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脱ロシア3カ月388万人“頭脳流出”も深刻 プーチン大統領が食らう「名物起業家つぶし」の代償
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/304886
2022/05/09 日刊ゲンダイ
オレグ・ティンコフ氏は西側に、ロシアのウクライナ侵攻の「出口」を求め訴えた(C)ロイター
ロシア軍が2月24日にウクライナに侵攻してから2カ月半。9日、ロシアの対独戦勝記念日を迎えるが、戦争の出口は見えてこない。戦争の長期化に伴い、深刻なのがロシアからの頭脳流出だ。優秀な人材がシビレを切らして、プーチン大統領に愛想を尽かしている。
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ロシア情報機関「FSB(連邦保安局)」の統計によると、今年1〜3月に約388万人がロシアから出国した。ロシア系独立メディア「ノーバヤ・ガゼータ・ヨーロッパ」が6日、報じた。ウクライナ侵攻以降、富裕層を中心にロシアを離れる事態が生じていたが、想像以上の数字である。388万人には観光や出張目的も含まれるが、プーチン政権への不満や経済制裁などが大きく影響しているとみられる。
ロシアの名物起業家もロシア離れを決断した。英BBCオンライン(ロシア語版)は〈オレグ・ティンコフ氏がロシアとティンコフ銀行に別れを告げた〉との見出しで、〈隣国と戦争し、民間人や子供を殺している国で私はお金を稼ぐことはできない〉など、本人のコメントを掲載している。
ティンコフ氏は2006年、ロシア初の無店舗型のネット銀行「ティンコフ銀行」を創設。国内のクレジットカードシェア2位を占める巨大企業に成長させた。権力者を後ろ盾とせず、商才でのし上がった“オリガルヒ”として知られている。
「反戦投稿」に目くじら、保有株をカツアゲ
気に入らなければ“恫喝”、事実上の“没収”(ロシアのプーチン大統領) (C)ロイター/Sputnik/Kremlin
ティンコフ氏は20年に同行の会長を退き、現在はロシア国外を拠点にしているが、同行の株35%を保有していた。ところが、4月28日、全保有株がプーチン氏に近いとされる富豪が率いる会社によって買われる事態が起きてしまった。
経緯はこうだ。ティンコフ氏は4月19日のインスタグラムで反戦メッセージを展開。ロシア語で〈ロシア人の9割はウクライナ戦争に反対。どこの国でもバカは1割だ〉〈このバカげた戦争には受益者は1人もいない!罪のない人々や兵士が死んでいる〉とズバリ。さらに、英語で〈親愛なる西側の皆さん、プーチン氏の面目を保ちつつ、虐殺を止められるような出口を与えてほしい〉と「正論」を訴えた。これがプーチン氏の逆鱗に触れたとみられる。
ティンコフ氏は5月1日付の米ニューヨーク・タイムズのインタビューに登場。4月19日の投稿翌日にクレムリンの当局者が銀行の幹部に「貴行の株主の発言はよろしくない。株の所有者が代わらなければ銀行を国有化する」と“恫喝”。評価額をはるかに下回る額での売却を強いられたと明らかにした。口が災いとなり、プーチン氏に事実上、保有株をカツアゲされた格好だ。
「名物起業家への圧力がロシア経済界に与える影響は大きいと思います。資源大国とはいえ、ティンコフ氏のようなベンチャー起業家がロシア経済を支えてきた面があります。戦争に異議を唱えたティンコフ氏に対するひどい仕打ちを知り、ベンチャー起業家のロシア離れは加速するでしょう。ベンチャー企業が育たなければ、経済成長は期待できない。当面は抑え込めても、ベンチャー起業家への圧力でプーチン大統領が失ったものは大きい」(金融ジャーナリスト・森岡英樹氏)
ティンコフ氏は「ロシアに将来があると信じることができない」と嘆いている。プーチン氏は名物起業家の正論に耳を傾けた方が自国のためにもなる。
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