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(回答先: ホアキン・ロドリーゴ ギターと管弦楽のための《アランフェス協奏曲》 投稿者 中川隆 日時 2021 年 10 月 02 日 19:18:58)
クット・アッテルベリ(Kurt Magnus Atterberg, 1887 - 1974)
マイナー交響曲作曲家の有名人の一人。個人的には、もうツボにドンピシャであり、メジャー曲にはない独特な個性と世界観を楽しむマイナー交響曲の楽しさを最大限に享受できる作曲家である。。ブルックナーを近代化して映画音楽的なエンタメの要素も取り入れた趣味的な交響曲と言えるだろうか。趣味で書いた作品とのことで、どこかアマチュアらしい凝りすぎない書きたいものを書いた感じがある。
交響曲
交響曲第1番 ロ短調 (op.3)
3.5点
近代的な華やかな管弦楽法と響きの華麗さが良い。2楽章はブルックナー的な広大さの中で漂うような旋律で素晴らしい。陽光の中で音楽に身を浸すように聴ける。現代の映画音楽の大自然の場面のようでもある。人によっては好みにズバッとはまるだろう。3楽章はブルックナーのような骨太さに現代の映画音楽のような運動神経と近代的な管弦楽法のキレの良い輝かしさを合わせたもの。しかし音の密度感はアマチュアらしい物足りなさもある。最後の楽章は高揚感が大作でありながら全体に横溢していて、やはり密度感の問題はあるものの、かなりアドレナリンを放出させる愉しい音楽になっている。全体にブルックナーを分かりやすくエンターテイメント的にした印象。演奏が良いためかなり楽しめる。
交響曲第2番 ヘ長調 (op.6, 1911-13)
3.8点
1楽章は明るく叙情性すら感じる優美さと陽気さを持ちつつも大自然のようなスケールの大きさを持つ、とても素敵な曲。かなり気に入った。2楽章以降も、密度が上がり雰囲気だけでない充実感とともに、全体的な明るさとスケールと楽しませる工夫と没入感のバランスが自分にとってはとても好みで絶妙さを感じる音楽になっていて、聴き終わった後の満足感はかなりのものだ。楽しくてまた聴きたい気持ちになる。最終楽章はやや安っぽく感じるきらいもあるが、見事な締めくくりであっぱれと言いたくなる。
交響曲第3番 ニ長調『西海岸の光景』 (op.10)
3.5点
1番と2番はいわば同工異曲と言っても良い類似した曲だが、3番は趣向を変えている。薄明のような光の弱さの中で動く音楽の1楽章は短調も使われて新しい境地になっている。なかなか面白い。ロマン的な情緒に浸りきる場面もあったり、かなり自分のツボをついている。最後まで激しくならずに終わるが満足度は高い。
交響曲第4番 ト短調 (op.14, 1918)
交響曲第5番 ニ短調 (op.20, 1922)
3.5点
かなり分かりやすいチャイコフスキーのような派手な冒頭である。なかなかカッコよくてしびれる。エンターテイメント的で分かりやすいのだがそれだけでなく、音の作り方のセンスがなかなかだし、宇宙のようになったり様々に変遷していきダイナミックに展開していく各場面がいちいちツボを突いてくる。長さに身を任せて心を揺らされる楽しさはなかなかである。前半は最高なのだが、最後の10分は少し派手すぎて単純さが生まれてしまい、やや物足らなくなった。
交響曲第6番 ハ長調 (op.31, 1928)
3.3点
まとまりがよい代わりに、独特の壮大で自由なところが失われている。ブルックナー的な際限のないようなスケールの大きさがなく、曲の世界に没入する感覚を得られないため、かなり物足りなく感じる。十分に満足感を得られるのは2楽章だけである。3楽章は通俗的で軽薄でありかなり不満である。1楽章も分かりす過ぎる不満はあるが悪くない。コンクールの優勝作品とのことだが、その事実がネガティヴに感じる作品である。
交響曲第7番 (op.45, 1942)
3.0点
アッテルベリのマジックが消えてしまい、ただの映画音楽的な交響曲になってしまっている。ラディカルさとか独特の世界に没入できる感覚がない。かなりがっかりである。とはいえ、じゃあ完全に二流の音楽かというと、よく聞くとそうではないと思う。ロマン派に退化してしまった完全に時代遅れな作曲家という感じではあるが、1楽章や最後の楽章はエンターテイメント性のある派手な音楽としてそれなりに楽しめる。2楽章も純ロマン的な楽しさがあったりする。
交響曲第8番 (op.48, 1944)
3.3点
非常に土臭くて、ロシアの作曲家かと思うような曲である。7番と似たような通俗的でロマン派の雰囲気の曲だが、3楽章制でなく4楽章あることで、楽章の間が極端すぎずにがっちりした構成感が出ている。始めからこのような音楽の作曲家なのだと思って聴くと、やや通俗的ながらもなかなか楽しんで聴ける。曲が長くないのも良い。最初は地味かと思ったが、通して聞くと後悔せずに楽しい音楽を愉しい気分で聴けるものだった。旋律がなかなか秀逸で耳に残るものばかりである。
交響曲第9番 (op.54, 1957)
3.5点
カンタータ風である。壮大さ純美や独唱の孤独感などカンタータらしい魅力が詰まっている。アッテルベリならでは独自の魅力を交響曲ほどは感じられないとは思うが、分かりやすく聴き手に寄り添ったロマン的な音楽はやはり素直に楽しめるものである。つまり、カンタータのある種のフォーマットとしての幅の狭さは気になるし、冗長で次の場面を待っているだけの時もあるが、各場面はなかなか聴いていて世界に没入できる旋律の美しさと華麗でエモーショナルな雰囲気を持っている。
https://classic.wiki.fc2.com/wiki/%E5%8C%97%E6%AC%A7
クット・マグヌス・アッテルベリ(Kurt Magnus Atterberg, 1887年12月12日 - 1974年2月15日)は、スウェーデンの作曲家。名はクルト、姓はアッテベルイとも書かれる。チェロ奏者、音楽評論家としても活躍したが、職業的作曲家ではなく、ストックホルムの特許局の職員として大半を過ごした。
9曲の交響曲、5曲のオペラの他、多数の作品を残している。存命中は、スウェーデンの音楽の重鎮的存在であった。また、スウェーデンの作曲家協会・著作権協会の会長として活躍するなど、諸方面に活動的であった。
生涯
アッテルベリは1887年にイェーテボリで技術者を父として生まれた。幼少より音楽環境に親しみ、10歳ごろより友人に誘われて、チェロを学習する。
1907年に王立工科大学に入学し、電気技術者としての研鑽を積む。それと並行して1908年には、ストックホルムのオーケストラに入団。
1912年に交響曲第1番の初演に成功し、アルヴェーンとならぶスウェーデンの代表的作曲家として認知された。翌年には、ドイツで交響曲第2番を初演。名声は国外にも広まり、王立劇場から『イェフタ』のための劇音楽を委嘱された。この他に、ヴァイオリン協奏曲などのこの時期の音楽は、ドイツの近代音楽の影響を受け、難解なものになっている。また、同年、ストックホルムの特許庁に就職した。
1915年にピアニストのエラ・ペッタション(Ella Peterson)と結婚。(1923年に離婚。)この年の交響曲第2番、1916年の交響曲第3番あたりが作曲家としての頂点であり、これらの曲は初演後なんども演奏されている。
1918年の交響曲第4番の頃から、積極的にスウェーデン民謡を作品の中に取り入れ、その一つのバレエ音楽『おろかな娘』は繰り返し上演された。同年、スウェーデン作曲協会を設立。
1923年には、スウェーデン著作権協会を設立。作曲家協会と著作権協会の会長を兼任。
1928年にコロムビア・レコードの主催する「シューベルト没後100周年作曲コンクール」に、交響曲第6番で応募したのが優勝し、1万ドルの賞金を得た。これによって世界的な知名度を得た。
1940年代に交響曲第7番、第8番を作曲するが、あくまでもロマン派的なスタイルを保っていたため、近代音楽が主流となる音楽会においては、過去の人物となっていった。
1957年に最後のいささか風変わりな交響曲を発表、1968年にようやく特許局を退職したが、その後も音楽活動は継続し、1974年にストックホルムで逝去した。
作品
アッテルベリの主要な作品は、9曲の交響曲、劇音楽、オペラである。歌曲やピアノのための小品は少なく、金銭を得るための作曲は行わなかった[1]。
作風としては、後期ロマン派音楽の手法を踏襲したものが大きい。
歌劇
以下の5作品を残しているが、ほとんど演奏される機会はない。
歌劇『竪琴弾きヘルヴァルド』(op.12, 1917,1951改訂)
歌劇『小川の馬』(op.35, 1923-1924)
歌劇『ファナル(燃えている国)』(op.35, 1929-1934)
歌劇『アラジン』(op.43, 1937-1941)
歌劇『嵐』(op.49, 1946-1947)
劇音楽
バレエ音楽『おろかな娘たち』 (op.17, 1917) が有名。
交響曲
交響曲第1番から交響曲第9番まで、9曲の交響曲が残されている。
交響曲第1番 ロ短調 (op.3) は王立音楽院へ応募するため1910年に完成し、1912年に自身の指揮でエーテボリで初演された。作品番号が若いながら完成度が高く、若さと才気に溢れる作品である。古典的な4楽章構成の作品で、第1楽章にはブラームスやリヒャルト・シュトラウスの影響が見受けられる。第2楽章は、民謡風の印象的な旋律を発展させた緩徐楽章で、早くもアッテルベリの特徴が現れている。
交響曲第2番 ヘ長調 (op.6, 1911-13) は3楽章からなる。最初、2楽章制だったが後に第3楽章が書き加えられた。アダージョとプレストを組み合わせた第2楽章、終結部が壮大であることなどが特徴である。
交響曲第3番 ニ長調『西海岸の光景』 (op.10) の最初の2つの楽章は、それぞれ独立した作品として別々に作曲され、演奏された。第3楽章は1916年に初演された。この作品はイェーテボリ近郊のユトランド半島に面した島で作曲され、3つの楽章はそれぞれ「太陽の霞」、「嵐」、「夏の夜」という副題を持つ。第3楽章「夏の夜」の終結部は日の出を表現したもの。この曲は、人気があり何度も繰り返し演奏された。
交響曲第4番 ト短調 (op.14, 1918) は『(スウェーデン民謡の主題による)小交響曲』(Sinfonia piccola)という副題がある。4楽章構成であるが、その全楽章に民謡からとられた旋律が用いられている。演奏時間も20分程度と短い。
交響曲第5番 ニ短調 (op.20, 1922) は『葬送交響曲』の副題を持つ3楽章からなる作品である。第1楽章はいささか不協和音じみた和声に貫かれ、ピアノの和音で終わる。第2楽章は標題を示す葬送行進曲で、ドイツの『ライプツィガー・ターゲブラット(ドイツ語版)』紙は「かくも美しい感動的な葬送行進曲」と評した[2]。終楽章のコーダはチャイコフスキーの交響曲第6番を思わせる沈痛な雰囲気になっている[2]。
交響曲第6番 ハ長調 (op.31, 1928)は「シューベルト没後100年作曲コンクール」の優勝作品であり、1万ドルの賞金にちなんで『ドル交響曲』の異名がある(このコンクールの第2位は、フランツ・シュミットの交響曲第3番であった)。 自らの交響曲ついて「古いスタイルの模倣で、人を愚弄するもの」と嘲笑しているものの、ピアノ五重奏曲ハ長調 (op.31b) として編曲するなど、やはり愛着を見せている。終楽章は部分的に複調を使いお祭り騒ぎが繰り広げられる。
交響曲第7番 (op.45, 1942)は『ロマンティック交響曲』という副題が付けられている。曲の構成は3楽章制であり、第1楽章には歌劇『ファナル』の「眠りのアリア」に基づく部分を演奏者によって省略可としたり、第4楽章が破棄されたために終楽章が極端に軽い印象を与えて終わる。
交響曲第8番 (op.48, 1944)は、交響曲第4番同様に民謡を素材とした作品である。
交響曲第9番 (op.54, 1957)は『幻想的交響曲』(Sinfonia visionaria) の副題をもつ。独唱と合唱をともなう大規模な作品であるが、一般には理解されることがなく、2003年にアリ・ラシライネンによってようやく初録音が行われた。この曲は、アイスランドの古エッダ巻頭の「巫女の予言」に基づく単一楽章の曲であるが、全体は13の部分に分かれ、そこからさら2つの部分に分けることができる。[3]。今までのアッテルベリの交響曲とは異質で、どちらかというとカンタータに近い。部分的に12音音列を使うなど、彼の作品にしては近代的である。
協奏曲
ピアノ協奏曲 変ロ短調 (op.37)は、全3楽章からなる。ピアノと管弦楽のための作品は、20代の頃に書かれた《狂詩曲》(op.1)も存在する。
この他にヴァイオリン協奏曲 ホ短調 (op.7)、チェロ協奏曲 ハ短調(op.21)、ホルン協奏曲 イ短調(op.28)がある。ホルン協奏曲は、チェロ・ソナタ ロ短調(op.27)からの改作であるが、独奏パートにもかなり手を入れているので同じ曲という印象は無い。また、ヴァイオリン、チェロと弦楽のための《二重協奏曲》(op.57)が存在する。
弦楽合奏曲
ヴァイオリン・ヴィオラと弦楽のための組曲 第3番 (op.19-1) もともとは、メーテルリンクの戯曲『ベアトリス尼』の付帯音楽として作曲されたもの。ヴァイオリン・ヴィオラとオルガンによる組曲から編曲された。「前奏曲」、「パントマイム」、「ワルツ」の3曲からなる。パントマイムは、コラール風の前奏(終結部で再現)を持ち、尼僧の愛を表現する甘美な旋律が流れる。
室内楽曲
弦楽四重奏曲第1番 ニ短調 Op. 2『アダージョとスケルツォ』(1909)
弦楽四重奏曲第2番 ロ短調 Op. 11(1918)
弦楽四重奏曲第3番 ニ長調 Op. 39(1937)
編曲
ブラームス:弦楽六重奏曲第2番 Op. 36(1939)
原曲を弦楽合奏版にしたもの。
- クット・アッテルベリ 交響曲第2番 ヘ長調 Op.6 中川隆 2021/10/02 21:48:45
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