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「バイデン失速〜アメリカ中間選挙まで1年〜」(時論公論)/橋祐介
2021年11月08日 (月)
橋 祐介 解説委員
https://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/456911.html
アメリカのバイデン政権に有権者が審判を下す、来年の中間選挙まで1年となりました。いま大統領の支持率は低迷し、このままでは、与党・民主党が議会で多数派の座を失いかねないとの見方も出始めています。なぜバイデン政権は、発足1年足らずで早くも失速してきたのでしょうか?現状を分析し、今後の影響を探ります。
解説のキーワードは3つ。
▼失速の要因のひとつに“バイデンフレーション”
▼共和党が導き出した“勝利の方程式”
▼大統領が挑む“険しい上り坂の戦い”です。
【バイデン大統領の記者会見 11月6日/ホワイトハウス】
雇用は順調な回復を示して失業率は改善。議会下院は1兆ドル規模のインフラ投資法案をようやく可決。大統領は週末の朝、急きょ会見を開き、安堵の表情を隠せませんでした。
(バイデン大統領の発言)「わが国は記念すべき一歩を踏み出したと言っても過言ではない」
ただ、民主党は、同時に可決を目指していたもう一つの巨額の歳出法案は採決を見送りました。ひとまず手にした成果のアピールを急いだのは、政権失速への危機感がかつてなく高まっているからでしょう。
いま大統領の支持率は、就任以来最低のレベルで低迷しています。ギャラップ社による調査では、当初の57%から現在は42%。下げ止まりの底が見えません。戦後の歴代大統領の同じ時期では、トランプ前大統領に次ぐ“ワースト2”。
今度は党派別に見てみると、青色で示した民主党支持層では、さほど落ち込まず、赤色の共和党支持層では、依然ほとんど支持されていないことがわかります。
両党の支持層が真二つに割れた近年は、こうした党派ごとの格差が、いわば“新常態”になっています。
しかし、この9か月あまりで最も激しい変化は、いずれの党も支持しない、オレンジ色で示した無党派層で、支持率がほぼ半減していることです。
なぜバイデン大統領は、無党派層からの支持を急速に失ったのでしょうか?
主な要因として考えられる問題は、4つ挙げられます。
ひとつはコロナ禍への対応です。
いまアメリカは、ワクチン接種を済ませた人が人口に占める割合が6割に届かず、頭打ちとなり、すでに7割を超えた日本が上まわっています。バイデン政権は、感染の再拡大を防ぐため、ワクチン接種を義務づける対象を連邦政府職員から民間企業にも広げる方針を打ち出しました。ところが、抗議運動や訴訟が頻発し、反発が広がっているのです。
ふたつ目は、アメリカ軍のアフガニスタン撤退に伴う混乱です。
撤退そのものへの反発と言うよりも、イスラム主義勢力タリバンの復権や同盟国との連携不足など、「外交手腕を売り物にしたバイデン氏ならもっとうまく出来たはずだ」そうした期待外れの不手際に批判を浴びています。
つ目は、民主党の内輪もめです。
冒頭ご紹介したふたつの法案は、政権公約にも書き込まれた看板政策ですが、党内の急進左派と中道派の対立で調整が難航。もともと党派の違いを超えた調整手腕をかわれたバイデン氏ですから、ここでも“期待外れ”の烙印を捺されてしまった格好です。
4つ目が急速な物価上昇です。
アメリカの9月の個人消費支出物価指数は、前の年の同じ月に比べて4.4%上昇、およそ30年ぶりの高い水準となりました。買い物のたびに、食料品や生活用品が値上がりし、家計を直撃。ガソリン価格の高騰が追い打ちをかけています。物価の継続的な上昇=インフレーションは「バイデン政権の失策が招いた“バイデンフレーション”だ」野党・共和党はそうした攻勢を強めているのです。
そうした両党が激突したのが、今月2日の南部バージニア州の知事選挙でした。中間選挙の前哨戦と位置づけて、民主党は元知事のマコーリフ候補、共和党は元投資ファンド経営者のヤンキン候補を“総がかり”で応援しました。
バージニア州は、近年は民主党が優勢で、去年の大統領選挙はバイデン氏がトランプ氏に10ポイントの大差で勝利しています。民主党は、トランプ氏から支持されたヤンキン候補は「前大統領の分身だ」として、今回も“トランプたたき”の戦術をとりました。
これに対してヤンキン候補は、前大統領とは距離を置き、有権者に身近な教育問題を訴え、州のガソリン税凍結や食料品への課税撤廃なども公約しました。その結果、ヤンキン候補が逆転勝利、民主党は“まさかの敗北”を喫したのです。
これは、トランプ前大統領の復活を意味するのでしょうか?
同じ日に行われた東部ニュージャージー州の知事選挙は、民主党の現職が、トランプ支持者の共和党候補を僅差でかわしています。むしろ多くの無党派層は、そうした分断を煽る政治に、ほとほと嫌気がさしているのかも知れません。
共和党は、トランプ氏とつかず離れず、今なお健在の“岩盤支持層”は手放さず、無党派層からも支持を取り込めば、激戦州で勝てる。バージニア州でそうした“勝利の方程式”を導き出したところがポイントです。
いまアメリカ議会は、ご覧のとおり勢力が伯仲し、来年の中間選挙で、上院は3分の1、下院はすべての議席が改選されます。
上院は、来年は立候補せず、引退の意向を表明した共和党議員がすでに5人います。このため民主党にやや有利との観測があります。
一方の下院は、国勢調査に基づく議席配分の見直しで、共和党が地盤とする州で定数が増え、民主党が地盤とする州で定数が減るため、共和党がやや有利との観測があります。
大統領にとって、1期目の任期半ばの中間選挙は“険しい上り坂の戦い”と言われます。近年は同時多発テロ事件後のブッシュ政権を例外に、政権与党に逆風が吹き、下院の議席を大きく減らす傾向がありました。しかも、今月20日で79歳になる高齢のバイデン氏は、2期目の再選を狙えるかどうかという事情もあります。仮に民主党が下院で多数派の座を失えば、大統領の求心力はたちまち低下、予算や法案はますます議会を通らなくなり、政権運営の行き詰まりは、避けられそうもありません。
そうした事態をバイデン大統領は防げるでしょうか?
政権浮沈を当面左右するのは、採決を今月半ば以降に先送りした総額200兆円規模の歳出法案です。民主党左派が求める育児支援や気候変動対策などが盛り込まれていますが、財政規律を重視する中道派の一部は難色を示しています。
この法案を可決に持ち込めれば、バイデン政権は失地回復、逆に頓挫すれば、政権浮揚の目立った材料が少なくなります。
物価動向も注目です。FRB=連邦準備制度理事会は、コロナ禍による供給網の混乱や経済活動の再開に伴う労働力不足などによって、「需要と供給の不均衡が生じ、大幅な物価上昇の一因になっている」と警戒を示しています。来年夏ごろまで物価上昇が長引けば、選挙戦への影響もさらに大きくなるでしょう。
ふたたび“選挙の年”を迎えるアメリカが、経済や内政で手一杯になれば、中国との競争力強化に影響が生じる可能性も指摘されています。
かつてバイデン氏が副大統領を務めたオバマ政権は、リーマンショック後の大型景気対策や医療保険制度改革など、歴史的とも言われた重要法案を矢継ぎ早に成立させましたが、1期目の中間選挙は大敗を喫しました。政権がつかんだ成果を有権者に実感してもらうための努力が足りなかったからだと、民主党関係者は当時を振り返ります。
そうした失敗の教訓を活かすなら、中間選挙まで1年あっても、バイデン大統領に残された時間は、実はそれほど長くないかも知れません。
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