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アフガニスタンでも見通しがはずれたアメリカ政府
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/202108180000/
2021.08.18 櫻井ジャーナル
アフガニスタンの大統領官邸を8月15日にタリバーンが制圧した。その直前、アメリカの情報機関はタリバーンが30日から90日でカブールを包囲すると予想していたという。1カ月から3カ月の間、アシュラフ・ガニー政権は耐えられると見通していたわけだ。
ガニーはカブール大学に在学中、奨学金を得てコロンビア大学へ留学して1977年に修士号を、83年には博士号を取得、カリフォルニア大学バークレー校、そしてジョンズ・ホプキンス大学で教え始めた。1991年には世界銀行へ入る。
アメリカ軍は2001年10月にアフガニスタンへの侵略を開始、抵抗らしい抵抗がないまま12月にタリバーンはカブールから撤退した。これを受け、反タリバーン派はドイツのボンで会議を開き、新政府の樹立について話し合う。そしてハーミド・カルザイ大統領が誕生した。このカルザイ政権で働くためにガニーは2001年12月に帰国している。ガニーが大統領にしたのは2014年9月のことだ。
8月14日にガニーは国家安全補佐官を務めていたハマデラ・ホベブとタジキスタンへ脱出、官邸に残されたトヨタのSUV車にはドル紙幣が積み込まれていたという。それだけ慌てていたのだろう。
ホベブはガニー政権で軍事予算を管理していた。アメリカ政府は近代的な軍隊をアフガニスタンで作るために830億ドルを投入してきたと言われているが、その相当部分は盗まれていたと言われている。しかも電力の供給を受けている国民が全体の3割程度にすぎない国でハイテク装置を導入する一方、最前線で戦う兵士の装備は貧弱で、給与の支払いも滞りがちだったようだ。
昨年の段階で、アフガニスタン政府の軍隊は警察は30万人に達し、タリバーンの約7万人を圧倒している。ところがアフガニスタン軍の兵士のうち軍事訓練を受けていたのは6割程度で、毎年4分の1が入れ替わっているという。「カタログ性能」は良いのだが、実際は貧弱な軍隊だった。いわば「張り子の虎」だ。
前にも書いたことだが、タリバーンは1989年2月にソ連軍がアフガニスタンから撤退した後、新体制の担い手としてアメリカとパキスタンの情報機関によって組織された。残虐な行為でイスラム世界でも評判の悪かったタリバーンをアメリカが擁護したのはそのためだ。その象徴的な存在がリチャード・ヘルムズ元CIA長官の義理の姪にあたるライリ・ヘルムズ。彼女はタリバーンのアメリカにおけるロビイストだった。
アメリカとタリバーンが対立する切っ掛けは、1998年1月にタリバーンがTAPIパイプラインの敷設計画で契約相手にアメリカのUNOCALでなくアルゼンチンのブリダスを選んだことにある。
アメリカはジハード傭兵をアフガニスタンへ運んでいたが、秘密裏に活動しているアメリカの特殊部隊や情報機関の工作員、そして1万6000名以上の「民間契約者」も残ると言われている。「民間契約者」の中には傭兵も含まれているだろう。
その一方、アメリカ空軍はカタールのアル・ウデイド基地やアラブ首長国連邦のアル・ダフラ基地、あるいはクウェートのアリ・アル・サレム基地とアーマド・アルジャベル基地に戦闘機、偵察機、爆撃機などを集め、アフガニスタンも空爆できる態勢を整えている。地上はジハード傭兵に任せ、アメリカは空から攻撃するというリビア方式を考えているのかもしれない。
それに対し、タリバーンはアメリカと対立関係にある中国やロシアに接近しているようだ。タリバーンは7月始めにモスクワを訪問して状況を詳しく説明、その後、タリバーンの代表団9名が天津を訪れて王毅外交部長と会談したと伝えられている。中国やロシアが求めている条件には、サラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)やムスリム同胞団のような「ジハード」戦闘員が中央アジアへ入れないこと、ケシの栽培を止めることが含まれているという。タリバーンの政策はともかく、アフガニスタンの安定化はロシアにとって悪くない。
中国が特に重視しているのは、オサマ・ビン・ラディンと関係があったETIM(東トルキスタン・イスラム運動)。新疆ウイグル自治区の周辺で活動している組織で、現在はTIP(トルキスタン・イスラム党)、あるいはTIM(トルキスタン・イスラム運動)と名を変え、破壊活動を続けている。当然、その背後にはアメリカの私的権力が存在している。
新疆ウイグル自治区は中国が進めている「一帯一路(または帯路構想)」の重要なポイントで、アフガニスタンが安定化してETIMなどジハード傭兵の活動が治まる意味は中国にとって大きい。アメリカはターゲットを属国化することに失敗すると、全てを破壊して「石器時代」に戻そうとする。アフガニスタンでも戦乱を維持したかったかもしれないが、タリバーンの動きが速かった。
カブールのロシア大使館は館員を避難させる必要はないと語っているほか、イランもアメリカ軍の撤退はアフガニスタンに平和をもたらすチャンスだとし、タリバーンとの対話を望んでいる。懸念材料といわれているのはパキスタンとインドの関係。パキスタンはタリバーンを作り出す上で重要な役割を果たした。この辺はロシアの調整能力にかかっているだろう。
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