あり得ないスパイクタンパクの変異の数
昨日は、世界中で株価が劇的に下がったりしていまして「なんかあったのかなあ」とは思っていましたが、その理由とされるひとつが、後に WHO によって「オミクロン株」と命名されるコロナの変異株が懸念されるというようなことであるようです。
新変異株を「懸念」指定 オミクロン、再感染の恐れ – WHO
世界保健機関(WHO)は26日、南アフリカなどで確認された新型コロナウイルスの新たな変異株を、特に警戒を要する「懸念される変異株(VOC)」に指定した。また、ギリシャ文字から「オミクロン株」と命名した。
WHOは、オミクロン株は「多数の変異があり、うち一部が懸念される」と説明。デルタ株など他のVOCよりも再感染リスクが高いことを示す「暫定的な証拠」があり、感染拡大のペースも速い可能性があるとした。 (時事 2021/11/27)
この命名について、懸念されるコロナ株については、これまでギリシャ文字のアルファベット順に名称がつけられてきました。これまで登場したコロナ株の順番では、次は、ニュー(Nu)株かクサイ(Xi)株あたりとなるのが筋のような気がしていますが、いくつかアルファベットを吹っ飛ばしてオミクロン(ο/ Omicron)にいきなり到達しています。
説明なく吹っ飛ばしているあたりに「大物感」は確かにあります。
このオミクロン株は数日前に、検出が報じられていまして、その際には B.1.1.529変異種と呼ばれていました。最初は軽く考えていたのですが、このオミクロン株の「変異の分析」を見まして、それは、
「これはあり得ない」
と思うしかないようなものでした。
コロナが人間の細胞に感染する上で重要なものに「スパイクタンパク質」というものがあります。
ワクチン絡みで何度も出てきた言葉ですが、このオミクロン株は、なんと、スパイクタンパク質の変異箇所が「 32 」もあるのです。
そして、その他の変異も合わせると「 50以上の変異」が見られます。
このことに関しては、朝日新聞の以下のような記事の説明がわかりやすいかと思います。抜粋です。
この変異株の特徴は、スパイクたんぱく質にみられる変異の多さだ。欧州疾病予防管理センター(ECDC)の資料によると、30以上も確認され、アルファ株などで感染力を高める働きがあったとみられている「N501Y」もある。
スパイクは、ウイルスがヒトの細胞に侵入する道具だ。変異の入り方によっては、効率的に侵入できるようになり、結果的に感染力を高める。
スパイクの中でも、細胞の表面の分子とくっつく部分が特に重要になるが、英BBCは、デルタ株ではこの部分の変異が二つだったが、今回の変異株は10個ある点に言及している。
スパイクの変異によって、ワクチンが効きにくくなる恐れもある。 (朝日新聞 2021/11/27)
文字で「 30以上」と書いても、あまり迫力がないですが、その変異部分をすべて羅列すると迫力が出てきます。
以下は、最初にこのオミクロン株を特定した英インペリアルカレッジロンドンのトム・ピーコック博士の記述です。
オミクロン株の変異部分
スパイクタンパク質の変異:67V、Δ69-70、T95I、G142D /Δ143-145、Δ211/ L212I、ins214EPE、G339D、S371L、S373P、S375F、K417N、N440K、G446S、S477N、T478K、E484A、Q493K、G496S、 Q498R、N501Y、Y505H、T547K、D614G、H655Y、N679K、P681H、N764K、D796Y、N856K、Q954H、N969K、L981F
スパイクタンパク質以外の変異:NSP3– K38R、V1069I、Δ1265/ L1266I、A1892T; NSP4 – T492I; NSP5 – P132H; NSP6 –Δ105-107、A189V; NSP12 – P323L; NSP14 – I42V; E – T9I; M – D3G、Q19E、A63T; N – P13L、Δ31-33、R203K、G204R
B.1.1 decendant associated with Southern Africa with high number of Spike mutations
スパイクタンパク質の変異だけで 32、全部で「 59の変異」が見られます。
ピーコック博士は、このページで以下のように書いています。
ここにリンクしたページでは、専門家たちの議論がなされていますが、専門家から見ると、「超感染性の病原体である可能性が高い」ようです。
変異はスパイクタンパク質の NTD という部分と RBD という部分、どちらにも及んでいます。
Tulio de Oliveira
この NED とか RBD というのは、以下のような記事で取りあげていますので、ご参照下さい。
上の朝日新聞の記事には、
> 変異の入り方によっては、効率的に侵入できるようになり、結果的に感染力を高める。
とありますが、これだけ多彩に変異すると、これまでとは比較にならないほど感染力が高くなっているようには思えます。
いずれにしましても、人への感染に重要であるスパイクタンパク質自体がこれだけ変異していれば、感染力が「下がる」ということあり得ないとは思います。
あくまで予備調査であり、信頼できる数値ではないですが、アメリカとイギリスの研究では、
「デルタ株より 500倍感染力が強い」
というようなことも伝えられています。もちろん公式な話ではありません。
また、先ほどの朝日新聞の記事には「ワクチンが効きにくくなる恐れもある」とありますが、現行のワクチンは一切まったく少しも全然まるで完全に効かないでしょうが、そういうこと以上に、
「こんな異常な数の変異がこんな短期間で起こるのかよ」
ということも思います。後ほど簡単にふれますが、これは「大規模接種のツケ」だと思われます。
そして、この株の感染速度に関しては、出現したばかりで感染数が少ないですので何とも言えないのですが、ファイナンシャルタイムズのグラフを引用していた米ゼロヘッジに掲載されていたオミクロン株の「拡散のスピード」は非常に鮮やかです。
デルタ株は感染全体に占める割合が 90%に到達するのに 100日近くかかったのに対して、オミクロン株は「 10日と少し」で達しています。あっという間に広がっています。
ベータ株、デルタ株、オミクロン株の拡散の時間的推移の比較
FT、ZeroHedge
また、このオミクロン株は、南アフリカ由来というように言われていますが、「そういうものではない」というようにも言えそうです。
というのも、南アフリカ以外で、ほぼ同時に、マラウィ、ボツワナ、香港、イスラエル、ベルギーで、すでに確認されている他、一気に多くの国で検出・確認される可能性が出てきているからです。それはあまりにも広い範囲です。
多くの国でゲノムの解析が行われていますが、その確認が行われている国として挙げられているのは、フランス、オランダ、英国、アメリカ、シンガポール、フィリピン、カタール、エジプト、アラブ首長国連邦、マレーシアなどで、すでに「確認された」と考えられるという報道もあります。
どういう経路で拡大したのか、あるいはこれからしていくのかはわからないですが、拡散のスピードが大変に速いようですので、検出された国では、あっという間に、このオミクロン株が主流となる可能性がありそうです。
この新しい株の「毒性」はわかりません。症例の詳細がほとんど伝わっていません。
しかし、毒性が高いにしても低いにしても、「感染性は爆発的に高い」ことは言えそうです。
ふと、
「ワクチン大規模接種がとんでもないモンスターを生み出す」
と述べていたボッシュ博士の言葉を思い出します。以下の記事にあります。
あるいは、イギリス政府のコロナ諮問委員会が、今年 7月に「今後のシナリオ」として 4つ展開の可能性を示していましたが、その中のひとつに、以下のような記述がありました。
> SARS-CoV-2 に対するワクチンが集団全体に展開されているため、ワクチンによる免疫応答を回避できる変異体の選択圧を生み出す可能性がある。
そして、シナリオでは、そこから高い致死率を持つ株が出現する可能性にもふれられていました。以下の記事でご紹介しています。
なお、ボッシュ博士は公開書簡の中で以下のように述べています。
ボッシュ博士の公開書簡より
非常に近い将来、コロナウイルスが、ウイルスのスパイクタンパク質に、さらに数変異、それはおそらく 1つまたは 2つの変異を追加するだけで、ウイルスは、より感染性になるでしょう。
選択圧の収拾の観点から、上皮細胞の表面に発現する受容体(ACE-2)への結合をさらに強化しようとする変異体が現れる。
これにより、新しい変異株が ACE-2 受容体への結合に関してワクチン抗体を打ち負かすことができるようになると見られます。
……私たちは間もなく、私たちの最も貴重な防御機構である人間の免疫システムに完全に抵抗する「超感染性ウイルス」に直面するでしょう。
このパンデミックにおける大規模で誤った人間の介入の結果により、人間の「人口の大部分を一掃する」ことが起きないということを想像することはますます困難になってきています。
indeep.jp
このようなことが今、起きているということでしょうか。
もちろん、変異がこれで終わるわけではなく、まだ続いていくでしょうし、そして「その時点での最強の株が他の株を一掃する」ことを繰り返していくのだと思います。
いずれにしても、まだ何もわかっていません。
そして、本当に少しずつ「本当のパンデミック」に近づいてきているのかもしれません。
ワクチン大規模接種が生み出したパンデミックがです。
保健衛生の問題だけではなく、市場や経済も、またしばらく混乱しそうです。
オミクロン株について、現時点まででわかっていることについて、米ゼロヘッジの記事をご紹介して締めさせていただきます。
COVID「オミクロン」株について今わかっていることは次のとおりだ
Here's What We Know About The COVID "Omicron" Strain
zerohedge.com 2021/11/26
コロナ変異種 B.1.1.529 は、本日ギリシャ文字の「オミクロン」の名を得た。これに起因する世界的な混乱が垣間見える。
バックグラウンド
・スパイクタンパク質に32の変異があり、全体で 50の変異があるため、これまでのところ、コロナウイルスの最も高度に変異した変異体と見なされている。より具体的には、科学者たちは、細胞と最初に接触するウイルスの部分である受容体結合ドメインに関して、デルタ株では 2つの変異だったのに対して、オミクロン株には 10の変異があることを強調している。
・オミクロン変異体は 5日前にボツワナで最初に同定され、その後南アフリカで確認と配列決定が行われ、約 100例が確認された。症例はイスラエルと香港、そして今朝の時点でベルギーで検出された。
・シーケンシングデータは、B.1.1.529が異なる進化経路を持っていることを示唆しているが、C.1.2、ベータ、およびデルタ変異株といくつかの一般的な変異を共有している。
・とはいえ、科学者たちの判断は、まだ確立していないこれらの変異が、今後どのように機能するかに依存するため、これらの大量の数の変異が必ずしも「有害な変異」であるとは限らない。しかし、無害であることが証明されるまでは「非常に懸念される」と想定してもいいのかもしれない。
これはさらに致命的なのか
・この新しい変異株の死亡率が、以前の変異株よりも高いかどうかを判断するには時期尚早だ。報告された症例は 11月19日に南アフリカで増加し始めたばかりなので、入院や COVID 関連の死亡への影響はまだ現れていない。
検査と検出可能性
・南アフリカのエピデミックレスポンス&イノベーションセンター(CERI)の所長は、オミクロン変異株は通常の PCR 検査で検出できるため、「世界的に追跡しやすい」と書いている。これが「過剰な偽陽性を生み出す PCR 検査」の 1つであるかどうかはすぐには明らかではない。
・クレディ・スイスは、「 qPCR 検査でこの変異株を簡単に識別できる可能性がある。B.1.1.529 (オミクロン株)には s遺伝子内に欠失があり、広く使用されている PCR テストで簡単に識別できる」と述べている。
どれくらい拡大しているのか
・11月25日の時点で、南アフリカでほぼ 100 の症例が検出され、南アフリカでは新たな感染症の中で優勢な株になった。CERI 所長によると、初期の PCR 検査の結果は、ヨハネスブルグを含む南アフリカの州で 11月24日に報告された 1,100件の新しい症例の 90%がオミクロン変異株によって引き起こされたことを示した。
・近隣国のボツワナでは、当局は 11月22日に、二度の完全にワクチン接種された人々で 4件の症例を記録した。香港では、南アフリカからの旅行者がこの変異株を持っていることが判明し、別の事例が向かいのホテルで隔離された人で確認された。イスラエルはまた、最近マラウイに旅行した男性の 1例を特定した。ベルギーは、2つの新しい症例を報告した。
・CERI 所長によると、この新しい株は非常に急速に広がるようだ。南アフリカでは現在、この新しい変異株が 75%を占め、すぐに 100%に達すると見られると述べる。
伝染、感染
・CERI 所長は、新しい亜種は、非常に急速に広がっていると説明しており、2週間以内に、デルタ波の支配に続いて南アフリカのすべての感染をオミクロン株が支配すると説明している。
・さらに、この変異株には、他の亜種で見られ、感染しやすくなっているように見える変異部位が含まれている。
・アフリカ以外では、香港で 2件の症例が報告されている。1件は南アフリカ地域から帰国した旅行者で、もう 1件は隣接するホテルの部屋で検疫を行っていた人だった。ごく最近、イスラエルで症例が報告されている。
・これに応じ、英国はアフリカ南部の多くを渡航、入国を禁止とし、イスラエル、インド、日本、シンガポールも同様の措置を講じた。さらに、EU 委員会の委員長は、アフリカ南部からの旅行を停止するために、航空便停止を提案する予定だ。
ワクチン
・この変異体に対するワクチンの反応を正確に決定するには時期尚早だ。ただし、変異の数が多いと、元の COVID-19 株を念頭に置いて設計された現在のワクチンの効果が低下する可能性が高くなる。
・既知の変異体にも抗体がそれらの存在を認識することをより困難にする変異が含まれていた。
次に起きると思われること
・次の 2週間で、
(i)オミクロンがデルタ有病率の高い国でデルタを凌駕するかどうかを判断する(2〜3週間)
(ii)ワクチン接種の血清および以前に感染した患者による中和を判断するためにオミクロン株用に設計された疑似ウイルスにとって重要な期間(4週間)
(iii)入院および死亡率を決定するための実世界のデータ(約6〜8週間)
が期待される。渡航禁止令と公衆衛生対策の実施は、上記のタイムラインの見積もりの一部を遅らせる可能性がある。新規経口抗ウイルス薬はオミクロン株に対する活性を保持するはずだが、耐性が時間とともに現れる可能性がある。