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目標“10兆円” 政府が音頭「官製大学ファンド」の落とし穴 プロはこう見る 経済ニュースの核心
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/289473
2021/05/22 日刊ゲンダイ
外国株にも積極投資(C)ロイター
10兆円規模を目指す政府の大学ファンドが動き出した。今年度中にも運用を開始する方針で、今秋以降、運用委託会社の選定に入る予定だ。この動きに呼応するように「信託銀行、大手運用会社などがファンド受託に向け目の色を変えている」(市場関係者)という。
同ファンドは、欧米の大学に比べ研究力や専門人材が低下している日本の大学を資金面からバックアップするのが狙いで、科学技術振興機構(JST)の下に設置された。資産規模は当初4兆5000億円からスタートし、「大学改革の制度設計などを踏まえ、早期に10兆円規模の運用元本にまでもっていく」(内閣府)という。すでにタネ銭として政府出資5000億円(2020年度第3次補正予算)、財政投融資4兆円(21年財投計画)が措置されている。
欧米の主要大学のファンドは巨額な資金を運用し、その果実を大学運営に生かしている。例えば、ハーバード大の約4兆5000億円はじめ、エール大約3兆3000億円、スタンフォード大約3兆1000億円、ケンブリッジ大約1兆円、オックスフォード大約8200億円(いずれも19年の数値)を運用している。
日本の大学もそれぞれ単独で資産運用しているが、これら欧米の大学に比べ、その規模は大きく見劣りする。このため国が音頭をとって官製大学ファンドを創設して、その差を埋めようというわけだ。
しかし、危うさも付きまとう。「具体的な運用はJSTの最高投資責任者(CIO)が担い、外部の金融機関から人材を招聘する予定で消費者物価上昇率に3%上乗せする運用を目指す」(関係者)という。この世界的な超低金利下にあって年3%の運用成果を上げるのは容易なことではない。ちなみに世界最大級の年金基金であるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は賃金上昇率プラス1.7%が目標だ。いかに大学ファンドの運用目標が高いかが分かる。
このためポートフォリオ(運用資産構成)では、国内外株式の割合を債券よりも高くし、高いリターンを得られるように工夫するほか、将来的には未公開株に投資するプライベートエクイティー(PE)も増やすことを検討している。
だが、高い運用成果を上げるためには運用のリスク度を引き上げないといけないが、果たしてうまくいくのか。また、運用に失敗した場合、誰が責任を取るのかなども問題となる。いずれにしてもタネ銭は国民が提供したものである。大学ファンドの裏付けは税金であることを忘れてはならない。
小林佳樹 金融ジャーナリスト
銀行・証券・保険業界などの金融界を40年近く取材するベテラン記者。政界・官界・民間企業のトライアングルを取材の基盤にしている。神出鬼没が身上で、親密な政治家からは「服部半蔵」と呼ばれている。本人はアカデミックな「マクロ経済」を論じたいのだが、周囲から期待されているのはディープな「裏話」であることに悩んで40年が経過してしまった。アナリスト崩れである。
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