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最美の音楽は何か? _ モンテヴェルディ 歌劇「ウリッセの帰還」
http://www.asyura2.com/21/reki6/msg/657.html
投稿者 中川隆 日時 2021 年 9 月 16 日 08:14:30: 3bF/xW6Ehzs4I koaQ7Jey
 

(回答先: 最美の音楽は何か? _ モンテヴェルディ 歌劇「ポッペアの戴冠」 投稿者 中川隆 日時 2021 年 8 月 03 日 21:00:43)

モンテヴェルディ 歌劇「ウリッセの帰還」


Claudio Monteverdi “Il Ritorno d'Ulisse in Patria” (René Jacobs)











Atto I
* Di Misera Regina Non Terminati Mai Dolenti Affanni! (Penelope, Ericlea)
* Duri E Penosi Son Gli Amorosi Fieri Desir (Melanto, Eurimaco)
* Superbo È L'Huom (Nettuno, Giove)
* In Questo Basso Mondo (Coro Di Feaci, Nettuno)
* Dormo Ancora O Son Desto? (Ulisse)
* Cara A Lieta Gioventù Che Disprezza Empio Desir (Minerva, Ulisse)
* Tu D'Aretusa A Fonte Intanto Vanne (Minerva, Ulisse)
* Donate Un Giorno, O Dei, Contento A Desir Miei (Penelope, Melanto)
* Come, Oh Come Mal Si Salva Un Regio Amante (Eumete)
* Pastor D'Armenti Può Prati E Boschi Lodar (Iro, Eumete)
* Ulisse Generoso! Fu Nobile Intrapresa (Eumete, Ulisse)


Ato II
* Lieto Cammino, Dolce Viaggio (Telemaco, Minerva)
* Oh Gran Figlio D'Ulisse! È Per Ver Che Torni (Eumete, Ulisse, Telemaco)
* Che Veggio, Ohimè, Che Miro? (Telemaco, Ulisse)
* Eurimaco! La Donna Insomma Haun Cor Di Sasso (Melanto, Eurimaco)
* Sono L'Altre Regine Coronate Di Servi E Tu D'Amanti (Antinoo, Pisandro, Anfinomo, Penelope)
* Apportator D'Altre Novelle Vengo! (Eumete, Penelope)
* Compagni, Udiste? Il Vostro Vicin Rischio Mortale (Antinoo, Anfinomo, Pisandro, Eurimaco)
* Perir Non Può Chi Tien Per Scorta Il Cielo (Ulisse, Minerva)
* Io Vidi, O Pelegrin, De' Proci Amanti L'Ardir Infermarsi (Eumete, Ulisse)
* Del Mio Lungo Viaggio I Torti Errori Già Vi Narrari (Telemaco, Penelope)
* Sempre Villano Eumete (Antinoo, Eumete, Iro, Ulisse, Telemaco, Penelope, Anfinomo, Pisandro)


Atto III
* O Dolor, O Martir Che L'Alma Attrista! (Iro)
* E Quai Nuovi Rumori, E Che Insolite Stragi (Melanto, Penelope)
* Forza D'Occulto Affetto Raddolisce Il Tuo Petto (Eumete, Penelope)
* È Saggio Eumete, È Saggio! (Telemaco, Penelope)
* Fiamma E L'Ira, O Gran Dei, Foco È Lo Sdegno (Minerva, Giunone)
* Gran Giove, Alma De' Dei, Dio Delle Menti (Giunone, Giove, Nettuno, Coro In Cielo, Coro Maritimo, Minerva)
* Ericlea, Che Vuoi Far, Vuoi Tacer O Parlar? (Ericlea)
* Ogni Nostra Ragion Sen Porta Il Vento (Penelope, Eumete, Telemaco)
* O Delle Miei Fatiche Meta Dolce E Soave (Ulisse, Penelope, Ericlea)


L'humana fragilità: Dominique Visse, countertenor
Tempo: Michael Schopper, bass
Fortuna: Lorraine Hunt, mezzo-soprano
Amore: Martina Bovet, soprano


Ulisse: Christoph Prégardien, tenor
Penelope: Bernarda Fink, mezzo-soprano
Telemaco: Christina Högman, soprano
Antinoo: David Thomas, bass
Pisandro: Dominique Visse, countertenor
Anfinomo: Mark Tucker, tenor
Eurimaco: Jörg Dürmüller, tenor
Iro: Guy De Mey, tenor
Melanto: Faridah Schäfer-Subrata, soprano
Ericlea: Jocelyne Taillon, soprano
Eumete: Martyn Hill, tenor
Giove: Olivier Lallouette, baritone
Nettuno: Michael Schopper, bass
Minerva: Lorraine Hunt, mezzo-soprano
Giunone: Claron McFadden, soprano


Concerto Vocale
René Jacobs




C. Monteverdi: «Il ritorno d'Ulisse in patria» SV 325



Mirella Hagen [soprano]
Katarina Bradic [mezzo-soprano]
Marie-Claude Chappuis [mezzo-soprano]
Mary-Ellen Nesi [mezzo-soprano]
Johannes Chum [tenor]
Pierre Derhet [tenor]
Anicio Zorzi Giustiniani [tenor]
Mark Milhofer [tenor]
Jörg Schneider[tenor]
Thomas Walker [tenor]
Stéphane Degout [baritone]
Marcos Fink [bass]
Jérôme Varnier [bass]


B'Rock
René Jacobs [direction]


▲△▽▼


ウリッセの帰還[プロローグと全3幕] モンテヴェルディ作曲
C. Monteverdi, Il Ritorno d’Ulisse in Patria 1640


❖登場人物❖
ウリッセ(Br) ペネーロペ(Ms) テレマコ(T) エリクレーア(S) エウメーテ(T) ミネルヴァ(Ms) ジョーヴェ(T) ネットゥーノ(B) メラントー(S)  イーロ(T) 他


 マントヴァとヴェネツィアで活躍したモンテヴェルディは、ヴェネツィアでは主にサ ン・マルコ寺院の楽長として活躍した。彼が作曲したオペラの多くはマントヴァで書かれ ていて、ヴェネツィアで書かれた作品は比較的少ない。その中にあって、これはオペラが 盛んなヴェネツィアで上演された現存するわずか二作の中のひとつである。ホメロスの叙事詩による壮大で美しい世界が描かれている。


プロローグ


 時はトロイ戦争後のギリシャ神話の時代。 時の神(テンポ)、愛の神(アモール)、運命の神(フォルトゥーナ)が現れて、人間は時、愛、運命に左右される弱い存在だと言って、神の力を誇示する。


第一幕

 第一場 ギリシャのイタカ島のウリッセの王宮。トロイ戦争に出征したまま不在の国王ウリッセの帰国を、貞淑な王妃ペネーロペが待ちわびている。乳母のエリクレーアがそれを慰めているが、出征から20年も経つので、王妃は多くの求婚者に再婚を促されている。侍女のメラントーは、王妃に彼らからの愛を受け入れるように勧める一方、自分は愛人エウリマコと密会している。
 第二場 海と洞窟のある海岸。ウリッセはトロイ戦争中に海神ネプチューンの息子を殺したために父神の怒りを買い、幾多の苦難に逢ってようやく故郷のイタカ島に漂着した。そこに羊飼いに変身した女神ミネルヴァが現れて、宮殿では王妃が多くの求婚者に纏(まと)わりつかれていると告げる。ミネルヴァはウリッセを老いた物乞いに変身させて老羊飼いエウメーテの許に行くように命じ、自分はウリッセの息子テレマコをスパルタから連れ戻して来ると言う。
 第三場 ウリッセの王宮。王妃は求婚者た ちに付き纏われるが、侍女メラントーの勧めにも拘らず貞操を守っている。
 第四場 アレトゥーザの泉のほとり。年老いた羊飼いエウメーテのところに、求婚者たちの従者で大食漢のイーロがやって来て、ウリッセを馬鹿にして王宮での大食の楽しみをおどけて踊って立ち去る。そこにみすぼらしい老人姿に変身したウリッセが一夜の宿を乞いに来るので、エウメーテは快く客人を迎え入れる。老人は近くウリッセが戻って来ると言うのでエウメーテは喜ぶ。



第二幕


 第一場 アレトゥーザの泉のほとり。ミネルヴァがウリッセの息子テレマコを連れて現れる。エウメーテはテレマコの帰還を知らせるために、彼の母親ペネーロペの許に赴く。 その間に天から閃光が光り、ウリッセは本来の王の姿に戻るので、二人は再会を喜ぶ。
 第二場 ウリッセの王宮。王妃は求婚者た ちにしつこく取り巻かれている。そこにエウメーテが駆けつけてテレマコの帰還を知らせ、やがてウリッセも戻るだろうと言うが、 彼女はなかなか信用しない。求婚者の一人アンティノオは、王妃が自分になびかないのは、息子を待っているからだと思い、彼を殺そうと考える。
 第三場 森の中。ウリッセが王宮に向かう途中にミネルヴァが現れて、王宮で王妃の婿選びの競技会が開かれるだろうと告げる。そこにエウメーテが戻って来て、ウリッセの帰還を伝えると求婚者たちが慌てふためいていたと報告する。
 第四場 ウリッセの王宮。王妃はスパルタから戻ったテレマコを迎える。老人姿のウ リッセがエウメーテに伴われてやって来る。彼は大食漢イーロをたちまちねじ伏せて、王妃の再婚相手を決める競技会に参加する資格を得る。彼女は競技会の勝者と再婚せざるを得ないと観念して、夫ウリッセの持っていた弓で最も見事に射た者を夫にすると宣言する。しかし求婚者たちはことごとく失敗して、最後に残った老人ウリッセだけがやすやすと弓を引く。雷鳴と共に女神ミネルヴァが現れる。ウリッセは居並ぶ求婚者たちを弓で次々と射殺す。



第三幕


 第一場 王宮の外。もう宮廷で寄食できなくなったイーロはショックで自殺する。
 第二場 ウリッセの王宮。あまりのことに王妃は呆然としている。エウメーテはあの老人こそウリッセだと言い、ミネルヴァも復讐のために彼が変装していたのだと言うが、彼女はなかなか信じることができない。
 第三場 海の上。困ったミネルヴァは大神ジョーヴェに執り成しを頼むので、大神はウリッセを赦し、イタカの島に平和を取り戻すよう命じる。
 第四場 ウリッセの王宮。乳母のエリクレーアは老人がウリッセであると見抜くが、 彼からそれを言うことを口止めされている。 王妃はエウメーテや息子のテレマコの説明にも納得できない。そこに本当の姿に戻ったウリッセが現れるが、なお魔術ではないかと疑う。そこでウリッセは、二人だけが知っているベッドカバーの刺繍模様のことを言うので、とうとう王妃も彼が本当にウリッセであることを認める。


Reference Materials


初演
1641年2月サン・カッシアーノ劇場(ヴェネツィア)


原作
ホメロス/「オデッセウス」


台本
ジャコモ・バドアーロ/イタリア語


https://www.chopin.co.jp/media/opera217/a1958
 

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コメント
1. 中川隆[-16322] koaQ7Jey 2021年9月16日 08:15:52 : 8vMnnZaGpD : ckdXOXUxaVRkdnM=[3] 報告
2018.07.01
モンテヴェルディ『ウリッセの帰還』『ポッペアの戴冠』あらすじと魅力とは?
https://kotoyumin.com/monteverudilast2opera-1390


モンテヴェルディ晩年の二つのオペラは、最高ですよ。

今まで聴いたことのないような音楽。
とても豊かな体験ができるはずです。

モンテヴェルディ(1567-1643)。

イタリアバロックにおけるオペラの勃興に立ち会い、
その初期を燦然と輝かせた作曲家。

彼の有名なオペラとして『オルフェオ』(1607)があります。
これは彼が40歳の時に作られたものでした。

この記事で、ご紹介するのは、さらに晩年の作品。
モンテヴェルディは70歳以上。

この時代にしては長命な彼の最晩年に作曲された二つのオペラです。

それぞれ、ギリシャ・ローマの神話・文学・歴史を題材にした作品。


『ウリッセの帰還』あらすじ(1639-40)

「ウリッセ」とは、オデュッセウスのイタリア語読み。

ホメロスが語り伝えたとされる古代ギリシアの叙事詩『オデュッセイア』。

主人公である英雄オデュッセウス(イタリア名ウリッセ)は、
トロイア戦争後に故郷へ戻ろうとするも、神々と運命によって、20年も放浪の旅を余儀なくされます。

その最後にようやく故郷であるイタケーにたどり着きます。
そして夫の帰りを待つ貞淑な妻ペネーロペのもとへと帰ります。



ところが、そこには彼女への求婚者が群がり、彼女も長年の忍耐ですっかり人間不信をたくましくしている。
夫を前にしてもそれが本当に自分の夫だとは信じられず……という話です。

『ポッペアの戴冠』あらすじ(1642-43)
ポッペアとは、古代ローマの皇帝ネロの2番目の妻。

ポッペアは野心的な美女でネロを籠絡しします。

ちなみに第1の妻はオクタヴィア。
オクタヴィアやネロの教師である哲学者セネカなど

ネロの周りの人間を破滅させながら
「皇后の座へ上り詰めていく」という話です。

モンテヴェルディのこの2つのオペラは非常に対照的です。

『ウリッセ』では夫婦の一途で純粋な愛を描く。
一方、『ポッペア』ではポッペアの野心が含まれた官能的な愛が描かれます。
この全く対照的な2つのオペラ、2つの愛の姿形。

モンテヴェルディの晩年の2作品は、セットで鑑賞されるべきものでしょう。

こんな愛の作品を「70歳をすぎたおじいさん」が作ったわけです。

「枯れ果てたおじいさんが作ったとは思えない作品」

とでも言うべき作品でした。

ポッペアの戴冠の見どころ 哲学者セネカの最期のシーンが神がかっている
非常に印象的なシーンを1つご紹介。

『ポッペアの戴冠』。

主役ソプラノのポッペアは男を堕落させる典型のような悪女です。
(だからこそ魅力的。)

彼女は皇帝ネロを篭絡し、ネロは自らの教師である哲学者セネカに「自己の始末」を命じます。

そのセネカの最期のシーン。

セネカの友人たちは「死なないで」と生きることの喜びを歌いあげます。
これはセネカを説得しようとする試み。

しかし哲学者セネカは威厳をもって、自らの最期を迎えます。

その崇高さに満ちた哲学者のシーンの直後。ここがすごい。

場面が変わり、別の場所。

若い男女が出会い、恋の喜びを歌いあうシーンが挿入されます。

このギャップ!! 

生きる喜びを語る説得を聞き入れず、
尊厳に満ちたセネカの最期を演出する。

その直後!!

世俗的な喜びを120%表現するというモンテヴェルディの手法!!

聴衆は、輝かしい哲学者の最期を観た直後に、
輝かしい生や恋愛の喜びを観ることになり、

全く違う種類の感動を与えるわけです。

この大胆さ! 
やるな、このエロジジイ!!

モンテヴェルディオペラの特徴: 編成が異常に簡素&寓意的なプロローグ
モンテヴェルディのオペラを観て感じるのは、
現代的な我々の感覚とは全く異なるオペラであるということ。

たとえば伴奏は、

チェンバロ
2つのヴァイオリンとチェロ、
オルガンorハープ
というとても簡素な編成。

近現代のオーケストラで編成されたオペラとは全然違います。

先ほど挙げたセネカのような劇的なシーンにおいても

音楽はあまり変わらず、ほとんど目立たないように感じました。

それに、そもそも資料が不完全のため、決まった編成がありません。

また『ウリッセの帰還』『ポッペアの戴冠』

どちらの作品にも第一幕開始前にプロローグがあります。

そこでは神々(愛の女神など)や寓意的な存在(「人間のはかなさ」という人物など)が現われます。

本編の物語を支配する力を、彼らが持っているのです。
そして、このオペラのストーリーを暗示する役割があります。

こうした登場人物は、ギリシャローマの叙事詩や西洋中世文学ではよく現れます。

しかし現代的な感覚では「特異なもの」として映るものです。

まとめ 現代の私たちとは異質な感覚を味わうことの喜び
『ウリッセ』と『ポッペア』

この2つのオペラを対比的にとらえるとわかることがあります。

それは

「ウリッセとペネロピにおける貞淑な愛」
「ポッペアの野心的で官能的な愛」

この2つの対照的な愛を比べることにより、
2つのオペラに挿入されたプロローグがいっそう印象的なものとなります。

というのは、

『ウリッセの帰還』では「人間のはかなさ」という寓意的人物が登場します。
彼は「自らの死すべき宿命」を嘆きます。

すると「時」「運命」「愛」の三神が現れ、
「人間のはかなさ」に対する自らの力を誇示します。

他方、『ポッペアの戴冠』のプロローグでは
天上にて「運命」と「美徳」が言い争いを起こしています。

そこに「愛」が登場し、「自分こそが現世を支配するものだ」と主張し、
その主張を他の2神は認めます。

いずれも3つの神が登場しますが、

『ウリッセ』では、三神は力関係において並び立ちます。
(時=運命=愛)、
三者は共に「人間のはかなさ」を威嚇します。

他方『ポッペア』において三神の力関係は「愛」が勝っています。
(愛>運命=美徳)
愛の支配が高らかに主張されたのちに本編が始まります。

プロローグは本編への序章となるわけですが、
『ウリッセ』においてプロローグは「人間のはかなさ」が否定できないものとして聴衆の前に現れます。

ところが、本編のウリッセとペネーロペの一途な夫婦愛は、
プロローグで主張された人間のはかなさに真っ向から立ち向かう強烈なアンチテーゼとなっています。
そしてクライマックスでは人間のはかなさを乗りこえたように思われます。

他方『ポッペア』では、プロローグにおいて権勢と支配を手中にする愛の女神は、本編におけるポッペアの戴冠までの道程を支援します。
プロローグと本編は完全に一致します。

このように、対照的な二つのオペラは、プロローグと本編のあり方において最も対照性が際立っています。
https://kotoyumin.com/monteverudilast2opera-1390

2. 中川隆[-16321] koaQ7Jey 2021年9月16日 08:35:06 : 8vMnnZaGpD : ckdXOXUxaVRkdnM=[4] 報告
オペラ「ウリッセの帰還 Il ritorno d'Ulisse in patria」
http://pietro.music.coocan.jp/storia/monteverdi_ulisse.html


 クラウディオ・ジョヴァンニ・モンテヴェルディClaudio Giovanni Monteverdiイタリア(1567-1643)

<作曲の経緯>


 モンテヴェルディMonteverdiイタリア(1567-1643)は、1613年にマントヴァからヴェネツィアへ居を移した。それはサン・マルコ教会の楽長職が空位になり、その地位が彼に提供されたからである。1615年以降、元の雇い主マントヴァ公爵ヴィンチェンツォTよりマントヴァ宮廷楽長として招聘されるが、彼は断っている。モンテヴェルディのヴェネツィアでの活躍ぶりを再評価したのか、再びモンテヴェルディに好意を示したようだった。

 彼のサン・マルコの楽長としての仕事は、サン・マルコの典礼とヴェネツィアの共和国の祝祭のため作品を書くことであった。では彼が最も得意としていた劇音楽に手を出さなかったのだろうか? 否、こつこつと作曲し、ヴェネツィア以外で発表していた。その真意は明確でないが、考えられることは共和国ヴェネツィアは他のイタリア諸国とは貴族のあり方が違っていた。総督の宮廷ではオペラ上演がなかったと思われる。後に1637年ヴェネツィアには一般市民に開かれたオペラ劇場が造られるが、その時まだ無かった。総督直轄で総督の私設礼拝堂であるサン・マルコ教会は、国家的な存在でもあり、その聖堂楽長という地位は重要で、オペラに手を出すことは憚られたのかもしれない。

 それでも彼はオペラやバレー、インテルメディオをマントヴァ宮廷やパルマ、その他の宮廷で上演していた。この時期の重要な作品は、マントヴァ宮廷のために書かれたバレー「ティルシとクローリ」(初演1616年)、オペラ「アンドロメダ」(初演1618-20年未完で散失)、オペラ「気違いを装うリコリ」(初演1627年散失)、パルマのために書かれたインテルメディオ「アミンタ」(初演1628年散失)、ヴェネツィアの貴族モチェゴのために書かれたオラトリオ風舞台劇「タンクレディとクロリンダの戦い」(初演1624年)等があったのである。

 1627年にモンテヴェルディの第二子マッシミリアーノが宗教裁判によって査問されるという不祥事が起こった。そして1632年頃彼は司祭に叙階された(65歳)。彼は信仰深い人だったといわれてはいるが、彼の息子の問題がその一因となったことは考えられることである。1632年から34年にかけて彼は理論書「メロディアmelodia」を著した。歌詞における情緒の劇的表現を重んじるを論じたものであった。惜しいことにこの著作は散失してしまった。

 モンテヴェルディの70才の誕生日に前後してサン・カッシアーノ劇場(1637年-1804年)ができた。これはオペラ史とモンテヴェルディにとってたいへん大きな意味を持つ出来事であった。それは世界最初の公開オペラ劇場で、これによってオペラが初めて一般市民に解放されたからである。この後、引き続いて多数のオペラ劇場が建設されていく。ここでやっと彼はヴェネツィアにおいて本格的にオペラの仕事に立ち向かうことになる。しかし、最初のヴェネツィア産オペラは、モンテヴェルディの弟子カヴァッリCavalli の「アンドロメダ」(1639年)であった。カヴァッリの作曲した約40のオペラは1639年から1669年かけてヴェネツィアのあちこちの劇場で上演されている。サン・カッシァーノ劇場での1639年から1645年かけての出し物はカヴァッリのオペラばかりで、例外的にモンテヴェルディ「ウリッセの帰還」(1640年)がその中に含まれることになる。

 1639年サン・モーセ劇場で、旧作オペラ「アリアンナ」(1608マントヴァ初演、散失した)と新作「アドネ」(1639年ヴェネツィア初演、散失)が上演され、1640年にはサン・カッシアーノ劇場でオペラ「ウリッセの帰還」初演、1641年にサン・ジョヴァンニ・エ・パウロ劇場ではオペラ「エネアとラヴィニアの結婚」(散失)を初演、また同年にパルマ宮廷のためにバレー「愛の勝利」(1641年ピアチェンツァ初演、散失)を初演した。そして1642年遺作となるオペラ「ポッペアの戴冠」(1642年ヴェネツィア、サン・ジョヴァンニ・エ・パウロ劇場初演)と堰を切ったように続いた。

 モンテヴェルディのオペラとバレーなど含めた劇作品は記録としては未完を含めると約25作あり、約6作はマントヴァで、約19作はヴェネツィアで作曲された。だが、ヴェネツィアで上演されたオペラの5作のうち、現在はその2つしか残っていない。「ウリッセの帰還」(1640年初演)と「ポッペアの戴冠」(1642年初演)である。他のヴェネツィアで上演された5作のオペラのうち3つのオペラは散失してしまった。この残存する2作は73才以後の作品ということになる。この老人力ともいうべき創作力には脱帽である。これらの晩年のオペラにはどのような変化が見られたかというと、レチタティーヴォについてみると、初期オペラのレチタティーヴォはまさしく朗唱そのもので、和声の変化のみで劇的効果をつけていた。後期では歌うことに重点が置かれ、明確な旋律の構造をもち模倣進行をを生かしたり、独唱部分と低音部(通奏低音)に対位法な手法が目立っている。終止和音部分にはいつも旋律的なフレーズを用いている。

 もう一つ、当時のヴェネツィア・オペラの特徴でもあったが、合唱の役割を後退させている。フィレンツェ・オペラに特徴的であった荘重な合唱は、娯楽重視のヴェネツィアには向かなかったのだろうか。観客も独唱者の名人芸に強く興味をもっていた。こうした影響をモンテヴェルディも受けて「オルフェオ」で見られた合唱を重視した書法は、ヴェネツィア時代のモンテヴェルディのオペラには見られない。しかし、彼のライフ・ワークともいうべきマドリガーレにおいて重唱と独唱と対比させる個性的な書法を用いている。これによって合唱の世界を捨てることなかったことが分かる。彼が得意とした合唱音楽をオペラでは避け、マドリガーレ書法の中で昇華したのかもしれない。

 「オルフェオ」から「ポッペアの戴冠」までの35年間のモンテヴェルディのオペラを振り返るとイタリア・オペラ、いやオペラ史上に大きな足跡を残したことがわかる。また彼の劇音楽の大半が散失した一つの原因は、1630年ドイツ皇帝軍によるマントヴァ略奪のためだったとも考えられている。

 「ウリッセの帰還」の台本は、ホメロス「オデュッセイア(伊語ではウリッセ)」をもとにしてバドアーロが書いた。つまり素材はギリシャ神話でトロイ戦争後の話である。サン・ジョヴァンニ・エ・パオロ劇場で初演され大成功をおさめたと伝えられている。この手写譜にはいろんな問題や疑義もある。次作の「ポッペアの戴冠」と比べてみると台本とスコアに様式的相違点が散見されるからである。またその中の一部分が17世紀の手写譜ではあるが、大半が18世紀の手写譜である。現在、ヴィーン国立図書館に所蔵されている。

<ヴェネツィアのオペラ事情>


 史上一番早く一般民衆に開放された公共のオペラ劇場は、ヴェネツィアのサン・カッシアーノ劇場である。この劇場は、1637年の謝肉祭にオープンされ1804年まで続いた。ここでは王侯貴族のためでなく市民のためのオペラが上演され、フィレンツェやローマとはひと味もふた味も違ったオペラが作られていった。フィレンツェやローマにおいてはオペラは宮廷の音楽、つまり宮廷の催しであった。そのためいつも洗練された趣味をもつ気取りがあった。ヴェネツィアでは市民の楽しみとしての大衆性が必要であった。

 1637年から17世紀末までの間に、ヴェネツィア内の17の劇場で388のオペラが上演された。この期間に9つの劇場が新設され、1650年以後は17世紀の最後の20年間を通じてたえず6つのオペラ団を維持していた。一般市民たちは今の値段にすると約400円足らず(筆者は1980〜90年代頃のレートで言っている)の入場料でオペラを楽しめたし、貴族や金持たちは12週から13週に亘ったシーズンの桟敷をこぞって買い占めた。大衆の広い支持と、上流階級の物惜しみしない特権欲が結びつき、近代オペラを生み出していった。

 そのため世俗的要素も多く、桟敷では料理も取り寄せたりと観るということには集中せずで、そうした観客を考慮した出し物が要求された。オペラの題材についてもヴェネツィアでは、紋切り型の古代ドラマは受けなかった。古代の題材を用いたとしても、本筋が見えないほどの娯楽的要素を挿入することが多かった。ドラマの統一はなくてもきらびやかな場面が入れ替わり現われ、際立った対照と効果が満ちていた。さまざまな舞台効果と巧みな機械仕掛が、かってない発展をとげた。空想的でスペクタクルな舞台作りが行われた。桟敷では料理も取り寄せて楽しんだという。

<物語>


 物語はBC.1200年頃のトロイア(トロイ)戦争後の話の一つである。ギリシャとトロイア(現トルコ、トロイア)の戦争で貢献したオデュッセウス(伊語ではウリッセ)の話である。彼が故国イタカ(イタケ)島に長く帰国する前に、多くの冒険を経験した。彼を待ちわびる妻、しかも彼女は、すでに夫は亡くなったかもしれないとも考え始めていた。


プロローグ

 人間のはかなさを表象する人物がにいる。時の神テンポ、愛の神アモール、運命の神フォルトゥーナが登場して人間の複雑な運命を語り合ていた。「ウリッセの帰還」の物語が暗示されていく。


第1幕

 ギリシャ、イタカ島(ギリシャ西岸沖のイオニア諸島の一島)の宮殿に国王ウリッセの帰国を待ちわびる王妃ペネローペの姿があった。彼女の乳母が慰めるが、王妃の嘆きは止めどもない。宮殿の小姓と小間使いが、新しい愛を拒否する王妃の心を軟化させようと企んでいる。

 海神ネプチューンは、人間が戦いを望む愚かしさをあざ笑っている。父神ゼウスが現れ、ヌプチューン(ポセイドン)にウリッセに対する処遇をゆだねた。

 この時、ウリッセは故国イタカ島へ向かう船の中にいた。ウリッセの船は難破する。海岸に流れ着いたが、そこはなんとイタカ島であった。ミネルヴァ女神が現れ、宮殿では王妃に多くの求婚者がまとわりついていると告げる。彼に老人の物乞いに変装させ、所持していた宝物は洞穴のニンファたちに預けられた。イタカ島の宮殿では王妃が、小間使いから新しい愛を求めるようにそそのかされていた。


第2幕

 物乞いに姿を変えたウリッセが、かっての忠臣、年老いた羊飼いエウメーテの所へ現れた。何も気づかない心やさしい羊飼いは、彼を丁重に迎える。姿を物乞いに変えたウリッセは、王は生きておられますと羊飼いに告げる。そこへ父を捜すために旅に出ていたウリッセの息子テレーマコが帰還し現れる。感極まったウリッセは、自分は父であると告げる。そして先ず母の所へ行くよう命じる。

 宮殿では小姓たちが、王妃の頑なさを嘆いている。多くの求婚者が王妃を取り巻いているのに、愛を乞うが受け入れないからである。
 その時、羊飼いエウメーテがやって来て、息子テレーマコの帰還を王妃に告げる。王妃に幸運が巡ってきたと述べる。王妃は信じることはできなかった。追い打ちをかけるように求婚者たちは、黄金の贈り物で心を捉えようと攻勢に出る。

 そこへ羊飼いが、姿を変えたウリッセを連れて来ていた。宮殿の家来イーロは、貧しい身なりのウリッセを馬鹿にする。それでもウリッセはイーロと戦いを挑む。なんとウリッセが勝ってしまう。真相を知らない王妃は、この物乞いに敬意を示した。そこで王妃は、ウリッセが残して行った弓をひくことができる人と結婚すると言い、約束してしまう。


第3幕

 同じく王妃の宮殿。王妃の試みに求婚者一同は挑戦するが、だれもその弓に糸をかけようとしても届かない。これを見た姿を変えたウリッセは申し出た。なんと見事成し遂げた。そしてさらにウリッセは、その軽薄な求婚者たちを弓で撃ち殺してしまう。これを見たこの求婚者たちに媚び入っていた家臣イーロは、絶望とショックのあまり自殺してしまう。

 忠臣であった羊飼いが王妃に事の真実を告げても、王妃はかたくなに信じない。見かねたミネルヴァ女神は、ジュノーネ女神に神に取り次ぐことを願った。ジュノーネ女神は父神ゼウスに取り次ぐ。ゼウスはすでにすべての解決をネプチューンにゆだねていた。乳母が王妃に夫ウリッセの体にある傷跡をかの男に見たと告げるが、未だ王妃は信じない。ついに姿を変えたウリッセ自らが王妃に寝台に飾られたデイアナの絵について述べ始めると、ついに彼女の閉ざされた心は開き、この男がウリッセであると認めた。かくして二人は幸せな再会を果たすのであった。

http://pietro.music.coocan.jp/storia/monteverdi_ulisse.html

3. 中川隆[-16320] koaQ7Jey 2021年9月16日 08:36:54 : 8vMnnZaGpD : ckdXOXUxaVRkdnM=[5] 報告
モンテヴェルディ作曲 オペラ『ウリッセの帰還』プロローグと全5幕
http://baroqueopera.html.xdomain.jp/Il%20Ritorno%20D'Ulisse%20in%20Patria/Il%20Ritorno%20D'Ulisse%20in%20Patria.htm


台本:ジャコモ・バドアーロ


Claudio MONTEVERDI(1567-1643)"Il Ritorno D'Ulisse in Patria"

Libretto da Giacomo Badoaro


NAXOS MUSIC LIBRARY


Sinfonia Avanti il Opera
 
プロローグ
(はかなき人間、時、運命、愛)
はかなき人間 私は死を逃れえぬ者、その名は人間。あらゆるものが私の心を悩ませ、ほんの僅かのことさえ私を打ちのめす。
何故なら私を創造した「時」が、この私に戦いを仕掛けてくるのだから。
 
時   何ものにも安住の地はない、この私の牙を前にしては。
  噛みつぶし、呑み尽くし、逃げられはせぬぞ、おお、人間どもよ、
  この身、姿かたちはなけれども、私には大いなる翼があるのだから。
 
はかなき人間 私は死を逃れえぬ者、その名は人間。安寧の場所をあてどなく探まわる。
何故ならこのうつろい易い人生は、「運命」の遊び道具なのだから。
 
運命   喜びも悲しみも、それは私の心しだい。
  盲目にして耳なき私は、見ることもしなければ聴くこともしない。
  富める者にも権力ある者にも、気まぐれの命じるままに振る舞おう。
 
はかなき人間 私は死を逃れえぬ者、その名は人間。花咲ける夏ような活力も消し去るような、
愛という名の暴君の奴隷。
 
愛   神々でさえ傷心の虜にしてしまうこの私、世界は私を愛と呼ぶ。
  盲目の射手、裸の翼、
  私が放つ矢に抗い避けようとしても、それは虚しき試み。
 
はかなき人間 惨めなるこの私、その名は人間。
盲いたこの愚か者が何かにすがろうとも、それはただの徒労に終わる。
 
時、運命、愛   私によって苦悩を背負い、
  私によって貶められ、
  私によって生気を奪われる。
  そうとも、汝ら人間よ、
  時は責め苛み、
  運命は罠を持ち、
  愛は矢を放ち、
  情け容赦もなく、お前が安らぐことはさらに無い。
  
Ritornèllo
 
第1幕
 
第1場
(王宮にて。ペネローペとエリクレア)
 
Preludio
 
ペネローペ 私は悲しみの王妃。悲痛なこの苦しみに終わりなどないように思えます。
待ち侘びているあ人はついに来ぬままに、年月だけが過ぎ去っていくのです。
この悲しみはいつまでも、そう、終わることなく続いていくのですね。
苦悩のうちに生きているであろうあの人にとっても、時の流れは理不尽なものであることでしょう。
希望は輝きを失い、老いさらばえて、私に寄る不運の年波は、もう安らぎも幸せも約束してくれない。
 
忘れ得ぬあの日から、もう20年の月日が経ってしまいました。
そうです、あなたを奪い去り、あの傲慢なトロイがあなたの祖国を踏みにじり、滅ぼしたあの日から。
トロイはその不正のために正義の業火に包まれ、その罪は焼き浄められました。
けれども、何ということでしょう、他の者の思い込みと讒言によって、この身が苦しみの後悔に晒されることになろうとは。
 
ウリッセよ、賢く智慧ある人よ、不義を許さぬ者の矜持を以て、そのわざを磨き、
罪を冒せし者たちへの復讐の炎を燃やしたあなた、
あなたは悪意の敵たちのただ中で、貞淑なるあなたの妻を見捨ててしまわれたのですか?
その妻が危機的な状況の中で、あるいは死んでしまうかも知れないというのに。
  全ての別れは、再会を待ち望むもの。
  でもあなただけは、望郷のお心をお忘れになってしまわれたのですね。 
  
エリクレア このエリクレアも胸が痛みます。苦しみを同じくする私が、あなた様のお悲しみをお慰め申し上げましょう。
ペネローペ でも私の運命が変わることがあるかしら?運命の女神といえど、岩のような大きな力を動かすことはできない。
たくさんの人を乗せて荒波を越えていく帆船も、私のために風を集めることはない。
まだしも他の人々のためになら神様も、天空を行き交い、あるいは留まる星々にその姿を変えてくれるでしょうけれど。
  どうか帰ってきて、ああ、祈るしかない、ウリッセ、帰ってきてと。
  
ペネローペはあなたを待っているわ。無垢のため息とともに、泣きながら、
そして頑ななやくざ者達に対してあなたへの操を守りながら。
無慈悲な仕打ちによって汚される名誉がいつか報われるというなら、私も我慢いたしましょう。
けれど、この私の心の傷は、運命というものをお恨みいたしますわ。
ですから私は、あなたのために、運命の神様、天界の神様に戦いを挑み、不和の種を播くことといたしましょう。
  どうか帰ってきて、ああ、祈るしかない、ウリッセ、帰ってきてと。
  
エリクレア 別れも再会も、めぐる星には敵わないものです。ああ、再会のない別れというものはありませんですわ。
ペネローペ   海に凪ぎが戻るように、
  西風が草原に帰るように、
  夜明けが優しく太陽に呼びかける時、
  それは夕べに別れた明き一日の再来。
  霜は大地へと戻り、
  岩山は地中へと没し、
  そして風がすべるように海へと帰っていくように。
故郷を遠く暮らす者は、至高の心と繊細なる肉体とを併せ持つもの。いずれ人は死に、魂は天へと戻ってゆく。
その肉体はといえば、かりそめの姿をこの世に晒し、やがて灰塵に帰してゆくのです。
あなたはお帰りになる機を失ってしまわれたのですね。
もうこれだけ私の苦しみを長引かせになったのですから、お戻りください。
私は自らの死さえも見つめながら、そう祈っているのです。
  どうか帰ってきて、ああ、祈るしかない、ウリッセ、帰ってきてと。
 
第2場
(メラントとエウリマコ)
 
Preludio
 
メラント   恋する者の激しい想い、何と苦しく痛みに満ちていることか。
  けれどやがては報われるもの。たとえ始まりが苦悩の中にあったとしても。
  心が燃えるというのね、ならばそれは悦びの炎。
  心に愛があれば、恋のゲームは終わることはないわ。
 
エウリマコ   僕の可愛いメラント、メラント、君が欲しいのさ、
  君の歌声はこの心を奪い去ってしまう。
  そしてその表情のなまめかしさときたら。
  僕の可愛いメラント、君の全てが甘い罠なんだ。
  でもそうでもなければ、人生なんてきっとつまらないものになるだろう。
  
メラント   お茶目なおしゃべりさん、
  あら、美人をその気にさせる術をよく心得ているのね。
  あなたのために、しっかりお化粧しているのよ。
  あなたの甘い嘘で、私を口説き落として頂戴な。
 
エウリマコ   好きでもない女性を嬉しがらせる嘘なんてついちゃいけない。
  女神のような君への熱い想いを偽ってまで。
 
メラントとエウリマコ   互いの愛は燃え上がるよ、
  恋人につれなくしたり、冷たい恋人を愛そうとしている者を笑ったりしちゃ駄目なのさ。
  
メラント あなたへの思いがこの身をかき立てるわ。ねえ、大好きなエウリマコ、遠慮も後悔する必要もないの。
あなたの胸の上で思い切り戯れたいのよ。
エウリマコ それじゃあ、この国をいっそ砂漠にでもしてしまおうか。
そうすれば、詮索好きな連中も僕らのお愉しみを邪魔立てすることは出来ないし。
 
メラントとエウリマコ   恋に燃え上がったこの心に、
  全ての遠慮は疎ましくうつる。
 
エウリマコ ときに、あの美しいペネローペが彼女の求婚者達の言うことに応じないとしたら、
僕らのこの秘密の恋も安全とは言えないじゃないか。だから、何とかして彼女をたき付けてほしいのさ。
メラント ええ、もう一度、あのお方の頑ななお心に働きかけてみるわ。
  体裁ばかりをお気になさっているんだから。
 
メラントとエウリマコ   あなたは我がいのちの恋人、そして悦び。
  こんなすてきなご縁は誰にも壊せやしない。
 
第3場
(ネレーイドとシレーヌの合唱)
 
Preludio
 
ネレーイド   その雄叫びを鎮めよ、お前のその雑音と軋みを。
  風、そして海よ、わかっているのか!
シレーヌ   風よ、鎮まれ、
  波よ、凪へとうつろえ。
両者ともに   この者の安らけき眠りが破られませんように!
ネレーイド   お黙りなさい、シレーヌ!海神ネトゥーノも黙したのです。
  その風も止めるのよ!
シレーヌ   あなたこそ静かになさいな、ネレーイド!怒りを抑えて黙したのです。
  その波も止めなさい!
両者ともに   ウリッセが眠りについている。この者を起こしてはいけません!
 
第4場
(歌と語りのない場面。眠りに落ちたウリッセを乗せた船が近づいてくる。
ウリッセを目覚めさせぬよう、終始穏やかな調べが奏でられる)
 
Sinfonia
 
第5場
(海辺にて。ネトゥーノとジョーヴェ)
 
ネトゥーノ (海の中より現れ出でて)
  人間どもの高慢さは、あの者たちの罪悪の因だ。
  地上を遠く離れた天界の慈悲を以てしても、ああ、その不実を許すことは出来ぬ。
  奴らは運命に対して刃向っているのだ。
  奴らの自由はすべてをなそうと企み、あらゆるものを危機にさらし、その上強情だ。
  その自由は、天界とものごとを競うようになるだろう。
  むろん、恵み深きジョーヴェが、人間どもの違背を大目に見て、
  いかずちをその手のうちに握っていようと思う間は、平穏のまま過ごすことも出来るだろう!
  だがこのネトゥーノは、人間どもによる侮辱を許すことは出来ぬ。
  
Sinfonia
 
ジョーヴェ   大海の王神よ、神々の王の示す徳に対して、何の不満があり、かくも不平を言うのか?
  余がジョーヴェである所以は、権力よりもその慈悲深さにこそあるのだ。
  いかずちはものごとを破壊するが、慈愛は得心させ、崇敬の心へと導く。
  大地に叩きつけられた者は、もはや崇め奉ることも出来ぬではないか。
それにしても、いったいいかなる道理で、お前はそうも怒り狂い、
このジョーヴェの慈悲を咎めようとするのか?
ネトゥーノ 生意気なパイアキアの者どもは、この私の託宣に反して、ウリッセを故郷イタケーへと導いた。
それと同じ図々しさを以て、神格を侮辱した。
このような邪を許すのは慈悲などではなく、神としての不名誉と言えはしまいか。
神の聖性など絵空事に過ぎぬと言うのか?
ジョーヴェ お前の怒りが分からぬわけではない。というのも、余もお前たちも、眼にするところは同じなのだから。
いいだろう、向う見ずな人間どもを懲らしめてやるがよい。
ネトゥーノ   これで話はまとまった。始末に負えぬ奴らの驕り昂ぶりを厳しく罰してやろう。
  海の上を滑ってやってくる連中の船を、動かぬ岩に変えてやるのだ。
ジョーヴェ   ではそのお手並みを見せてもらうとしよう。波もまた、このジョーヴェに従うだろう。
  罪ある者は、その動きを奪われることで、その罪を贖うのだ。
 
第6場
(パイアキア人達の歌声が船の上から響く。ネトゥーノがそれを聴いている)
 
パイアキア人たち   この世界の、まさにここにありて、
  この男は欲する何ものも、欲する時にいつでも、
  なすことが叶う。
  何故なら神々は我らの行いに気をとめることはないから。
 
ネトゥーノ 寄せ来る波よ、岩へと姿を移せ。
(船を岩に変える)
  パイアキアの者どもは知ることだろう、
  神意を伴わぬままにして、この男を故郷への帰路につかせることは出来ぬことを。
  
第7場
 
ウリッセ (目覚めて)
まだ夢の中なのか、目覚めているのか?ここは何処の国であろう?この風と、私が踏みしめているこの大地は?
夢なのか、目覚めているのか?起こっていることのことごとくが、苦難の兆しなのであろうか?
いったい何が、私の休息を恐ろしくも不吉なものに変えてしまったのか?
いったい何処の神が、眠れる者を守ってくれるのであろう?
おお、忌まわしい眠りの神よ、死神の眷属とお前を呼ぶ者さえある。
一人ぼっちで、見捨てられ、惑わされ、欺かれたこの私。
 
お前のことはよく知っているぞ、諸々の過ちの根源よ、私は私の罪過だけを背負う。
暗黒が眠りの姉妹あるいは伴侶であるならば、
その暗闇に身を任せる者は、痛みを感じることもなく、泣き言をいう必要もないだろう。
おお、常なる怒りにまみれた神々は、眠れるウリッセを慰めることなど決してないだろう。
その神意とやらで、人間達を無理やりにねじ伏せるがいい。
だが、死者の平和まで奪うのはやめるのだ。
 
裏切りのパイアキア人達よ、約束してくれたのではなかったか、全ての宝物とともに、故郷イタケーへと、
私を安全に送り届けると。
信用おけぬパイアキア人ども、お前達はいかにして、この吹きさらしの、寂しく殺風景な岸辺に私を置き去りにしたのか。
波と風ばかりの見知らぬ場所に、惨めに見捨てられたようにして。
 
ジョーヴェよ、かくも由々しき犯罪が見咎められることなく置かれるならば、やめてしまえばよいのだ、
そんないかずちを振り回すことなど、やめてしまえばいい。
運任せの方がまだましというものだ。北風の神ボレアのほうが、まだ役に立つ。
そして、非情なるパイアキア人ども、お前達のぼろ船は、風に舞う羽毛のように嵐にはたやすく呑み込まれ、
あるいは海中の岩山のように、順風だというのに微動だにしない。
 
第8場
(羊飼いに変装したミネルヴァ、ウリッセ)
 
ミネルヴァ   どうしたというのでしょうか?ここに至るまで、邪な欲を疎み、あらゆる苦悩と痛みに堪えてきた若者よ。
 
ウリッセ 〔独白:天は常に人の困難にありて助力し給う。
若きこの身と心は、欺瞞から遠くあり、港に安らぐことも叶うであろう。
その胸に一点のやましさもなく、その顎には老獪の髭もないのだから。〕
 
ミネルヴァ   若さ、それは素晴らしき宝物。心を喜びで満たしてくれる。
  若き日のため、時はゆっくりと歩み来て、若き日のために愛は飛んでやって来る。
 
ウリッセ 優しい羊飼いよ、この傷心の旅人のために、助力がもたらされるよう祈ってくれ。
そして、どうか力をかしてほしいのだ。
  ここは何と言う名の海岸なのか。
 
ミネルヴァ この地はイタケー。そう、名の知れた港町にして、海に抱かれし美しの岸辺。
この素晴らしき場所に至りついたことは、まことに喜ばしく、感謝すべきことです。
ところで、あなたは何処からやって来て、何処へ行こうとしているのです?
 
ウリッセ 私はクレタから来たギリシャ人だ。私を亡き者にしようとする者の手から逃れてな。
そうしたところへ、パイアキア人が、私を匿ってくれて、エリデへと私を送り届けると約束してくれた。
ところが、怒り狂った海と逆巻く風雨が、私をこの岸辺に打ち上げたのだ。
辿り着いたこの場所で時をやり過ごしながら、波と風がおさまるのを待ったが、いつしか眠りに落ちてしまった。
だから、薄情なパイアキア人達がこっそりここから出て行ったことなど、知る由もない。
そして、私はこの見知らぬ海辺に、誰もいない砂の上にただ一人、残されたというわけだ。
やがて眠りから醒め、こうして悲しみにくれている。
 
ミネルヴァ あなたは長いこと眠っていたのですから、そのとき見た夢の余韻を思い出し、話してごらんなさい。
  なるほど、ウリッセは狡知に長けている。
  けれども私、ミネルヴァは賢者だ。
  だからウリッセ、私が教えることをしっかりと聞くのです。
 
ウリッセ   神ともあろう者が、人の姿を身にまとっている。
  こんなことがあるのだろうか!
天界ではこんな仮装がおこなわれているのか?
感謝しましょう、守護神たる女神様に。
あなたの恩愛に導かれてこそ、危機をくぐりぬけ、今あることをよく知っています。
もちろん、あなたの賢智に従いましょう。
 
ミネルヴァ まだあなたが知らないことがあります。
あなたは見ることになるでしょう、図々しくも厚かましい態度で言い寄る求婚者達、つまりあなたの敵を。
そして、確固たる操をつらぬこうとしている、ペネローペのまごころを。
 
ウリッセ   ああ、このウリッセは幸せ者だ。
 
ミネルヴァ   では、その泉の水にあなたの顔をつけるのです。
  誰も見知らぬ老爺に変えてあげましょう。
 
ウリッセ   早速言われたとおりにしよう、これで自分の家に帰れる。
 
ミネルヴァ 私はトロイアが復讐の業火の中に瓦解しゆくのを見ました。
あとはウリッセ、あなたを自らの宮殿に返す仕事だけが残っているのです。
それが、激しい怒りに駆られた女神の意志というもの。
愚かな人間達に伝えましょう、神々の仲違いに余計な手出しは無用なのだと!
天界の正義は、あなた達には関係のないこと。あなた達の領分は、このせせこましい地上の世界なのですから。
 
ウリッセ わかりました、賢き女神よ。この白髪は、私の年を誤魔化すためのものであると。
 
ミネルヴァ それでは、あなたの貴重な戦利品の数々を、
天の聖なる妖精、ナーイアスの洞窟にとひそかに送り届けておきましょう。
 
ミネルヴァとウリッセ   妖精達よ、よく見守るようにせよ、
  宝玉や黄金の数々を、
  装束やそのほかの宝物を。
  聖なる汝ら妖精達よ。
 
第9場
(ナーイアスの合唱、ミネルヴァとウリッセ)
 
二人のナーイアス   麗しの女神よ、あなた様のみ心を実行し、
  ご意志を心に留める用意は出来ております。
  この洞も泉も、あなた様の喜びの源となり、
  歓喜が溢れだしましょう!
  そうですついに、イタケーはウリッセ帰還の喜びにむせぶのです。
 
ミネルヴァ それでは、アレトゥーサの泉へと赴くのです。
年老いてはいますが、あなたに忠実な従僕、牧人エウメーテがいます。
彼の羊群を守りながら、私があなたの息子テレーマコを連れて、スパルタより戻るまで待つのです。
私の教えに従うべく、心の準備を整えながら。
 
ウリッセ   ああ、このウリッセは幸せ者だ!
  かつての思い煩いを肩より降ろし、嘆くのをやめよう。
  優しい歌声がお前の心を喜びに解き放つ。
  人間よ、もう絶望することはない。
 
Interludio
 
  ああ、このウリッセは幸せ者だ!
  ものごとの移ろう中に、悲喜のこもごも、戦さも平和も、たくさん知ってきた。
  そのことを今は喜ぶが良い。 
  人間よ、もう絶望することはない。
  
第2幕
 
第1場
(王宮の宮殿にて。メラントとペネローペ)
 
ペネローペ ああ、神様、どうか今日が幸いな日でありますように。
メラント ご機嫌うるわしゅう、奥方様。
慎重さと分別は、人生に退屈しかもたらしませんわ。
私は、そんなお高くとまった方にはなって頂きたくないのです。
旦那様のお骨は、奥方様のお悩みの多かろう少なかろうに関係なく、灰塵に帰してしまわれたのです。
死に慰めを求めるなんて、愚かですわ。
美しい女は戦いを引き起こすもの、戦い好きな連中は、死神を怒らせるものです。
何故なら、彼らは安逸ばかり求めようとするから。
味気なく頑なな愛にこだわるばかりでは、女盛りも無駄に萎れてしまいますわ。
相手を失ったあなた様のお美しさが嘆いておられます。
絶え間ない涙の後でも、あなた様は宝瓶宮のようにお美しいのに。
  そうです、愛ですわ、優しく甘い愛の輝きのために、
  あなた様の憂鬱を、あの男達の投げる矢でもって、愉しみへと変えておしまいなさい。
 
ペネローペ それは軽薄な過ちというものです。浮ついた心は、いつまでも一か所に留まることはありません。
上っ面だけの男達の幸せは、稲妻の閃光ほどの長さしかもつことはないのです。
彼らは試練を愛そうとはしないでしょう、一度苦しみを味わったなら、もう決して振り向きはしない。
 
第2場
(森の中。エウメーテが一人でいる)
 
エウメーテ おお、高貴なるお方が、何と多くの不運と不遇とに見舞われてきたことか!
涙が王笏をぬらしているというのだ、羊飼いの杖ではなく。
  絹の織物と黄金が、かくも大きな苦悩を身にまとわせている。
  貧しく質素な生活こそ、富と名誉に包まれた人生より安心だ。
  丘よ、広大な大地よ、そして森よ、
  人の幸せが永らえるとするならば、それはお前達の懐の中、待ち望まれし安楽の褥の中なのだ。
  緑萌える草原よ、お前の中にこそ、喜びの花々は咲出ずる。
  お前のもとに自由は実を結び、青葉繁れるお前こそが人々の憩なのだ。
 
第3場
(エウメーテとイーロ)
イーロ   家畜の番人は草原や森が大好き、いつものようにお喋り三昧。
  けれどその葉っぱたちは羊たちの食い物、人間様のじゃないや。
  おいらは王様、君はここじゃ牧人さ、一日中森にいれば楽しいだろう、
  おいらは君の作ったご馳走をたらふく頂くのさ。
 
エウメーテ 大喰らいのイーロめ、おまけにお前は大酒呑みだ。つまらぬお喋りで私の邪魔をするな。
あっちへ行け、さっさと消え失せろ、どこへでも行って、腹いっぱい死神でも喰らっているがいい。
 
第4場
(エウメーテと老人の姿になったウリッセ)
 
エウメーテ 偉大なるウリッセ、人々が滅び、町が焼ける様は壮観だった。
けれどもトロイア陥落を怒る神は、あなたにその代償と犠牲を求めることでしょう。
 
ウリッセ もしお前が、今この時にウリッセの帰還を切に願うならば、悲惨な運命の中で気持ちも萎え、
あらゆる助けを失ってしまったこの惨めな老人のことをどうか分かってほしいのだ。
死に至るまで、お前の助力をあてにしているということを。
 
エウメーテ   あなた様は私の客人です。
  ここではどうぞごゆるりとお過ごしください。
  托鉢の者こそ神々のお気に入り、ジョーヴェの友人なのですから。
 
ウリッセ   ウリッセよ、ウリッセは生き続ける、
  再び己の家をこの目にするまでは。
  そしてペネローペをこの腕に再び抱きしめるまで。
運命の神にも憐れみの心はあるはず。彼女はきっと帰らせてくれるだろう。
私の言うことを分かってくれるか、牧人よ。
 
エウメーテ   あなた様をお迎え出来て幸せだ、英雄の困苦を救うことが出来るとは。
  永きにわたる私の苦しみも、あなた様ゆえに救われる。
  さあ、私について来てください。安全な場所へとご案内いたしましょう。
 
Ritornèllo
 
第5場
(馬車上のテレーマコとミネルヴァ)
 
Preludio
 
テレーマコ   喜びの旅路、祝福の道行きよ!
  神の御す馬車はすべるが如くに進む、光となって。
  喜びの旅路、祝福の道行きを!
 
ミネルヴァとテレーマコ   全能の神は天空を駆け巡り、
  疾風に乗りて進む。
 
ミネルヴァ さあ、漸くあなたの父上の国に着きました、賢明なるテレーマコよ、この私の教えを忘れてはなりません。
もし正しい道から逸れるようなことがあったなら、あなたには危険が降りかかるのです。
 
テレーマコ 女神さま、あなたの教えを守りますとも。どのような危険も怖くはありません。
 
第6場
(エウメーテ、ウリッセとテレーマコ)
 
エウメーテ   ウリッセの偉大なる子息よ、
  そなたの母上の光明のために戻って来たのであるな?
  ウリッセの偉大なる子息よ、
  そなたはついにこの地へ至りついたのだ、
  失われた名誉を、ウリッセの家を再興するために。
  今ぞ去れ、憂いと涙よ。
  さあ旅人よ、歌声を以て我らの喜びを祝おう。
  
エウメーテとウリッセ   緑なす岸辺よ、喜びのこの日にありて、
  春の息吹と花々を以て汝を祝福しよう、
  そよ風はキューピッドと戯れ愉しみてそなたを迎え、
  天界はこの帰還を喜びを以て讃える。
テレーマコ この歓迎に気持ちも明るくなりました。けれど、まだ心配です。心は未だ満たされていない。
 
エウメーテ そなたが眼にしている、どうしようもなく年老いて、粗末な身なりをしたこの男こそが、
  私に教えてくれたのだぞ。彼こそがウリッセだと。
  
ウリッセ 牧人よ、それが真実でないとしたら、ここにある石が私の墓石となり、
さんざん私を苛んできた死神が私にとどめを刺すことだろう。
 
エウメーテとウリッセ   善き希望がこの心を喜び立たせる。
  幸いなる報せが人々を歓喜で包み込む。
  たとえそれが完全なものではないとしても。
 
テレーマコ 急いでくれ、エウメーテよ、王宮へと急ぎ行き、そして母上に伝えてくれ、この私の到着を。
 
第7場
(テレーマコとウリッセ。ウリッセの頭上に、天から火の矢が降りかかると、大地が大きく裂け、ウリッセが呑み込まれる)
テレーマコ これはどうしたことだ、ああ、私が見ているものはいったい?
大地が裂けて、生きた人間を呑み込んでいく、血に飢えたようなその貪欲な様は。
旅人の足跡もここに途切れ、その肉体が岩山の臓腑に押し込まれてしまうなんて?
 
何て奇怪な光景だ?この国で、いったいこんなことがあっただろうか、この国もまた、こうして生ける者を苦しめるのか?
違うか、ミネルヴァよ、あなたは私を父上のもとに戻してくれたのではなかったか?そうだ、父上の故国へと。
けれど、どうして?
  
私の言葉が足りなかったのか、私の思いが至らなかったのか、だから、私の偽善に応えて、
墓石と死を求めたというのか。
こうして天の罰を受け、死者として身を晒さねばならぬとは、ああ、愛する父上、こんなにもひどい仕方で、
神が私に父上の死を報せようとするとは!
ああ、大地は驚異と奇怪を以て、私と戦おうというのだ!
 
(そこへ、ウリッセが本来の姿に戻って再び現れる)
 
これは何の前兆だ?この目の前にあるものは?
死人が息を吹き返す、もう悲しむことはない?
  死を通して若き命が甦るのならば。
 
ウリッセ テレーマコよ、お前の嘆きは喜びに変わるだろう、あのみすぼらしい老人の代わりに、こうして父が現れたのだから!
 
テレーマコ ウリッセよ、自らの血統にいくら誇りを持とうと、人は己の死の運命を変えることなど出来ない。
ウリッセ家とて例外ではないのだから、これは神々の戯れか、さもなければあなたが幻術を使ったに違いない。
ウリッセ ウリッセだとも、私はウリッセなのだ。ミネルヴァが証明してくれるだろう。
宙を駆け、お前をここに連れて来てくれた彼女が、私の姿を変えた。
だから、私は安全に、誰にも知られずここに来られたのだ。
 
テレーマコ ああ、父上、安堵のため息とともに、名誉ある我が御親の前に、
  こうして首を垂れましょう、歓喜とともに。
子としての愛が、涙を呼び起こします。
 
ウリッセ おお、再会を待ちわびた息子よ、一途なる勇気を持てる、愛する我が子、
  お前をこの胸に抱きしめよう。
父の愛もまた、この眼を涙で潤ませる。
ウリッセとテレーマコ   行くのだ、さあ、行け、
  お前の母のもとへと赴くがよい。
  私もすぐに続こう、
  だがまずは、あの老いさらばえた男の姿に戻らねばならぬ。
Coda
第3幕
(王宮にて。メラントとエウリマコ)
Preludio
メラント ねえエウリマコ、結論から言うわ、あのご婦人の心はまるで岩のようだわ。
言葉でも動かなければ、魔術も効きはしない。
愛しい者を失った悲哀に沈んだまま、頑なに心を閉ざしているのよ。
誠実であろうと傲慢であろうと、どうあれ、あのお方は石のように硬く、ぐらつくことがない。
相手が敵であろうと愛を囁く者であろうと、あのお方は癇癪ではなく金剛石のような心で対するの。
エウリマコ さてさて、詩人たちの歌が聴こえるようだ、ご婦人は移り気で、男達の気をそそると。
メラント 奥方様を新しい恋に仕向けようとしたけれど、どんな言葉も祈りも通じはしないの。
もうお手上げよ、だってあのお方は、愛することも愛されることも嫌がっているのだから。
エウリマコ   思い煩い、憂い悩みも、それを好むというならば、
  太陽を覆い隠す雲の暗黒を楽しむがよいだろう。
メラント ペネローペは悲しみと涙のうちに勝利をおさめるのね。
  けれど愉しみと悦びの中に、このメラントは幸せを感じるの。
  あのお方は憂いを飼いならすけれど、
  私は愛のお遊びが好きなのよ。
  いろんな恋があってこそ、この世は美しいのですもの。
エウリマコ   悦びあい、笑いあって、
  憂鬱なんか吹き飛ばすのさ。
メラント   睦みあい、歓喜にひたって、
  あんたが欲しい、と声に出すのよ。
第2場
(アンティーノ、アンフィーノモ、ピサンドロ、エウリマコとペネローペ)
アンティーノ 世間の王妃は侍女に囲まれているものですが、あなたを囲んでいるのは恋する者達なのです。
我らはあなたはの偉大なるお美しさ、そしてゆかしきその涙に敬意を表しているのです。
アンフィーノモ、
ピサンドロ、
アンティーノ
  そうですとも、恋なのです、そうです、そうなのです、
  もう一度恋をしましょう。
ペネローペ   私は恋などには落ちません、だめです、あり得ない、
  恋など私にとって難儀でしかないのですから。
  あなた方は、こぞって私を侮辱しようというのですね、
  私に情熱の炎を燃やしていると言うけれど、私はそんなゲームに興味はない。
  炎は間近にではなく、遠くに見てこそ美しいもの。
 
ピサンドロ   葡萄のつるも木肌に巻きつかなければ、
  秋の房も実らなければ、五月の花ざかりもないというのに。
  花開くことがないならば、根ごとに引き抜かれて足で踏まれて、
  そうされたって仕方がないのだよ。
 
アンフィーノモ   香り立つ杉の樹よ、お前が接ぎ木されないのなら、
  実りのないままに棘だけに覆われてしまうんだ。 
  けれどちゃんと接ぎ木をすれば、
  棘も実や花をもたらしてくれるのに。
アンティーノ   つたの葉は冬でも青々と萌え繁る、
  そうですとも、鮮やかな緑をしたたらせながら、
  それも育てる手があってこそ。
  さもなければ、その愛も雑草に呑み込まれてしまいます。
アンフィーノモ、
ピサンドロ、
アンティーノ   そうとも、恋さ、そうなんだ、そうなんだ、
  もう一回、恋し合うのさ!
ペネローペ 私は恋など求めはしません、そう決して!
複数の磁石の間でどっちつかずになる鉄のように、それぞれ異なる方へと引き寄せられていく、
そんな三つの愛など、私には不審でしかありません。
涙と苦悩は、恋することなど出来ないものです。悲しみと痛みは恋の敵ではありませんか。
 
アンフィーノモ、
ピサンドロ、
アンティーノ   それでは気晴らしに、踊りと歌は如何でしょう!
  王妃様、あなたを明るいお心にして差し上げますぞ、
  気持ちが浮き立てば、恋もまんざらじゃないと思えてくるもの。
第3場
 
Ballo
ピサンドロ、
アンフィーノモ、
アンティーノ   恋を知るご婦人こそチャーミングで美しい。
  まるで春の微笑みのよう。
  白髪の季節にそのやわ髪をなでたとて、
  悦びも愉しみも永くはとどまらぬ。
  ですから、さあ、いまこの時を愉しみましょう!
  ご婦人は恋しているほうが可愛らしい、
  まるで茨の中のバラのように。
  霜が降りてはその美も萎れてしまう。
  雲で濁る空は輝きを失い、
  分別ありげな目つきなど、もう心をそそることはないのだから。
Ballo
第4場
(エウメーテとペネローペ。舞台端に求婚者達がいる)
エウメーテ   大いなる報せをもたらすために参上いたしました。
  奥方様のご子息、テレーマコ様がお戻りになられたのです。
  そして、おお、誉れ高き王妃様、さらには、より大きな望みも虚しからず、ですぞ。
  我らが王にして、王妃様の夫、ウリッセ殿は生きておいでなのです。
  待ちわびたそのご帰還の時が、遠からずやって来ることでしょう。
ペネローペ そんな不確かな報せは、私の憂鬱を深めるばかりです。
それならいっそ、この惨めな私のほうをこそ、どうにでもしてほしい。
第5場
(アンティーノ、アンフィーノモ、ピサンドロ、エウリマコ)
アンティーノ 皆、聞いてくれ。まずいことになっているぞ、こうなったら、思い切った行動に出るしかない。
テレーマコが帰ってきた。いずれウリッセも戻ってくるだろう。
この宮殿で好き勝手をし、食い尽くしてきたが、奴が帰ってくれば、もうそうはいかない、
仕返しされるのがオチだ。
勇気ある者は、事をなすに遅れをとってはならない。
これまでは悪事も楽しみのためだったが、これからは保身の要だ。
気に食わない奴に厚意や親切を期待するなど、どだい馬鹿げているからな。
ピサンドロ、
アンフィーノモ   我らはウリッセに立ち向かおう。
  きっと奴に打ち勝ってみせるさ。
 
アンティーノ そうだとも、皆で力を合わせるんだ。ウリッセが帰ってくる前に、まずテレーマコを片付けてしまえ。
ピサンドロ、
アンフィーノモ、
アンティーノ   そうだ、そうだ、最大の憎しみは、最大の愛の産物なり。
  片や王国を打倒し、片や心を傷つける。
(一羽の鷲が求婚者達の頭上を舞う)
 
Interludio
エウリマコ 天が我らの言葉を聴いて、使者を寄こしたんだ、見てみろ!
あの鷲は天界の拒絶を意味している。
見ろ、おお、よく見るんだ、偉大なるジョーヴェの鳥は、我らの破滅を予言している。
皆殺しの、惨劇の予兆だ。そこへ道を踏み出すのは、神々の裁きを恐れぬ者だけだ。
アンフィーノモ、
ピサンドロ、
アンティーノ
  我らは恐れる、神々の怒りのつぶてを。
  神を畏れぬ者の罪は幾重にも大きい。
アンティーノ ならば、息子が救けに来る前に、何とかして王妃の心につけ入り、
彼女の歓心を買うために何か付け届けをしてはどうだろう。
そうだな、愛の贈り物といえば、黄金だな。
エウリマコ   そうとも黄金に限るのさ、黄金こそ愛の魔術師。
  どんな女も、たとえ石のような心の女でも、
  黄金と聞けば心を許す。
ピサンドロ、
アンフィーノモ、
アンティーノ 愛は心地よき音楽の調べ、ため息は歌。
  けれど黄金ほど美しい歌はない。
  与えぬ者とは愛さぬ者だ。
第6場
(森で。ウリッセと、剣術師の姿をしたミネルヴァ)
ウリッセ   天の神に導かれている、その同伴者である者が滅びることはない。
  偉大にして真実なる御業こそが我が使命。
  世が恐れるような行いではあるが、天はそれを守り給う。
ミネルヴァ   おお、勇猛なるウリッセよ、あなたの貞淑なる妻は、あなたを栄誉と勝利に導かんと、弓術の競い合いを切り出す。
  そこで彼女に群がる求婚者どもは最期を迎えることになろう。
  あなたが自らの弓を手にするや、雷鳴があなたを呼ぶ。
  あなたの剛腕より放たれし矢は、連中をことごとく刺し貫き、地に倒すことになるのだ。
  私はあなたの傍らに立ち、天のいかずちを以て軽薄なる人間どもを打ち倒す。
  連中は皆、あなたの復讐の餌食となろう。
  天の一撃を免れる者などいないのであるから。
ウリッセ   人間とは、常に真実に盲いたる者、
  神意を伺おうというに至ってさえ、そうであるに違いない。
  仰せの如くいたしましょう、ミネルヴァよ。
第7場
(エウメーテとウリッセ)
エウメーテ 私は眼にいたしましたぞ、おお、旅のお方よ、求婚者どもの慌てぶり、たじろぎようを。
すっかり意気消沈して、目を白黒させながら、恐れおののくその様を。
  世に知れ渡るウリッセの名を耳にして、
  邪なる心が凍りついたのでしょう。
ウリッセ   私もまた楽しいのだ、何故は定かではないけれども、笑いがこぼれてくる。
  理由はよくは判らないが、とても嬉しく、勇気づけられるのだ。
  そうだとも、心の底から喜びが湧いている。
エウメーテ 質素な食事で身体を整えたなら、急ぎまいりましょう。
分からず屋で軽薄なごろつきどもの面汚しぶりをご覧になってください。
ウリッセ 不遜の輩がこの地上にのさばることはない。傲慢なる者はいずれ打ち据えられる。
天のいかずちが、その高ぶった頭上に振り下ろされるのだ。
第4幕
第1場
(王宮にて。テレーマコとペネローペ)
Preludio
テレーマコ   多くの地をめぐった、長きに渡る旅の見聞は、数え上げればいとまがありません、母上様。
  けれど今は、あるギリシャの女の神聖な美しさについてお話いたしましょう。
その美しき女の名はエレナ。私の愛を受け止めてくれました。
私は彼女を見るなり、その姿が眼に焼き付き、光り輝くその瞳の虜になりました。
どうしてこの世界はパリスを満足させないのだろうかと思っていました。
レダの娘にとり、パリスはちっぽけな犠牲者。
弱きものは殺され、どんな大火災と言えど、あのときの炎と比べれば取るに足りないと見えたほどです。
私はその美しい瞳の中に、煌めきを見ました。トロイアを焼き尽くす火です。
その燃える瞳の中に、愛の占星術師は予兆を見たのです、そう、聖なる火が町を焼き尽くす様を。
確かにパリスは死にました。けれどもパリスは喜びの中にいたのです。
なぜなら、それはまさに、彼の不面目な人生への報いだったのですから。
けれども、死もまた大いなる喜びの見返りとはなりませんでした。
彼の重大な過ちは、きっと許されたのに違いないのですから。
  美しきギリシャは彼女の誇りある表情の中に映します、
  トロイアの罪に対する全ての裁きを。
ペネローペ 不吉な美、恥ずべき情熱です、心に留める価値もありません。
憎しみの種は、顔かたちの華やかさではなく、蛇の如きずるがしこさによって播かれるものです。
怪物は血を浴びることを愛でるもの。
忘却はそうしたいかがわしい記憶を追い散らしてくれます。
あなたの心は道を彷徨った挙句、あらぬ方向へと走ってしまったようですね。
テレーマコ エレナのことをお話したのには、意味があるのです。
私があの賑やかなスパルタにいた時のこと、突然、喜ばしく軽やかに空を舞う鳥たちに囲まれました。
エレナは予言者でした。そして、嬉しいことに、私にこう告げてくれたのです。
ウリッセは間もなく帰ってくる、
  そして求婚者どもを倒し、再びこの国を統治するであろうと。
ペネローペ 細い糸のような僅かな希望ですが、繋いでいきましょう。
小さな種も、大きな苗木へと成長するものなのですから。
  ですから私も、この胸の小さな希望の種を、
  大きな喜びに育てていきたいのです。
第2場
(アンティーノ、エウメーネ、イーロ、ウリッセとペネローペ)
アンティーノ いつものことだが、野暮天のエウメーネ、いつもお前は俺たちの邪魔立てをするんだ、
そうとも、俺たちの愉しみにけちをつけるのさ。
お前はじっさい邪魔者だ、こんなうんざりするような乞食を連れてきやがって、しきりに泣き言を言って、
俺たちの愉しみを食いつぶすことしかしないのだからな、呵々。
エウメーテ 運命の女神が、私をここへ、慈悲の隠れ家たるこのウリッセの家へと導いてくれたのだ。
アンティーノ あいつにはお前といっしょに家畜の番でもさせておけ。ここに連れて来るんじゃない。
何と言ってもここは、洗練された気品と自由と秩序の場なのだ。
エウメーテ 洗練された気品であれば、人の苦しみを喜ぶはずはなかろう。
そして偉大なる心ならば、揺籃より王に備わる憐れみ深さを持っているはず。
アンティーノ 厚かましい野郎だ。見下げ果てたお前のようなごろつきには、高貴なる者の振る舞いを教える必要もない。
お前のいかがわしい口が、王家のことを語るとは!
浅ましさにも程がある、さっさとここからいなくなってしまえ!
イーロ そうだ、出て行け、その足で今すぐにな。食い物目当てでここに来たのだろうが、俺のほうが先客だからな!
ウリッセ 彫像のようなそこの大男よ、私は白髪の老爺ではあるが、
  まだ心までは萎えてはいないぞ、
  もし王妃様がお許しになるならば、
お前さんのでっぷり肥えたその図体を、この私の足もとに踏みつけてやってもいい。野獣め、どうする!
イーロ ああ、いいともさ、喜んで相手になろう。子供じみたことをぬかす、しつこいジジイめ、喜び勇んで、
  貴様のそのヒゲを、一本ずつ引っこ抜いてやるぜ。
ウリッセ 力と勇気において私の方が劣っているというならば、倒されてやろう。ワラ袋野郎め!
アンティーノ 見せてもらおうじゃないか、お妃様、素晴らしい二人ですぞ、
  この各闘劇、面白き果し合いを。
ペネローペ この場をあなたにお預けしましょう、
  見知らぬ巡礼のお方よ。
 
イーロ おいらもあんたを認めてやるぜ、
  ヒゲづらの戦士さんよ!
ウリッセ   お前さんの勇気ある挑戦を受けて立つとしよう、
  太鼓腹の騎士殿よ!
イーロ (戦いを始める)
えい、えい、どうした、えい、やぁ、
さあ、かかってこい、そらそら!
Battaglia
  ああ、もう駄目だ、降参だ!
アンティーノ おい、お強いの、降参だと言ってるんだ、離してやれ。
イーロ、お前は食うだけは食うが、腕力はからっきしだな!
ペネローペ   勇気ある巡礼者よ、この王宮にしばし留まるが良いでしょう、
  敬意を以て、安全を約します。
  その粗末な身なりも、貧しき様子も、
  旅人故こそ、決して臆することはありません!
第3場
(ピサンドロ、ペネローペ、アンフィーノモ、メラントが加わる)
ピサンドロ 栄えある王妃様のみ前に、このピサンドロは跪きます。
寛大かつ惜しみなき運命の女神が、あなた様とともに新たなる幸せを求めることを、お許し下さることでしょう。
この王冠、力のしるしを、衷心からのお誓いとして差し出すものです。
この心より他に、さらに大いなるものをお捧げすることは出来ません。
ペネローペ 寛大な心にあふれた騎士殿ですわ、
王にふさわしく、間違いなくこの国を治められるお方でしょう。
アンフィーノモ もしその賜物をお受け下さるのでしたら、私もまたお捧げしたいものがございます。
私もまた、王たるべき者。この華麗なる杯をご覧ください。そして、王として相応しきこの外衣。
これらのものが、あなた様のお徳に対する、我が敬意の証しなのです。
ペネローペ 崇高な論戦、高潔な戦い、その中で与えるという行いを通して、思慮分別ある男性は愛を学ぶ、と。
アンティーノ お慕いするこの心は、あなた様が王妃様だからではありません。ここに跪く私にとり、あなた様は女神なのです。
ですから、あなた様に、芳香とため息と、請願と供犠としてこの黄金を捧げ、私の誓いと崇敬の証しとしましょう。
ペネローペ こうした豪奢な捧げ物に対する報いとしてでなければ、あなた方は理解できないのでしょうね。
これで女が身を任せるとしても、心が燃え上がっているとでもお考えでしょうか。
黄金ゆえに女が男を受け入れたとしても、それは男のためではありません。
それは黄金の力に身を委ねたということです。
さあメラント、急いでウリッセの弓と矢を持って来なさい。
あなた方のうち、この弓で矢を射ることの出来た者が、私を妻とし、この国の王となることにいたしましょう。
テレーマコ ウリッセ、何処にいるのですか、こんなたいへんな状況になってしまった。
私の嘆きが聞こえないのでしょうか?
ペネローペ どうしたということ、なぜそんな約束をしてしまったのか?私としたことが、そんな心とは裏腹なことを!
神様、私の祈りゆえに、この舌を以て、私にあの言葉を言わしめたのですね、
これらは皆、天と星々のなせる不思議な業なのだわ。
ピサンドロ、
アンフィーノモ、
アンティーノ   素晴らしい、全くもって申し分のない栄誉ですとも。
  歓喜と愛の勝利ですな。
  まことの思い、変わらぬ愛が、恋する者達の切なる嘆きを、心の動揺を、安心に変えてくれたのだ。
ペネローペ ここにウリッセの弓があります。愛の矢もまた、この私の心を射抜くものでなければなりません。
ピサンドロ、あなたにまずはお渡ししましょう。一番手です。
Interludio
ピサンドロ   愛の神よ、あなたは私の心を傷つける弓の名手だった、
  けれども今や、この勝利の力をこそ認めよ、
  私は言おう、かつて私の心を傷つけた矢が、今こそこの心を癒すのであると。
(必死に弓を引こうとするが、果たせない)
弓が引けない。腕も、手首も、全く動かせない。
我が力は我を見捨てた、なけなしの望みもこれまでというわけか。
Ritornèllo
アンフィーノモ   取るに足らぬ愛の神では、この弓の引き方などわかるまい。
  奴の投げ矢が人を傷つけるというも、それは単なる見せかけ、勇ましさの微塵もないさ。
  軍神マルスはそんな輩に従ったりはせぬ。
  そうとも、誇り高き戦いの神よ、我が勝利に助力したまえ。
  お前は私の武勇と、猛き勝利をたのみとしているのだから。
(何とか弓を引こうとするが、うまくいかない)
何て硬いのだ、ビクともしないじゃないか!
氷のように冷たい彼女の胸よ、どうしてもこの私を寄せつけないのだな。
Ritornèllo
アンティーノ   軍神マルス、愛神アモルよ、美の力の道を与えよ、
  誰がこの名声に打ち勝つことが出来よう、
  そうとも、勝てはしないのだ。
  ペネローペよ、そなたの美と徳において、
  この大きなる試練を我が身に引き受けよう。
(必死に弓を引こうとするが、ついに果たせない)
徳と勇気も歯が立たないのか。浮足立ったあまり勝利を逃してしまった!
ああ、これが現実なのだ、全てはそのままウリッセに残された。ウリッセの弓は、ウリッセだけを待つと!
  
ペネローペ 武勇を欠いては、王たる資格もまなありません。あるのはほんの分け前くらいでしょう。
気持ちやうわべだけでは、栄誉ある王笏を振ることは出来ないのです。
ウリッセと同じ徳を持つ者でなければ、ウリッセの宝を引き継ぐことは適いません。
ウリッセ 怖いもの知らずの若者が必ずしも勇気ある者とは限らぬように、
卑しき者が常に臆病であるというわけでもありません。
王妃様、私もまた、この試合に挑みたいという気持ちを抑えがたいのです。
僭越でないならば、報償は要りません、どうか私にその弓を引かせてはくれないでしょうか。
ペネローペ 老人よ、あなたの熱意を認めましょう。
  愛欲の火で恥を晒し顔を赤くしている、盛りのついた若者に、
  老いらくの者が挑もうというその勇気と名誉を。
ウリッセ この謙虚なる右腕が、おお神よ、あなたのためだけにこの弓を引く!
勝利を我に、おお神よ、我の差し出す供犠をお受け下さるならば!
(弓を引く)
ピサンドロ、
アンフィーノモ、
アンティーノ おお、何ということだ、信じられない、驚異の力だぞ!
(雷鳴が轟く)
ウリッセ   ジョーヴェがいかずちを以て復讐を呼びかけ給う。
  かくしてこの弓が矢を放たん!
Battaglia
  ミネルヴァよ、力を与えよ、さもなくば屈辱を。
  今こそ射とめようぞ!
  あの者らの死と破滅、その最期の時を!
Coda
第5幕
第1場
(イーロ一人で)
イーロ ああ、ひどい話だ、心が刺し貫かれるとはこのことだ、あの無残な光景、思い出すのも忌まわしい!
おいらは見ちまったんだ、求婚者達のなれの果てを。皆やられちまった。
食道楽もこれまでさ、この先誰が、腹いっぱい食わせてくれると言うんだい。ああ、嘆かずにはいられない!
イーロよ、あの輩達はもういないんだ、そうとも、あの豚肉どもがいなくなっちまった、ちくしょう、アテにしていたのに。
そうよ、今のお前さんに出来ることと言えば、苦い悔し涙を流すことだけ!
衣食をあてがってくれるのは、あの旦那達だけ。
今となりゃ、誰がこの腹ペコの疼きを癒してくれる?
この大食いの空きっ腹を満たしてくれる奴なんか、何処にもいやしないさ。
きりのないこの大食い野郎を笑ってくれる奴も何処にもいないのさ。
誰がこの空きっ腹の俺を助けてくれよう?
いよいよもう駄目だ。あんな老いぼれにやられて、食い物も奪われてくたばっちまうとは。
今までにも腹を空かせたことはあったさ、けれどどうにか凌いで来た。
でも今度ばかりは余りに酷過ぎて、どうにかなりそうだ。
じきにおいらは、死んじまうしかないだろう。勝ち誇った敵をどうやってかわすんだ。
我が心よ、勇気を出して、この困難に打ち勝つんだ。
そうとも、この敵に負けてしまう前に、この身を腹ペコの墓穴の中に詰め込んじまおうじゃないか。
第2場
(求婚者達の亡霊とメルクーリオ)
Sinfonia
第3場
(王宮にて。メラントとペネローペ)
メラント これはいったい、どういうつもりでしょう、殺してしまうとは、まったく尋常ではありませんわ。
痛ましいことです、誰も悪人などではありませんのに、しかもあんな争いをお妃様のおん目に見せたりなど。
愛するあまり熱くなりすぎただけのこと、それをあのような、わかりませんわ。
ペネローペ 大切なお方を失ったこの私には涙があるだけ。
悲しみに沈む女にとって、愛を囁く男など邪魔者でしかないのです。
メラント 王様の亡霊であっても、お命をお守り出来るとは限りませんわ!
もうそこまで、呪われた摩の手が伸びているのかも知れません。
第4場
(エウメーテ、ペネローペ)
エウメーテ 自身の姿を偽った愛の力が、きっとあなた様の心に安らぎをもたらしてくれましょう。
ただ弓のみを以て、百の者に究極の打撃を与えたあの異邦の者、猛々しくも頑強な矢を射るその者、
堂々たる威厳であの癖悪く言い寄ってきた連中を倒したあのお方こそ、
  歓喜よいまふたたび、王妃様、あのお方こそ正真のウリッセ殿!
ペネローペ 善き牧人とは、エウメーテ、本当にあなたのような人のこと。
自分の眼でみたものを頑なまでに信じようとしないのですね!
エウメーテ 白髪の老爺、放浪の物乞いである男が、あの厚かましい求婚者連中をなぎ倒したのです。
  こんな素晴らしいことはありません、王妃様、ウリッセ殿にしか出来ないこと!
ペネローペ そんなのは何の価値もなく、つまらない、根拠のない噂話のようなもの。
エウメーテ 私はウリッセ殿をこの目で見たのです。確かに、ウリッセ殿は生きておいでです、ここにいるのです。
ペネローペ しつこいですね、聞くだけ不快になります!
エウメーテ それでも申し上げましょう、ウリッセ殿はここにいらっしゃると。
私は確かに見たのですから。ええ、はっきりと。
見たと申し上げているのですから、無下に違うなどと言わないでほしいのです。
  ウリッセ殿は生きていらっしゃる、ここにおられるのです。
ペネローペ 愚かにして盲いのあなたと議論するつもりはありません。
 
第5場
(テレーマコが登場する)
テレーマコ エウメーテは聡明な人物です。彼の話は本当ですとも。
あなたの夫であり、我が父上であるウリッセは、並み居る敵をなぎ倒しました。
年老いた男に身をやつして人目を欺いているのは、ミネルヴァの考えたことで、
彼女の魔法によるものなのです。
ペネローペ 世々の人々は、神々の慰みものなどではありません。
もしあなたがその神の魔法とやらを信じているのなら、あなたもその慰みものの一人ということです。
テレーマコ ミネルヴァは、ウリッセの敵たちの裏をかくために、この変わり身を求めたのですよ。
ペネローペ いいでしょう、神々が人の眼を欺くことを良しとするなら、
この私が騙されていないという確証もないことになります。
この私の苦しみが偽物であったという確証が。
テレーマコ ご承知のとおり、ミネルヴァは我らギリシャ人の守護女神。
そして、ウリッセは他の誰よりも、彼女の覚えがめでたいのです。
ペネローペ 天の神々は、私達人間のことなどそうそうは考えてくれません。
  炎暑に疲れさせ、寒さに凍えさせ、そしてせいぜい、哀楽をもたらしてくれる程度でしょう。
第6場
(海辺にて。ミネルヴァとジョーヴェ)
Sinfonia
ミネルヴァ 復讐の炎が燃えています。偉大なる女神よ、それは憎しみの炎ですわ。
怒りを以てトロイアを焼き尽くしましょう。
かつてはその者たちより侮辱を受けた。今こそ意趣返しの時です。
  勇敢にして力強きギリシャ人は、運命を相手に戦う。
  そう、それこそ苦悩のウリッセ。
ジュノーネ 復讐するに遠慮は無用だ。トロイア帝国を徹底して風塵に帰さしめてやろう。
ミネルヴァ 私達の復讐がウリッセの流浪の旅の始まりだった。あの大殺戮が、彼の苦難を生み出したのです。
復讐をなさんとする者を守護し、海神の憎しみを宥めすかすことこそ、私達の役目。
ジュノーネ では、勇者ウリッセのために平和と安穏を招来するとしましょう。
ミネルヴァ 偉大なるジョーヴェの伴侶よ、
  天国の新たなる聖門を開きたまえ。
第7場
(ジュノー、ジョーヴェ、ネトゥーノ、ミネルヴァ、天界の合唱隊とトリトンの合唱)
 
ジュノーネ 偉大なるジョーヴェ、神々の魂、その神髄、宇宙の中心として、あらゆるものを治める者よ、
我が祈りを聞き届け給え。
  長きにおよんで漂白の旅をしとねとしたウリッセに、
  数多の苦海を渡りしその果として、安らぎの時を与え給わんことを。
  かく彷徨の日々は聖なる意志によりてあればなり。
  長きにおよんで漂白の旅をしとねとしたウリッセに。
ジョーヴェ これまでは如何なる頼みにも聞く耳を持たなかった私だが、
ジュノーネよ、ただネトゥーノの怒りだけは何とかせねばならぬ。
海神よ、よく聞くがよい。トロイアの陥落は運命の定めしところであった。
今や、なされるべきがなされたのであるから、お前もその怒りを鎮め、善意を以て己が心を御せ。
ネトゥーノよ、安かれ、おおネトゥーノ、苦悩に押し潰された人間を、もう許してやるが良かろう。
ここに、運命の神がその者を護るべきことを認める。もう十分なのだ、男の罪は消えた。
ネトゥーノ 冷たく凍てついた海は、無駄な憐れみに心を動かされることは決してないが、
海藻の繁る大洋の深みにも、海底の暗がりにも、ジョーヴェの神意の及ばざることはあり得ぬ。
私は厚かましくも無分別なパイアキア人どもに対して、怒りを解き放ちはした。
あの者たちの愚行に罰を与えた、そうだ、連中の船を止めてやることで。
  ウリッセよ、歓びのうちに生きよ、不安より免れて。
天界の合唱   慈愛に満ちたジョーヴェが、
  慈悲深き天界を以て許さしめ給う。
トリトンの合唱   たとえ凍てつく海であろうと、
  天に劣らぬ慈愛あり。
天界とトリトンの合唱   祈れ、人間たちよ祈るのだ。
  不興の神が、その祈りを聞き届けるまで。
 
ジョーヴェ ミネルヴァよ、アカイア人達の反乱を圧し鎮めるはそなたの役目。
アカイア人は、殺された求婚者達の復讐のために、イタケーに戦争を仕掛けようとしている。
ミネルヴァ   私はその者どもの心を鎮めましょう、
  血気にはやる思いを宥め、、
  平和へと御することといたしましょう、 
  ジョーヴェよ、あなた様のみ心のままに。
第8場
(王宮にて。エリクレア一人で)
Preludio
エリクレア エリクレアよ、どうするの?黙っているのか、それとも真実を語るのか?
話せば楽になるけれど、真実から目を背けたいのが王妃様の御意。
あなたはお仕えすべき人間、でも愛は大切なもの。
さあ、黙っているべきなのか、離すべきか?
  知っていることを語ることが常に前途は限らないもの。
悩める者を守るため、大きなる喜びへ!
秘密を白日のもとに晒すなんて、そんな悪意に満ちたことを!
  口を慎んだ方がやはり良いのかしら。
慎重にしていても、いずれ秘密は公になるもの。
そうなれば、もう隠し立ても意味はないのね。
エリクレアよ、どうするの?黙っているの?それとも本当のことを言う?
  とどのつまり、沈黙は何も生み出しはしないのね。
 
第9場
(ペネローペ、テレーマコ、エウメーテ、エリクレア)
ペネローペ あなた方のおっしゃることなど、あまりの軽々しさに風に飛ばされていくようです。
夢は彷徨う心の見張り役を仰せつかることなど出来ないもの。
作り話は人を笑わせることは出来ても、命を与えることは出来はしません。
エウメーテとテレーマコ ああ、何て頑固なお人なのか!そこまでお疑いになるとは!
本当なのですよ、真実以外の何ものでもない。あの年老いた弓手は、ウリッセ殿その人です。
さあ、ご覧なさい、ご当人がやって来ます。しかも本当のお姿で。
ウリッセ殿ではないですか、間違いなく。
 
最終場
(ウリッセが登場する)
ウリッセ おお、甘美にして穏やかなるこの気持ち、苦難に満ちた旅がいま終わる。
久しきにまみえし、愛しき港よ、いずこの休息の地へと、私をいざなってくれるのか。
ペネローペ お待ち下さい、騎士殿。幻術師か魔法使いなのかは知りませんが、
私はそんな嘘偽りの姿かたちには騙されません。
ウリッセ あなたの夫がやっと帰ってきたというのに、そんなことを言うのか。
切なる思いで、抱きしめてはくれぬのか?
ペネローペ 私は妻なのです。そうです、今、ここにはいないウリッセの。
魔法も幻も、私の心を揺るがすことは出来ません。
ウリッセ あなたの美しさがあれば、不死や永遠など私はどうでもよかった。
私は自ら進んで、己の地位と運命を捨てたのだ。死に至ろうとも、この愛に誠実であるために。
ペネローペ ウリッセに瓜二つのあなたが、
勇気を以てあの不躾な求婚者達を倒してくださったことには感謝いたしましょう。
嘘もまた善き果をもたらす、ということもあるのですね。
ウリッセ 私は本当のウリッセだ。灰塵の中より立ち上がり、死のはざまを生き延びた。
厚かましい姦夫ども、盗人どもを懲らしめる者でありはすれ、
断じて奴らの真似事をするように人間ではない。
ペネローペ あなたのような偽善者は初めてではありません。
巧みに嘘で飾り立て、王国の僭主となろうという者達ですわ。
エリクレア もう黙っているわけにはいかないわ!
  このお方はウリッセ様ですわ。
  定説にして気高き奥方様、私はこの目で見たのです、この方が浴場から上がられた時に、
  あの獰猛なイノシシにつけられた、名誉ある傷跡を。
何度も同じことをのたまう、この多弁な女のことをどうぞお許しくださいまし。
ウリッセ様のお言いつけで、どうにか何も言わずに今まできたところなのです。
ペネローペ 私も自身の希望を信じたいと思うのです。けれど、名誉のために貞節であらねばなりません。
疑いに満ちたこの心に、果たして何が出来ましょうか?
善良なる牧夫エウメーテの祈りも、我が子テレーマコの願いも、
そして年老いた乳母の言葉さえ拒むこの私に。
私の穢れなきしとねは、ただウリッセのためだけにあるのです。
ウリッセ 私はあなたのその清らかな心根のことをよく知っているとも。
そして、穢れなき夫婦のしとねのことも。
夜ごと、あなたは絹の掛物で寝台を飾ってくれていた。
それは、あなたの手で織られた、ディアナとその眷属の乙女たちが描かれた図柄のものだった。
その甘い思い出が、私を常に支えてくれたのだ。
ペネローペ   ああ、たった今、知らされました。あなたが誰であるか。
  やっと信じることが出来たのです。
  あなたは、この私の心をずっと捉えて離さないでいたお方。
どうか私の落ち度をお許し下さい。どのような愛の咎めも受けましょう。
ウリッセ   解き放たれし、お前のその舌よ、祈り、歓びを以てその枷を砕くが良い。
  ため息、そして涙を風の中へと消し去るのだ。
ペネローペ   光り輝け、おお天空よ、
  草原の花々よ、今再びときめき照り映えよ、喜べ、西風よ。
  歌う小鳥たち、さざめく小川よ、もう一度見せておくれ、お前の笑顔を。
  みずみずしく緑なす草木よ、鳴る風に揺れながら、
  陽気な舞踊を見せてほしい。
だってトロイアの灰塵の中から、私の幸せの不死鳥が甦り、飛び立ったのだから。
ペネローペとウリッセ   待ち焦がれた太陽、再び見出せしみ光よ、
  それは平和で静かな愛の港。
  あなたに憧れ、あなたを慕う、愛する人よ。
数多の苦しみの中で祈ることを学んだ、
  けれど、もうその苦しみを思い出すこともない。
  全ては喜びなのだから。
  そう、そうだとも、我が命の君よ!
  痛みに満ちたあの感傷、この胸を去る。
  全ては喜びなのだから!
  そう、そうなのです、我が心の人よ!
  喜びの今日が、歓喜の明日がこうして戻った。
  そうとも、我が命の人よ!
  そうです、我が心の人よ!
終わり
 
(原文イタリア語)

http://baroqueopera.html.xdomain.jp/Il%20Ritorno%20D'Ulisse%20in%20Patria/Il%20Ritorno%20D'Ulisse%20in%20Patria.htm

4. 2021年9月19日 15:56:59 : JK0s8EymKE : NENTTXVIUHJIUWs=[18] 報告
ガーディナー


Monteverdi - Il ritorno d'Ulisse in patria (with Monteverdi Choir & Orchestra)
From the Teatro La Fenice, Venice, June 2017














Monteverdi Choir and Orchestra

English Baroque Soloist:
Furio Zanasi - Ulisse
Lucile Richardot - Penelope
Krystian Adam - Telemaco
Hana Blažíková - Minerva / Fortuna
Gianluca Buratto - Tempo / Nettuno / Antinoo
Michał Czerniawski - Pisandro
Gareth Treseder - Anfinomo
Zachary Wilder - Eurimaco
Anna Dennis - Melanto
John Taylor Ward - Giove
Francesca Boncompagni - Giunone
Robert Burt - Iro
Francisco Fernández-Rueda - Eumete

Sir John Eliot Gardiner - conductor
5. 中川隆[-16278] koaQ7Jey 2021年9月19日 16:05:03 : JK0s8EymKE : NENTTXVIUHJIUWs=[19] 報告
アーノンクール


Monteverdi - Il ritorno d'Ulisse in patria (actes 1-2) (ST it-eng-fr-de-esp)






Arrangement et direction musicale : Nikolaus Harnoncourt

Orchestre et chœurs : Das Monteverdi-Ensemble des Opernhauses Zürich
Mise en scène et réalisation (1979) : Jean-Pierre Ponnelle

La Fragilité humaine : Werner Hollweg (ténor)
Le Temps : Werner Gröschel (basse)






Monteverdi il ritorno di ulisse in patria kasarova,harnoncourt




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