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宮城県、「まん防」と国の大型観光企画「東北DC」同時強行の愚行…地元観光業者が悲鳴
https://biz-journal.jp/2021/04/post_218103.html
2021.04.05 18:20 文=編集部 Business Journal
東北デスティネーション・キャンペーン公式サイトより
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、緊急事態宣言に準じる「まん延防止等重点措置」が5日、大阪、兵庫、宮城の3府県の計6市で適用が開始された。適用都市の飲食・観光事業者の表情が曇る中、ひときわ憂鬱を深める都市があった。今回、措置が適用された宮城県仙台市だ。
措置に先立つ1日、まさに“最悪”ともいえるタイミングで国、自治体、JR東日本3者による大型観光宣伝企画「東北デスティネーション・キャンペーン」(東北DC、4月1日〜9月30日)が始まっていたからだ。仙台市太白区の秋保温泉のホテル関係者は憤る。
「措置は5月5日のゴールデンウィーク終了まで続くということで、少なくとも完全に出鼻をくじかれました。すでに4月末にご予約いただいていた首都圏のご高齢のお客様から、『仙台は危ないようだから』との理由でキャンセルが入りました。
うちは従業員数が多く、経営は非常に苦しいです。DC自体はやってほしいのですが、内実が伴わなければ意味がありません。開始時期を延期するとか、期間を年末まで延長するとかできないのでしょうか。
このままだと事業費の税金をドブに捨てることになるし、DCに向けて行ってきた我々の少なくない設備投資も無駄になります。営業自粛というブレーキと、『Go To』やDCなどのアクセルを、同時に踏み続ける政府・行政に不信感しかないです。四角四面なお役所仕事で、ずっと振り回され続けています。
また、『観光や飲食が苦境だ』と応援した次の瞬間に『コロナ禍にも関わらず営業している』『こんな状況下で旅行を受け入れている』などと叩くマスコミには本当に怒りしかわかないですね。我々にどうしろと言うんです?」
■オープニングセレモニーがばたばたと中止に
東北DCは東日本大震災から10年の節目に、これまでの復興の歩みを全国・全世界に発信する趣旨で企画された。各観光地の見どころを中心に、首都圏の主要駅やテレビコマーシャルなどで大規模広告事業を展開。観光列車の運行や、大手旅行代理店と連携したツアーや宿泊プランを販売するほか、地元の観光関係者や地域の伝統芸能関係者、地域住民も動員して、JR各駅を中心に誘客イベントを開催する予定だ。東北内外のインフルエンサーでつくる「Tohokuサポーター」なども活用し草の根レベルでの誘客促進も図る。
計画は2016年に立案され、当初は全世界から誘客を図る壮大な計画だった。同年5月24日、観光庁から発表されたプレスリリース『日本初、全世界を対象とした東北デスティネーション・キャンペーンを実施〜グローバルメディアの活用やメディア等500 人以上招請など集中的なプロモーションを実施〜』によると、「東北6県の外国人宿泊者数を2020年に150 万人泊(2015 年の3倍)とすることを目標にする」とある。しかし、コロナ禍でそうした海外からの誘客計画は水泡と化した。
加えて今年に入って東北でのコロナ禍は深刻化の一途をたどった。3月中旬から下旬にかけて宮城県、山形市が独自の緊急事態宣言を発令。各参加自治体はDCのオープニングイベントを中止する事態に追い込まれた。結局、今月1日に予定通り行われたのは岩手県のJR盛岡駅と青森県のJR新青森駅2カ所のみにとどまった。
■観光列車のダイヤでキャンペーンの時期はずらせない?
DCの自治体担当分の総事業費は東北6県と仙台市で計7億円。財源は各自治体の一般財源、つまり税金だ。一連のキャンペーンで、今年3月16日時点で、コロナ禍前の2019年4〜9月の観光入込客数5832万人回(東北6県計)、延べ宿泊客数2307万人泊(同)を目指すが、前出の仙台市の観光事業者の話すとおり、大きな書き入れ時であるゴールデンウィークの見通しは明るくない。
今回のDCを岩手県出身の首都圏在住、大手広告代理店社員は次のように分析する。
「大きな声では言えませんが、このタイミングでの広告企画の強行は、東北のイメージ的にプラスになるのか疑問に思っています。JR東日本さんが観光列車のダイヤを組んでしまっていることもあって、柔軟な計画変更ができなかったようです。しかし、このタイミングでの強行は悪手でしょう。
またマスコミの影響も大きいのですが、首都圏在住者には東京都で感染が拡大していた時、東北各県が『こっちに来るな』と主張していたイメージが色濃く残っています。実際、私も昨年、岩手県内の親族に不幸があったのですが、葬儀出席のための帰郷を拒否されました。
それが一転、今度は感染拡大中の東北に、『首都圏から旅行に来い』というメッセージを発しているように見えます。矛盾が際立ちますよね。
実際の東北の人たちの考えとは違うのかもしれませんが、広告で伝わるのはあくまでイメージです。DCの運営は『感染が拡大しているのは仙台市など都市部だけ』と主張するのかもしれません。しかし、それは『首都圏』とひとくくりにされて、満足に帰省できなかった我々も、当時まったく同じことを考えていたものです。目まぐるしく状況が変化するなかで適切な広告を打つのは非常に難しいことですが、慎重に事を運ぶべきです」
■インターネットで「東北の今」を発信するというが……
円滑な滑り出しとは言いがたい況に対し、東北デスティネーション・キャンペーン推進協議会(事務局:一般社団法人東北観光推進機構)の担当者は次のように語る。
「ご旅行にいらっしゃる方も、いろいろな意味で慎重に対応されていらっしゃいますし、受け入れ側のホテルなども1年前から検温システムやアクリル板の導入、消毒対策をされてこられました。協議会としては今後も柔軟に対応していきます。そもそもDCはイベントを開催することが目的ではありません。新たな観光素材の掘り起こしや、その発信が主眼の一つです。
イベントはどうしても人数制限が必要になってしまいます。各施設様、各自治体様の判断になります。例えばある自治体さんはサクラの名所の駐車場を閉鎖する一方、現地の写真や動画をネット上にあげて広く発信するなどの努力をしています。『来てください 来てください』ではなく、東北の今をネットでお伝えいただいているという状況です。
また、実際に来られない方のために公式サイト上に東北DCナビなどを開設し、各観光地を紹介しています。今後のこともありますので、いろんな情報をこちらで発信しながら、来年とか、この後の誘客にもつなげていければと思っております」
そうしたDC事務局の説明に対する受け止めを、仙台市の旅行代理店社員に聞いたところ、次のように落胆した。
「DCでなくても、コロナ後の誘客につなげようと全国各地の観光地はネット上での発信に全力を傾注しています。DCの特設サイトを作っただけで競り勝つのは厳しいでしょうし、このままでは埋没は避けられないでしょうね。
5月は仙台青葉まつりもあり、『震災10年』というタイミングで実際に東北を訪れてみたいと思う人は多かったでしょう。間違いなく商機だったと思います。本当に残念です」
(文=編集部)
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