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トヨタ、怒涛のニューモデル4台投入の狙いと計算…納期遅延のリスクも辞さない販売戦略
https://biz-journal.jp/2021/07/post_235713.html
2021.07.02 05:50 文=小林敦志/フリー編集記者 Business Journal
トヨタのロゴ(「gettyimages」より)
前回、トヨタ自動車が2021年9月までにニューモデルラッシュを予定していることについて、販売現場の事情などを踏まえて述べた。トヨタは新型「アクア」、新型「ランドクルーザー(300)」、「GR86」の正式発売、「カローラクロス」の国内発売を控えている。
それでは、なぜトヨタはこのタイミングで“怒涛”ともいえるニューモデル投入を進めるのであろうか。直近の問題としては、世界的な半導体の供給不足がある。現段階で発表予定日がはっきりしているのは新型アクアのみとなっており、そのほかのモデルは発表日や時期が流動的になっている面も見受けられる。これは、半導体供給問題もからんでいるとされている。そのなかで発売を進めれば、当然“深刻な納期遅延”というリスクは覚悟しなければならないだろう。
また、販売面で見れば、トヨタはもともとディーラーに積極的に在庫を持たせることはしてこなかった(最近でこそ、車種を限ってディーラーが在庫を持つケースもあるようだが)。つまり、在庫販売をメインとするトヨタ系以外のメーカー系ディーラーに比べると、納車に時間がかかることも多く、受注したものの、登録および納車がなかなかできない“受注残車両”を多く抱えることになる。
ただ、この受注残車両が“貯金”のようなものとなり、各セールスマンが抱える受注残車両から毎月何台登録して納車できるかのメドを立て、これをベースにしてノルマ達成のために新規受注を何台積めばいいのかとすればよく、結果的にノルマ以上の販売台数を達成することもあり、これがトヨタ1強の原動力となっているといってもいい。
つまり、今回相次いで登場する4台の新型車も、デビューすれば程度の差こそあれ人気車となり、一定の納期遅延となるのは間違いない。このタイミングで納期遅延として積み増ししておけば、2021暦年締め(2021年1〜12月)や2021事業年度締め(2021年4月〜2022年3月)での年間販売台数(実績カウントは受注ではなく、当該月での登録台数となるのが原則)への貢献が十分期待できるとも考えることができる。
■トヨタは「今のうちに売る」戦略?
新型コロナウイルスワクチン接種が進み、前向きな予想では年末にはクリスマスパーティや忘年会がコロナ禍前のレベルで可能との話もあるが、東京2020オリンピック・パラリンピックが感染拡大にどのように作用するかは未知数であるし、コロナ禍での開催となるので経済への悪影響も懸念されている。トヨタは、そのような今年10月以降の不確定要素にも備えているのかもしれない。つまり、“売れるうちに売ってしまえ”という姿勢である。
ワクチン接種などが進んだ中国やアメリカ、イギリスのように経済活動がほぼ全面再開していたり、近いうちに全面再開を予定している国々では、国内外を問わず、旅行などレジャーへの消費支出がかなり目立っているとのこと。経済封鎖などがゆるい日本でもコロナ禍では行動自粛が要請され、旅行どころか外食もままならない時期が1年以上続いている。
消費支出が限定されるなか、中産階級あたりまで貯蓄が増えるケースが目立ち、その一部がコロナ禍では数少ない“ぜいたくな買い物”のひとつとなった新車購入に回り、新車販売市場が活況を呈したとされている。つまり、新型コロナ収束は歓迎すべきことだが、それはある意味、新車販売においては不安要素にも映るのである(消費者がレジャーなどへの支出を積極化する)。そのため、トヨタとしては新型コロナ収束後を見据えて動き出しているようにも見える。
年末には、売れ筋ミニバンの「ノア」系(ノア、ヴォクシー、エスクァイア/エスクァイアはなくなるとの話もあり)のモデルチェンジが予定されている様子。国内販売で圧倒的なシェアを誇るトヨタブランドだけに、トヨタ車内で購入検討が完結するように新車の“買い時”についてもコントロールしているようにも見えるというのは、考えすぎでもなさそうな気がする。
(文=小林敦志/フリー編集記者)
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