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実は店員待機、万引きリスク…ファミマ・1千店「無人レジ店舗」の全貌と誤解
https://biz-journal.jp/2021/09/post_253886.html
2021.09.30 06:00 文=松崎隆司/経済ジャーナリスト Business Journal
ファミリーマートの店舗
店舗数で業界2位のファミリーマートが、無人レジを使ったコンビニエンスストアを2024年度末までに全国に1000店舗展開する。本格的な無人レジ店舗の展開は日本で初めて。ターゲットはマイクロマーケットだという。
人口減少や新型コロナウイルス感染拡大による外国人労働者の大量帰国などで日本国内の需要は大幅に減少し、コンビニの国内店舗展開は6万店を前に増加の速度が鈍化しているが、「これまで通常店舗として出店できなかったような場所でも出店することができる」(ファミリーマート広報担当者)と新しい可能性を語る。約3000アイテムを販売する標準的店舗(一般的には50〜60坪、165〜200平方メートル程度といわれている)での無人レジの展開はまだ考えていないという。
ファミリーマートが無人レジの展開に乗り出したのは2020年夏ごろだ。「無人レジ」システムの開発に成功した「TOUCH TO GO」(TTG、本社:東京都港区)との協議を始め、同11月には業務提携に持ち込んだ。TTGは日本最大の鉄道会社、JR東日本グループとITベンチャー企業、サインポスト(本社:東京中央区)が19年7月に無人レジの事業化を進めるために設立した合弁企業だ。
サインポストは07年3月に設立されたベンチャー企業で、ウォークスルー型の無人決済システム(無人レジのこと)「スーパーワンダーレジ」の開発に成功した。棚の重量センサーと天井に取り付けられたカメラなどの情報から入店した客と手に取った商品をリアルタイムに認識して、決済エリアに客が立つとタッチパネルに商品と購入金額を表示。客が商品を持ったら、出口でタッチパネルの表示内容を確認して支払いをするだけで買い物ができるという仕組みだ。
■人員削減効果
サインポストは17年4月、「JR東日本スタートアッププログラム」に応募し最終選考11社のなかに残り、JR東日本グループとの共創がスタート。東京都赤羽や埼玉県大宮のJR駅内に無人レジの店舗を設立して実証実験を行い、19年7月1日、両社は合弁会社TTGを設立した。そしてTTGは20年3月23日、JR東日本が山手線沿線に49年ぶりに新設した「高輪ゲートウエイ駅」内に常設の無人AI決済店舗「TOUCH TO GO」をオープンした。
その後こうした実績を踏まえ、ファミリーマートが提携。21 年2月にはTTGと資本提携を結び、3月に東京駅近くに無人レジ店舗「ファミマ!!サピアタワー/S店」をオープンした。広さは55平方メートルの小型店。店内には菓子や飲料など約700アイテムの商品が並び、それを48台のカメラで管理する。
1階に設置したのは、ビルだけでなく直結する東京駅から流れてくる客を期待してのことだ。店内は無人だが、バックヤードには年齢確認の必要な酒類販売に対応する従業員が1人待機する。それでも通常2人必要な人員を1人減らすことができるという。
「報道などではよく無人店舗といわれますが、トラブルが起こった場合の対応のために1人バックヤードに待機しています。また、お客様がお酒を購入した場合は、バックヤードでブザーがなって店員に報告し、画面を通して対面による年齢確認を行います。たばこについては現在、監督官庁などと交渉しています」(ファミリーマート広報担当者)
酒やたばこなどのライセンス商品は売上高の1割5分から2割を占めるため、それが売れるかどうかは収益に大きく作用するからだ。AIカメラなどの機材はレンタルするという。
「費用は機材をレンタルする方式で月50万円程度です。一人が6時から23時まで働くと一人80万円程度の人件費がかかるといわれており、大幅な人件費の削減になります」(TTG広報担当者)
■無人レジ店舗の課題
8月13日には西武鉄道と提携し出店していたフランチャイズの「トモニー中井駅店(東京都新宿区)」にも無人レジを導入しリニューアルオープンした。
「トモニー中井駅店(東京都新宿区)」に無人レジを導入したことで、ファミマと提携する他の鉄道会社からの問い合わせが増え、ファミマは駅ナカでの店舗展開の加速を期待しているという。しかし課題も山積している。
「必要なカメラの数は天井の高さと店舗の広さによって決まるために、標準的な店舗の3000アイテムまで増えても対応は可能だ」(TTG広報担当者)という。しかしコンビ二の業界関係者は、通常店に導入するには解決しなければならない課題があるという。
「通常のコンビニは約3000アイテムを取り扱っていますが、このうち1週間で100アイテムが入れ替わってしまいますから、これを毎週改めて登録していかなければならない。しかも陳列棚が変わればその情報も入力しなければならない。商品を手にとったお客さんも、いつも決められた場所に置くとは限らないので、そうした情報も必要となっていく。見た目ほど簡単なもんではないと思います」(コンビニ業界に詳しい事情通)
しかも万引きのリスクも少なくない。ファミマは「天井には複数のカメラがあり、ゲートは決済しなければ通過できないようになっている。簡単には万引きはできない仕組みとなっている」(同社広報担当者)と説明する。
「無人レジでは複数の客が重なってしまうと誰が商品を取ったかわからず、AIカメラが認識できない。決済せずに商品を持ち出すことができるわけです。これを意図的にやられてしまうと万引きのリスクが高まる」(コンビニ業界に詳しい事情通)
そのため10人という入場制限を行っているが、入場制限は販売機会損失につながってしまう恐れがある。入場制限の撤廃や収益性については現在ファミマは検証を続けているというが、業界トップに躍り出る起爆剤になるのか、今後が注目される。
(文=松崎隆司/経済ジャーナリスト)
●松崎隆司/経済ジャーナリスト
1962年生まれ。中央大学法学部を卒業。経済出版社を退社後、パブリックリレーションのコンサルティング会社を経て、2000年1月、経済ジャーナリストとして独立。企業経営やM&A、雇用問題、事業継承、ビジネスモデルの研究、経済事件などを取材。エコノミスト、プレジデントなどの経済誌や総合雑誌、サンケイビジネスアイ、日刊ゲンダイなどで執筆している。主な著書には「ロッテを創った男 重光武雄論」(ダイヤモンド社)、「堤清二と昭和の大物」(光文社)、「東芝崩壊19万人の巨艦企業を沈めた真犯人」(宝島社)など多数。日本ペンクラブ会員。
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