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好戦的なバイデンは対露強硬派を集めているが、さらに中露を接近させる可能性
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2021.01.26 櫻井ジャーナル
アメリカの大統領に就任したジョー・バイデンはヒラリー・クリントンと同じように好戦的で反民主主義的な人物である。そうでなければアメリカ大統領の座を争うことはできないだろうが、中でもそうした傾向は強い。
例えば、1994年と95年にはボスニア戦争への軍事介入、2002年にはイラクへの先制攻撃を支持している。2009年1月から2期にわたってバラク・オバマ政権の副大統領を務めたが、その間にリビアやシリアをはじめとする中東から北アフリカの国々に対するジハード傭兵(ムスリム同胞団やワッハーブ派が中心)を使った侵略戦争を推進した。2013年から14年にかけてはウクライナでネオ・ナチを使い、選挙で成立したビクトル・ヤヌコビッチ政権をクーデターで倒している。
クーデターは2013年11月にキエフのユーロマイダン(ユーロ広場、元の独立広場)で始まるが、当初は人を集めるため、カーニバル的な集会が演出されていた。12月に反政府集会への参加者は50万人に達したという。
この混乱をEUは話し合いで解決しようとするが、それを知ったヌランドは怒り、ウクライナ駐在のアメリカ大使だったジェオフリー・パイアットに電話で「EUなんかくそくらえ」と口にしている。その会話の音声は2014年2月4日にインターネットで流された。
ヌランドのプランに反し、2月21日にはヤヌコビッチ大統領と反ヤヌコビッチ派が平和協定に調印、事態は終結に向かうかに思えた。そこで始まったのが広場における狙撃だ。23日には憲法の規定を全く無視した形で大統領が解任される。この狙撃がクーデター派によるものだったことは本ブログでも繰り返し指摘してきたので、詳細は割愛する。
2月4日にアップロードされた会話では、ヌランドがクーデター後の閣僚人事を話題にし、アルセニー・ヤツェニュクなるサイエントロジーの信者を高く評価していたが、実際、27日から2016年4月まで首相を務めている。大統領は2014年6月にペトロ・ポロシェンコが就任した。
ウィキリークスが公表したアメリカ政府の2006年4月28日付け公電によると、ポロシェンコはアメリカ政府へ情報を提供してきた人物。欧米の支配者を黒幕とする「オレンジ革命」で登場した銀行員あがりのビクトル・ユシチェンコと親しかったことでも知られている。
クーデター後、汚職の捜査対象になったウクライナの天然ガス会社ブリスマ・ホールディングス(本社はキプロス)の重役にバイデン副大統領の息子、ハンターが就任。操作に対する牽制が目的だったと見られ、それがスキャンダルとして浮上したのだが、西側の有力メディアは封印したいようで、追及しようとはしていない。
ブリスマの汚職捜査ではバイデン親子も対象になるが、検事総長だったビクトル・ショキンによると、数カ月にわたってバイデン副大統領から捜査を止めるように圧力がかかったという。FOXニュースのジョン・ソロモンによると、2015年終わりから16年初めにかけてバイデンは検事総長を解任するようウクライナ側に圧力をかけていたと6名ほどのウクライナの高官が語っている。ウクライナの議員、アンドリー・デルカチによると、バイデンはブリスマからロビー会社を介して90万ドルを受け取ったという。
バイデン自身は2018年1月に開かれたCFR(外交問題評議会)のイベントの中で、検事総長を解任する決断に6時間だけ与えたと自慢していたが、ショキンによると、ポロシェンコ大統領から捜査を辞めるように命令され、最終的には解任されたのだという。
状況は2019年に大きく変わる。この年の5月に大統領がウォロディミル・ゼレンスキーへ交代するが、その数カ月前からブリスマへの捜査が再開されたというのだ。
ドナルド・トランプは2019年7月にゼレンスキーと電話で会談、その際にバイデン自身がCFRで話したことを話題にした。それだけのことなのだが、それをトランプがゼレンスキーに対し、ハンター・バイデンについて捜査するように求めたのだとアメリカ下院情報委員会へ2019年8月に「内部告発」した人物がいる。
その告発者はエリック・チャラメラなるCIAの分析官。民主党の支持者で、2015年の夏からNSC(国家安全保障会議)でスーザン・ライス国家安全保障補佐官の下で働き、バイデン副大統領やジョン・ブレナンCIA長官の下でも働いていた。
大統領選挙の途中、失速気味だったバイデンが盛り返し、大統領に選ばれたということはウクライナ側の捜査をもみ消すことに成功したことを意味するのだろうが、何かの拍子に再び動き始める可能性はある。
オバマ政権がウクライナでクーデターを実行、傀儡政権を樹立させたのはロシアとEUを分断することが目的だった。特に天然ガスのロシアからEUへの輸送を止めること。EUという巨大マーケットを奪うことでロシアの経済にダメージを与え、ロシアというエネルギー資源の供給国を奪うことでEUのアメリカ依存を強めるという目論見だ。
同じ頃、アメリカとイギリスの情報機関は香港で反中国政府の活動を仕掛けている。「佔領行動(雨傘運動)」だ。香港を揺さぶるだけでなく、中国全域で反政府運動を展開しようと計画したのかもしれないが、成功していない。
ネオコンは2014年にロシアと中国を揺さぶろうとしたのだろうが、裏目に出る。アメリカやイギリスの本心を知ったロシアと中国は接近、戦略的な同盟関係に入ったのだ。
欧米にはそうした動きに危機感を抱いた人も少なくないだろう。その象徴的な出来事が2016年2月3日のモスクワにおけるヘンリー・キッシンジャーとウラジミル・プーチンの会談。
2015年6月にオーストリアで開かれたビルダーバーグ・グループの会合へジム・メッシナというヒラリー・クリントンの旧友が出席していたことから、彼女が次期大統領になることで内定したと言われていたのだが、キッシンジャーのモスクワ訪問をみて風向きが変化したと考える人が出てきた。3月からウィキリークスはヒラリー・クリントンの電子メールを公表しはじめ、ドナルド・トランプが登場してくる。民主党の内部ではバニー・サンダースが人気を集め始めた。
結局、2016年の大統領選挙ではトランプが勝利するが、4年の間に状況は変化してバイデンが大統領になった。この政権はシリコンバレーの巨大企業や金融資本を後ろ盾にし、戦争ビジネスやネオコンと関係の深いCSIS(戦略国際問題研究所)やCNAS(新しいアメリカの安全保障センター)といったシンクタンクが次期政権の陣容や政策の決定に深く関与している。
国防長官にはレイセオン重役で元米中央軍司令官のロイド・オースチン、情報長官に指名されたアブリル・ヘインズはバラク・オバマ政権でCIA副長官や国家安全保障副補佐官を務めた人物。国務長官にはCSISのシニア・フェローだったアントニー・ブリンケン、ウェンディー・シャーマンが同省の副長官、ビクトリア・ヌランドが次官になる予定だ。
シャーマンが上級顧問を務めるオルブライト・ストーンブリッジ・グループはマデリーン・オルブライトが率いるビジネス戦略を提供する会社で、ヌランドも籍を置いていた。オルブライトの好戦性はビル・クリントン政権で明白になっている。ヌランドはウクライナでオバマ政権が実行したクーデターを現場で指揮していた。
USAID(米国国際開発庁)の長官に指名されたサマンサ・パワーも好戦的な人物。USAIDはCIAの活動資金を流すことが重要な役割になっていることは広く知られている。
オバマ政権の陣容は好戦的。しかもオルブライトのようなロシアを敵視する人物が目につく。SARS-CoV-2(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2)も使って「超限戦」を仕掛けそうな雰囲気だが、2014年にはその戦術によってロシアと中国を結びつけてしまった。その失敗を反省していないとするなら、米英の金融資本を中心とする支配システムは大きく揺らぎ、場合によっては崩壊する可能性がある。
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