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新宿歌舞伎町が存続の危機…空きテナント続出で中国企業の買収加速、猥雑な魅力消失も
https://biz-journal.jp/2021/03/post_216087.html
2021.03.29 05:55 文=清談社 Business Journal
新宿歌舞伎町一番街(「Wikipedia」より)
「東洋一の歓楽街」と呼ばれ、時代が変わっても賑わいを保っていた新宿・歌舞伎町に異変が生じている。コロナ禍で客足が途絶え、潰れていく個人経営の飲食店は後を絶たず、TSUTAYAやヤマダ電機などの大型チェーン店も次々と撤退。街を訪れる人は激減し、ついに“空きテナント”が増え始めているのだ。
この歌舞伎町の惨状は、アフターコロナの繁華街がたどる先行モデルとなってしまうのか。経済評論家でフューチャリストの鈴木貴博氏に、歌舞伎町の行く末を占ってもらった。
かつては「眠らない街」という異名に違わず、四六時中たくさんの人で賑わっていた歌舞伎町エリア。新型コロナウイルスの感染拡大が本格化した2020年4月以降、まず外国人観光客が消え、さらにクラスター発生源として「夜の街」が挙げられたことで、日本人の常連客もいなくなった。そして、緊急事態宣言により一般の飲食店や映画館などを利用していた若者たちも寄り付かなくなり、街はすっかり閑古鳥が鳴いている。
靖国通りから新宿東宝ビルに向かって延びるセントラルロードでは、懐手をした客引きやスカウトが所在なさげにしており、20時を過ぎると飲食店はおろか、時短営業で閉めてしまうコンビニもチラホラ。まったく活気がないシャッター街と化しており、いくつかの店先には「閉店のおしらせ」の張り紙があり、次のテナントが決まった様子もない。
「コロナ以前も決して景気は良くありませんでしたが、国内における数少ない成長産業であったインバウンドが歌舞伎町の経済を支えていました。しかし、2020年は前年比95%減という目も当てられない落ち込み方で、外国人観光客向けにシフトしていた飲食店やドラッグストア、それにホテルなどは危機的状況に追い込まれています。さらに、感染拡大の元凶として歌舞伎町エリアそのものが危険というイメージがメディアによって流布され、日本人客も寄り付かなくなった。歌舞伎町から賑わいが失われた背景には、このダブルパンチが深く影響しています」(鈴木氏)
■歌舞伎町の空き物件を狙う中国企業
感染拡大の収束が見えない以上、歌舞伎町では今後も空きテナントが増えると予測されている。鈴木氏によると、ガラ空きとなった歌舞伎町の優良物件を中国の企業が虎視淡々と狙っているという。
「歌舞伎町は土地の所有権が複雑にからみ合っており、大規模な開発が困難な街として知られています。しかし、2003年に石原都政による『歌舞伎町浄化政策』が行われて以降は、土地権利に強い影響力を持っていた勢力が[a1] 弱まり、かつてに比べて投資がしやすくなった。この潮流に目をつけたのが、中国企業です。ここ20年ほど歌舞伎町には中国資本の店が増え続けており、その勢いのまま、コロナ禍で大量発生した空き物件の買収を進めていくと予測できます」(同)
日本の企業が歌舞伎町から撤退する流れが加速し、中国資本の店舗が増えていくと、街の風景はより猥雑さを増してしまいそうだが、鈴木氏は「まったく逆で、従来の歌舞伎町が持っていたゴチャゴチャした雰囲気やいかがわしさが消え、クリーンで整然としたイメージに生まれ変わる」と予測する。
「歌舞伎町は雑居ビルの中に小規模の店が乱立しています。良くも悪くも混沌としており、それが唯一無二の魅力になっていました。しかし、歌舞伎町に進出してくる中国企業は規模が大きいので、大型商業施設をつくったり、いくつかの土地をまとめて爆買いしてチェーン化したりする。そこで展開する店舗は、すぐに儲かるような売れ線を狙ったもので、どこも似たり寄ったりになる可能性が高い。このような“街の景観の画一化”という現象は、中国企業が進出しているアジア各国の都市で起こっていて、歌舞伎町もその潮流に飲み込まれていくのではないでしょうか」(同)
この傾向がより進むと、歌舞伎町はやがて「中国資本の店が中国人相手に商売する街」となってしまうことも危惧されるという。
「コロナ禍から経済が回復しても、高齢化が進む日本では繁華街の勢いが失われていくことは避けられない。そこで成長していくためのキーワードは、やはりインバウンドしかありません。少子化により層が薄くなった若者を街に呼び込もうと努力するよりも、外国人観光客のメイン層である中国人をターゲットにした方が実利的。そういう意味でも、早く“中国化”させてしまった方が、街の繁栄につながると言えるのかもしれません」(同)
■ゴールデン街は生き残るのか?
歌舞伎町の「歓楽街エリア」は中国企業の進出によって街の風景が変化することが予想されるが、ホストクラブやキャバクラ、そしてラブホテルが乱立する大久保寄りの一帯は事情が異なるという。
「そのあたりは、いわば“歌舞伎町の深部”ですが、現在ではホストクラブを頂点とする経済体系が確立されています。たとえば、港区エリアを遊び場とするIT社長からお金を吸い上げた六本木のキャバ嬢が、歌舞伎町に足を延ばして担当のホストに貢ぐ。そうした流れで、近隣の街を含めた水商売マネーが歌舞伎町に集まってくるわけです。このような構図が崩れない限り、ゴジラビル(新宿東宝ビル)の奥に広がるエリアはこれまで通り繁栄し続けるでしょう」(同)
JR新宿駅寄りの南側から西側にかけてのエリアは中国資本に侵食され、その「奥地」に群集するホストクラブは変わらずに残り続ける。そんな歌舞伎町の未来予想図において、特に注目すべきは「ゴールデン街」の行く末だという。
「個性あふれる小規模店舗が50メートル四方ほどの一画に密集しているゴールデン街は、歌舞伎町の魅力を凝縮したようなスポットであり、実は経済価値がものすごく高いエリアです。欧米の外国人観光客から絶大な人気があり、最近では日本人の若者も増えています。各店舗のオーナーも世代交代が進んでおり、横のつながりも強いため、街全体で『ゴールデン街』という文化を守ろうとする意識が高い。コロナ禍を経てどう転ぶのかわかりませんが、“ゴールデン街の生き残り方”に注目することで、今後の歌舞伎町全体がたどる変化が予測できるのではないでしょうか」(同)
いよいよ日本でもワクチン接種が始まり、ついに長いトンネルにも灯りが見え始めた。東京オリンピック開催の可否など、まだまだ情勢が読めない部分も多いが、このままシャッター街となってしまうほど歌舞伎町はヤワではないと信じたい。そして、その復活劇が他の繁華街の「お手本」となる日も近いかもしれない。
(文=清談社)
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