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みずほ銀行、解体論も浮上…4千億円で刷新したシステム、障害続出で制御不能
https://biz-journal.jp/2021/10/post_255152.html
2021.10.05 06:05 文=編集部 Business Journal
みずほ銀行のHPより
金融庁は9月22日、みずほフィナンシャルグループ(FG)とみずほ銀行に、銀行法第26条に基づき、業務改善命令を出した。ATMなどで障害が多発したため、金融庁が同行のシステムを実質管理する。同庁が銀行のシステムの管理に乗り出すのは初めて。みずほに業務改善命令が出るのは2002年に発足以来、3回目となる。
みずほ銀行で9月8日、最大で100台程度のATMの不具合が起こり、使用できなくなるトラブルが起きた。利用者に影響が出るシステム障害が顕在化するのは今年7度目。ハード機器の故障は3度目だ。
7度目の故障は預金や送金、外為など複数のシステムの共通基盤部分にあたるディスク装置の問題だという。ATMだけでなくインターネットの取引にまで波及した。2月、3月には全国の過半数のATMが利用できなくなるなどの障害があった。通帳やキャッシュカードがのみ込まれた。6月、再発防止策をまとめたが、8月にも店舗窓口での取引ができなくなったり、一部ATMが利用できなくなったりした。
さらに9月30日午後、システムの不具合により387件の外国為替取引に遅れが出た。今年8度目の障害である。法人顧客の送金が滞り、一部は翌10月1日に持ち越されたようだ。原因は特定できていない。
金融庁はみずほ銀行と親会社のみずほFGに対し、8月に銀行法に基づく報告徴求命令を再び出し、1カ月以内に障害の原因やトラブルの経緯の報告を求めた。金融庁は一連の不祥事を重く受け止め、業務改善命令を出す方向で検討してきた。これまでにもたびたび報告命令を出したが、原因の特定には至っておらず、みずほFG、みずほ銀行に検査に入ってから半年を経過する異例の事態となっている。
7月、金融庁長官に中島淳一氏が就任した。東大工学部卒で同庁初の理系出身の長官だ。金融機関のシステムの安定性の確保やサイバー攻撃への対応といった難題に取り組む。
中島新体制は、みずほ銀行のシステムトラブルを解決できるかが問われている。「みずほFGの坂井辰史社長の経営責任は避けて通れない」(有力金融筋)。これほどのトラブルを連発させたのに、みずほ行内では「(坂井社長の留任が)グループ全体の総意」などとして辞任を促すような動きはみられなかったという。坂井社長自身、8月20日の会見で「再発防止をしっかりやることが私の責任」と強調。引責辞任に否定的な考えを示している。
みずほは「金融庁の“本音”を探るべく坂井社長が中島新長官に面会しようとしているが、いまだに実現していない」(有力金融筋)という情報もある。中島新長官が「坂井社長の経営責任を追及し、その首を取ることができるかが試される」事態となっている。
■大規模障害にみずほ固有の事情あり
三菱UFJ銀行や三井住友銀行は合併の際に基幹システムを、合併を主導する銀行に片寄せした。片寄せというのは一本化することだ。ところが、みずほ銀行は前身である第一勧業銀行、富士銀行、日本興業銀行の3行の主導権争いが激しく、それぞれのシステムを存続させる形で経営統合した。その結果、統合初日の2002年4月、大規模なシステム障害が起き、250万件の口座振替などで遅れや誤処理が発生した。
みずほ銀行の勘定系システムは第一勧銀の富士通製、営業店システムの端末には富士銀が使っていた日本IBM製を採用。みずほコーポレート銀行は興銀の日立製をそのまま使った。3行出身のトップのメンツを立てた妥協の産物だった。この最初のボタンの掛け違いが開業初日の大規模システムトラブルの原因につながった。
11年3月15日、東日本大震災の直後、再びシステム障害が起きた。義援金の振り込みが集中したため、みずほ銀行で最大116万件の振り込みが遅延した。2度の大規模なシステム障害を起こしたみずほは、合併前の旧3行でポストを分け合う「3トップ制」と非効率な「2バンク制」から決別せざるを得なくなった。
みずほコーポレート銀行は、みずほ銀行に吸収合併され、新・みずほ銀行となった。「One(ワン)みずほ」を目指し、12年、新システムが発表された。旧みずほ銀行のシステムベンダーである富士通、旧みずほコーポレート銀行の日立、旧富士銀とみずほ信託銀行のIBMがそれぞれ分け合うことになった。大同団結に距離を置いていたみずほ信託のシステムまで一緒に刷新するというチャレンジだった。
18年6月から、グループ内で併存する3つのシステムを、新たに開発した次期システムに移行する作業が始まった。システムの全面刷新作業には、富士通、日立、日本IBMのほかNTTデータも加わった。当初の計画では、システム刷新に投じる資金は4000億円だったが4500億円に膨らんだ。19年7月、新システムが完成した。だが、一連の不祥事を見る限り、システム問題は改善されていないどころか、もっと深刻になっているように映る。
■みずほ銀行の解体論が浮上
みずほの宿痾を解決するには、みずほを解体するしかない、といった極論が金融筋で囁かれている。みずほ銀をかつてのようにリテールとホールセール部門に切り分け、リテールをりそな銀行に、ホールセールは新生銀行に引き継がせるというプランである。新生銀にいまだに残っている3500億円超の公的資金の全額回収にメドをつけるウルトラCになるという、うがった見方もある。
こうした最中、ネット金融大手のSBIホールディングスが新生銀行株のTOB(株式公開買い付け)に乗り出し、実際に9月10日、TOBが始まった。SBIはTOBで、新生銀の保有比率を最大48%に引き上げ、連結子会社にすることを目指している。
対抗上、新生銀行は臨時株主総会を開き、買収防衛策を諮る。両者は敵対的TOBの様相を深めている。SBIが新生銀行を手に入れることができるかどうかは予断を許さないが、新生銀行の帰趨がみずほ銀行解体論の行方にも影響を与えることだけは間違いないだろう。
今、みずほFGの解体を軸に大型金融再編という暴風雨が吹き荒れ始めた。中島・金融庁新長官は「温厚で人当たりが良い。バランス感覚に優れる」との前向きな評価がある一方で、「金融再編の修羅場に立つには、あまりに地味すぎる」と率直に印象を語る地銀のトップもいる。
「(中島長官は)1年で交代」(有力金融筋)などという暴論を封印するためにも「みずほFGの坂井社長の首を取りに行く」(自民党の金融族議員)と先読みする向きもある。
8月のトラブルが起きる前には、「坂井社長を退任させ、一時的にみずほ銀の藤原弘治頭取をFGのトップにするプランがあった」(有力金融筋)との情報があった。しかし、「8月の障害発生でこの案もおじゃんになった」(同)。この時、「坂井の自爆テロ」とまでいわれたと伝わっている。9月末の8回目のトラブルは決定的である。
みずほのシステムトラブルは金融界の蠢動(しゅんどう)なのか。それとも根底から揺るがすものになるのか。岸田文雄政権の誕生と衆院選が続くため、金融庁は動きたくても動けない。「みずほの案件は、しばらく凍結状態が続くかもしれない」(自民党の別の金融族議員)雲行きなのだ。
■金融庁がみずほに業務改善命令
みずほグループがシステム障害の原因を解明できず、金融当局がシステムを実質管理する異例の処分となった。みずほが4500億円を投じて完成したMINORIには構造上の欠陥があるとの見方が金融庁内にくすぶっている。みずほの基幹システムは「IT業界のサグラダ・ファミリア」と揶揄されている。みずほ自身がシステムを制御し切れない、と判断された。
年内をメドに、金融庁とみずほが共同でシステム管理を行い、原因の究明と再発防止を図る。システムに負荷をかける新規事業や新サービスの導入は、同庁が不要不急と判断した場合、計画の変更を求める。みずほの新規事業や新サービスの導入は当面、先送りされる可能性が高い。
業務改善命令が出たのにみずほFG、みずほ銀行は会見を開かず、「(行政処分を)重く受け止めている。安定稼働を最優先に全役職員が一丸となって取り組む」とするコメントを出しただけでお茶を濁した。しかも、業務改善命令から1週間で、またも8度目の障害を起こした。
(文=編集部)
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