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2024年9月15日 12時00分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/354269
今年もクマによる被害が相次いでいる。首都圏とは関係が薄いと思う人も多いかもしれないが、東京は世界でも珍しい「クマのすむ首都」でもある。生息地は多摩地域の西側に限られるとはいえ、秋には登山や紅葉狩りに訪れる人も増える。一方、クマは冬眠に備えて食欲が増し、餌を求めて人里に現れる危険性が高まる。クマの出没が増えている都内の現場を取材した。(宮畑譲)
◆「生ごみをあさっているクマを見たという情報もある」
「ダンッ、ダーン」
今月6日朝、東京都あきる野市の山あいで、空港で鳥を追い払うためなどに使われる煙火の大きな音が響いた。警察や市役所、猟友会などによる合同訓練の一こま。市では今年、民家近くでクマの目撃情報が相次いでいるため、都内で初めて関係機関が連携した訓練を実施した。
参加者は約50人。クマに襲われた人の救護やクマの追い払い、防災無線での警戒呼びかけなど、いざというときの手順を確認した。
市内では訓練前夜にも民家にクマが現れ、防犯カメラで撮影された。6月には民家近くに現れたクマが捕獲されている。同市などを管轄する警視庁五日市署管内では1〜8月、クマの目撃や痕跡に関する情報は31件で、昨年同期の約5倍に上る。
「庭の木に登って果実を食べた、生ごみをあさっているクマを見た、という情報もある。生活を脅かす事態となっている。迅速、的確に対応しないといけない」。訓練でこう話した五日市署の千手教一署長にも警戒の色がにじんだ。
◆「毎日のようにクマの目撃情報がメールで送られてくる」
訓練が行われた場所から約1キロにあるJR武蔵五日市駅。拝島駅とを結ぶ五日市線の終着駅で都心からは約1時間。山に囲まれ緑豊かだが、周辺には住宅地もある。
改札には「クマ出没注意!!」と書かれた立て看板があった。近くには渓谷や格好のハイキング道がある。そのガイドが書かれたパンフレット置き場や観光案内所、バス停など、駅や周辺の至る所に注意を促すポスターが張られていた。
「毎日のようにクマの目撃情報が市からメールで送られてくる。ここに住んで50年ほどになるが、去年までクマの心配なんてしたことはなかった。毎日不安です」。今年6月、駅から徒歩約5分の自宅脇の川沿いに、親子連れのクマがいるのを娘が目撃した藤原和代さん(72)が話す。
庭には柿の木があり、例年、干し柿にしていた。しかし、今年はクマが食べに来てはかなわないと、青いまま全てもいで捨てた。
「近くにクマがいるのは知っていたが、山深い場所の話でよそ事だった。今や何か分からない動物の鳴き声を聞くと怖い。夜もなるべく一人で歩かないようにしている」と言い、身近に出没するクマへの恐怖が高まっている様子だった。
◆2020年度に頭数調査 多摩地域に推定約160頭が生息
クマを目撃した人にも話を聞くことができた。
藤原さん宅から、川の上流へ約500メートルほどの場所に住む須崎保さん(72)も6月、自宅横の川に親子連れのクマがいるのを見た。「家のすぐ横なんで驚きましたよ。クマは動物園にいるもんだと思っていたから」。今は朝夕の薄暗い時間帯には外出しないようにしている。「この辺りはやぶや林があって、人からは獣が見えにくい場所がたくさんある。万が一のことがあったら嫌だよね」
環境省によると、全国でのクマの出没件数は本年度、4〜7月で1万704件に上り、過去最多ペース。都内でも五日市署管内に限らず、増加傾向にある。
同省によると、都内の出没件数は4〜7月の4カ月で126件を数え、昨年度全体の114件を既に上回った。都は市街地での目撃情報が目立ち始めたため、2020年度に頭数調査を行ったところ、多摩地域に約160頭の生息が推定された。
◆専門家は「生息域は確実に拡大」 東京都は異なる見方
出没情報などは首都圏中央連絡自動車道(圏央道)より西側に集中している。昨年度、本年度(9月13日現在)とも都内で人的被害はないが、本年度は11頭を捕獲している。
都の担当者は「頭数が格段に増えたとか、都の東側に生息域を広げているという認識はない。絶滅が危惧されており、基本的には保護する対象。クマと人が出合わないようにし、共存共栄を図っていく」と話す。
現状を専門家はどうみているのか。
奥多摩でツキノワグマの調査をしている東京農工大の小池伸介教授(生態学)は「全国的な傾向と同じで、生息域は確実に拡大している」と都とはやや異なる見解を示しつつ、「圏央道より西側の山や森にはクマがいると考えていい」と話す。
◆「都内の市街地に出没すれば…」対策が急務
「今後、多摩川沿いなど意外な場所にクマが出ないとも限らない」と予測。クマと人が出合わないようにするために森と住宅街を分ける緩衝地帯を設ける「ゾーニング」の重要さを説く。「山に分布を押し戻しておかないと、民家の裏山にクマがいる状態になってしまう」
小池氏は「都内の市街地に出没すれば、大きな人身被害が出る可能性はある。今のうちに対策を講じておいたほうがいい」と警告する。また、都内のクマは、関東圏にまたがる山系に生息する一群なので、広域の自治体が連携した対策も必要だと訴える。
さらに、「来年こそ危ない」と言うのは、日本ツキノワグマ研究所の米田一彦氏。米田氏によれば、今秋はドングリやブナなどの生育が平年並みの予想で、人里への出没は極端に増えないとの見立てを語る。
一方、問題行動を起こしやすいとされる、来年2歳になるクマの数が全国的に多いとみている。「2歳のクマは好奇心が強い一方、成獣ほど警戒心がなく人里に出没しやすい。ドングリなどの凶作と2歳のクマの数が多いと事故が増える。来年は都内の平野部で目撃されるクマも出てくるかもしれない」
◆「被害が起きてからでは遅い」専門家が勧める対策とは
では、どんな対策が有効か。参考になる例として、長野県軽井沢町を挙げるのは、地理学の分野から人と野生動物の共存を探る研究をする、岐阜大の橋本操准教授だ。
同町では、誘因物となるごみ管理の徹底、電気柵や草刈りによるゾーニング、ベアドッグによる追い払いを行っている。また、町内の小学校で共存を学ぶ講座を開き、情報発信にも力を入れる。10年以上、人がいるエリアでの人身事故は起きておらず、駆除も昨年はゼロに抑えられた。
橋本氏は「クマ対策はメリットを理解してもらいづらく、実際に被害が出るまでなかなか進まない。しかし、被害が起きてからでは遅い。都内でも身近な問題と受け止めてほしい」と言い、自治体と地域住民が一体となって対策を行う重要性を強調する。
「対策は地域ぐるみで行わなければうまくいかない。個人や地域の一部の努力だけでは限界がある。自治体の予算措置も必要だ。自然災害と同じで、野生動物の対策には自助、共助、公助の三つが重要になる」
◆デスクメモ
10年余り前、多摩地域の山を時々歩いていた時期がある。当時はさほどクマを意識していなかった。今振り返り、どこかにいたのかと思うと、ちょっとゾッとする。今年はクマの出没も夏の暑さも記録的な様子。身近なところで、自然環境の変化を感じずにはいられない。(北)
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