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ゆうちょ銀行、ATMでの硬貨入出金に最大330円の手数料導入…“小銭貯金”は消滅?
https://biz-journal.jp/2021/12/post_266526.html
2021.12.06 05:50 文=松崎のり子/消費経済ジャーナリスト Business Journal
「gettyimages」より
子どもの頃、貯金箱に小銭をせっせと貯めた経験がある人は多いだろう。小さな子だけではない。主婦雑誌の定番節約術と言えば、500円玉貯金だ。財布に残った500円玉をせっせと貯め、それを使って家族でディズニーランドに行きました、なんて体験談を何度も読んだものだ。
しかし、残念ながら、小銭貯金はこの先消滅してしまうかもしれない。そのきっかけになりそうなのが、2022年1月から新設される、ゆうちょ銀行の「ATM硬貨預払料金」だ。文字通り、硬貨の預け入れ(入金)と払い戻し(出金)に、いちいち手数料を取るという。
硬貨の入金については、すでに3大メガバンクも手数料を取っている。三菱UFJ銀行では100枚までは無料、101枚以上500枚までが550円〜、三井住友銀行は300枚までは無料だが、やはりそれ以上は550円〜、みずほ銀行も100枚までは無料、それ以上は550円〜と、500円以上を課してくる。とはいえ、この手数料がかかるのは有人窓口での取引に対してであり、ATMは対象外だ。
ところが、ゆうちょ銀行は無慈悲にも、ATMでの入出金にも手数料をかけると決めたのだ(むろん窓口での硬貨取り扱いも有料で、なんと51枚以上から550円〜となる)。
このゆうちょATM手数料は、見れば見るほど容赦がない。まず入金では、1〜25枚までが110円、26〜50枚までは220円、51〜100枚までは330円も取る。しかし、出金はもっと驚きだ。1枚でも硬貨を払い戻せば、それだけで110円払わなくてはいけない。自分の預金を下ろす際に、うっかり端数が混じったら、はい110円かかりますよ、ということだ。これを払わない限り、預金の端数は引き出せないのだ。
■110円の利息を得るには、いくら預金すればいい?
普通は、ここで疑問がわく。110円を預金の利息で稼ぐには、いくら預ければいいのだろう。数字が苦手な筆者だが、ざっと計算をしてみた。
ゆうちょ銀行の通常貯金(普通預金)の金利は年0.001%、定期貯金1年ものは年0.002%だ(2021年12月現在。税引前)。まず、1年間0.002%の定期で預けた場合、手取りで110円に達する利息を得るためにはいくら必要だろうか。概算では、なんと689万円となる(※小数点以下切り捨て、利子にかかる税金は復興税等を除く20%で計算)。
もし定期ではなく通常貯金(0.001%)だと、この倍の1378万円の預け入れが必要ということだ。1枚の硬貨を引き出すために目減りしない預金額は1000万円以上――これは、さすがに非現実的な数字だろう。
ゆうちょ銀行と言えば、全国津々浦々に支店があり、郵便局時代の昔からずっと愛用している高齢者の利用者も多いはずだ。そういう世代の方はまだ現金派が多く、せっせと小銭貯蓄にいそしみ、貯金箱がいっぱいになると郵便局に持って行って預けている方もいるのではないか。そういう方々が、その都度110〜330円もの手数料を引かれると思うと、心が痛くなる。もし、身近にいるようなら、今年中に預けてしまった方がいいよと教えてあげてほしい。
■永遠に下ろせなくなっている小銭たち
とはいえ、小銭がなかなか下ろせないのは今に始まったことではない。自前のATMを持たないネット銀行はコンビニATMでの入出金が多くなるが、そこでは硬貨の取り扱いができないからだ。1000円以下の端数を下ろすためには、硬貨の取り扱いができるATMを持つ銀行の自分名義口座へと振り込むしかない。もし、振込手数料の優遇がない場合は、それが実費でかかる。そもそも、預金の利息では絶対端数が出るはずなのに、その端数分を下ろせないのはおかしいだろうと常々思っているのだが……。
現在のところ、3大メガバンクはATMでの入出金に手数料をかけるとは言っていない。融資業務をしていないゆうちょ銀行だからできる荒業かもしれないが、他行も追随しないとは言い切れず、楽観は禁物だろう。
コツコツと小銭貯金にいそしんでも、それを入金すると目減りする時代になるとすれば、貯金意欲も半減してしまいそうだ。これも、一種の消費喚起策だろうか?
むろん、硬貨だけでなく現金の取り扱いを減らそうと、政府も銀行もキャッシュレス化を推進している。ATMからの引き出しではなく、デビットカードやスマホを使った銀行ペイを推奨し、その半面でATMの利用手数料は上がる一方だ。この動きは、今後も後戻りすることはないだろう。ついつい溜めてしまった小銭は、今後どうすればいいのか。悩ましい。
■回り回って返ってきそうな「小銭処理代」
現実に日々財布に溜まっていく小銭たちを、どう使えば目減りさせずに済むだろうか。
今はスーパーやコンビニでもセルフレジが導入されている。現金を取り扱っている機種なら、どんどんそこで使うべきだろう。また、SuicaやPASMOなどの交通系電子マネーも、10円単位から硬貨でチャージができる。硬貨で財布が重くなってきたら、駅に向かうのがひとつの方法だ。
とはいえ、世の中の流れを見れば、早晩このチャージができなくなる可能性も否定できない。銀行でさえ硬貨をなるべく扱いたくないのだ。それを持ち込む店や事業者に対しても、何らかの負担を求めてもおかしくないだろう。そうなると、硬貨扱い自体がなくなったり、回り回って硬貨取り扱いコストが我々利用者側に付け替えられてもおかしくない。どちらにしても、何らかの負担をすることになるのだろう。
政府が旗を振っている以上、デジタル化の流れはやまず、世の中の支払いはどんどんキャッシュレスへと突き進む。現金を持つことでペナルティを課せられるのだから、今回のATM硬貨手数料はその表れと言えなくもない。
とはいえ、もしそうなら、銀行はちまちました年0.001%とか0.002%なんて利息をつけている場合ではないだろう。切りが良くて端数が出ないような、ちゃんと高い金利にしてほしい。もしそうしてくれるなら、喜んで手数料を払っても――いや、やっぱり払うのは悔しい。
紙の通帳に発行手数料を取ったり、稼働していない口座に手数料がかかったりと、銀行は次々我々に負担を求めてくる。利用者は「そんなの知らなかった」と悔しい思いをしないように目を配っていなくてはならないし、損をしないための対策を考えたい。1円玉も5円玉も、小銭だって貴重なお金だ。なんとか有効活用できる方法を、引き続き考えていきたいと思う。
(文=松崎のり子/消費経済ジャーナリスト)
●松崎のり子(まつざき・のりこ)
消費経済ジャーナリスト。生活情報誌等の雑誌編集者として20年以上、マネー記事を担当。「貯め上手な人」「貯められない人」の家計とライフスタイルを取材・分析した経験から、貯蓄成功のポイントは貯め方よりお金の使い方にあるとの視点で、貯蓄・節約アドバイスを行う。また、節約愛好家「激★やす子」のペンネームでも活躍中。著書に『お金の常識が変わる 貯まる技術』(総合法令出版)。Facebookページ「消費経済リサーチルーム」
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