http://www.asyura2.com/21/hasan135/msg/404.html
Tweet |
若者がいよいよ「大企業」「公務員」を見限りはじめている…その「本当の理由」「転職前提」の若手が増えてきた
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/84065
2021.06.12 前川 孝雄 (株)FeelWorks代表 青山学院大学兼任講師 現代ビジネス
新社会人が入社直後に転職サービス「doda」に登録した件数は、10年前と比較して約26倍に増加している――パーソルキャリアは、衝撃的なデータを発表した。近年、若者の公務員や大企業離れが急速に進んでいることを象徴するデータといえる。
その理由について、プライベートを大切にするワークライフバランス志向の高まりとする向きが強いが、青山学院大学で長年教鞭も執り、「eラーニング 新入社員のはたらく心得eラーニング 新入社員のはたらく心得」も提供する、人材育成支援企業(株)FeelWorks代表取締役の前川孝雄氏は、問題の本質はそこではないという。若者の転職意向の高まりの背景にあるキャリアと雇用の変化を考察し、企業・組織に警鐘を鳴らす。
急速に進む、若者の大企業・公務員離れ
パーソルキャリアの調査によると、2011年から現在までに「doda」に会員登録した人のうち、4月に登録した新社会人の数を集計したところ、10年間で約26倍に増加したという。全体でも約5倍に増加しているが、新社会人の転職意向の高まりはケタ違いだ。
同社は、東日本大震災や、終身雇用の維持は難しいとする大企業経営者の発言など、「はたらく価値観」を揺さぶる出来事に影響を受けたためとし、数年後には、就職活動時から転職を意識する“転職ネイティブ世代”が転職市場に台頭してくると分析している。ちなみに中途採用より新卒採用を重視する大企業や公務員ほど、この傾向は衝撃だろう。
もっとも、こうした若者の転職意向の高まりは、近年指摘され続けてきた。象徴的なのが、高学歴エリートの人気就職先の代名詞であった国家公務員総合職、いわゆるキャリア官僚の早期離職だ。内閣人事局の調査によると、自己都合理由で退職した20代の国家公務員総合職は2019年度には87人。6年前の21人から年々増加し、4倍を超えている。
転職予備軍も若手層に多いことが明らかとなった。30歳未満の国家公務員で「すでに辞める準備中」「一年以内に辞めたい」「三年程度のうちに辞めたい」のいずれかが、男性15%、女性10%となっているのだ。
また、国家公務員採用試験の総合職の申込者数は、ピーク時1996年度の4万5254人に対し、2021年度は前年度比14.5%減の1万4310人と5年連続の減少で、記録が残る1985年度以降で最も少なくなっている。この現状は、河野太郎・国家公務員制度担当大臣が、昨年自身のブログに「危機に直面する霞が関」と題して公表し、話題を呼んだことを記憶している人も多いだろう。
憧れの大企業に落胆…
また同様の傾向は、民間の人気就職先であった、大企業でも顕著になってきている。これまで十数年にわたり、多様な業界・企業での人材育成支援を手掛けてきたが、銀行やメーカーなど、これまで早期離職に悩むことの少なかった大企業、上場企業ほど若手層の転職に頭を痛めるようになってきたと感じている。
では、なぜ若者は大企業や公務員離れをするようになってきたのか。
ちなみに、キャリア官僚等の採用や研修を担う人事院は、国家公務員採用試験申込者減少の理由として、コロナ禍と地方志向を理由にあげている。地元でプライベートを大切に生きたい若者が増えていると見立てているということだ。
しかし、コロナ禍は去年からの現象であり、それ以前からの減少トレンドの理由にはならない。そもそも内閣人事局の調査の名称が「国家公務員の⼥性活躍とワークライフバランス推進に関する職員アンケート」となっているので、頭からワークライフバランス志向の高まりと決めてかかっていることがうかがえる。
本当にそれだけだろうか。私は、問題の本質はそこではないと考えている。その理由を説明するためにも、憧れていた大企業への転職に成功したものの、1年も経たないうちに退職することになった一人の若者のエピソードを紹介しよう。(※プライバシーに配慮し、設定を一部変更している)
社会人6年目で初めて転職したT君。新卒で就職したのは中小企業ながら、創業経営者の社会貢献への経営理念が浸透した会社で、人材育成にも熱心だった。T君は順調にキャリアアップし、管理職候補になっていた。
会社にも、仕事や収入にも大きな不満はなかったものの、30代以降を考えると今の会社ではこのまま幹部を目指すことになるが、事業規模から活躍できるステージは限られてしまう。30代半ば以降は転職先も限られると悩んだ結果、より大きなステージで自分の実力を試そうと大企業への転職を決断。何より社会の公器とされる上場企業であれば、キャリアアップにふさわしい経験を積めると期待したのだ。
一般的には、中小企業から大企業への転職は高いハードルがあるものの、T君のこれまでの実績が評価され、かつぎりぎり第二新卒枠に該当していたこともあって、大手上場企業への転職は成功した。
ところが新たな職場で働き始めると、管理体質が強く短期的な営業目標の達成ばかりが求められる毎日に衝撃を受ける。前職でも営業経験があり数字の大切さはわかる。しかし職場では中長期視野での理念やビジョン、顧客に提供する価値についてはまったく語られず、ただただ上からおりて来た目標数字を追う体質に違和感が高まる一方だった。
上司に疑問を訴えるも取り合ってもらえず、中小企業から来た新参者のくせに大企業のマネジメントを批判するのかと、問題社員扱いされそうになり、次第に憔悴。そして転職後半年ほどでメンタル不調になり、結局1年足らずで退職することになってしまった。
A君はその後、キャリアアップの意味や目標も見失ってしまい、しばらく自宅で引きこもりのような生活を送る。少し気持ちが落ち着くと、このままではいけないと、視野を拡げながら、再度就職活動を始める。
その過程で地域創生に挑む創業間もないソーシャルベンチャーと出会い、経営者の理念に共感。収益の前に地域で困っている人たちの助けになりたいと心の底から思い、奮闘する現場社員の様子も見させてもらい、「これぞ自分が望んでいた職場だ」と入社を決断した。
実はA君が選んだ新しい会社は、組織としてもビジネスモデルとしても脆弱なベンチャーゆえ、給与は半減している。労働時間もかなり長くなってしまったのだが、大きな不満はないという。むしろ、これだけ難しい社会問題に真っ直ぐ打ち込めて、会社としてはまだ大きく収益が上げられていないのに、安定給与がもらえることに感謝すらしていると笑顔で話してくれた。
「働きがい」が得られない裏返し
A君のような挫折感を覚える若者は少なくないと私は見ている。背景にあるのは、社会貢献への実感や働きがいを得られる場に大手上場企業がなり得ていない場合が少なくないという状況だ。
たしかに、A君も理想が高すぎ、上場企業というだけで過大な期待を抱いたかもしれない。しかし、上場すると会社は株主からの厳しい目にさらされ、経営は短期的な収益向上の圧力を受けざるを得ない。経営が株主の利益配当への要求を強く意識すれば、必定、現場も数値目標を追うばかりになり、長期視野での企業理念や仕事の目的が置き去りになりやすいのではないだろうか。
とはいえ、民間企業は収益をあげなければ持続できないため、社会貢献による働きがい実感とともに、業績目標も追いかけざるを得ない面もある。では、本来、民間企業が代替できない社会貢献のみに奉仕する公務員はどうだろうか。
先述の内閣人事局の調査内容をさらに見ると、若手職員が退職をしたい理由は、男性では「もっと自己成長できる魅力的な仕事につきたいから」が男性49%と突き抜けている。いわゆるワークライフバランス意識の高まりを示す「長時間労働等で仕事と家庭の両立が難しいから」34%より15ポイントも高くなっている。
出産・育児や介護などのライフイベントの負荷がかかりやすい女性では、理由は「長時間労働等で仕事と家庭の両立が難しいから」が47%とトップとなっているが、「もっと自己成長できる魅力的な仕事につきたいから」も44%と肉薄している。
つまり、ここでも、支持基盤の短期的な利権争いに終始する国会対策の下働きは、若手官僚たちにとって「自己成長できる魅力的な仕事」ではないということだ。この国難のさなかにも関わらず、本音を語らず通り一遍のセリフの繰り返しに終始する党首討論に、落胆した人も少なくないだろう。
志の高い若手官僚であるほど、政治家が本気で侃々諤々議論し決断したことを執行するつもりだったはずだ。国家公務員の存在意義を感じられなくなるのも無理はない。魅力的な仕事とは、働きがいを感じられる仕事であり、その経験値を積むことが自己成長につながる仕事だと私は考えている。
キャリア官僚といえば、東大など高学歴者が目指す超エリート職で、国の未来を背負って立つ羨望の職業だったはず。それが、優秀な若者から見放されつつある。その理由が、自己成長やキャリアアップの展望がないとする現状は、国家的な危機と感じざるを得ない。
経営者や管理職など、上の世代から見て、今どきの若者はワークライフバランスの権利ばかり声高に主張すると捉えることは、表層だけを見ており、問題の本質を捉えているとはいえない。確かに一定層は権利意識が肥大化しているかもしれないが、優秀な若者ほど、働きがいを得られない長時間労働は勘弁してほしいと考えているのではないだろうか。ワークライフバランス志向の高まりは、働きがいを得られない裏返しなのかもしれない。
もちろん、人生100年であり、もはや一つの会社や組織でキャリアを終える時代ではないため、趨勢としての転職トレンドは高まっていくだろう。しかし、瞬間風速的にワークライフバランスが担保できない長時間労働に従事することになっても、自分のやっている仕事が世のため人のためになっていると実感できれば、ここまで若者の転職意向は高まらないのではないだろうか。
▲上へ ★阿修羅♪ > 経世済民135掲示板 次へ 前へ
最新投稿・コメント全文リスト コメント投稿はメルマガで即時配信 スレ建て依頼スレ
▲上へ ★阿修羅♪ > 経世済民135掲示板 次へ 前へ
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。