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バイデン政権の国務省報道官が抱えるCIAの闇
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2022.02.07 櫻井ジャーナル
アメリカ国務省の報道官としてロシアとの軍事的な衝突を誘発しかねない深刻な主張をし、APのマット・リー記者から主張の根拠を問われて答えられなかったネッド・プライスは2006年から2017年2月14日に辞表を提出するまでCIAの分析官を務め、最後の時期にはNSC(国家安全保障会議)の広報官のポストにあった。辞表を提出した理由は新大統領のドナルド・トランプの下で仕事をしたくなかったからだ。
NSCは安全保障、軍事、外交を決定する重要な場所で、議長は大統領が務める。大統領の安全保障補佐官も出席することになっているが、2017年1月に成立したトランプ大統領の補佐官、マイケル・フリンの重要な側近は出席できなかった。CIAの妨害でクリアランス(国家の機密情報にアクセスできる資格)を取得できなかったからである。2月13日にはフリン自身が事実上、解任された。その時、プライスはCIAの幹部としてNSCの広報官を務めていたわけだ。
トランプの前のアメリカ大統領はバラク・オバマ。ロシアとの関係を悪化させようとしていた人物だが、2010年から中東から北アフリカにかけての地域でムスリム同胞団を使った体制転覆プロジェクトを推進、14年にはウクライナでネオ・ナチを使ってクーデターを実行している。
ウェズリー・クラーク元欧州連合軍(現在のNATO作戦連合軍)最高司令官によると、2001年9月11日にニューヨークの世界貿易センターやバージニア州アーリントンの国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃されてから10日ほど後にペンタゴンを訪れたところ、国防長官の周辺で攻撃予定国リストが作成されていることを知る。そのリストにはイラク、シリア、レバノン、リビア、ソマリア、イラン、そしてスーダンが載っていたという。
ジョージ・W・ブッシュ政権は2003年3月にイラクを先制攻撃してサダム・フセイン政権を倒したが、オバマはその後を引き継ぎ、2010年の後半に「アラブの春」を仕掛けた。2011年10月にリビアのムアンマル・アル・カダフィ体制は破壊され、並行してシリアも攻撃されたが、シリアは手強い。しかも2012年5月にロシア大統領へ返り咲いたウラジミル・プーチンがアメリカ/NATOのシリアへの本格的な攻撃にブレーキをかけた。
オバマ政権はリビアからシリアへ戦闘員や武器/兵器を移動、集中させ、バシャール・アル・アサド政権の打倒に力を入れる。ムスリム同胞団やサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)への支援を強化したのだ。
それに対し、アメリカ軍の情報機関DIAはこの政策が危険だとオバマ政権へ2012年8月に報告する。その中で、反シリア政府軍の主力はサラフィ主義者やムスリム同胞団だと指摘、アル・カイダ系武装集団のAQI(アル・ヌスラと実態は同じだとしている)の名前も出している。オバマ大統領が言うところの「穏健派」とは、一般的に「過激派」と見なされているグループだとしているのだ。ちなみに、2012年7月からDIA局長を務めていたのは後にトランプが国家安全保障補佐官に指名するマイケル・フリン中将である。
オバマ政権の政策はシリアの東部(ハサカやデリゾール)にサラフィ主義者の支配地域を作ることになるとも警告していたが、これは2014年にダーイッシュ(IS、ISIS、ISIL、イスラム国などとも表記)という形で現実になる。その年の1月にイラクのファルージャで「イスラム首長国」の建国が宣言され、6月にはモスルが制圧されたのだ。当初、この武装集団は首を切り落とす演出をするなど残虐さをアピールした。アメリカ/NATO軍の本格的な介入を正当化するためだったと見られている。
2015年にオバマ大統領は政府を好戦的な布陣に作り替えた。2月に国防長官がチャック・ヘーゲルからアシュトン・カーターへ、9月には統合参謀本部議長がマーチン・デンプシーからジョセフ・ダンフォードへ交代させている。
ヘーゲルは戦争に慎重だったが、カーターは2006年にハーバード大学で朝鮮空爆を主張した人物。サラフィ主義者やムスリム同胞団を危険だと考えていたデンプシーはシリア政府と情報を交換していたと言われている。
デンプシーは2015年9月25日に議長から退くが、その5日後にロシア軍がシリア政府の要請で軍事介入、アル・カイダ系武装集団の支配地域を急速に縮小する。その中にはダーイッシュも含まれていた。その後、ロシア軍は兵器と戦闘能力の優秀さを世界へ見せつけることになる。この出来事は歴史の転換点だと言えるだろう。
2016年の大統領選挙中からCIAやFBIの中枢にはヒラリー・クリントンを支援する勢力が存在、反トランプ工作も行われていた。後にこの工作は発覚、責任問題になりつつある。そのクリントンを支援していたマイク・モレルは2010年5月から13年8月にかけてCIA副長官を務めた人物。選挙期間中の2016年8月、チャーリー・ローズのインタビューでロシア人やイラン人に代償を払わせるべきだと語っている。その際、司会者からロシア人とイラン人を殺すという意味かと問われると、その通りだと答えた。
実際、その後、ロシアの幹部外交官らが相次いで死亡している。例えば、2016年11月8日にニューヨークのロシア領事館で副領事の死体が発見され、12月19日にはトルコのアンカラでロシア大使が射殺された。
12月20日にはロシア外務省ラテン・アメリカ局の幹部外交官が射殺され、12月29日にはKGB/FSBの元幹部の死体が自動車の中で発見され、17年1月9日にはギリシャのアパートでロシア領事が死亡、1月26日にはインドでロシア大使が心臓発作で死亡、そして2月20日にはロシアの国連大使だったビタリー・チュルキンが心臓発作で急死している。その間、2016年9月6日にはウラジミル・プーチンの運転手が乗った自動車へ暴走車が衝突、その運転手は死亡する。
また、モレル発言の前、2015年11月5日にはアメリカ政府が目の敵にしてきたRTを創設した人物がワシントンDCのホテルで死亡している。
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