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国民の支持を失い、革命的気運を高めていたハイチの大統領が暗殺された事情
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/202107110000/
2021.07.11 櫻井ジャーナル
ハイチのジョベネル・モイズ大統領が殺された。同国の国家警察長官によると、襲撃グループは28名の外国人。その中でも特に注目されているのはハイチ系アメリカ人のジェームス・ソラジェスとジョセフ・ビンセントだ。
そのほかコロンビアの退役軍人も参加していた。そのひとりが特殊部隊の元隊員でアメリカ軍の訓練を受けていたマヌエル・アントニオ・グロッソ・グアリン。この人物が所属していた部隊は誘拐や暗殺を行う一方、コロンビアやアメリカの大統領を警護する任務を負っていた。
ソラジェスはハイチのカナダ大使館で警備の責任者を務めた経験があり、ハイチの有力者、レジナルド・ブーロスとディミトリ・ボルベの警備をしていたこともある。ブーロスとボルベはモイズとある時期まで親しかったが、敵対するようになっていた。襲撃グループはナンバー・プレートのない日産のパトロール車で乗り付けていることから、日産車のディーラーを所有しているボルベに疑惑の目が向けられている。
ところで、ハイチでは1991年と2004年に軍事クーデターがあった。国民に支持されていたジャン-ベルトラン・アリスティドを大統領の座から引きずり下ろすことが目的で、いずれも成功している。背後にはCIA、つまりアメリカの私的権力がいたが、ボルベもクーデターを支持していた。
ハイチを含む南北アメリカ大陸やカリブ海の島々では侵略、殺戮、略奪が始まったのは1492年にクリストファー・コロンブスがやって来てから。ハイチの場合、まずスペインが植民地化、1697年にはフランス領になった。そのフランスはアフリカで拉致した人びとを奴隷として連れて来る。その後、フランスで革命が起こり、その動きがハイチにも波及して奴隷が蜂起、1804年に独立を宣言した。
それに対し、アメリカの初代国務長官で第3代大統領にもなるトーマス・ジェファーソンは奴隷の蜂起がアメリカに波及することを恐れる。そこでナポレオン・ボナパルトと手を組んで独立を妨害したものの、独立運動は続き、1804年に独立が宣言された。アメリカがハイチを承認したのは1862年、エイブラハム・リンカーン政権のときである。その後、1915年にアメリカの海兵隊がハイチへ軍事侵攻して占領、この状態はニューディール派のフランクリン・ルーズベルトが大統領に就任する1934年まで続いた。
1957年に実権を握ったフランソワ・デュバリエは秘密警察を用いた「恐怖政治」でハイチを支配、71年からは息子のジャン・クロード・デュバリエが独裁者として君臨、このデュバリエ体制は1986年まで続く。
ここで登場してくるのが「解放の神学」を唱えていたアリスティド神父だ。アメリカの私的権力が地元の有力者を使って支配する体制を倒して民主化しようと考えていた。そのアリスティドが大統領選挙で当選したことをアメリカのジョージ・H・W・ブッシュ政権は許さなかった。
そして1991年のクーデターにつながるが、その後もアリスティドを支持する運動が続き、ビル・クリントン政権は1994年に彼を帰国させ、96年まで大統領を務めた。アリスティドは2001年に大統領へ復帰するものの、04年に再びクーデターで排除された。
ハイチでは2010年1月に大きな地震があり、10万人とも32万人とも言われる人が死亡したと言われている。また相当数の人がアメリカへ流れ込んだ。そこでビル・クリントンとジョージ・W・ブッシュは共同でクリントン・ブッシュ・ハイチ基金を設立した。ハイチへの「支援」ではクリントン財団も関係している。財団には支援金が集まったが、その処理が不透明で、どの程度がハイチの人々へ渡されたか不明だ。
地震が起こった当時のアメリカ大統領はバラク・オバマ、国務長官はヒラリー・クリントン。そのオバマ政権は地震の際、約1万人の軍隊を派遣した。地震後の混乱でアメリカの利権が損なわれることを恐れたと言われている。
国務長官としてヒラリーはUSAID(国務省の管轄下にあるが、実際はCIAの資金を流すルート)の資金を監督する立場にあった。国連特使には夫のビル・クリントンが就任している。こうした動きと並行してクリントン・ブッシュ・ハイチ基金は設立されている。
ハイチには限らないが、クリントン財団は「慈善事業」を名目にして多額の寄付を集めている。しかも、国際規模でチャリティーを行うために必要な正規の手続きを踏んでいないという。法律的に問題を抱えているわけだ。
ハイチはアメリカやフランスの略奪を受けたこともあり、貧困。失業率は70%を超すというが、金鉱脈が存在、潜在的に豊かな国である。資源の開発が進んでいなことが問題なのだ。金の利権にはヒラリーの弟、トニー・ローダムは食い込んでいるようだが、大多数の庶民はその恩恵に浴していない。
こうした構図を国民は理解し、モイズ大統領に対する批判は厳しく、革命運動も始まっていた。モイズを放置しておくと支配システムは崩壊すると懸念する声が高まっていた。
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