシャルで放送予定だった『令和未来会議 どうする?東京オリンピック・パラリンピック』という討論番組を、同月17日に急遽中止したというのだ。
世論の動向を知らせるための正当な調査とその回答に対してまで文句をつけること自体が報道への介入であり、断じて許される問題ではないが、官邸や森会長の逆鱗に触れた当のNHKも忖度して番組を中止してしまうとは。しかも、NHKは問題だと槍玉に挙げられた世論調査の質問自体を変えてしまったのだ。
■『クロ現』かんぽ報道に不当介入した経営委員が再任、介入議事録はいまだ非公開
このように、官邸からのクレームを恐れ、視聴者を裏切る行為に手を染めるNHKの姿勢を見れば、菅首相に当然の質問をおこなっただけの有馬キャスターをNHKが降板させたのも、当然の流れだったのだろう。
しかも、今後もNHKはさらにこうした視聴者や制作現場を無視した“政治的介入”を許していくことになるのは必至だ。
というのも、NHKの人事案が本日、参院本会議で立憲民主党など野党3党が反対するなか与党などの賛成多数で可決・承認されたが、この人事案は、かんぽ生命保険の不正販売を追及した『クローズアップ現代+』に不当抗議した旧知の日本郵政副社長(元総務事務次官)に丸乗りし、NHK経営委員会で「(番組の)作り方に問題がある」「(日本郵政側が)納得していないのは取材の内容」などと発言していたことがわかっている森下俊三委員長(当時は委員長代行)を経営委員として再任させるというものなのだ。
森下委員長のこの行為は、経営委員による個別の番組への干渉を禁じた放送法に違反するという指摘がなされてきたが、その上、経営委員会はいまだに森下氏による番組介入発言が飛び出した際の議事録を全面開示しておらず、公開されているのは議論を要約した文書。これには第三者機関である「NHK情報公開・個人情報保護審議委員会」が「公開制度の対象となる機関自らが対象文書に手を加えることは制度上予定されていないことであり、それは対象文書の改ざんというそしりを受けかねない危険をはらむ」と指摘している。
報道の自主自律の原則を守るでもなく、不正を追及する現場を守るでもなく、ましてや視聴者の知る権利を守るものでもなく、むしろ文書の改ざんに隠蔽、放送法違反の番組への直接介入といった安倍・菅政権そっくりの不正をおこなう。いかにNHK上層部が腐りきっているかという話だが、森下氏の経営委員の再任問題を考えても、こうした傾向は今後も酷くなっていくことになるだろう。
安倍政権時には「安倍さまのNHK」と揶揄されたNHKだが、そのとき以上のスピードで「菅さまのNHK」化は進行しているのである。
(編集部)
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