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2023年3月8日 12時00分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/235319
落語の登場人物といえば、八つぁん、熊さんにご隠居、金坊、若旦那、奉公人…。スポットライトを浴びるキャラクターは男性ばかり。女性が主役の噺はなしはごく一部で、要所に登場するおかみさんや花魁おいらんの心の内は多くは語られない。そんな世界にひょいと風穴をあけてみせるのが、落語家の林家つる子さん(35)だ。古典の名作を女性の視点で大胆に描き直し、ファンを増やしている。(林朋実)(東京新聞)
つる子さんが2月から披露するのが、新解釈の「紺屋高尾こうやたかお」。遊郭吉原で最高位の遊女、高尾太夫に一目ぼれした紺屋(染物屋)の職人・久蔵が、3年働いてためた金で金満家を装い、高尾に会いに行く様子をコミカルに描く古典だ。久蔵が職人だと告白すると、高尾は吉原を出たら女房にしてほしい、と告げる。
「なんで久蔵にひかれたのか、高尾の気持ちってほとんど描かれていない」。大勢の男性が一目会いたいと憧れるトップアイドルのような存在の高尾。一ファンにすぎない久蔵が、いくら情熱的で正直者だったからといって、夫婦になりたいとまで思うだろうか。高尾はどんな人生を送ってきたのだろうか。つる子さんは想像を膨らませた。
華やかだが、花魁は男性相手の「商品」として生きることを強いられた女性だ。つる子さんは高尾を主人公に、仲の良い遊女や吉原へ売られてきたばかりの女の子も登場させた。久蔵の描写を抑え、遊女たちのかなしみや希望を丹念に描くことで、不器用だが実直な久蔵にひかれた高尾の心の動きを浮かび上がらせる。
プロの女性落語家が初めて誕生してからまだ50年ほど。江戸から明治、大正にかけてできた古典落語は、男性が作り、演じてきた。酒飲みで女好きの男が遊郭通いによって妻子と別れて遊女と一緒になるが、その後改心して復縁する「子別れ」。左官の男が娘を吉原に預けて得た大金を、身投げしそうな若者に渡し、後にその若者と娘が結ばれる「文七元結ぶんしちもっとい」。男性にとって「都合の良い」女性が登場する噺も少なくない。
男社会の落語の世界を女性視点で描いた舞台「ひとりでできるもん!」の脚本を書き、昨年上演した漫画家の内田春菊さん(63)は「今の女性から見たら『なんで?』と思うことばかり。若い人が『落語は分からない』と離れていってしまうのでは」と指摘。「つる子ちゃんは開拓者」とエールを送る。
「自分の解釈で古典を変えることには不安もあった」と振り返るつる子さん。「でも、女性を主人公にしたとき初めて思いっきり気持ちを乗せられた」。師匠の林家正蔵さん(60)も「古典をそのままの形で真摯しんしにやるのも大切。でもそれだけにとらわれず挑戦して」と背中を押してくれた。
「男性社会で働き、そこに合わせる努力ばかりしてきたけれど、つる子さんの挑戦を見て、新しい道をつくる努力をしてもいいんだと心が軽くなった」。つる子さんは、こう書いてあった女性客からの手紙を励みにし、大切にしているという。
◇
つる子さんが本来の作品と新解釈の二つの紺屋高尾を演じる舞台が、15日午後7時から「スパイス寄席」(東京都渋谷区)である。満席だがキャンセル待ちは可能。
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