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「永遠のライバル」ダイハツとスズキ、電撃的な提携…“EV軽自動車”共同開発の舞台裏
https://biz-journal.jp/2021/05/post_227937.html
2021.05.25 06:05 文=編集部 Business Journal
スズキ本社(「Wikipedia」より)
トヨタ自動車とダイハツ工業、スズキが軽自動車を含む小型の電気自動車(EV)の共同開発を進める。世界的に環境規制が強まるなか、効率化を図り、競争力を高めるのが狙いだ。
ダイハツとスズキは2020年度の軽の新車販売台数で首位と2位。2社で軽全体の60%以上のシェアを占める。業界トップの座をめぐり、しのぎを削ってきた永遠のライバルだが、EVではトヨタを“接着剤”にして握手をした。ダイハツはトヨタの子会社。スズキはトヨタと株式を持ち合う。3社は車両の一部を共通化するなどし、開発費用を抑える。電気で走行する技術に優れたトヨタに、軽の開発に強みがあるダイハツ、スズキが協力する。トップ2社の参入で軽EVが普及する可能性が出てきた。
■「軽もすべて電動化」の衝撃
政府は20年10月、菅義偉首相が所信表明で「2050年のカーボンニュートラル(温暖化ガス排出実質ゼロ)に向けた実行計画」を明らかにした。目玉は「遅くとも30年代半ばまでに乗用車の新車販売で電動車100%を実現する」との高い目標を盛り込んだことだ。
ここでいう電動車のカテゴリーには、走行中に有害な排出物を出さないゼロエミッション車(EV、燃料電池車)のほか、ガソリンエンジンとモーターを併用するハイブリッド車(HV)が含まれる。
二酸化炭素の排出量削減に向け、ガソリン車の販売を将来的に禁じ、電動化を進める動きは世界的な流れだ。すでに欧州などは脱ガソリン車に大きく舵を切っており、日本も追随した格好になった。しかし、当事者である自動車業界、なかでも軽自動車メーカーには動揺が広がった。世界標準の普通車(登録車)に比べて、日本独自の規格である軽自動車は電動化が遅れているからだ。EVどころか、標準的なHVすらいまだ導入されていない。
スズキの新車も国内で約5割、世界ベースで2割弱がすでにHVになっているが、簡易式のHVだ。大型バッテリーと高出力の駆動モーターを搭載する本格HVは製造原価を考えると「売れる軽」には仕上げにくいのである。「軽もすべて電動化」という政府方針の下、スズキはどうやって生き残っていくのか。資本・業務提携しているトヨタとの関係強化しか道はなさそうだった。20年11月、新型「ソリオ」の発表会の席上、鈴木俊宏社長は「小型車メーカーとしてどのようなHVが適切かを考えている。トヨタのHVを使うこともあるだろうし、価格面からトヨタのパーツを使いながら、独自に開発するということもある」と語っていた。
19年、トヨタに対する第三者割り当て増資でスズキが手持ちしていた自社株を売り渡し、960億円を調達したが、このうち200億円を自動運転などの研究開発に振り向けた。欧州市場の厳しい環境規制に対応するため20年11月、トヨタからOEM(相手先ブランドによる生産)供給された多目的スポーツ車「RAV4」をスズキブランドで売り出した。
スズキとトヨタの子会社ダイハツは永遠のライバルである。20年度(20年4月〜21年3月)の軽自動車の年間販売台数のトップはダイハツで54万9409台。第2位はスズキで53万9396台。その差は1万13万台。激しい販売競争を繰り広げたことを物語る数字だ。その両社が、トヨタを媒介して、小型の電気自動車(EV)の共同開発を進める。「軽もすべて電動化」にする国の目標を達成するしか、軽自動車メーカーとして生き残る道はないからだ。
軽はユーザーの低価格志向が強い。EVの開発は急務だが、車両が高価になれば思ったように売れず、設備投資分を回収できなくなる恐れだってある。共同開発にはリスクを分散する狙いがあることはいうまでもない。
トヨタは脱炭素の一環としてHVや水素で走る燃料電池車(FCV)と並行してEVの品揃えを強化する。昨年12月、2人乗りの小型EV「シーポッド」の限定販売を開始した。現時点では法人ユーザーや自治体などしか購入できないが、価格(消費税込み)は165万円から171万円と相対的に安い設定になっている。「シーポッド」の一般向け本格販売は22年に開始の予定だ。
■日産と三菱自は22年に軽EVを販売
日産自動車と三菱自動車は22年に軽自動車サイズのEVを発売する。長さ3.4メートル以下、幅1.48メートル以下などの規格を満たせば軽自動車に区分され、軽の税制が適用されるEVだ。日産と三菱自はプラットフォーム(車台)や電池などを共通化し、コストを圧縮した。電池はEV製造コストの約3割を占める。軽は日常の短距離移動での利用が見込まれるため、充電1回当たりの航続距離を200キロメートル程度に抑え、電池の搭載量を減らした。こうすれば電池の価格を下げることができるわけだ。
約20万円とみられる国からの補助金分を勘案すると、下位グレードの軽EVは200万円以下になる。自治体の支援と組み合わせれば100万円台半ばで購入できることになるとみている。ガソリン車に近い価格帯となる。
ホンダは、40年までに世界の新車販売すべてをEVとFCVに切り替える。4月23日に都内で開いた記者会見で三部敏宏・新社長が明らかにした。新車販売すべてをEVとFCVとする計画を打ち出したのは、国内の自動車大手ではホンダが初めて。同社の20年の世界販売台数は445万台で、EVとFCVの販売比率は合計でも1%未満だった。
ホンダは日本では24年に軽自動車のEVをお披露目する。電動化の目標実現には電池の調達などが大きな課題となるが、20年代後半には独自の次世代電池の開発を完了する。車載電池でモーターを回して走る軽自動車は走行時に二酸化炭素(CO2)を排出しないため、再生可能エネルギー由来の電気を使えば排出ゼロに貢献できると期待されている。ただ、充電時間が長いことや、充電設備が町中に少ないという難点がある。電池の価格が高く、ガソリン車よりもどうしても高価になりやすい。軽自動車では大きな電池を積めず、一度の充電で走れる距離が短くなる。軽のEV化の勝者はどこか。トヨタなのかホンダなのか。
(文=編集部)
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