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米国の権力犯罪を明らかにしたアッサンジの米国への引き渡しを英内務相は許可
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/202206190000/
2022.06.19 櫻井ジャーナル
イギリスのプリティ・パテル内務大臣は6月17日、ジュリアン・アッサンジのアメリカ移送を認める文書に署名したという。アッサンジが創設したウィキリークスは内部告発を支援する活動を続け、アメリカ支配層の怒りを買っていた。内部告発を支援する行為はジャーナリストの仕事に含まれ、そうした意味でウィキリークスのメンバーはジャーナリストだと言える。アメリカへ移送された場合、懲役175年が言い渡される可能性がある。
ウィキリークスが公表したアメリカ支配層にとって都合の悪い情報は少なくないが、そのひとつは2010年4月に公開された映像。アメリカ軍のAH-64アパッチ・ヘリコプターが2007年7月に非武装の一団を銃撃、十数名を殺害する場面を撮影した映像を公開したのだ。犠牲者の中にはロイターの特派員2名が含まれていた。
その情報源だったアメリカ軍のブラドレー・マニング(現在はチェルシー・マニングと名乗っている)特技兵は公開から間もなく逮捕され、スウェーデンの検察当局は2010年11月にアッサンジに対する逮捕令状を発行している。
2016年に実施されたアメリカ大統領選挙では次期大統領に内定していたヒラリー・クリントンの前に大きな障害が現れた。ひとりはバーニー・サンダース。そこでDNC(民主党全国委員会)はサンダースの足を引っ張る工作を始めるのだが、その実態を明らかにする電子メールをウィキリークスが明らかにしてしまう。そこでヒラリーたちが始めたのが「ロシアゲート騒動」だ。
2017年にはCIAの幹部やドナルド・トランプ政権の高官がアッサンジの暗殺について議論したという。その年、ウィキリークスはCIAが保有するマルウェア、ウイルス、トロイの木馬といったサイバー戦争用のツールに関する文書「ボルト7」を明らかにしている。
自分たちの悪事を暴く人びとを支配者たちは弾圧する一方、メディアを支配することで情報をコントロールしてきた。第2次世界大戦後にアメリカがはじめられた情報操作プロジェクト「モッキンバード」は典型例だ。
このプロジェクトをCIAで担当していたのはコード・メイヤーで、実際の活動を指揮していたのはアレン・ダレス、ダレスの側近だったフランク・ウィズナーとリチャード・ヘルムズ、そしてワシントン・ポスト紙の社主だったフィリップ・グラハムだとされている。(Deborah Davis, “Katharine The Great”, Sheridan Square Press, 1979)
グラハムは第2次世界大戦中、陸軍情報部に所属、中国で国民党を支援する活動に従事していた。その時の仲間のひとりがヘルムズ。そのほか後にCIA副長官になり、CSISの創設に関わったレイ・クライン、グアテマラのクーデターなどに参加し、ウォーターゲート事件で逮捕されたE・ハワード・ハント、そしてさまざまな秘密工作に関与し、駐韓米軍の司令官を務め、WACL(世界反共連盟)の議長を務めたことジョン・シングローブも含まれる。
ワシントン・ポスト紙の記者として「ウォーターゲート事件」を暴いたカール・バーンスタインはリチャード・ニクソン大統領が辞任した3年後の1977年にワシントン・ポスト紙を辞め、「CIAとメディア」という記事をローリング・ストーン誌に書いている。
その記事によると、1977年までの20年間にCIAの任務を秘密裏に実行していたジャーナリストは400名以上に達し、1950年から66年にかけてニューヨーク・タイムズ紙は少なくとも10名の工作員に架空の肩書きを提供したとバーンスタインにCIAの高官は語ったという。ニューズウィーク誌の編集者だったマルコム・ミュアは、責任ある立場にある全記者と緊密な関係をCIAは維持していたと思うと述べたとしている。(Carl Bernstein, “CIA and the Media”, Rolling Stone, October 20, 1977)
CIAのメディア支配はアメリカ国内に留まらない。例えば、フランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥング(FAZ)紙の編集者だったウド・ウルフコテは2014年2月、ドイツにおけるCIAとメディアとの関係をテーマにした本を出版、その中で多くの国のジャーナリストがCIAに買収されていて、そうした工作が危険な状況を作り出していると告発している。CIAに買収されたジャーナリストは人びとがロシアに敵意を持つように誘導するプロパガンダを展開し、ロシアとの戦争へと導いて引き返すことのできないところまで来ていると彼は警鐘を鳴らしていた。
情報の伝達手段には新聞、雑誌、放送、出版などがあったが、いずれもスタートさせるためには相当額の資金が必要だが、インターネットの発展で個人、あるいは少人数で情報を発信することが可能になった。そのように時代が変化する中、ウィキリークスも生まれる。
アメリカの国土安全保障省は4月27日、「偽情報管理会議」を創設すると発表、事務局長にはニナ・ヤンコビッチが就任することになるが、その直後から反発が高まった。この人物はウィルソン・センターの「偽情報フェロー」でウクライナ外務省にアドバイスした経験があるだけでなく、ジョー・バイデン大統領と関係が深い。さすがに反発が強く、5月18日に彼女は辞任している。
アメリカの支配層がアッサンジを憎悪したのは、ウィキリークスが自分たちにとって都合の悪い事実を明らかにしたからであり、結果として既存の有力メディアが偽情報を流していることを人びとへ知らせることになった。
アッサンジはオーストラリア人であり、活動はヨーロッパが中心だった。今回のようなことが認められるなら、アメリカの当局は自国の法律に基づき、自分たちに都合の悪い情報を明らかにする全世界のジャーナリストを拘束、懲罰できるということになる。少なくともアメリカ、イギリス、オーストラリア、エクアドルは言論の自由を否定した。
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