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「1億総貧乏社会」が出現? 日本人はなぜこんなに貧しくなったのか
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/296587
2021/10/27 日刊ゲンダイ
シャッター商店街が増えた(C)日刊ゲンダイ
なぜ、日本人はこんなに貧乏になってしまったのだろうか。
この30年間、年収はまったく増えていない。OECD(経済協力開発機構)によると、アメリカの年間平均賃金が6万9392ドル(約791万円)なのに対し、日本は3万8515ドル(約439万円)にとどまっている。
約半分の水準だ。韓国、イスラエルに負けている。30年前と比べると、アメリカは48%増だったが、日本は4%増にすぎない。派遣、非正規社員の人たちは減収だろう。
バブル崩壊以降、つい最近まで政府、および金融当局は世界一高い法人税率、円高(2011年には1ドル=75円台)を放置した。加えて、デフレだ。企業は生産拠点を海外に移した。いわゆる、産業の空洞化である。
産業の空洞化は国内の雇用と購買力を奪う。消費は衰退する。失業者が増え、賃金は上がらず、商店街はシャッター通りばかりとなる。
日本の物価は安い。購買力がないためだ。元気な飲食業は物語コーポレーション(焼肉きんぐ)、ゼンショー(回転寿司のはま寿司)、トリドール(丸亀製麺)など安売りチェーンばかりじゃないか。
必要なのは成長戦略
なお、イギリスの地下鉄(TUBE)は初乗り運賃が高いことで知られている。何と4.9ポンド(769円)だ。Oyster Card(日本のSuica、パスモなど)を使うと、2.4ポンド(377円)だが、それでも高すぎる。
東京のメトロは初乗り168円だ。これを一気に769円に値上げしたらみんな1〜3駅は歩くだろう。
一方、総選挙では与野党がそろって、「分配」と叫んでいる。財源は?「金持ち、有価証券売買益、企業増税を」と。
しかし、これでは企業は海外に脱出、経済は死んでしまう。そもそも、日本には突出した金持ちはいないし、所得1000万円以上の世帯は全体の12%、1996年の19%をピークに減り続けている。
これでは「1億総貧乏社会」の出現だ。いま、求められているのは成長戦略ではないのか。
なお、GDP三面等価の法則とは生産、分配、消費が一致するということ。要するに、生産(GDP)が増加しなければ分配、消費も増えないということだ。すなわち、成長が不可欠である。
杉村富生 経済評論家
1949年熊本県生まれ。明治大学法学部卒業。軽妙な語り口と、分かりやすい経済・株価分析などに定評がある。ラジオNIKKEI「ザ・マネー」にレギュラー出演。著書は「これから10年 株で『1億』つくる!」(すばる舎)、「株長者が絶対にハズさない『売り』『買い』サインはこれだ!」(ビジネス社)など多数。
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