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ガソリン価格高騰、ガソリン税+消費税の二重課税問題…元売りに補助金、効果に疑問
https://biz-journal.jp/2021/12/post_266637.html
2021.12.01 06:00 文=編集部 Business Journal
「Getty Images」より
原油価格の高騰に対処するため、米国、日本、中国、インド、英国、韓国は協調して石油備蓄を放出するというカードを切った。消費国が手を携えて原油高に対処する姿勢を打ち出したかたちだが、放出する数量が少ないことに加え、産油国側の反発も予想され、先行きは見通せない。産油国が対抗上、現在の増産ペースを落とすのではないかとの観測も出ている。消費国と産油国の対立が激化すれば、原油価格はさらに不安定となる。
ガソリンや灯油、重油の値段は、2020年春以降、ほぼ右肩上がりの上昇が続く。経済産業省資源エネルギー庁によると、レギュラーガソリン1リットル当たりの小売価格は、20年4月に130円前後だったが、21年2月に140円台、3月末に150円台となり、11月半ばからは160円台と7年ぶりの高い水準で推移している。今年初めに1バレル=50ドル程度だった原油相場が、約7年ぶりとなる80ドル台まで上昇しているためだ。
米ブルームバーグ(10月2日付)は<世界的なエネルギー不足を背景に、原油価格が2014年以来初めて1バレル=100ドルを上回り世界的な経済危機を誘発する恐れがあると、バンク・オブ・アメリカ(BofA)が指摘した>と報じた。天然ガス価格は原油換算ですでに1バレル当たり約190ドルに相当する水準へ急伸しており、BofAのレポートは、「ディーゼル油の需要急増で原油価格も同様の領域に押し上げられる可能性がある」としている。
原油価格の上昇を3つの要素が後押しする。ガス価格高騰に伴い、ガスから原油への切り替えが起こる上に、厳冬期の原油消費の急増、および米国の国境再開に伴う航空需要の増加である。「これらの要因が重なった場合、原油価格は急騰し、世界中でインフレ圧力が高まる事態になりかねない」とBofAのリポートでアナリストが述べている。
■天然ガス価格の暴騰で東京電力HDは今期赤字に転落
天然ガス価格の暴騰は電力業界を直撃した。電力10社は11月26日、2022年1月の家庭向け電力料金を上げると発表した。火力発電に使う液化天然ガス(LNG)などの価格が上がったためという。
10社すべてが値上げするのは5カ月連続。東京電力ホールディングス(HD)の1月の料金は平均モデル(従量電灯B・30アンペア契約、使用電力量260kWh、口座振替の場合)7631円となり、前年同月比で21%高となる。関西電力は7203円と1年間で13%の上昇だ。中部電力は7306円で21%アップする。
東京電力HDは2022年3月期の業績予想を下方修正した。最終損益は160億円の赤字(21年3月期は1808億円の黒字)に転落する。最終赤字になるのは13年3月期以来9年ぶりだ。原子力発電所の再稼働が遅れ、火力発電に頼る。燃料のLNGや石炭価格が上昇しており、調達コストが膨らんだ。
昨年冬の寒波では卸電力市場の価格が急騰し、新電力で経営破綻した企業が出た。卸市場はすでに前年の水準を上回っており、急な寒波が来たら、価格は一気に跳ね上がることになるかもしれない。新電力の経営は昨冬以上に厳しい状況になるかもしれない。
■「悪い円安」は輸出増につながらない
外国為替市場では円安が進んだ。円相場は欧米でインフレ懸念が強まったことを背景に1ドル=113円台半ばまで値下がりした。ニューヨーク市場で原油の先物価格が7年ぶりの高値をつけるなど、米国でもインフレへの懸念がいっそう強まり、円は売られやすい環境になっている。金利の高いドルを買い、日本円を売ることになるため、どうしても円安が進みやすい。
円安が輸出増につながらず、貿易拡大による円高圧力が生じなくなっている一方、ドル建てで取引される原油などの国際商品価格の高騰によりドルの支払いが増え、円安に拍車がかかる構図なのだ。2017年以来となる1ドル=115円を突破するとの見方が出てきた。
こんな見立てもある。エネルギーなどを大量に輸入する日本の円は資源価格の上昇にもっとも脆弱な逆資源国通貨とされる。「資源高と通貨安という二重苦を日本は覚悟しておく必要があるかもしれない」との厳しい指摘もある。
「円安と資源高が両方進むという経験は日本の産業界もあまりない。一番好ましくない状況」(エネルギー業界の詳しいアナリスト)
原料に石油や石炭を多く使用する総合化学や鉄鋼などの素材型メーカーは、業績への影響が深刻である。資源高、通貨安という二重の痛みを少しでも軽減するために、M&A(合併・買収)や海外への工場移転の動きが加速するかもしれない。
■ガソリン税が高過ぎる
ガソリン高の抑制のために石油元売り各社に補助金を出す日本政府の政策が不評である。「補助金より減税が先ではないのか」というのだ。経産省は小売価格が全国平均で1リットル170円を超えた場合、1リットル当たり5円を上限に補助金を支給する方向だ。年内に実施する。
元売り各社が補助金分だけ価格を下げてガソリンスタンドに卸すことになれば小売価格が抑えられる、という発想なのだ。しかし、元売り各社が卸値を補助金分だけ、まるまる下げるのかという問題がある。仮に元売りが下げても、個々のガソリンスタンドが決めている小売価格にそれが反映されるのかという疑問もある。補助金はガソリンスタンドを潤すだけ、との極論もある。
補助金政策は価格抑制の特効薬にならないと、地方のユーザーが特に感じているという事情がある。ユーザーが拒否反応を示している根底には、ガソリンの税金が高過ぎるという事情が横たわる。消費税はガソリン税と石油石炭税が課せられたあとの価格にかけられている。石油業界団体からは「二重課税」ではないかとの不満の声が挙がっており、原油の高騰でこの批判が蒸し返されている。
ガソリン価格などが高止まりするようなら、ガソリン課税のあり方を含めた総合的な判断が必要不可欠になるかもしれない。
(文=編集部)
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