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コロナ禍、なぜ明暗?過去最高益のスシローが、過去最悪赤字の吉野家から「京樽」を買収
https://biz-journal.jp/2021/03/post_212779.html
2021.03.12 06:00 文=編集部 Business Journal
スシローの店舗(「Wikipedia」より)
新型コロナウイルスの感染拡大で苦戦が続いている外食大手同士で、再編の動きが出てきた。回転ずし大手のスシローグローバルホールディングス(GHD)が牛丼チェーン大手、吉野家ホールディングス(HD)から持ち帰り専門のすし店などを展開する京樽(東京・中央区)を買収する。4月1日付で全株式を取得するが買収額は非公表だ。
スシローGHDは4月1日から社名をFOOD&LIFE COMPANIESに変更する。社名変更と同時に京樽を完全子会社に組み入れる。京樽は1932年、京都市で創業した割烹料理店。38年に東京・日本橋人形町に料亭「京樽」を出店して東京へ進出。酢飯を薄焼き卵で包んだ看板商品「茶きん鮨」が評判となり、84年に東証1部に上場した。
しかし、バブル期の不動産投資やグループ企業の財テクの失敗で97年に会社更生法の適用を申請。99年から吉野家ディー・アンド・シー(現・吉野家HD)が資本参加して再建に取り組み、2011年に完全子会社にした。現在は持ち帰りすし「京樽」や回転ずし「海鮮三崎港」、寿司専門店「すし三崎丸」などを国内で290店を展開する。都心の駅前や商業施設に入っている店舗が大半を占め、新型コロナウイルスの直撃を受け客足が落ち込んだ。
スシローはテイクアウト寿司市場で高い知名度を誇る京樽の買収をテコに、新型コロナウイルスをきっかけに高まっているテイクアウトのニーズに対応していく。スシローは9割以上の店舗を地方や郊外に出店しており、京樽の買収を機に首都圏の都心部への出店を強化する。
■吉野家HDが苦境に陥った一因だ
吉野家HDの21年2月期決算は売上高が前期比20.3%減の1723億円、営業損益は87億円の赤字(前期は39億円の黒字)、最終損益は90億円の赤字(同7億円の黒字)を見込む。赤字幅は過去最大だ。京樽と讃岐うどんチェーン「はなまるうどん」の苦戦が赤字拡大の原因となっている。
20年3〜11月期決算によると、京樽の売上高は前年同期比35%減の136億円、営業損益は20億円の赤字(前年同期は2億円の黒字)。「はなまる」の売上高は34%減の152億円、営業損益は26億円の赤字(同12億円の黒字)だった。牛丼の吉野家は売上高が4%減の788億円、営業損益段階で26億円の黒字(同44億円の黒字)。黒字は確保したが減益になったため、京樽や「はなまる」の赤字、本部費用(33億円)、固定資産の減損損失(18億円)を補えなかった。吉野家におんぶにだっこだった京樽、「はなまる」の経営の脆弱さが一挙に露呈した。
吉野家HDも手をこまねいていたわけではない。20年2月、「ステーキのどん」「フォルクス」などを展開する完全子会社、アークミールを安楽亭(東証2部)に売却した。アークミールの20年2月期の売上高は199億円で3億円の営業赤字を出していた。21年2月期はこの分の売り上げが減ったが、赤字を止める効果はあった。
「すき家」を展開するゼンショーHDの21年3月期の最終損益は前期比92%減とはいえ、10億円の黒字を見込む。90億円の最終赤字の吉野家HDはゼンショーHDに大差をつけられたことになる。ゼンショーHDは仕事のマニュアル化を徹底的に推し進め、販売管理費を抑えた。その差が出た。ゼンショーHDにとって吉野家HDはもはやライバルではない。
吉野家HDも「本部の費用の重さが課題」(河村泰貴社長)と認識している。店舗への勤務にシフトして500人近い本部人員(非正規社員含む)を300人に減らす。本社オフィスの3分の1を削減、70億円のコストを減らす。不採算の京樽を売却して牛丼の吉野家に経営資源を集中する。
吉野家HDはフィリピン外食最大手、ジョリビー・フーズ・コーポレーション(パシグ市)と5月に折半出資の合弁会社を設立し、今後10年間で牛丼店「吉野家」を50店出店する計画だ。海外事業の拡大を経営戦略のひとつとして掲げており、フィリピンでの取り組みを巻き返しの起爆剤にしたいところだろう。
■コロナ禍でもファミリー客の需要をつかんだスシロー
コロナは外食企業の明暗を、はっきり分けた。苦戦を強いられる居酒屋やファミレスを尻目に、回転ずしは攻勢を強めている。ファミリー客の需要をつかみ、業績は堅調に推移しているからだ。
最大手のスシローGHDの21年9月期の連結決算(国際会計基準)は、売上高に当たる売上収益は前期比22.3%増の2506億円、営業利益は43.4%増の173億円、純利益は62.6%増の105億円と過去最高を更新する見込みだ。
国内店の9割以上は地方や郊外のロードサイドに立地していて、ファミリー層を取り込んだ。消費行動が「都心部より生活圏」に変わったことも追い風となった。既存店の売上高が堅調なほか、国内は586店から640店前後に店舗を増やす。これに京樽の290店が加わる。38店を展開している海外も最大28店を新規出店する。香港や台湾で出店を増やし、中国本土やタイにも進出する。
スシローは賃料が安い郊外のロードサイドへの出店が主流だ。かねてから都心への出店機会をうかがっていたが、家賃が高いことやビルの上層階への出店だと、どうしても集客力が下がるリスクが足枷になっていた。京樽の買収はテイクアウト需要を取り込むだけではない。都心に進出する絶好の機会となる。コロナ禍で多くの外食チェーンが苦境に陥り、都心の店の閉鎖が続出している。こうした跡地に新たな出店余地が生まれるからだ。
スシローは都心の店舗網を強化し、ファミレスや居酒屋の客層を取り込もうしている。京樽を買収したスシローGHDと京樽を持ち堪えることができず売却した吉野家HD。勢いの差を見せつけた。
(文=編集部)
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