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マンションは管理で買え!購入時はサイトで要確認、管理費・修繕積立金の管理状況も注意
https://biz-journal.jp/2021/11/post_258250.html
2021.11.01 05:55 文=山下和之/住宅ジャーナリスト Business Journal
「Getty Images」より
2022年4月から「マンション管理計画認定制度」が始まります。マンション管理がキチンと行われているかどうかを公共団体が認定する制度であり、認定条件を満たしていて、認定を受けているかどうかが、そのマンションの資産価値に大きく影響してくることになります。以前からいわれてきた“マンションは管理で買え”という考え方が改めて見直されることになりそうです。
■管理不全に陥るマンションの増加を防止する
「マンションの管理の適正化の推進に関する法律」が改正され、2022年4月から「マンション管理計画認定制度」が実施されることになっています。マンションの所有者の高齢化、建物の老朽化が進むなかで、管理不全に陥るマンションが急増することが懸念されるため、この制度の実施によって、良好な管理が行われているマンションを増やしていこうとする狙いです。
良好な維持管理のための条件を定め、それを満たすマンションを認定し、満たないマンションに関しては、自治体が助言・指導・勧告を行う仕組みです。
図表1にあるように、それぞれのマンションの管理組合が、公益財団法人マンション管理センターに認定申請を依頼し(1:認定審査依頼)、それを受けてマンション管理士が管理状況を調査(2:事前確認)、基準に適合していれば結果がマンション管理センターを通して管理組合に通知されます(3:事前確認適合通知)。管理組合は、市区(町村は都道府県)に認定を申請し(4:認定申請)、書類に不備などがなければ認定されることになります(5:認定)。その結果は、マンション管理センターのホームページに掲載されます。
(資料:国土交通省ホームページ)
■認定制度でマンション管理の好循環を狙う
つまり、マンション管理センターのホームページを閲覧すれば、誰でも良好に管理されているマンションかどうかをチェックできるようになりますし、マンションの取引きにおいても、認定を受けているマンションであるかどうかを確認した上で購入を決断できるようになります。
これは、既存のマンションだけではなく、新築マンションにも適用されます。マンション分譲会社がマンション管理センターを通して予備認定を申請、認定を受ければ、分譲に当たって認定マンションであることを広告などで告知できるようになります。国としては、この管理計画認定制度の実施によって、良好に管理されているマンションの市場価値が高まり(反対に、認定されていないマンションへの評価は下がる)、それが所有者、購入者の管理意識の向上につながり、マンション管理の適正化が推進される――といった好循環を期待しているわけです。
■管理組合の不明確な区分経理などの課題も
管理計画認定の基準としては、図表2のようになっています。内容をみると、極めて基本的なことが中心であることがわかります。多くの管理組合でこれぐらいのことはやっているのではないかという内容ばかりのような気がしますが、実は、必ずしもそうとはいえない面もあります。
たとえば、国土交通省の『平成30年度マンション総合調査』によると、総会を「ほとんど開催していない」「開催したことがない」は合計0.3%で、管理規約が「ない」とする管理組合は0.2%ですが、管理費と修繕積立金の区分経理については、88.8%が何らかの形が区分経理を行っていますが、「その他」が3.6%、「区分経理を行っていない」1.0%、「不明」6.6%と、キチンと区分経理されていない管理組合が少なくないと推察されます。
(1)管理組合の運営
管理者や監事が定められている
集会(総会)が定期的に開催されている
(2)管理規約
管理規約が作成されている
管理規約で、緊急時の専有部分への立入り、修繕等の履歴情報の保管、管理組合の財務・管理に関する情報の提供が行われている
(3)管理組合の経理
管理費と修繕積立金の区分経理がなされている
修繕積立金会計から他の会計への充当がなされていない
修繕積立金の滞納に適切に対処されている
(4)長期修繕計画の作成及び見直し等
長期修繕計画の内容や修繕積立金が集会(総会)で決議されている
長期修繕計画が7年以内に作成または見直しがされている
長期修繕計画の計画期間が30年以上かつ残存期間内に大規模修繕工事が2回以上含まれている
長期修繕計画において将来の一時金の徴収を予定していない
長期修繕計画の計画期間全体での修繕積立金の総額から算定された修繕積立金の平均額が著しく低額でない
計画期間の最終年度において、借入金の残高のない計画となっている
(資料:国土交通省ホームページ)
■管理費や修繕積立金の滞納があるマンションも少なくない
さらに、管理費や修繕積立金の滞納については、図表3にあるように、3カ月以上滞納している住戸があるとするマンション管理組合が24.8%に達しています。特に建築後の経過年数の長いマンションではその割合が高く、1974年以前の建築年次のマンションでは4割を超えています。
滞納に対しては、文書での催促が基本ですが、それでも支払われないときに、少額訴訟や訴訟などを行う管理組合もあります。なかには、強制執行、競売などの強硬手段に訴えるケースもあります。それでも、1年以上滞納している住戸があるマンションが16.4%に達しており、適切な管理を行うのはなかなか簡単ではありません。特に、建築後の経過年数の長い、いわゆる築古物件においてはなおさらです。
(資料:国土交通省『平成30年度マンション総合調査』)
■最新マンションでは30年以上の計画期間が多い
マンションの長期修繕計画の期間は、最近では30年以上が主流になっています。図表4にあるように、全体では「30年以上」は60.0%ですが、2015年以降に建設されたマンションでは85.7%に達しています。新築の分譲マンションであれば、30年以上の長期修繕計画が基本と考えるべきでしょう。
しかし、1969年以前の築古物件だと3割強にとどまり、1980年代前半でも5割強で、2000年代初頭でも6割強です。中古マンション選びに当たっては、この長期修繕計画の期間も選択に当たっての重要なポイントになりそうです。
(資料:国土交通省『平成30年度マンション総合調査』)
■築浅物件では修繕積立金増額などの可能性も
また、修繕積立金の蓄えが十分あるのかどうかも重要です。図表5をご覧ください。これは、現在の修繕計画を予定通り遂行するために、十分な積立金があるかどうかを聞いたもので、全体としては、「現在の修繕積立金が計画に比べて不足している」が34.8%で、「現在の修繕積立金が計画に比べて余剰がある」が33.8%と、ほぼ拮抗する結果でした。
築浅物件ほど、不足している管理組合の割合が高い点に注意が必要です。2015年以降の建築物件では、不足が41.4%と4割を超えているのです。これは、最近の新築マンションでは当初の修繕積立金を少なくして、段階的に引き上げる方式の物件が多いためでしょう。そうしたマンションだと、購入後に修繕積立金が増額されたり、場合によっては、大規模修繕実施時に一時金を求められる可能性があります。
(資料:国土交通省『平成30年度マンション総合調査』)
■住む上、買う上での重要性がますます高まる
2022年4月から「マンション管理計画認定制度」が実施されるに当たって、いま一度、マンション管理に注目していただきたいところです。すでにマンションを所有している人は、現状のマンション管理に問題がないかどうかを確認し、マンションの資産価値を落とさないために、管理内容のいっそうの充実に取り組みたいところです。
また、これからマンションの購入を考えている人は、認定制度の内容を十分に頭に入れて、マンション選択に当たっては、認定されている物件がどうかを確認、管理内容も検討した上で購入を決断するのがいいでしょう。
(文=山下和之/住宅ジャーナリスト)
●山下和之/住宅ジャーナリスト
1952年生まれ。住宅・不動産分野を中心に、新聞・雑誌・単行本・ポータルサイトの取材・原稿制作のほか、各種講演・メディア出演など広範に活動。主な著書に『マイホーム購入トクする資金プランと税金対策』(執筆監修・学研プラス)などがある。日刊ゲンダイ編集で、山下が執筆した講談社ムック『はじめてのマンション購入 成功させる完全ガイド』が2021年5月11日に発売された。
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