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「経営トップは裸の王様」トヨタG、悪質な不正の発覚止まらず…「適切」と報告後も
https://biz-journal.jp/2022/04/post_291813.html
2022.04.25 06:00 文=桜井遼/ジャーナリスト Business Journal
日野自動車のトラック(「Wikipedia」より)
トヨタ自動車に関係する企業で不祥事の発覚が相次いでいる。トヨタ子会社の日野自動車は日本市場向けトラックとバスの排出ガスと燃費の測定で不正をしていた。トヨタ系販売会社では、全国での不正車検発覚後も新潟トヨタ自動車が不正を継続していたことも明らかになった。さらに、トヨタグループの御三家の1社であるアイシンのモータースポーツのワークスチームが道路交通法に違反していたことも発覚し、チームは活動休止を決めた。いずれの不祥事も悪質で、トヨタグループのモラルの崩壊を懸念する声が高まっている。
■日野が排ガスや燃費の不正
日野が排ガスや燃費の不正を公表したのは3月4日。緊急記者会見で小木曽聡社長と下義生会長が陳謝した。不正をしていたのは日本市場向けに販売しているトラックとバスに搭載しているエンジンの燃費や排ガスの検査だ。中型エンジンの排出ガス性能の劣化耐久試験で規制値をクリアできないことから、排出ガスの後処理装置の第2マフラーを試験途中に交換。日野のエンジニアは、このエンジンが経年劣化すると排出ガスの規制値を超過することを認識していた。
また、大型エンジンの燃費測定では燃費値が有利になるよう測定装置を操作、実際よりも良い燃費値が表示されるように試験していた。小型エンジンも燃費性能が基準を満たさないことをあらかじめ認識し、燃費が有利になる条件で試験して複数の測定結果から最も良い燃費値を採用していたことが判明している。
日野の今回の不正は、北米向けエンジンの排ガス認証がクリアできない問題が発生して北米工場での生産を停止したのを機に、日本市場向けエンジンについても自主的に調査したことで発覚した。すでに米国司法省は日野の米国子会社に対して調査に入っている。
今回の日野の不正は2つの点で悪質だ。まず、排ガスや燃費の基準を満たさないことをあらかじめ認識していながら不正に手を染めていたことだ。もう一つが2016年の三菱自動車の燃費不正の発覚後、国土交通省が国内の自動車メーカーに対して同様の不正の有無がないかを調査して報告するように要請した際、日野は「適切に実施している」と回答していたことだ。
日野は今回の不正が始まったのは「2016年以降と見られる」(小木曽社長)とし、同年以前についての調査を継続する方針だ。しかし、国土交通省へ「適切」と報告した後に不正が始まったとは考えにくい。仮に国土交通省へ報告後の16年以降、不正が始まったとしても「三菱自の不正を目の当たりにしながら、不正に手を染める感覚は到底、理解できない」(トラックメーカー)との声は少なくない。
国土交通省は不正が行われていた車両の型式を取り消した。型式指定の取り消しは初めてで、日野自動車はトラック、バスの一部で生産と販売ができなくなっている。今後、第三者で構成する調査委員会が不正の原因調査や再発防止策をまとめて国土交通省に報告する予定。
■トヨタの系列ディーラーでも不正
日野は不正の原因について「現場の数値目標達成やスケジュール厳守に対するプレッシャーが背景にある」(小木曽社長)と説明する。日野はトヨタの子会社で、小木曽社長は昨年春にトヨタから派遣されたばかり。前任社長だった下義生会長は日野のプロパーだが、日野の社長就任前にトヨタへ出向していた経験を持つ。経営トップの周辺はゴマすりばかりで、悪い話は耳に入れない「裸の王様」スタイルが定着しているトヨタの体質が、グループ全体に幅広く蔓延しているとの指摘もある。
悪いことは隠ぺいする傾向は、資本関係を持たないトヨタの系列ディーラーも同様だ。昨年3月、ネッツトヨタ愛知を皮切りにトヨタ直営ディーラーが運営する「レクサス高輪」を含むトヨタ系ディーラー15社、16店舗で不正車検が発覚した。多くが社内で規定されている時間内に作業を完了させるため、作業の一部を実施せずに車検に合格させていた。
不正車検の相次ぐ発覚を受けて、トヨタは全国の系列販売会社に対して自主的な総点検の実施を要請して全容を明らかにした。しかし、総点検で「問題なし」とトヨタに回答していた新潟トヨタが3月30日、高級車を販売するレクサス新潟を含む5店舗で不正車検を行っていたことが明らかになった。
新潟トヨタは「全店舗総点検で、作業者一人ひとりの業務内容の確認や負荷の把握まではできていなかった。結果として課題を見つけることができなかった」として釈明のコメントを出している。不正車検を行っていたのは20年3月10日から22年3月9日までとしており、トヨタ系販売店での不正車検が社会問題となっている時も、問題が発覚した後も、最近までずっと不正を続けていた。
トヨタは販売店での総点検を実施した後の昨年11月、不正車検が問題視されるなか、都内で販売店のトップを集めた代表者会議を緊急で開いた。当然、不正車検への対応が示されると見られていたが、トヨタの豊田章男社長は「トヨタの創業家がどうだとか、わけのわからないことを一方的に延々としゃべっていた」(トヨタ系ディーラー)という。燃費や排ガスが基準を満たさないトラックをごまかして顧客に販売していた日野も、定められた点検や整備をしていないにもかかわらず車検を合格させていたトヨタ系ディーラーも、原因の根は同じで「優先するのは顧客よりも社内事情」ということだ。
■「上が喜んだり、納得することだけを重視する」
トヨタグループでデンソー、豊田自動織機とともに御三家と呼ばれるアイシンの関係者による傍若無人な振る舞いも明らかになっている。4月3日に唐津で行われた全日本ラリー選手権で、アイシンのワークスチームのレース参戦車両が、次の競技場に移動するための一般公道を走行中、追い越し禁止区間を無視して前方を走行する車両を、対向車線にはみ出して追い越した。加えて、追い越した直後の左折する三差路を見落としたことに気付き、さらに対向車線にはみ出しながら左折し、走行中の一般車両の進行を妨害するなど、危険な走行を行った。
これらの行為は道路交通法に抵触する。違反の様子はSNSで拡散され、アイシンのワークスチームに対する批判の声が集中するなど、ラリーに対するイメージも傷つけた。これを受けてアイシンは謝罪コメントを公表するとともに、ワークスチームの当面の活動休止を発表した。
トヨタの豊田社長は自身もハンドルを握るなど、モータースポーツ活動を重視してきた。そしてモータースポーツに熱心な社員や関係会社が優遇されてきた。このため、系列サプライヤーやディーラーも豊田社長に気に入られようと、モータースポーツ活動に取り組んでいるケースも少なくないという。そうしたことが、モータースポーツに参戦する上で大原則であるルール遵守ができない参戦者を招いたともいえる。
トヨタを含めてグループに共通するのが、「上が喜んだり、納得することだけを重視する」(トヨタ系サプライヤー)企業文化が定着していることだ。トップが気に入らない意見をするだけで「すぐに外に飛ばされる」のを、多くの役員や社員が目の当たりにしてきたからだ。相次ぐ不祥事発覚や法律遵守や顧客よりも社内事情を優先するトヨタグループの経営姿勢を如実に示している。
(文=桜井遼/ジャーナリスト)
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