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(回答先: 「読んではいけない反ワクチン本 (忽那 賢志 文春オンライン)」 ワクチン・メーカー宣伝屋によるプロパガンダだ 投稿者 魑魅魍魎男 日時 2021 年 9 月 15 日 07:29:50)
「読んではいけない反ワクチン本」 遺伝子改変、不妊、何年か後に副作用…偽情報を徹底検証 #1
(忽那 賢志 文春オンライン 2021/9/14)
https://bunshun.jp/articles/-/48507
「文藝春秋」2021年10月号より「読んではいけない『反ワクチン本』」(大阪大教授・忽那賢志氏)を全文公開します。(全2回の1回目/#2に続く)
いま日本国内で新型コロナワクチン接種が急ピッチで進められています。8月末時点で2回接種を終えた人の割合は、総人口のうち約45%に達しました。
ワクチン接種が進む一方で、新型コロナワクチンの危険性を喧伝する「反ワクチン本」が多数出版されています。その内容を見ると、「遺伝子改変が起こる」「不妊になる」など、医学的に誤った情報があふれています。「よくこんなことを考えつくな」と驚くようなものもありました。
そうした書籍の中には、ネット通販で売れ行きランキングの上位に入っているものもありますし、本にある誤情報が、個人のSNSを通じてネット上にも出回っている状態で、さすがに看過できません。
■ 反ワクチン論者たちは不安につけこんでいる
もともと日本は、ワクチンへの信頼性が低い国です。1940年代には、「京都・島根ジフテリア事件」などをきっかけに、ワクチンへの不信感が広がりました。近年では、子宮頸がんなどを予防する「HPVワクチン」のミスリーディングな報道のため、ワクチン全般に対する不安が一層強まりました。
ですから新型コロナワクチンについても、不安を抱く人は一定数いるだろうと予想はしていました。反ワクチン論者たちは、その不安につけこんでいるわけです。
ワクチンを接種するかどうかは、あくまで個人の判断にゆだねられています。「何が何でも打ったほうがいい」というものではなく、打たない選択肢もあります。
ただ、ワクチンを打てば感染や重症化は高い確率で防げます。大阪府の調査では、今年3月以降、ワクチンを2回接種した感染者の中には死亡や重症化したケースがなかったと明らかになりました。東京でも今年7月19日以降の1カ月間で、2回接種で亡くなった方は全体の2%だという調査結果が出ています。
一方、ワクチンに副反応はつきもので、100%の安全性を求めることはできません。
これらの効果と副反応を天秤にかけた上で、接種するかどうかを判断するわけですが、このとき医学的に誤った情報やデマに惑わされて、接種の機会を逃してしまうのは、ご自身にとっての不利益につながりかねません。接種をためらっている読者の方々には、正しい情報を知った上で、ワクチンを打つかどうかを決めていただきたいです。
そこで今回、「反ワクチン本」の偽情報やデマを紹介し、医学的・科学的な視点から、しっかり検証していきたいと思います。正確性をより追求するため、新型コロナワクチンについての正確な情報を発信する団体「こびナビ」副代表の木下喬弘医師にも監修をお願いしました。
■ 「メッセンジャーRNAワクチン」の特徴
反ワクチン本の詳細に入る前に、「新型コロナワクチンはなぜ効くのか」をご説明したいと思います。
現在、日本で接種が進められている主な新型コロナワクチンは、米ファイザー社製と、米モデルナ社製。どちらも新技術を使用した「メッセンジャーRNA(mRNA)ワクチン」です。
ワクチンの古典的な手法は元々、大きく分けて「生ワクチン」と「不活化ワクチン」があります。
「生ワクチン」は、ウイルスを弱毒化させたものを体内に接種して免疫をつけるもので、麻疹や風疹のワクチンに使用されています。一方の「不活化ワクチン」は、ウイルスの一部だけを体内に接種するもので、代表的なものにインフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチンが挙げられます。「不活化ワクチン」はウイルスの活性を完全に殺してしまっているので、「生ワクチン」に比べて免疫がつきにくい。免疫がついても、長期間持続しないという特徴があります。
mRNAワクチンは従来の2種類と違い、ウイルスそのものは使用しません。
具体的な仕組みを説明しましょう。新型コロナウイルスは王冠のような見た目をしており、表面に「スパイクタンパク」と呼ばれる、トゲトゲとした突起物が存在します。このスパイクタンパクの構造についての遺伝情報を、mRNAと呼ばれる遺伝物質に載せて体内に運ぶのです。
mRNAはすぐに分解されないように、脂質ナノ粒子と呼ばれる脂質に包んで体内に注入します。mRNAが体内の細胞に取り込まれると、細胞内の「リボソーム」と呼ばれる器官が遺伝情報を読み込み、新型コロナウイルスのスパイクタンパクを細胞内で生成する。それに人間の免疫が反応して抗体が作られ、免疫が誘導されるという仕組みです。
ワクチンは基本的に、体内に“異物”を投与することで、感染症に対する免疫をつけるものです。免疫を活性化させるのですから、副反応は十分起こりうるものとして考える必要があります。主な例としては、接種部位の腫れ、痛み、発赤。また、全身症状としては、だるさ、頭痛、筋肉痛、寒気、発熱などが見られます。いずれも許容範囲内のレベルであり、接種後2日くらいまでにほとんど消失します。
■ 科学的に正しくない記述(1) 「ワクチンが遺伝子的変化を引き起こす」
ワクチンの大前提を押さえたところで、反ワクチン本の実際の内容に触れていきたいと思います。
〈遺伝子組み換えRNA/DNA技術は、人の身体に永続的な未知の遺伝子的変化を引き起こすだろう。あなたを「遺伝子組み換え生物」に変える設計がされている〉(高橋徳・中村篤史・船瀬俊介『コロナワクチンの恐ろしさ』成甲書房、p.51)
mRNAワクチンは遺伝子を用いた技術のため、多くの書籍でこのような記述が見受けられます。
かつて「遺伝子組み換え食品」の安全性について議論が巻き起こったこともあり、「遺伝子」という言葉に敏感に反応される方も多いのでしょう。ワクチンを打てば自分の遺伝子も組み替えられ、改変されてしまうのではないか、と。
誤解を解くため、まずは細胞の仕組みを確認しましょう。遺伝情報を持つDNAは、細胞内の「核」と呼ばれる部分に存在し、しっかりとした構造の中で守られています。外部から簡単に書き換えられないように作られているのです。
また、人間の細胞の中にはもともと多数のmRNAが存在しており、タンパク質を生成するために使用する情報を運んでいます。それらは普段、「核」の内部には入ってこられない仕組みになっている。よって、ワクチンを使ってmRNAを体内に注入しても、遺伝子がある細胞の核内に入り込むことは不可能です。遺伝子の改変はあり得ません。
■ 科学的に正しくない記述(2) 「新型コロナウイルスワクチンは動物実験さえやっていない」
〈従来のワクチン開発ですら、5〜10年間という歳月をかけて、培養した細胞や動物を使った実験、実際に人間に投与する臨床試験などのプロセスを経てつくられています。一方で、新型コロナウイルスワクチンの開発期間は、各社とも約1年足らずです。しかも動物実験さえもやっていませんから、世界中で「人体実験だ」と反発が起こるのも無理はありません〉(内海聡『医師が教える新型コロナワクチンの正体』ユサブル、p.130)
確かにmRNAワクチンの開発から承認までは、従来のワクチンと比べて非常に速いものでした。
これほど短期間でワクチンの開発が進んだ理由は複数あります。例えば、いくつかの動物実験や臨床試験を同時並行でおこなう工夫をして、効率よく研究が進められたこと。mRNAワクチンは従来のワクチンと違ってウイルスそのものを必要としないので、ウイルスを培養する時間が省けたことなどです。
だからと言って、「動物実験さえやっていない」というのは明らかに誤りですし、臨床試験でも必要なプロセスを省略しているわけではありません。ファイザー社もモデルナ社もプロセスをきちんと踏んでいる。臨床試験(第三相)で実施する大規模治験は数万人を対象としており、従来のワクチンの臨床試験と比べても大がかりなものでした。有効性と安全性が厳格に確認された上で承認が出ているのです。臨床試験に参加した人々については、より長期に有効性や安全性が認められるかどうかについて、引き続き追跡調査がおこなわれています。
■ 科学的に正しくない記述(3) 「長期的には後遺症のリスクがある」
〈数カ月、数年後の身体の異変はまったく研究されていない〉(『コロナワクチンの恐ろしさ』p.77)
〈副作用や後遺症や遺伝子の変化は、遺伝子が組み込まれていく関係でタイムラグが生じる恐れが高いのです。つまり、すぐには症状として表れないということです〉(『医師が教える新型コロナワクチンの正体』p.152)
mRNAワクチンの技術は新型コロナワクチンで初めて実用化されました。また、人間への接種開始からまだ1年も経っていないため、「接種から何年か後に重大な副作用が生じるのではないか」と、長期的な安全性を懸念する声もよく聞きます。
結論から言うと、mRNAワクチンの成分が長期的に体内に残ることはありません。mRNAは、細胞内でタンパク質を合成するリボソームで数日以内に使用され、その後すぐに分解されるからです。mRNAによって産生されるスパイクタンパクも、接種後2週間で体内から消失すると言われています。
こうした機序(薬が効果を発揮する仕組み)から見ても、接種後1年以上が経過してからの副反応は、極めて考えにくいのです。実際、これまでのワクチン接種では、重篤な副反応は投与後の数週間以内でしか確認されていません。
また、mRNAワクチンは確かに新しいプラットフォームのワクチンではありますが、全く新しい技術というわけではありません。
実はmRNAワクチンの技術は何十年も前から、多くの科学者によって研究されてきました。インフルエンザウイルス、ジカウイルスなど、まだ実用化にいたっていないものの、多くの分野でワクチンに応用すべく研究されています。何十年にもわたるmRNAワクチンの研究では臨床研究も実施されましたが、長期的な副反応は認められていません。
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