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2021年11月3日 06時00分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/140607
https://www.tokyo-np.co.jp/article/140607/2
東京都の1日の新型コロナ感染者数は9人。これは昨年5月31日の5人以来の1ケタだ。同日の全国の感染者数も86人で、昨年6月以来の2ケタ。東京で1日5000人超えという今夏の爆発的感染状況からすれば考えられないほど急減した。こうなってくると、このまま「第6波」は来ないのでは、と期待したくなるのがコロナ禍で疲れ切った世間の人情だが、本当に期待していいのか。(石井紀代美、中沢佳子)
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◆「ぱっとにぎやかにしたいけど…」
「知ってる。東京で9人でしょ。このまま第6波、来ないでほしいな」
2日昼すぎ、東京・新橋で創業42年の居酒屋を営む女性(71)は、店支度をしながらそうつぶやく。ただ、感染者数の減り方が急すぎて「また、ぎゅんと上がるんじゃないか」と不安も口にする。
焼き鳥店を切り盛りする小嶋康子さん(72)も「これから年末のかき入れ時。このまま収束して」と願う。コロナ禍で10カ月間、店を閉めた。常連客はまだ戻ってこない。「忘年会、里帰り、正月、初詣と、人の動きは活発になるでしょう。第6波は来るんだろうな」と身構える。
昼食を済ませ、一服していた営業の男性(32)も「もう少しで忘年会シーズン。ぱっとにぎやかにしたいけど、次の波が来ると思うんで、できてもこぢんまりかな」とあきらめ顔だ。
今年6月から始まったコロナ感染の第5波は、東京五輪・パラリンピックが行われた8月にピークを迎えた。1日あたりの感染者数は全国で2万5876人(20日)、東京では5908人(13日)にまで達した。ところが、9月に入ると急激に落ち始めた。11月1日には全国で86人、東京で9人に減っている。
ワクチン接種は、2日現在、1回目を終えた人が77.6%。2回目も打ち終わった人は72.5%に上る。だが、第5波収束との関連性は、いまいち不透明だと指摘されてきた。
◆急減は「ウイルスの自滅」か
そんな中、いま、国立遺伝学研究所と新潟大のチームがまとめ、10月15日に学会で発表された研究に注目が集まる。ゲノム(全遺伝情報)医科学専攻の同研究所の井ノ上逸朗同研究所教授は「私たちは、急減はコロナウイルスの『自滅』と考えている」と語る。
井ノ上氏によると、コロナウイルスは人間の体内に結合すると、自分の遺伝子情報を複製して増えていく。その際に時々、複製ミスが起き、変異する。
間違った複製が多すぎると、ウイルス自体のバランスが崩れ、増殖できなくなるが、ウイルス内にはエラーを直す働きをする「nsp14」と呼ばれる酵素があり、その修復作用で増殖が続くという。
だが、研究チームが全国で新型コロナ感染者のウイルス検体をゲノム解析した結果、8月下旬ごろには、ほとんどのウイルスがnsp14が変化したタイプに置き換わっていたことが分かった。「この変化で酵素の働きが落ちて修復が追いつかず、死滅していったのではないか。第5波の収束に影響していると思う」
3密(密閉、密集、密接)回避に自粛の嵐、ワクチン副反応などに振り回された揚げ句、減ったのは「ウイルスの自滅」とは拍子抜けする話だが、第6波は来ないと考えて良いのか。
井ノ上氏は「海外ではまだ感染拡大している国もある。そのウイルスが入ってこなければ、台湾のように日本も安全な方向へ向かうだろう。第6波を防ぐためには、しっかりとした入国管理、検疫がとても重要だ」と指摘する。
◆各国でほぼ4カ月ごとに流行
しかし、感染症に詳しい専門家の間では、収束するどころか第6波は来るとみる向きが多い。
「自滅説はあくまで仮説。きちんと検証されていない。感染者が減ったのは、コロナの季節性の可能性が高い」と、NPO法人「医療ガバナンス研究所」の上昌広理事長は言う。
上氏の分析では、コロナはこれまで、日本や世界各国で冬、春、夏…とほぼ4カ月ごとに流行を繰り返している。「昨年も今年も春は3月下旬、夏が6月下旬から拡大し、増減の波がほぼ同じ。この冬に再び流行してもおかしくはない」。実際、海外では再び感染者が増えだしている、と上氏は警戒する。「ドイツや東欧ではすでに再拡大している。日本だけ感染が収束するという特殊な状況になるとは考えにくい」
昭和大の二木芳人客員教授(感染症)も「新たな変異株の出現は予測が付かない。ワクチンの効力を消す力を持つ変異株が出てくることもありうる」といい、油断はできないという。ワクチン接種が進み、マスク着用など基本的な対策をとり続ける日本は、重症化する人は減るかもしれないともみるが、「数字に表れない無症状の感染者が増えていくかもしれない。検査体制を拡充し、『見えにくい感染者』による感染拡大を防ぐ、監視体制をつくらなくては」。
◆「岸田4本柱」はどうなったのか
これまで「波」は何度も襲来し、物資不足や医療崩壊の恐れにあえいだ。岸田文雄首相は9月、自民党総裁選への立候補に当たって、新型コロナウイルス対策をテーマに「医療難民ゼロ」「感染症有事対応の抜本的強化」など「岸田4本柱」を打ち出したが、政界は感染急減の中で総裁選に明け暮れ、新政権の発足から総選挙へとなだれ込んだ。二木氏は「あの4本柱はどうなったのか。政治家の公約として守ってほしいが」とつぶやく。
総裁選後、党幹部や閣僚の顔触れが変わり、さらに総選挙で入れ替えもする。感染症対策で強い指揮権限を発揮する「健康危機管理庁」の創設まで唱えた岸田首相だが、今やその構想は宙に浮いている。「第6波は来る。この時期に総選挙なんて、最悪のタイミング。船頭は何人もいらない。有能な人材を厚生労働相に据え、権限を集中して取り組ませないと」と、元厚労相で国際政治学者の舛添要一氏は説く。
急ぐべきは、追加接種の実行、中等症や軽症に対応する病床の確保、治療薬の早期導入という。「厚労省はワクチンの効力を8カ月として追加接種を検討しているが、海外での再拡大を踏まえると6カ月で考えなくては。自治体と連携した医療の整備も必要。他国が承認した治療薬は特例承認で早期導入が可能。どれも、政治決断でできる」
インターパーク倉持呼吸器内科(宇都宮市)の倉持仁院長も、第6波襲来はありうるとみており、重症者のみに傾いていたこれまでのコロナ対応を見直すよう訴える。「中等症や軽症で自宅待機を強いられ、適切な医療を受けられずに命を落とす人が続出した。医療のインフラを見直し、無症状や軽症のうちに治療を受けられる本来の状態にしなくては。次の波が来てから動いても、遅い」
さらに、政府の専門家を集めた会議のあり方を疑問視しこう提案する。「現状は、現場で直接治療に当たっている臨床の人より、経済やデータを集めて検討ばかりする疫学に長たけた人が多い。臨戦態勢で動ける人材を入れ、換気や飛沫ひまつ防止など感染対策専門のチームも設けては」
◆デスクメモ
「ウイルスの自滅」にせよ他の要因にせよ、ともかく国内の感染者数が激減している今は、第6波を来させない、あるいは来ても波を小さくするための体制を整える好機に違いない。ただその際、もはや国民に我慢を求めるだけの対策では、実効性も納得感も得られないことは確かだ。(歩)
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