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パナソニック「4000万円早期退職」、ついに「タダのおじさん社員」が生き残れない時代へ…!
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/83686
2021.06.02 加谷 珪一 現代ビジネス
雇用を絶対視してきたパナソニックが、本格的な人員整理に乗り出した。多くの日本企業が過剰雇用問題を抱えているが、政府による事実上の生涯雇用義務付けによって人件費負担はさらに増える見込みである。雇用を聖域としてきたパナソニックのリストラは、日本がいよいよ本格的な人材流動化時代を迎えたことを象徴している。
諸外国の企業における社員数は日本の3分の2
パナソニックが50代の中高年社員をターゲットに早期退職制度を大幅に拡充するというニュースが話題となっている。大手企業で大規模な人員整理に踏み切るケースはこれまでもあったが、パナソニックは長年にわたって雇用を聖域視してきた企業である。
創業者である松下幸之助氏は「事業は人なり」をモットーにしており、雇用維持を何よりも大事にしてきた。幸之助氏が死去した後もこの社風は受け継がれ、ライバルのソニーとは異なりパナソニックは苛烈なリストラは実施してこなかった。
今回、行われる早期退職プログラムは、退職金を最大4000万円上乗せするというもので、かなりの大盤振る舞いといってよい。上乗せ退職金の額が大きいということは、会社側の本気度が高いことの裏返しでもある。
雇用を重視してきた同社が人員整理に踏み切らざるを得なかったのは、日本企業の過剰雇用が限界に達しているからである。日本の労働生産性が先進国中ずっと最下位であるという事実はようやく多くの人が知るようになったが、生産性が低い原因の一つは過剰雇用である。
日本と米国の生産性データを比較すると、日本企業は1万ドルを稼ぐために29人の社員が7時間労働する必要があるが、米国は同じ7時間の労働で社員数は19人で済んでいる。つまり、日本企業は同じ金額を稼ぐにあたって、より多くの社員を雇用しており、これが生産性を引き下げる大きな要因となっているのだ。
リクルートワークス研究所の調査によると、日本国内には会社に勤務しているにもかかわらず、実質的に仕事がないという、いわゆる社内失業者が400万人も存在しているという。これは日本の全正社員の1割に達する規模である。
生産性から得られる理論値においても、実地による調査結果からも、日本企業が過剰雇用を抱えていることは明らかである。雇用が過剰であれば、1人あたりの賃金も下がるので、これが日本の低賃金に拍車をかけている。ビジネスモデルを抜本的に変えて、超高収益体質にでも転換できない限り、今のままでは賃金は上がりようがない。
政府による生涯雇用の義務付けがダメ押しに
日本企業が過剰雇用で低賃金だったのは、大手企業を中心に、ある程度まで終身雇用が保証されていたからである。企業が定年まで雇用を保障する場合、その間には何度も好景気や不景気、あるいは時代の変化がやってくる。好景気の時や、時代が変化した時には採用を増やす必要があるが、不景気の時に人員整理はできない。結果として終身雇用を維持する企業は、徐々に組織が肥大化していく。
平成の時代までは企業の業績も伸びていたので、何とかなっていたが、平成後半から令和に入り、いよいよこの制度が機能不全を起こし始めた。困った事に、今後、日本企業の人員肥大化はさらに加速すると予想されている。その理由は政府が企業に対して事実上の生涯労働を義務付けたからである。
2021年4月、企業に対して70歳までの就業機会確保を努力義務とする改正高齢者雇用安定法が施行された。すでに企業は、希望する社員について65歳まで雇用することが義務付けられているが、4月1日以降は、70歳までの就業機会の確保が努力義務になった。あくまでも雇用ではなく就業機会の確保であり、現時点では「努力義務」に過ぎない。だが大手企業にとっては、事実上の生涯雇用の義務化といってよいだろう。
筆者がざっと計算したところによると、今の社員数を維持したまま、70歳まで雇用を継続すると、40歳以降の昇給はほぼ不可能となる。しかも先ほど、説明したように日本企業はすでに過剰雇用であり、今後、国内市場が急激に縮小するという現実を考えると、人員を大幅に減らさなければ、収益を維持することは不可能である。
しかもコロナ危機によって、全世界的にビジネスのデジタル化が急加速している。ビジネスのデジタル化が進めば、多くの業務が機械に置き換えられてしまうので、ますます人材が余る。筆者はパナソニックの大規模リストラは、今後、日本企業にやってくる壮絶な人減らしの号砲であると考えている。ワクチン接種の目処が立った頃には、多くの企業が続々と人員整理に乗り出すのではないだろうか。
メンバーシップ型などという「型」はない
大規模な雇用の整理が行われるということは、いわゆる日本型雇用も名実共に終焉することを意味している。厳しい言い方になるが、多くのビジネスパーソンはこの現実について、ある程度までは理解しつつも、「まだ先のこと」「自分とは直接関係ないこと」と言い聞かせていたのではないだろうか。
それは、日本型雇用を「メンバーシップ型」と呼んでいることからも伺い知ることができる。
メディアではしばしば、これからの日本企業は「メンバーシップ型」から「ジョブ型」にシフトすると説明している。だが、現実には「メンバーシップ型」「ジョブ型」などという「型」は存在しない。諸外国では、業務に対して賃金が支払われるが、日本だけが所属に対して賃金が支払われている。所属に対して賃金を支払うのは日本だけであり、日本の雇用だけが特殊なのだが、あえてこれを型に分類すれば、日本は「メンバーシップ型」、諸外国は「ジョブ型」ということになるだけだ。
以前は「日本型雇用」という言い方が標準的であり、日本だけが特殊であるというニュアンスが伴っていた。近年になって、「ジョブ型」「メンバーシップ型」など、世界にはいろいろな型がある(つまり日本の雇用形態は特殊ではない)かのような言い回しが普及するようになってきた。
なぜ、この言い回しが定着したのかハッキリしたことは分からないが、最近は、日本のやり方は特殊であるという「事実」を指摘しただけで、常軌を逸したクレームや誹謗中傷が多数、飛んでくる。メディアや専門家がこうした暴力を恐れて自主規制し、オブラートに包んだ言い方が広まったのではないかと筆者は考えている。
もともと日本の雇用は終身雇用ではなく、諸外国と同じような制度だった。終身雇用というのは、太平洋戦争の遂行を目的に国家総動員体制によって人為的に作られ、戦後の高度成長期にも継続した一時的な形態に過ぎない。これは日本にだけに見られる特殊な雇用形態であり、しかも理論的に持続不可能な制度である。令和に入って、とうとう制度の維持ができなくなり、以前と同じ(つまり諸外国と同じ雇用形態)に戻っただけと考えた方が自然だろう。
人でなければできない仕事の価値はむしろ上昇する
今後、多くの日本企業が大規模な人員整理に乗り出すのはほぼ確実だが、マクロ的に見れば日本の雇用環境は、それほど悪い状況にはならない。人口減少によって市場の絶対値は縮小するが、高齢化もしばらく継続するので、人手不足は解消されない可能性が高いからである。
つまり、働く意思や能力さえあれば、仮にリストラされたとしても、仕事に困ることはないという話だが、問題は仕事の中身である。
コロナ危機をきっかけに社会のデジタル化が急加速しており、今後、ルーティンワークを中心としたホワイトカラーの業務は、多くがAI(人工知能)に置き換えられてしまう。一方で、人でなければ遂行できない業務には引き続き、高いニーズがある。
ITを使いこなして合理化を進める仕事や、人でなければこなせない仕事というのは、人手不足がさらに深刻になる可能性が高く、賃金は上昇していくだろう。こうした仕事に従事できる人はむしろ収入がアップする。一方で、単純作業に近いホワイトカラーの仕事は完全に余剰となり、賃金は大幅に下落すると考えられる。
ITを使いこなしたり、人でなければ実施できない業務に従事するには、それなりのスキルが必要となるので、多くの日本人にとってスキル向上はほぼ必須の課題といってよい。厳しい時代になるのは間違いないが、失業の心配がないというのは大きな安心材料であり、この点については前向きに考えてもよいのではないだろうか。
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