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ブリヂストン、凄まじいリストラ、滲む危機感…8千人転籍、工場4割を閉鎖・売却
https://biz-journal.jp/2022/01/post_274513.html
2022.01.13 06:00 文=編集部 Business Journal
「Wikipedia」より
タイヤ国内最大手のブリヂストンが大規模な人員削減に踏み切る。防振ゴム事業を中国企業に、自動車部品などの化成品ソリューション事業を投資ファンドに売却する。国内外で22カ所の事業所を譲渡し、従業員約8000人に転籍を求める。国内では全体の従業員の1割弱、3000人弱拠点の2割強にあたる11カ所が移ることになる。
2021年2月、「23年までに世界約160カ所の工場のうち4割を閉鎖・売却などで削減する」計画を打ち出した。石橋秀一取締役最高経営責任者(CEO)は「過去の課題に正面から向き合う。やれることはすべてやる」とリストラへの覚悟を示した。
事業構造の変革を急ぐ背景には、中国勢など新興タイヤメーカーの追い上げがある。中国・中策ゴムや韓国ハンコックタイヤなどが低価格品を武器に台頭。米業界誌「タイヤビジネス」によると、ブリヂストンの世界シェア(売上高ベース)は、00年はシェアトップの20%だったが、14年には14%に下がった。19年には仏ミュランに敗れ、2位に後退した。
ブリヂストン、仏ミシュラン、米グッドイヤーの3強で世界のタイヤ市場を寡占状態にしてきたが、新興勢に均衡が破られた。新興勢力は2000年に43%だった世界シェアを20年には64%にまで拡大した。ブリヂストンは激しいシェア争いに巻き込まれ、タイヤ事業の採算が悪化した。
売上高営業利益率は15年12月期は14%(日本基準)だったが、20年同期には7%(調整後営業利益率、国際会計基準)と半減した。業績を牽引してきたタイヤ事業の収益性の低下で、不採算事業の“外科手術”は待ったなしとなった。乗用車や鉱山機械など、過去に積極投資してきたタイヤの生産能力の増強が重荷になった。南アフリカ、フランス、中国など農機やトラック・バス、乗用車向けのタイヤ工場の閉鎖を決めた。
自動車のエンジン向けなどに使われる防振ゴム事業は中国・安徽省の企業に7月に売る。自動車のシートパッドなどをつくる化成品ソリューション事業は投資ファンド、エンデバー・ユナイテッド(東京)に8月に売却する。防振ゴム事業の20年の売上高は544億円、化成品ソリューションは557億円だった。
この2つの事業の従業員は7886人でグループ全体(約14万人)の6%弱にあたる。このうち国内は2773人である。従業員は売却先の企業に転籍してもらう方針だ。譲渡する国内の拠点11カ所とは別に、今回の事業売却に伴い閉鎖が決まっている工場もある。埼玉、静岡、岐阜、香川の2事業関連の4工場は23年までに閉じる。19年時点で約160カ所あった国内外の生産拠点を23年までに4割減らす。
コロナ禍で業績は落ち込んだが、タイヤの販売が回復してきている。21年12月期の連結決算は、売上高が前期比18%増の3兆3200億円、当期損益は3250億円の黒字(20年同期は233億円の赤字)に転換する見込みだ。
■脱炭素に向けてエアレスタイヤを開発
タイヤ業界にもカーボンニュートラル(温暖化ガス排出量実質ゼロ)の波が押し寄せてきた。世界的なEV(電気自動車)シフトが起きるなか、脱炭素タイヤの開発競争が始まった。
ブリヂストンは乗用車用新製品「VRX3」を21年9月に発売した。すべり事故の原因となる氷上の水膜を除去する「発泡ゴム」などの独自技術を進化させ、タイヤが路面を捉えて張り付く力を改善した。従来製品の「VRX2」と比べ、氷上のブレーキ性能は20%、タイヤを摩耗しにくくさせる性能を17%向上させたという。
EVの普及にも対応し、タイヤの常識を覆すエアレスタイヤの開発を進めている。接地面とホイールの間に入った空気がクッションの役割を果たす従来のタイヤと異なり、空気の代わりに樹脂製の柱で車体を支える仕組みだ。パンクの心配がなく、廃棄するタイヤを減らせるほか、ガソリンスタンドで空気圧の点検などをする必要もなくなる。EVや自動運転車の普及後にはガソリンスタンドでタイヤを点検する機会が激減するのに対応した。
日米欧のタイヤ販売拠点をEVのサービス拠点として、新興の車メーカーに活用してもらう構想を持っている。EVで産業の水平分業が進み、工場を持たず販売はネットに軸足を置く車メーカーが増える見通しだ。こうした車メーカーのEV整備の黒子となり、サービス事業をタイヤに次ぐ中核事業に育てたい考えだ。
20年3月、石橋氏がCEOに就任した。石橋氏は創業家と同姓で、孫正義氏や堀江貴文氏などが出た福岡の有名進学校、久留米大学附設高校を卒業しているが、創業家の出身ではない。
業績の悪化に直面した石橋CEOは、抜本的な構造改革に突き進む。旧経営陣やリストラの対象になる幹部や社員は、当然のことながら猛反発し、ハレーションを起こした。外国企業や投資ファンドに転籍を求められる従業員は「将来、仕事がなくなるのではないか」と不安を募らせている。
経済専門誌は石橋氏を“首切り大魔王”と評した。脱炭素、EV時代に備えた、グローバル・レベルの構造改革の答えは1、2年後には出る。
(文=編集部)
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