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欧州を支配するためにその指導者を監視する米国の情報機関
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/202106020000/
2021.06.02 櫻井ジャーナル
ヨーロッパの指導者をアメリカの電子情報機関NSAが監視していることを知る人は多いだろう。その工作にデンマークの情報機関が協力していることが判明したと報道されている。
アメリカの電子情報機関NSAが全ての通信を傍受、記録、分析している。この情報機関が創設されたのは1952年10月。NSAとイギリスの電子情報機関が中心になってUKUSA(ユクザ)が編成され、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドが参加した。いわゆる「ファイブ・アイズ」だが、あくまでも中心はアメリカとイギリス。残りは下部機関にすぎない。(西)ドイツ、フランス、イタリア、南ベトナム、日本、タイなどは「第3当事国」と呼ばれているが、「ファイブ・アイズ」の手先だ。NSAやGCHQと対等の関係にあるのはイスラエルの8200部隊だろう。
2014年7月、ドイツで自国の情報機関BND(連邦情報局)で働くエージェントが逮捕され、ドイツ軍の防諜部門に所属する兵士がCIAへ情報を流していた疑いで取り調べを受けたと伝えられたが、アメリカの情報機関が「友好国」の要人を監視していることは公然の秘密だ。2015年にはウィキリークスが公表した資料により、ドイツ政府の高官をNSAが長期にわたって監視していたことが判明した。
BNDがアメリカの情報機関と緊密な関係にあることは有名な話。この情報機関を創設したラインハルト・ゲーレンは第2次世界大戦中、ドイツ陸軍参謀本部第12課の課長として東方(ソ連関係)の情報を担当していた情報将校だが、ドイツの敗北が決定的になっていた1944年に彼はアメリカの情報機関OSSのフランク・ウィズナーを介してアレン・ダレスのグループと接触している。ウィズナーはウォール街の弁護士で、ダレスの側近。大戦後、破壊活動を目的とする秘密機関OPCの責任者を務めている。
1945年5月にドイツが降伏すると、すぐにゲーレンはアメリカ陸軍のCIC対敵諜報部隊)に投降、同部隊のジョン・ボコー大尉はゲーレンたちを保護する。その後ろにはアメリカ第12軍のG2(情報担当)部長だったエドウィン・サイバート准将、ヨーロッパの連合国軍総司令部で参謀長を務めていたウォルター・ベデル・スミス中将、そしてダレスがいた。サイバート准将とゲーレン准将は1946年7月に新しい情報機関の創設を決め、ナチスの残党を雇い入れるが、それがBNDの母体だ。
ゲーレンの機関は1949年7月からCIAの監督下に入り、資金の提供を受けはじめる。1954年に作成された秘密メモにはゲーレン機関の少なくとも13パーセントが筋金入りのナチスだと書かれている。(David Talbot, “The Devil’s Chessboard,” HarperCollins, 2015)
アメリカはドイツに配下の情報機関を創設しただけでなく、秘密工作を実行するためのネットワークはヨーロッパ全体に広げられた。その工作を指揮するために設置されたのがCCWU(西側連合秘密委員会)。北大西洋条約が締結されてNATOが登場するとその秘密部隊は「NATOの秘密部隊」になり、1951年からはCPC(秘密計画委員会)の下で活動するようになった。
SACEUR(欧州連合軍最高司令官)の命令でCPCの下部組織として1957年にACC(連合軍秘密委員会)が創設された。イタリアで「緊張戦略」を実行、人びとの恐怖を煽り、コミュニスト勢力を弱体化させ、治安システムを強化させたグラディオもACCの元で活動してきた秘密部隊のひとつだ。今でもNATOはアメリカがヨーロッパを支配するための機関として働いている。
アメリカでは第2次世界大戦後、国内でも監視システムを築いた。そのため、NSA以外の機関も国民を監視するプロジェクトを開始。例えばFBIが1950年代に始めたCOINTELPRO、CIAが67年に始めたMHケイアスだ。私的権力にとって好ましくない政治家、学者、活動家、ジャーナリストが狙われたが、そうした個人のレベルにとどまらず、戦争に反対する団体もターゲットになった。集会やデモに配下の者を潜入させ、平和運動を支援していた著名人を尾行し、電話を盗聴、郵便物を開封、さらに銀行口座の調査も実施している。
1970年代に電子技術が飛躍的に進歩、通信傍受は世界規模になる。1965年4月に本格的な商業衛星インテルサット1号が打ち上げらたが、66年にNSAはPROSTINGというプログラムを始める。その中で西側の通信を傍受するためにNSAやGCHQが開発した地球規模の通信傍受システムがECHELON。ソ連の通信衛星をターゲットにしたプログラムはTRANSIEMTだ。(The Northwest Passage, Yakima Research Station (YRS) newsletter: Volume 2, Issue 1, January 2011 & Volume 3, Issue 7, July 2012)
ECHELONの存在が明るみに出たのは1988年。ロッキード・スペース・アンド・ミサイルで働いていたマーガレット・ニューシャムが議会でそのシステムについて議員に話したのだ。彼女によると、NSAは共和党のストローム・サーモンド上院議員の電話を盗聴対象にしていたという。(Duncan Campbell, 'Somebody's listerning,' New Statesman, 12 August 1988)
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