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危機的状況のサウジアラビアはイランとの関係修復に活路を求めている
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2021.05.02 櫻井ジャーナル
サウジアラビアはイスラエルと同じようにイギリスの戦略に基づいて作られた国である。この両国が協力するのは必然なのだが、ここにきてサウジアラビアはイランとの関係修復を図っている。
こうした動きが表面化したのは2019年10月のこと。サウジアラビアはイランと緊張緩和について話し合うことをイラク首相のアディル・アブドゥル-マフディに約束、その申し出に対するイランからの回答を持ってガーセム・ソレイマーニーはイラクのバグダッド空港を訪れた。
ソレイマーニーはイスラム革命防衛隊の特殊部隊と言われるコッズ軍を指揮していた人物。イランでは英雄的な存在だ。そのソレイマーニーとPMU(人民動員軍)のアブ・マフディ・ムハンディ副司令官をアメリカ軍はイスラエルの協力を得て暗殺した。サウジアラビアがイランへ接近することをアメリカやイスラエルは阻止したかったのだろうが、許される行為ではない。
サウジアラビアはアメリカにとって中東における重要な「同盟国」であり、ドル体制を支える重要な役割を果たしてきた。そのサウジアラビアが離反することはドナルド・トランプ政権は容認できなかったということだろう。
現在、サウジアラビアはモハメド・ビン・サルマン皇太子を中心に動いていると見られている。2017年6月にホハメド・ビン・ナイェフから引き継いだのだが、この交代はアメリカの大統領選挙が影響している可能性が高い。
2016年の大統領選挙でヒラリー・クリントンをトランプが破ったのだが、ビン・ナイェフはヒラリー・クリントンに近かった。彼が皇太子になった2015年4月当時、アメリカの次期大統領はヒラリーに内定していたためだ。ところがトランプが勝利、ビン・サルマンへ交代になったわけである。
しかし、2020年の大統領選挙でトランプは再選されず、ジョー・バイデンが新大統領になった。バイデンはバラク・オバマ政権の副大統領であり、ヒラリーとも近い。ビン・サルマンの立場は弱くなった。
サウジアラビアを不安定化させている要因はほかにもある。アメリカの意向に従って新自由主義的な経済政策を推進したことで経済構造に歪みが生じ、イエメンへの侵略戦争が泥沼化、そのイエメンでサウジアラビアと戦っているフーシ派からアラムコの石油処理施設が攻撃される事態になっている。
それだけでなく、2014年に石油相場が下落しはじめ、サウジアラビア経済にダメージを与えることになった。WTI原油の場合、2014年5月には1バーレル当たり110ドルを超す水準にあったが、それから大きく下落し、年明け直後には50ドルを切り、16年1月には40ドルを割り込んだ。
値下がりが始まって間もない2014年9月11日にアメリカのジョン・ケリー国務長官とサウジアラビアのアブドラ国王は紅海の近くで会談、それから加速度的に下げ足を速めたことから、オバマ政権がロシアのウラジミル・プーチン体制を倒すため、原油相場を引き下げる謀議をしたとも噂されている。
2014年にサウジアラビアは約390億ドルの財政赤字になり、15年には約980億ドルに膨らみ、2020年におけるサウジアラビアの財政赤字は500億ドルと予想されていたが、これは1バーレル当たり60ドル強という前提での話。COVID-19(新型コロナウィルス)の影響で経済活動が急減速、その影響で石油相場は40ドル台に落ち込んでしまった。昨年11月から相場は上昇したが、サウジアラビアは現在、危機的な状況になっているはずだ。
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