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なぜ“アマゾン離れ”は起きない?牙城が崩れない理由…楽天・ヨドバシとの圧倒的な差
https://biz-journal.jp/2021/09/post_247000.html
2021.09.05 06:00 文=A4studio Business Journal
アマゾンのサイトより
EC業界の王者であるアマゾンだが、楽天など他のECサイトのポイント戦略が、その牙城を崩しつつあるという見方も出始めている。そこで今回は、アマゾン出品者へのコンサルティングを手掛けるアグザルファ株式会社の辻光洋氏に、大手ECサイト間での利用者推移について聞いた。
■多くのユーザーを惹きつけてきたアマゾンの画期的なシステム
代表的なECサイトであるアマゾン、楽天市場、ヨドバシ.comの業界における現状の順位はどうなっているのだろうか。
「国内の正確なシェア率を割り出すのは難しいため、ネット記事などでECサイトの順列が発表されている場合は、実は企業の月次売上などから概算として出しているものがほとんどです。ですがそうした予想値でいえば、アマゾンが業界トップであるというのはまず間違いないはず。そしてその次につけているのが楽天でしょう。ですが、おそらく楽天とアマゾンには10〜20%シェア率に開きがありますので、まだまだアマゾン優位の状態は変わらないと思います」(辻氏)
では、アマゾンがトップであり続けている要因とは何か。
「真っ先にシステムの優秀さが挙げられますが、それも大きく分けて2つあります。ひとつ目は、アマゾンはサイトデザインが非常に見やすいということ。例えば楽天で商品を検索すると、該当商品が出品店ごとにずらずらっと出てきて、ユーザーはその中から選ぶ必要がありますが、アマゾンは該当商品のページ自体は1つしか表示されません。そのページ内で出品店ごとに値段が安いものや発送時期が早いものなどを選別するわけです。
しかも、アマゾンは出品店のなかから一番安い商品を自動表示するので、多くのユーザーにとって都合のいい出品が素早く見つかる仕様になっています。価格が安いと優先して表示されるので、出品店の間で勝手に価格競争が起こるようになり、ユーザーにとっては良いことづくめ。これは業界では『カタログ方式』と呼ばれています。
続いて2つ目は、『FBA方式』を採用し、配達の早さを実現していること。ECサイトでは自社商品のほかに、出品店のサイトを経由して販売する商品も多くあります。『FBA方式』は、そうした出品店がアマゾンを利用するときに、出品店側が購入者に向けて発送するのではなく、一度アマゾンの集配センターに発送するというシステムです。
これを利用すると、梱包などの発送準備は全部アマゾンが肩代わりしてくれますし、出品店が土日で休業していても、購入者はそういった都合に左右されず素早く商品を受け取ることができるわけです。また、購入者とのトラブルが発生した場面でもFBA方式を利用していれば、直接の対応はアマゾン側が行ってくれるので、出品店としては二重にありがたいはずです」(辻氏)
しかし同システムは諸刃の剣でもあるという。
「この方式のデメリットは、海外系の粗悪品や偽物、そのほか消費者の誤解を誘う商品を扱う業者にとっても等しく便利なので、悪質な出品が増えてしまうことでしょう。ですが、現在はアマゾン側もクレームの多い商品を自動でシャットアウトする施策を打っており、悪質品は以前よりは減ってきていますね」(辻氏)
■アマゾンを脅かすとされる楽天や他のECサイトのメリット分析
次は、国内においてアマゾンを追随する楽天のシステムのメリットを聞いていこう。
「楽天は『SPU』(スーパーポイントアッププログラム)というポイント制度に力を入れています。楽天モバイルや楽天プレミアムカード決済、さらには0と5のつく日にポイントが5倍になるという楽天スーパーセールなどを活用すれば、ためたポイントを楽天トラベルや楽天ブックスなどの関連コンテンツ、またはコンビニやガソリンスタンドで利用できるのです」(辻氏)
楽天はポイントをためやすいといわれているが、そのポイントが楽天関連サービスで使えるため、また楽天で買い物をするようになる――こうして「楽天経済圏」が構築されていくわけだ。だが、こうしたポイント制度がそのままアマゾン凋落の理由にはならないと、辻氏は指摘する。
「ポイント制度はアマゾンと楽天の差別化の大きな要素のひとつですが、これはそれぞれのECサイトができた当初からあった違いですし、“今、こういう制度がアツいからアマゾンから楽天に利用者が移っている”という指摘は少々的外れに思えます。もちろん個々の消費者の好みで、楽天のポイント制度に魅力を感じるからアマゾンから乗り換えるというのはわかりますが、それが大多数のユーザーの意見とは思えませんので、イコールアマゾンの危機にはならないでしょう」(辻氏)
楽天のほかに、ヨドバシカメラの「ヨドバシエクストリーム」がアマゾンを凌駕する配達速度を実現しているとの意見もある。確かに首都圏などの一部地域では、「ヨドバシエクストリーム」の配達速度は驚異的といわれているが、多くのユーザーが重視する商品ラインナップの豊富さでいうと、ヨドバシはアマゾンに遠く及ばない。
そして辻氏は、楽天やヨドバシにはない、アマゾンが仕掛ける関連コンテンツの凄みもポイントだという。
「サブスクリプション方式で月額費を払うAmazon プライム会員になれば、買い物時の配送料が無料になったり商品到着が早くなったりするメリットにとどまらず、動画配信サービス『Amazon Prime Video』や、音楽配信サービス『Amazon Music』などのコンテンツも無料で利用できるわけです。『Amazon Prime Video』だけでも専門の動画配信サービス『Netflix』に近しいコンテンツ力を持っていますよね。
ネットで注文した商品の翌日配送や送料無料を目的にAmazon プライム会員になった方でも、『Amazon Prime Video』や『Amazon Music』も日々利用する習慣ができ、もうネットショッピング関係なくAmazon プライム会員をやめられないという方も多いのではないでしょうか。これはユーザーを他のECサイトに浮気させずに、アマゾンにつなぎとめるための見事な戦略といえますね」(辻氏)
最後に辻氏が考える、ECサイト業界の展望について聞いた。
「ECでの流通量を指すEC化率という言葉がありますが、EC化率はコロナ禍の影響もあって年々上昇していますし、今後も上がっていくでしょう。そのときにアマゾン、楽天、ヤフーといった大手のオールジャンル系ECサイトが割拠し日々進化を遂げている現状において、新規のオールジャンル系ECサイトが参入して勢力図を変えるということは、可能性として極めて低いでしょう。ですから新規で頭角を現してくるサイトがあるとすれば、ファッション通販のZOZOTOWNや工具通販のモノタロウのような、ある特定のジャンルに特化したECサイトになるでしょうね」(辻氏)
楽天はポイント制度、ヨドバシはスピード配送など独自の強みを打ち出しているため、アマゾンユーザーの中には楽天やヨドバシのほうがお得・便利と感じて乗り換える人もいるだろう。しかし、アマゾンはサイトデザインの見やすさや商品到着の早さだけでなく、他を圧倒するAmazon プライム会員の至れり尽くせりのサービスもあるため、まだまだその牙城は崩れなさそうである。
(文=A4studio)
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