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NTT、海外事業が死屍累々、総額2兆円の損失…遅すぎた外部提携、遠いGAFAの背中
https://biz-journal.jp/2021/05/post_225187.html
2021.05.11 06:05 文=編集部 Business Journal
NTT本社が入居する大手町ファーストスクエア(「Wikipedia」より)
NTTグループでは澤田純氏が持ち株会社NTTの社長に就任して以降、海外事業の拡大に向け、アクセルを踏み込んでいる。それでも海外はグループ売り上げの2割に満たない。成長の柱と位置付ける海外事業は苦戦が続く。カギを握るのはNTTデータだが、子会社にする動きは、総務省幹部への接待問題でストップがかかった。
■海外事業は失敗の歴史
NTTの海外事業は失敗の歴史である。NTTコミュニケーションズは2000年、米ネット会社ベリオを買収したが、わずか1年後の01年9月中間期に5000億円の減損損失を計上。買収額6000億円をドブに捨てた。NTTドコモは海外携帯事業者に総額2兆円以上を注ぎ込み、株式評価損など1兆6000億円もの巨額損失を出した苦い過去がある。
NTTが約3000億円で買収した南アフリカのディメンション・データの業績が低迷したままだ。NTTの20年4〜12月期の実績でいえば海外売上高は前年同期比6%減の138億ドル(約1.4兆円)。NTT全社の売上高にあたる営業収益8兆7380億円の16%だ。しかも、海外の営業利益率は3.0%。23年度(24年3月期)の目標の7%からほど遠い。全社平均の営業利益率は17.2%である。しかも、NTTデータの海外事業の営業利益率はマイナス。米アクセンチュアや印タタ・コンサルタンシー・サービシズ(TCM)は2ケタの営業利益率を確保しており、雲泥の差だ。
グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンなど米国の巨大IT企業の市場支配力はすさまじい。圧倒的なインターネット需要を背景に国際通信回線の敷設でも主導権を握り始めた。澤田社長がNTTグループの国際競争力の低さに危機感を抱いているのは間違いない。
GAFAに対抗すべく悲願としてきたNTTグループの再結集に動きだした。NTTドコモを完全子会社にしたのを皮切りにNTT東日本、同西日本、NTTコミュニケーションズ、NTTデータの統合に動くとみられていた。だが、NTTグループの首脳が総務省幹部らを接待した問題が明るみに出て、NTTグループの再編の動きはストップした。それでもNTTの拡大路線は止まらない。
■光通信技術「アイオン」に社運を賭ける
NTTと富士通は4月26日、次世代通信規格「6G」の技術開発で業務提携した。6G向けの基盤技術と見込む光通信技術「IOWN(アイオン)」の開発に富士通が協力する。富士通はスーパーコンピュータ「富岳」に代表されるように、高度なデータ処理技術を持つ。NTTは富士通の技術を消費電力を抑えた通信網構築に生かしていく考えだ。
NTTは光信号と電気信号を融合する「光電融合技術」の実用化を進めている。NTTのハードウェア製品の開発子会社であるNTTエレクトロニクス(横浜市)が富士通の子会社で半導体実装技術を持つ富士通アドバンストテクノロジ(川崎市)の株式66.6%を取得し、6月1日付でNTTエレクトロニクスクロステクノロジとして再出発する。
一方、富士通は、NTTが提唱する光技術による通信基盤アイオン構想や第6世代(6G)通信技術の開発を目的に、4月から「IOWIN/6Gプラットフォーム開発室」を新設し、研究開発の動きを本格化させた。
NTTは2019年5月、 アイオン構想を発表し、通信網の消費電力の大幅な削減を目指す。NTTの試算では消費電力を現在の100分の1に抑えることが可能だという。アイオンを30年代にはインフラ整備が進むと見込まれる「6G」の基盤技術とするのが目標だ。
NTTはほかでも活発な動きをみせている。19年12月、米マイクロソフトと提携、光半導体などを共同研究中だ。20年1月、ソニーや半導体素子メーカーの米インテルと「アイオングローバルフォーラム」を設立、アイオンの仕様を国際団体で決める。
20年5月、米インテルと提携、光通信技術を共同研究している。同年6月、NECと資本業務提携した。NTTが第三者割当増資を引き受けてNECに4.77%出資する第3位の大株主になり、通信インフラを共同で開発していく。そして今回、富士通だ。業務提携して光通信技術に対応する半導体を開発する。
このようにNTTは次世代通信技術で関連企業と幅広く提携している。世界の通信会社や通信機器メーカーが研究開発を競うなか、自前技術にこだわっていては競争に勝てないとの危機感が底流にあるからだ。
NTTの前身は日本電信電話公社である。通信機器を供給してきたNECや富士通は「電電ファミリー」と呼ばれた。NTTとNEC、富士通との連携は「電電ファミリー」復活を印象付けた。「5G」の基地局など通信インフラのシェアはファーウェイの30%を筆頭に、スウェーデンのエリクソン、フィンランドのノキアの3社が市場の4分の3を独占してきた。
米トランプ政権(当時)がファーウェイなど中国製通信機器の使用が機密漏洩につながるという警戒感をあらわにし、排斥を鮮明に打ち出したことで、英国などヨーロッパ各国も米国に追従し、ファーウェイ排除に動いた。
NTTの澤田純社長は4月26日の会見で、3月に発覚した総務省幹部への接待問題を「深くおわびする」と謝罪した。澤田社長がこの問題について、公式な記者会見で発言するのは初めてだった。NTT社内では「接待問題の究明が遅れれば、次世代通信網に向けた研究開発など中長期戦略が停滞しかねない」との懸念が広がっており、これを払拭する必要があった。
(文=編集部)
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