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コービン前英労働党首に続き、露国に対する英外務省の偽情報工作が発覚
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/202103040000/
2021.03.04 櫻井ジャーナル
ジョー・バイデン政権はロシア、中国、イランといった国々に対する「超限戦」を強化しているが、イギリスも歩調を合わせている。そのイギリス外務省による情報操作プロジェクト「CDMD(対偽情報メディア開発)」に関する文書をアノニマスと名乗るハッカー集団が2月18日に公表したのだ。
2015年秋に創設された「インテグリティ・イニシアチブ」にイギリス外務省は資金を提供、2015年9月から20年4月まで労働党の党首を務めたジェレミー・コービンを攻撃している。今回明らかにされたCDMDのターゲットはロシアだ。
CDMDは広告会社を経由してロシアの反政府メディアを支援、ロシアの体制転覆を目指す一方、東ヨーロッパや中央アジアにおけるロシアの影響力を弱めることを目的としている。この工作で重要な役割を果たしているとして名前が挙がっている有力メディアはロイターとBBCだ。
現在、アメリカやイギリスはEUを巻き込み、アレクセイ・ナワリヌイなる傀儡を利用してロシアに対するプロパガンダを展開しているが、ここでも「ノビチョク(初心者)」なる神経ガスが出てくる。その毒性は別の神経ガスVXの10倍だと宣伝されている。VXガスの毒性はサリンの数百倍だとされている。つまりサリンの数千倍という猛毒。サリンの恐ろしさは日本でも経験済みだ。
このノビチョクという名称が登場したのは2018年3月のこと。GRU(ロシア軍の情報機関)の元大佐で、1995年にイギリスの情報機関MI6に雇われ、99年に退役するまでイギリスのスパイとして働いていた人物。そうした事実が退役後に発覚、2004年12月にロシアで逮捕された。2006年に懲役13年が言い渡されたものの、10年7月にスパイ交換で釈放され、それからはソールズベリーで生活していた。イギリスにとってもロシアにとっても「過去の人」だった。
ところが、MI6の元スパイは娘のユリア・スクリパリと一緒にイギリスのソールズベリーで2018年3月にノビチョクで攻撃されたことになっている。この猛毒が使われたにもかかわらず、親子は死んでいない。ナワリヌイも死んではいない。
本ブログでは繰り返し書いてきたが、CIAは第2次世界大戦が終わって間もないころに「モッキンバード」と呼ばれる情報操作プロジェクトが始められている。
CIAが有力メディアをコントロールしている実態は1970年代から指摘されていた。例えば、ワシントン・ポスト紙の記者としてウォーターゲート事件を取材したことで有名なカール・バーンスタインはリチャード・ニクソン大統領が辞任した3年後の1977年にワシントン・ポスト紙を辞め、「CIAとメディア」という記事をローリング・ストーン誌に書いている。
その記事によると、記事が出るまでの20年間にCIAの任務を秘密裏に実行していたジャーナリストは400名以上に達し、1950年から66年にかけてニューヨーク・タイムズ紙は少なくとも10名の工作員に架空の肩書きを提供したとCIAの高官は語ったという。(Carl Bernstein, “CIA and the Media”, Rolling Stone, October 20, 1977)
ジャーナリストのデボラ・デイビスが書いた『キャサリン・ザ・グレート』もCIAによるメディア支配の一端を明らかにしている。彼女によると、第2次世界大戦が終わって間もない1948年頃にアメリカでは「モッキンバード」と呼ばれる情報操作プロジェクトがスタートしている。そのプロジェクトを指揮していたのは4人で、第2次世界大戦中からアメリカの破壊活動を指揮していたアレン・ダレス、ダレスの側近で戦後に極秘の破壊工作機関OPCを率いていたフランク・ウィズナー、やはりダレスの側近で後にCIA長官に就任するリチャード・ヘルムズ、そしてワシントン・ポスト紙の社主だったフィリップ・グラハムだ。(Deborah Davis, “Katharine the Great,” Harcourt Brace Jovanovich, 1979)
ダレスはOSSやCIAに君臨していたウォール街の弁護士、ウィズナーはダレスの側近で、やはりウォール街の弁護士。ヘルムズもダレスの側近で、国際決済銀行初代頭取の孫。グラハムの妻、キャサリンはウォーターゲート事件でリチャード・ニクソンを失脚させた当時のワシントン・ポスト紙社主として有名だが、その父親は世界銀行の初代総裁である。
また、フランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥング(FAZ)紙の編集者だったウド・ウルフコテは2014年2月、ドイツにおけるCIAとメディアとの関係をテーマにした本を出し、世界各国のジャーナリストがCIAに買収されていて、そうした工作が危険な状況を作り出していると告発している。ウルフコテは2017年1月、56歳の若さで心臓発作のために死亡した。
アメリカとイギリスは2003年3月にイラクを先制攻撃しているが、その前に両国政府はイラクが大量破壊兵器を保有、今にも核兵器を使うかのようなことを宣伝していたが、これは真っ赤な嘘だった。両国の情報機関は緊密な関係にある。そもそもCIAや前身であるOSSはイギリスの情報機関MI6のアドバイスで創設されているが、その背後には両国の巨大金融資本が存在していた。
アメリカとイギリスの配下にはカナダ、オーストラリア、ニュージーランドがあるが、この3カ国より米英に近いのはイスラエルだ。そのイスラエルが主導して1982年9月にレバノンのパレスチナ難民キャンプ、サブラとシャティーラで住民が虐殺されている。
ベイルートのキリスト教勢力、ファランジスト党のメンバーがイスラエル軍の支援を受けながら無防備の難民キャンプを制圧、その際に数百人、あるいは3000人以上の難民が殺されたと言われている。この虐殺を受け、イギリス労働党の内部でもイスラエルの責任を問う声が大きくなり、イスラエルを無条件に擁護するアメリカとの関係を見直すべきだとする意見も強まった。
そこでアメリカのロナルド・レーガン政権はイギリスとの結びつきを強めようと考え、メディア界の大物を呼び寄せて善後策を協議。そこで組織されたのがBAP(英米後継世代プロジェクト)だ。アメリカとイギリスのエリートを一体化させることが目的だが、その特徴のひとつは少なからぬメディアの記者や編集者が参加していたことにある。そしてイスラエルをスポンサーにするトニー・ブレアが首相になった。
アメリカとイギリスは現在、ロシアと並んで中国を攻撃している。対中国で重要な場所はいくつかあるが、海では東シナ海から南シナ海、陸では新疆ウイグル自治区だろう。香港の反政府運動でもそうだったが、ウイグルの問題でも信頼度の低い情報を西側の有力メディアが大々的に宣伝していることは本ブログでも指摘してきた。
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