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※2021年2月9日 日刊ゲンダイ1面 紙面クリック拡大
※2021年2月9日 日刊ゲンダイ2面
【父子で怪しい話がワンサカ】
— 笑い茸 (@gnXrZU3AtDTzsZo) February 10, 2021
菅首相と総務省 山のようにある黒い疑惑
日刊ゲンダイ pic.twitter.com/naDKTls9tK
※文字お越し
「別人格」なんて言い訳が通用するはずがない。
菅首相の長男が総務省幹部に、国家公務員倫理法に抵触しかねない接待を重ねた疑惑について、国会では野党の追及が続いている。8日は、答弁に立った当事者の幹部が「調査を受けている最中」として回答を拒否。反発した立憲民主党などが一斉に退席して、審議が一時中断する事態にまで発展した。
菅は「事実関係を確認した上で、ルールにのっとって対応してもらいたい」と語るだけ。総務省の調査に任せていると、一歩引いた態度だが、ちゃんちゃらおかしい。菅の息子だからこその疑惑であり、週刊文春でも指摘されているように、接待を受けた4人はいずれも「菅派」官僚だ。
次の事務次官の呼び声高い総務審議官は、菅肝いりの携帯電話料金値下げの旗振り役。もうひとりの総務審議官は、菅が総務大臣時代(2006年9月〜07年8月)、NHK改革に後ろ向きだった課長を更迭した際に後任に抜擢した人物。そして、情報流通行政局長は、長男が勤める「東北新社」の中核事業である衛星放送の許認可を握る。菅が総務副大臣だった時の“上司”竹中平蔵総務大臣(05年10月〜06年9月)の秘書官だった。
「長男は総務大臣秘書官だったので、接待を受けた官僚はその頃から面識があった可能性が高いと思います。官僚は菅氏の長男だから無条件でお友だちになった。人事で強権を振るう菅氏に睨まれたら怖いし、取り入るチャンスも出てきますから。そこに許認可が絡んだのが今回の案件です。菅氏は『自分は関係ない』という態度なので、官僚の処分についてはむしろ『淡々とやれ』と言うでしょうね。もっとも、官僚人事は退職後の天下りまで続くので、後々に厚遇して埋め合わせられます」(元経産官僚・古賀茂明氏)
NHKを舞台に暗躍
副大臣と大臣を経て総務省の族議員となった後、安倍政権で7年8カ月にわたって官房長官。内閣人事局を通じて霞が関の人事権を完全掌握している菅だが、とりわけ総務省に対する影響力は絶大だ。
大臣時代にNHK改革に反対した課長を更迭したことが、総務省を震え上がらせる要因のひとつになったことは想像に難くない。そのNHKを舞台にした菅の暗躍もドス黒い。
放送行政を所管する総務省に対して、NHKは元来、弱い体質ではあるが、安倍政権時代にNHKの政府への忖度は強まり、政府によるNHK支配も強まった。中でも記憶に新しいのが、かんぽ生命の不正販売をいち早く追及した「クローズアップ現代+」を巡り、日本郵政グループが“難癖”をつけた一件だ。NHK経営委員会がこれを受け入れ、上田良一会長(当時)を厳重注意した。経営委の行為は、放送法が禁じる個別番組の編集に介入した疑いが濃厚な大問題である。
郵政側の窓口だった鈴木康雄上級副社長(当時)は元総務事務次官。菅と昵懇の間柄で、鈴木氏を日本郵政に送り込んだのも菅だとされる。菅という後ろ盾があったからこそ日本郵政側はNHKに圧力をかけられたのであり、安倍政権が進める言論統制の一環とも受け止められたものだ。
驚いたのが、当時、日本郵政側の難癖を受け入れ、NHK会長処分の流れをつくったとされる森下俊三NHK経営委員長(元NTT西日本社長)を再任する人事案が、先月国会に提示されたことだ。8日の朝日新聞は社説で、<公共放送への不信を深める人事を、認めるわけにはいかない>と猛批判していた。森下委員長は、菅政権にとって都合のいい人材ということなのだろう。この国会同意人事が通れば、NHKへの政治介入はますますやりたい放題だ。
政治評論家の本澤二郎氏はこう言う。
「NHKは安倍政権の時代に、すっかり『アベ様のNHK』になってしまいました。裏からゴリゴリ牽制していたのが官房長官だった菅氏ですが、その菅氏がいまや首相という最高権力者。NHKは公共放送であり、だからこそ国民は受信料を払っている。権力の乱用は看過できません」
菅首相にとって最高の「植民地」となった総務省 |
「かんぽ生命番組」を巡り、NHKが元総務次官の日本郵政幹部の圧力に屈した問題の背景について、最近、興味深い論考が発表された。月刊誌「世界」(3月号)に掲載された「NHKは再び政治権力に屈するのか」で、執筆したのは、元NHKチーフ・プロデューサーの長井暁氏。背景に、NHKの経営問題があるという。
NHKの受信料制度が大きな曲がり角を迎え、テレビの設置を前提とした現行制度のままでは、この先収入が激減するのは明らか。そこでNHKは近い将来、パソコンやスマートフォンでの視聴からも受信料を徴収する「総合受信料制度」に移行することを目指している。そのためには放送法改正が必要で、NHKの最大の経営目標。だから、<放送法改正を人質にとられたNHKが、さまざまな権力から圧力に屈しやすい状況が生まれている>のだという。
その前段として、長年の悲願だった「NHKのテレビ番組のインターネット常時同時配信」を認める放送法改正が既に2019年5月に成立しているが、「かんぽ生命番組」の扱いを巡ってNHKが大揺れだった18年10月は、総務省が「ネット同時配信」の改正法案の作成準備に着手しようとしていた時期だったという。つまりNHKは、法改正を潰さないために、総務省にこうべを垂れ、郵政に屈したということなのである。
この時、総務省で放送法改正を担当していたのが、山田真貴子情報流通行政局長だ。今は菅の記者会見を仕切る内閣広報官に就いている。
菅に重用される山田は、昨年10月、NHKを恫喝していたことが週刊現代に報じられた。「ニュースウオッチ9」に出演した菅に、有馬嘉男キャスターが日本学術会議の任命拒否問題について質問したことに激怒。NHKの政治部長に電話をかけて抗議したという。菅が放送法改正に詳しい山田を広報官に起用したのは、NHK支配にも“使える”という思惑もあるのだろう。
次なるNHKの願いは「総合受信料制度」の実現。「世界」の論考で長井氏は、<放送法改正を人質に取られているNHKがこれからも権力からの圧力に屈し続けるようなことがあれば、公共放送としての危機に瀕することになるのではないかとOBとして非常に心配である>と締めくくっている。
今や指示する必要もない
そんな中で、首相に就任した菅が早々に打ち出したのが、長年の持論の「携帯電話料金の値下げ」だった。子飼いの武田総務相が電話会社を脅した結果、ドコモ、KDDI、ソフトバンクの大手3社は揃って、データ量20ギガバイトで2000円台の新料金プランを発表。電波利用の許認可権を持つ総務省と総務省を牛耳る菅に、携帯電話会社が逆らえるはずはなかった。
菅による電波利権とNHKの私物化。そんな腐臭漂う黒い疑惑の延長線上に、菅の長男による総務官僚の違法接待疑惑もあるのである。父子で総務行政や放送行政を歪め、総務省の権益を我が物にするとは許し難い。
前出の古賀茂明氏が言う。
「総務官僚たちは、菅氏を少しでも怒らせたらクビだと怯え、菅氏の関心事項については、必ず彼の意向を確認して進めてきたのですが、最高権力者となった菅氏は、今や指示する必要もない。総務省は、何もしなくても忖度で全部自分の思い通りに動いてくれる最高の『植民地』になった。官僚が勝手に動くのだから菅氏の責任は問えない。いろいろ指示して動かすよりも悪質ですよね」
菅が国会で見せる「私は関係ない」という顔を放置してはならない。諸悪の張本人が首相なのである。権力亡者をのさばらせてはダメだ。
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